日系企業の進出とベトナム人材市場

日系企業の進出とベトナム人材市場
KOSAIDO HR VIETNAM Co.,Ltd.
根岸千尋
代表取締役社長 Negishi, Chihiro
所得向上で車も急増中(ホーチミン市)
日系企業の“第3次進出ブーム”
ベトナムへの日系企業の進出は、現在“第3
2011 年~ 2013 年まで、3年連続で過去最高記
録を塗り替え続け、国別でトップを走り続けて
次進出ブーム”と言われる状況下にある。ベ
きたが、2014 年は4年ぶりに前年を割り込み、
トナムにおける第1次日系企業進出ブームは
投資件数で2位、投資金額で4位に後退した。
1990 年代半ばであり、大手メーカーなどが進
円安の影響や東京オリンピックを控えた都市部
出、ベトナムにおけるフロンティアとして地固
での好況を背景に、海外よりも日本国内に目が
めの役割を果たした。次いで第2次進出ブーム
戻り始めたことは明白である。
は 2000 年代の半ばで、大手メーカー、大手商
社などの進出が続く。この時期(2006 年)にベ
トナムは WTO(世界貿易機関)への加盟を果た
圧倒的に存在感を増す韓国
ど とう
その間怒涛の勢いでベトナムに投資を行い、
し、2007 年~ 2008 年には不動産価格が高騰、
2014 年の投資件数、投資金額、共に他を寄せ
いわゆる不動産バブルと言われる時期を経験し
付けないトップに君臨したのは韓国である。日
ている。
本人の多くは、ベトナムは親日的な国だと思っ
今回の第3次進出ブームは 2011 年からであ
ている。確かに親日的な国民性ではあるが、若
る。今回の進出ブームの特徴は、過去2回とは
者のファッションなど文化面では、日本よりも
大きく異なり、中小規模の製造業や小売、飲食
圧倒的に韓国の影響を強く受けているように見
などを含めたサービス業の投資の割合が大きく
える。在留韓国人の数は在留邦人の数倍はおり、
増加した、ということである。現にベトナム国
ファストフード、映画館、スーパーマーケット
内では、中小規模の製造工場を受け入れるため
など、韓国のブランドが日本のそれよりもかな
のレンタル工場付き工業団地の開発が増え、大
り浸透している。私のようにベトナムで仕事を
都市(首都ハノイや南部の商都ホーチミン)で
する日本人にとって、「もっと日本や日本人の
は、2014 年に入ってから、日本でもよく目に
プレゼンスを上げなければ……」と要らぬ焦り
する大規模小売店の看板や飲食チェーンの店舗
を感じてしまう。
などが目立つようになってきている。
ただし、2014 年通年の日本からの FDI( 外
国直接投資)件数は 342 件で、前年の 352 件を
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下回った。日本からベトナムへの投資件数は
2015年6月号
しかし私は、ベトナム人と日本人は共に仕事
をする上でとても親和性が高いと感じている。
東南アジアの周辺国の人々と比べても、おそら