第1回目の資料【PDF 857KB】 - NPO法人 子どもの発達・学習を支援

福岡県認知神経リハビリテーション研究会主催
北九州支部勉強会 資料
第1回
セラピストは何を治療するのか?
システムとしての身体
NPO法人子どもの発達・学習を支援するリハビリテーション研究所
高橋 昭彦
障害レベル
Impairment(機能障害、形態障害)
Disability(能力障害)
Handicap(社会的不利)
では、関節可動域制限・歩行障害は
何に該当するのか?
機能とは
• 機能(きのう):function
• 「機能」概念そのものはきわめて曖昧であり,
日常語と同じレベルで作用,働きといった意
味合いで用いられることさえあるが,社会学
ではとりわけ,システムに対して設定されうる
「目的」への貢献という観点からみた,システ
ムおよびその諸部分の作用をさす。
ブリタニカ国際大百科事典
肩関節の可動域制限
セラピストが介入する目的
仮に、肩関節の機能(システムへの貢献という
意味での役割)が「可動域があること」であれば、
肩関節の可動域制限は機能障害である。
肩関節の可動域制限を呈する患者の可動域を
拡大させることではない。
Perfettiは身体のシステムを説明する例
として、脚立に上って電球を交換する行
為を挙げている。
この場合、行為における肩関節の役割
=機能は手の方向を決定することであ
り、手の距離は肘によって決定される
のである。
機能を回復させるということは、身体というシス
テムにおける肩関節の役割(手の位置・方向
を決定する役割)を取り戻すことである。
身体システムの空間的側面
(瞬間に注目した分析)
身体の各関節の役割は?
手掌・手指:
把持・操作
前腕・手関節:
構え
肩関節:距離
肩関節:方向
身体システムとは身体各部
の機能の複合体である
身体システムから行為システムへ
肩関節
身体に対する手
の方向を決定す
る機能
手掌・手指
対象の把
持・操作を
行う機能
肘関節
身体に対する手
の距離を決定す
る機能
前腕・手関節
身体に対する手の向
きを決定する(構え)
機能
電球を取り換えるという行為
電球を取り換えるという行為における上肢の機能システム
行為システムにおけるコンポーネント
上肢機能
システム
リーチング
行為におけるリーチング
構成要素(コンポーネント):行為を構成する諸部分
体幹機能
システム
肩関節の機能=手を方向づける機能
肩関節がどう動いたのか(運動の有無・方向・大きさ)がわかる
(肩関節の運動+感覚の複合体)
機能単位(ユニット):意識可能な知覚と運動の複合体
Ex)肩関節の関節覚
到達
機能
正中線
機能
正中線
下肢機能
システム
推進
機能
踏切り期
接近
機能
把持
機能
操作
機能
アプローチ グラスプ・ピンチ オペレーション
直立
機能
方向
づけ
機能
腰椎ー骨盤リズム 脊柱回旋
到達
機能
遊脚期
接近
機能
踵接地期
到達
機能
動的な運動性
支持
機能
立脚中期
行為=機能システム
認知課題はユニットに対して提供される
運動麻痺を機能システムの障害と捉え、
訓練によってどのように機能システムの
回復を図るか。
脳ー身体は運動の自由度を組織化する
複数の機能システムであり、様々な行為
を創発している。
機能システムー(行為)
構成要素ー(行為の諸部分)
機能単位ー(構成要素を構成する意識可
能な複数の知覚ー運動システム)
身体システムの時間的側面
(連続性に注目した分析)
●接床期
●支持期
●推進期
行為は、主体が一定の文脈の中で必要とする
生物学的な必要性に基づく明確な目的に向か
って調整される(アノーキン)
●到達期
多くの生物学的適応と同様に意識は多く
の機能を持つ。最も重要な機能はアクセ
ス機能と呼ばれ、心内の劇場におけるさ
まざまな要素間の情報の流れを促進する。
情報の優先化機能は、より重要な情報源
は容易にかつ頻繁に舞台上で意識のス
ポットライトを浴びるようになり、それ
によって観客や舞台裏にいる文脈のオペ
レータへのアクセスを増加させる。
(Baars,B. 脳と意識のワークスペース)
「随意運動は固定された一個の鎖ではなく、環境
状況の変化に連続的に対応し続ける動的なシス
テムである」
(アノーキン)
人間は複数の構成要素の空間的・時間的・
強度的関係を行為の文脈に関係付けながら、
環境に適応していくために認知過程(知覚・
注意・記憶・判断・言語)を組織化し、主体
にとって意味のある運動シークエンスを実現
するに至るのである
(宮本省三)
行為は機能システムである
行為の時間性・空間性
システム
相互作用
システム
環境
コンポーネント
ユニット
カップリングの変化⇒システムの組織化は維持
"hierarchy" of system levels
アノーキンの機能系の概念
「ある目的を達成するための随意運動は複数の
可変的な手段により遂行される。この一定不変の
目的が複数の可変的な手段によって達成される」
(アノーキン)
ある筋が麻痺すれば、他の筋が歩行の達成に重
要な役割を果たすようになる。
正常歩行が困難になれば異常歩行と呼ばれる正
常とは全く異なる運動形態が出現する。