渋谷のまちづくり - 公益財団法人 東京都 防災・建築まちづくりセンター

2014
【特集】
渋谷のまちづくり
都市再生緊急整備地域として渋谷周辺地域に期待すること
百年の計 渋谷のまちづくり ~渋谷区が取り組む渋谷駅周辺整備の施策~
渋谷駅周辺開発の取り組み
道玄坂一丁目駅前地区の概要 ~街へつながる歩行者動線の計画〜
渋谷駅桜丘口地区 ~高低差を利用した歩行者の回遊動線の創出~
渋谷駅街区土地区画整理事業の概要と駅前広場整備について
公益財団法人
東京都 防災・建築まちづくりセンター
vol.53
53
街並み VOL.
世界の都市・環境デザイン
巻頭言
渋谷の都市像 ~東京・東アジアの都市間競争の視点から〜・・・・・・・ 1
森地 茂 政策研究大学院大学 政策研究センター 所長
穏やかさの向こう側 ースイスの環境デザインー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
伊藤 達信 スペース大原 主宰
寄稿:被災地レポート
特集:渋谷のまちづくり
都市再生緊急整備地域として渋谷駅周辺地域に期待すること・・・・・・ 2
東京都 都市整備局 都市づくり政策部 開発企画課
百年の計 渋谷のまちづくり
~渋谷区が取り組む渋谷駅周辺整備の施策~・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
渋谷区 都市整備部 渋谷駅周辺整備課
岩手県の復興の現状について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
相原 和俊 岩手県 県土整備部 都市計画課
不燃化特区の取り組み
台東区の防災まちづくりと不燃化特区の取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
台東区 都市づくり部 地区整備課
渋谷駅周辺開発の取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
東京急行電鉄株式会社
道玄坂一丁目駅前地区の概要
~街へつながる歩行者動線の計画~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
センターからの情報
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
18
船坂 英彦 道玄坂一丁目駅前地区市街地再開発組合 理事長
渋谷駅桜丘口地区
~高低差を利用した歩行者の回遊動線の創出~・・・・・・・・・・・・・ 9
岸上 家幸 渋谷駅桜丘口地区市街地再開発準備組合 理事長
渋谷駅街区土地区画整理事業の概要と駅前広場整備について・・・・・ 10
独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本部 事業推進部
渋谷駅エリア計画チーム 渋谷駅エリア基盤調整チーム
生まれ変わる渋谷 ー今昔、そして未来へー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
表紙CG:渋谷プロジェクト完成後
のイメージ(2027年)
東京オリンピック・パラリンピッ
クが開催される 2020 年度には駅
街区東棟、南街区、道玄坂街区、
桜丘口街区が完成している予定。
優遇制度「安全・安心サポートパック」
のご案内
三 つ の 特 徴
①建築確認手数料などの優遇
*当センターが行っている事業を組み合わせてご利用される場合、手数料を優遇します。
②「木造住宅密集地域の整備」に向けた優遇
*木造住宅密集地域で建て替え等を行う際の建築確認などの手数料を優遇します。
③まちづくり等に関する新たな情報提供や建築に伴う諸手続の事前案内
*当センターで建築確認などの手続きを行った方に対し、まちづくり、住宅、建築に関する新たな制度
などを情報提供します。
詳しい内容についてはパンフレットをご請求ください。
〔連絡先〕
総務課 03-5466-2631
巻頭言
渋谷の都市像
~東京・東アジアの都市間競争の視点から~
森 地 茂
政策研究大学院大学 政策研究センター 所長
■再開発が実現するまで
東京の都市間競争力のためには、 域内各地区
の個性と魅力が不可欠である。一方で、首都圏
内の各地区は競争関係にある。しかも少子高齢
化の下で、鉄道沿線間の格差が顕在化している。
東京の東方面、北方面の路線沿線では人口の
年齢構成を示す人口ピラミッドの形が崩れず、
そのまま高齢化方向に向かっている、それに対
し、東急線など西側の路線沿線では若年層の流
入と高齢層の移動などで世代ミックス型地域が
持 続 さ れ て い る。 渋 谷 の 魅 力 的 都 市 像 の 実 現
は、その競争力を高めるのみならず、東京の競
争力、沿線地域の競争力に貢献するのである。
しかし、その渋谷にはいくつかの弱点がある。
わかりにくい駅構造、駅と線路及び道路による
街 の 分 断、 耐 震 上 問 題 の あ る 駅 と 周 辺 商 業 ビ
ル、 若者に偏った来街客などである。 しかも、
渋谷には、生かしきれていない恵まれた環境が
多く残されている。
昭 和 40 年 代 か ら 何 度 も 委 員 会 が 組 織 さ れ、
検討されてきた再開発が実現してこなかった理
由は数多く存在する。それらを超えて、多くの
関係者が再開発に動き出したのは、阪神淡路大
震災を契機とする震災に対する危機感であっ
た。災害に強いまちに改造するためには、駅の
耐震化、駅の上のデパートの建て替え、渋谷川
の容量増加、わかりやすい歩行者動線、災害時
に備えた広場などが求められ、大改造にならざ
るを得ない。大改造ならば、同時に上記の課題
を解決し、また生かしきれていない要素を魅力
向上につなげたい。
■渋谷が描く都市像
国際的競争力を備えるべき渋谷の都市像の第
1 は文化面での個性である。世界的知名度を得
た若者ファッションに加えて、より多様な文化
拠 点 と な り う る 萌 芽 を 有 し て い る。 N H K と
そ れ を 取 り 巻 く 関 連 企 業 の 集 積、 六 本 木 か ら
渋 谷 に か け て の 情 報 産 業 の 立 地、 ヒ カ リ エ と
Bunkamura、セルリアンタワーにある能楽堂、
映像文化や、音楽活動などである。
第 2 は 業 務 機 能 集 積 で あ る。 上 記 の 情 報 産 業、
青山道路沿いに集積しつつある本社機能、二子玉
川 駅 地 区 に 進 出 す る 楽 天、Line 本 社、 再 開 発 で
提供されるオフィススペース、品川駅のリニア中
央新幹線などが渋谷に新たな機会をもたらす。
第 3 は 飲 食 街、 商 店 街 の 新 た な 展 開 で あ る。
若者に偏った来街者に加えて多様な世代の集う
地域である。勿論、今集積している機能や空間
を残しつつ、個性的街区形成を図りたい。多く
の外国人来街者に恵まれ、周辺には松涛、南平
台、青山、駒場など高級住宅地が、また、原宿、
表参道、代官山など個性的商業地が渋谷を取り
囲んでいる。ヒカリエやセルリアンタワーが異
なる客層をもたらした様に大規模再開発が他の
商業地と異なる空間と機能をもたらすことを期
待したい。
第 4 は、空間としての渋谷らしさの追求であ
る。 スクランブル交差点、 ハチ公広場に加え、
谷底の渋谷駅から、上記の周辺部の街までを回
遊できるアーバンコア ※ を核とする立体的歩行
者 ネ ッ ト ワ ー ク、 道 玄 坂 か ら 青 山 通 り ま で 3、
4 階レベルでの移動空間、鉄道車両を見せる演
出、多くの来街者に見合った広場空間とそこで
のイベントなど演出の機会には事欠かない。
■ より魅力的で個性的な都市へ
渋 谷 の 都 市 像 を よ り 魅 力 的、 個 性 的 に す る た
め の 要 件 は、 第 1 に、 松 濤 や 代 官 山 な ど 縁 辺 部
の個性的街区につながる魅力的空間の展開であ
る。 第 2 は、 多 く の 世 代 の 人 々 が、 買 い 物 に、
飲 食 に、 文 化 活 動 に、 業 務 に 訪 れ る 機 能 集 積 で
あ る。 第 3 に、 ア ジ ア の 大 都 市 に 求 め ら れ て い
る副都心形成、 鉄道ターミナルとまちづくりの
組み合わせ、 今の計画の後も続くであろう大規
模 な 都 市 の 改 造、 複 雑 な 工 事 そ の も の な ど が、
国際的観光資源となり得ることを認識し、 その
見せ方と情報発信について工夫することである。
※鉄道各線の駅と周辺市街地とをつなぐ縦動線アーバンコア
水 平 方 向 を 結 ぶ 歩 行 者 デ ッ キ の 整 備 と も あ わ せ、 縦 方 向・ 水
平 方 向 と も ス ム ー ズ に つ な が り、 谷 地 形 で あ る 渋 谷 に お け る 回
遊性が高まり、交通機関の乗り換えや街への移動が容易になる。
Machinami vol.53
森地 茂(もりち しげる)
昭和41年3月東京大学工学部土木工学科卒業。
工学博士。
日本国有鉄道入社後、東京工業大学工学部教
授、東京大学大学院工学系研究科教授を経て、
(財)運輸政策研究機構副会長、運輸政策研究
所所長を歴任。東京大学名誉教授。
平成14年 交通文化賞 国土交通大臣表彰、
平成23年 土木学会功績賞など受賞歴多数。
1
特集:渋谷のまちづくり
都市再生緊急整備地域として渋谷駅周辺地域に期待すること
東京都 都市整備局 都市づくり政策部 開発企画課
■渋谷駅周辺の現状と課題
渋谷駅は、6駅8路線の鉄道施設とともに都内最大
のバスターミナルを有する大規模ターミナル駅です。
駅周辺は、こうした交通利便性を背景に、商業、業務
機能を中心に発展してきました。近年においては、音楽、
ファッション、映像などのクリエイティブ・コンテン
ツ産業の集積が極めて高く、独自の文化や産業を形成、
発信しており、世界やアジアから非常に高い注目を浴
び、国内外から多くの観光客を惹きつけています。
しかしながら、渋谷駅はホームやコンコースが複層
にわたるなど乗換動線が複雑で、駅施設のバリアフ
リーが十分ではなく、また、駅前広場は歩行者の滞留
空間が不足し、動線が錯綜しているなど、歩行者の安
全性が十分に確保されていません。さらに、駅周辺で
は、谷地形や幹線道路、鉄道により地域が分断され、
駅と周辺市街地を結ぶネットワークが脆弱であるとと
もに、細街路や老朽化した建物が多く存在しています。
また、渋谷駅周辺において十分なビジネス環境が整
備されていないことから、駅周辺への立地を望む企業
の受入れが難しい状況となっています。このままの状
況では、渋谷で育ったクリエイティブ・コンテンツ産
業の成長企業が地域外に転出するなど、渋谷における
当該産業の集積が進まず、成長力の低下が懸念されま
す。さらに、世界から観光客を惹きつける魅力を持ち
ながら、情報発信機能や観光案内等の支援機能も不足
しています。
■渋谷駅周辺に期待すること
渋谷駅周辺地域は、平成 24 年に特定都市再生緊急
整備地域に指定されており、国際競争力の強化に資す
る拠点形成が求められています。
商業・業務・文化機能の集積をいかし、渋谷の活力
を強化させるため、様々な世代のニーズに対応し、国
際的にも通用する先端的で魅力ある都市機能を高めて
いくことが重要です。世界に開かれた文化・交流・発
信機能や、クリエイティブコンテンツ産業等の先進的
な業務機能や産業育成機能、そして賑わいを強化する
商業機能を積極的に充実していくことが必要です。
また、渋谷の活力を継承・発展させ国際競争力の向
上に寄与するため、最先端の文化や情報をリアルタイ
ムに世界へ発信する生活文化の情報発信機能を強化し
ていかなければなりません。
さらに、ユニバーサルデザインに配慮しつつ、乗換
え利便性や羽田空港との結節性の向上、ゆとりある駅
前広場や歩行者空間の拡充などにより、交通結節機能
を強化していくことが重要です。
南街区
渋谷新文化街区
桜丘口街区
駅街区
道玄坂街区
渋谷駅周辺のイメージスケッチ
2
Machinami vol.53
■お問合せ先
東京都 都市整備局
都市づくり政策部 開発企画課
TEL:03-5388-3337
百年の計 渋谷のまちづくり~渋谷区が取り組む渋谷駅周辺整備の施策~
渋谷区 都市整備部 渋谷駅周辺整備課
渋谷駅の周辺では、東口で工事が本格化しています。
渋谷区は、渋谷駅周辺大改造を機に、渋谷独自の歴史、
■めぐり歩いて楽しいまちへ
指針 2010 では「世界に開かれた生活文化の発信
文化を武器に、渋谷らしさをさらに強化し、100 年
拠点“渋谷”のリーディングコア ~広場・坂・路面
先にも持続可能なまちづくりを進めています。今回は、
店を活かした、めぐり歩ける、環境と共生するまちを
それらの渋谷区の取組みについて紹介します。
目指して~」を将来像として、7つの戦略にまとめて
まちづくりの具体的な指針を定めています。
例えば、渋谷の特徴である谷地形を利用し、多層な
歩行者ネットワークを整備することで、ユニバーサル
デザインに配慮した歩行環境を形成し、まちへの回遊
性を高めていきます。また、アーバンコアの整備によ
り多層な都市基盤やまちを上下につなぎ、地下及び
デッキから地上へ人を誘導し、分かりやすく、人にや
さしいまちの実現を目指します。 ■協働型まちづくりによる将来像の具現化
以上のように、7 つの戦略に沿った整備により、
工事が本格化している渋谷駅東口
■渋谷のまちづくりの取組み
2020 年に開催される東京オリンピック・パラリン
最先端の文化が感じられる渋谷のまちですが、以前
より駅施設の老朽化やバリアフリーへの対応、鉄道の
ピックも見据え、国際競争力及び防災力の強化を目指
した都市再生につなげていこうとしています。
乗換えが複雑で分かりづらいといった課題があり、駅
今後の課題としては、災害時の帰宅困難者対策、都
施設の機能を再編整備する必要がありました。平成
市環境に関わる駐輪場や分煙施設、緑化などの整備等
17 年 12 月には「渋谷駅周辺地域」が「都市再生緊
が必要と考えています。
急整備地域」に指定されました。
渋谷駅周辺では地元組織、鉄道事業者、開発事業者
このため、渋谷区では、学識経験者、行政、事業者
等が、様々な形で渋谷のまちの魅力向上に寄与してお
等による「渋谷駅中心地区まちづくり調整会議」等を
り、完了予定が平成 39 年と長期にわたる工事期間も、
組織して、公民パートナーシップによる都市再生を進
みんなで盛り上げていこうという気運があります。
めてきました。
渋谷区としても、渋谷の将来像について様々な視点
平成 23 年 3 月には地域の皆様にもご意見を頂き
から研究し、世界中から注目される、これまでの渋谷
「渋谷駅中心地区まちづくり指針 2010」(以下「指針
の特性を併せ持ったエンターテイメントシティとして
2010」という。)を策定しました。平成 24 年 10 月
発展するよう、デザインの力も活用し、都市の魅力を
には「渋谷駅中心地区基盤整備方針」を策定しました。
積極的に情報発信していきます。
また、これらの上位計画に基づき、適宜、道路等の
都市施設、地区計画、市街地再開発事業等の都市計画
手続きを進め、大規模開発の誘導等も行ってきました。
さらに、都市のデザインについては「渋谷駅中心地
区デザイン会議」を設置し、渋谷らしい景観を強化す
るため、渋谷駅周辺の複数の大規模開発のデザインを
調整してきました。今後は、ハチ公広場に代表される
公共空間のデザインについても調整を進めていきます。
(指針 2010 等の渋谷区の計画、情報発信等の取組みに
ついては渋谷区ホームページにも掲載していますので、ご
覧下さい。
http://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/seibi/
index.html)
■お問合せ先
渋谷区 都市整備部 渋谷駅周辺整備課
TEL:03-3463-2628
Machinami vol.53
3
特集:渋谷のまちづくり
渋谷駅周辺開発の取り組み
東京急行電鉄株式会社
■はじめに
い、都市計画決定を受けたものです。
創業以来、東急グループは本拠地である渋谷を、交
通事業および不動産事業における“扇の要”に位置す
都市再生特別地区の都市計画提案における整備方針
る重要拠点として開発してきました。東急文化会館を
・多層的な街区内歩行者ネットワークの形成
はじめ、東急百貨店、SHIBUYA109、Bunkamura、
・渋谷発の生活文化を発信する交流空間づくり
渋谷マークシティ、セルリアンタワー、東急プラザ渋
・自然エネルギーの活用による環境負荷の低減
谷、東急ハンズなど、渋谷の街のにぎわいを創出する
・安全で安心なまちづくりの推進
とともに文化を発信し続けてきました。その結果、渋
・連鎖的基盤改良とまちづくりの一体整備の推進
谷は映画や音楽、ファッションなどさまざまなエン
渋谷ヒカリエの開業を契機に、渋谷にIT企業の集
ターテインメントが集積し、ほかの街にないオンリー
積が進み、また情報発信拠点として、東口の新たな賑
ワンの強みを持った街になりました。現在、渋谷の街
わいの拠点ともなっております。
の特徴を最大限に生かし、渋谷を「日本一訪れたい街」
□渋谷ヒカリエの概要
とすることを目指して再開発を進めています。
渋谷駅周辺開発のリーディングプロジェクトとし
て、2012 年 4 月には高層複合施設渋谷ヒカリエが
【事業主体】東京急行電鉄株式会社および周辺街区の
地権者(共同事業)
開業。IT を含め、クリエイティブコンテンツ系企業
【所 在】東京都渋谷区渋谷二丁目 21 番 1 号
の集積が進み、アクティブに働く街の色合いも強まっ
【用 途】商業、オフィス、文化施設、駐車場等
ています。
【敷地面積】約 9,640㎡
さらに 2013 年 3 月には、東横線と東京メトロ副
【延床面積】約 144,000㎡
都心線との相互直通運転を開始し、東横線渋谷駅が地
【階 数】地上:34 階 地下:4 階
下化されたことを契機に、渋谷駅周辺開発が本格始動
【高 さ】約 182.5 m
しました。
【設 計】株式会社日建設計・株式会社東急設計
コンサルタント共同企業体
■渋谷ヒカリエ
【施 工】東急・大成建設共同企業体
~渋谷開発のリーディングプロジェクト~
【開 業】2012 年 4 月 26 日
渋谷ヒカリエは、2012 年 4 月、東急文化会館の
跡地とその隣接地に誕生した渋谷の新たなランドマー
クとなる渋谷駅に直結した高層複合施設です。
地下 3 階~地上 5 階は東急百貨店が運営する商業
施設「ShinQs(シンクス)」、6 階・7 階は渋谷エリ
ア最大級の飲食フロア「dining 6」、
「TABLE 7」
、8
階はデザインやアートに気軽に触れることができるク
リエイティブスペース「8/(はち)」、9 階は大型イ
ベントホール「ヒカリエホール」、11 階~ 16 階は国
内最大級のミュージカル劇場「東急シアターオーブ」
、
17 階~ 34 階はオフィスで構成されています。
渋谷ヒカリエは、後述する都市再生特別地区の制度
を活用し、以下の整備方針を掲げ、都市計画提案を行
建物外観
4
Machinami vol.53
©Shibuya Hikarie
■渋谷駅周辺地区再開発の全体像
害に強く、めぐり歩いて楽しい、多様な可能性を持っ
渋谷駅は、交通結節点であるとともに、周辺の商業
た、国際的な観光文化都市「渋谷」を実現する道標と
地への玄関口でもあることから多くの歩行者が集まる
なるものとして制定された「渋谷駅中心地区基盤整備
都市活動の拠点となっていますが、駅施設の増改築に
方針」があります。
より複雑化しており、利便性を欠いています。さらに、
駅周辺についても、安全で快適な歩行者空間の確保、
交通結節機能の強化、錯綜する交通動線の改善など、
多くの課題を抱えています。
渋谷駅地区
駅街区
これらの課題を解決すべく、公共と民間の協力のも
とに、渋谷駅の機能更新と再編、駅前広場や道路など
の公共施設の再編・拡充、駅ビルの再開発を一体的に
渋谷ヒカリエ
行うことにより、限られた空間に多様な機能を集積し、
安全で快適な都市空間を創出することをめざしていま
渋谷駅南街区
渋谷駅地区
(渋谷三丁目21地区)
道玄坂街区
す。この中で当社は、2013 年 3 月、東横線渋谷駅
を地下化し、東京メトロ副都心線との相互直通運転を
計画区域
渋谷駅桜丘口地区
開始したほか、土地区画整理事業の施行者として、駅
建築敷地
渋谷駅周辺地区 今後の開発計画
前広場や地下広場、自由通路、雨水貯留施設、渋谷川
等の整備に取り組みます。
渋谷駅周辺地区における再開発は、中核となる「渋
谷駅街区」について、2014 年 7 月、開発計画Ⅰ期(東
棟)の本体工事に着手しました。さらに今後「渋谷駅
南街区」、「道玄坂一丁目駅前地区※」、「渋谷駅桜丘口
地区※」と、あわせて4つの開発がその具現化を進め
ていきます。
(※「道玄坂一丁目駅前地区」「渋谷駅桜丘口地区」
は、東急不動産が「道玄坂一丁目駅前地区市街地再開
発組合」「渋谷駅桜丘口地区再開発準備組合」それぞ
れに地権者及び事業協力者として参画し、進めていま
す。→ P8,9 参照)
これらの街区では、いずれも 2002 年に施行され
アーバンコア
渋谷駅中心地区基盤整備方針(渋谷区)より
た都市再生特別措置法に基づき、民間活力を活用した
都市再生の実現を目的とする都市再生特別地区の制度
を活用し、都市計画決定により、都市基盤整備等の公
共貢献を伴い、容積率の割り増しなど、既存の都市計
画規制の緩和を受けております。
なお、これらの開発は、渋谷区によって制定された
上位方針をもとに進めていくものです。P3 の渋谷区
の原稿にも説明がありましたが、便利で分かりやすく
耐震性の高い交通機関、人々が安心できる防災機能を
備えた駅施設をはじめ、魅力的な歩行者ネットワーク、
緑と水のネットワークおよび環境と共生する低炭素の
まちなどを創りあげることをめざす「渋谷駅中心地区
まちづくり指針 2010」の他、渋谷駅中心地区のま
ちづくりに必要な都市基盤についての方針を示し、災
Machinami vol.53
5
特集:渋谷のまちづくり
■渋谷駅街区開発計画
(西棟)地上 13 階 地下 5 階
~ターミナル駅を中心とする都市再生の
【高 さ】
(東棟)約 230m(中央棟)約 61m
モデルプロジェクト~
日本を代表するターミナル駅である渋谷駅の直上に
(西棟)約 76m
【設 計】渋谷駅周辺整備計画共同企業体
位置する渋谷駅街区の計画建物は、東棟、中央棟、西
(株式会社日建設計、株式会社東急設計
棟からなり、東棟は 2020 年、中央・西棟は 2027
コンサルタント、株式会社ジェイアール
年の開業を予定しています。なかでも、2020 年に先
東日本建築設計事務所、メトロ開発株式会社)
行して開業する東棟は、渋谷で最も高く、名実ともに
街のシンボルタワーといえる大規模開発となります。
【デザインアーキテクト】
株式会社日建設計、
株式会社隈研吾建築都市設計事務所、
●世界から常に注目を集め続ける街の実現を目指す
渋谷駅周辺地区では最大級となるオフィス(貸床面
積約 7 万㎡)と商業施設(店舗面積約 7 万㎡)をあわ
有限会社 SANAA 事務所
【予定工期】2014 年度~ 2027 年度
【開業予定】東棟:2020 年 中央・西棟:2027 年
せもち、世界から常に人と注目を集め続けるまちを実
現する中心的役割を果たします。
●安全で快適な街の実現を目指す
本計画は、「渋谷駅土地区画整理事業」、および鉄道
改良事業と相互に連携し、交通結節点の強化や歩行者
の利便性向上、防災機能の強化を図ります。
●国際競争力の強化を目指す
IT・映像・ファッションなどのクリエイティブ・コ
ンテンツ産業のイノベーションを促す交流施設や、来
街者をひきつける情報発信施設や観光支援施設を整備
し、街の国際競争力の強化を目指します。
なお、渋谷駅街区開発計画についても、都市再生特
建物外観イメージ
別地区の制度を活用し、以下の整備方針を掲げ、都市
計画提案を行い、2013 年 6 月、都市計画決定を受
■渋谷駅南街区の開発計画
渋谷駅南街区は、国道 246 号の南側部分に位置し、
けたものです。
都市再生特別地区の都市計画提案における整備方針
東急東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転開
・鉄道改良事業などと合わせた市街地の再編による
始による東横線渋谷駅の地下化によって利用されなく
大規模ターミナル駅の交通結節機能の強化と利便
なった旧東横線渋谷駅のホームおよび線路跡地を利用
性・安全性の向上
して、周辺地権者と共同して行うプロジェクトです。
●次世代の産業が育まれる場として
・国際競争力を高める都市機能の導入
高層部にはオフィス、中層部には約 200 室のホテ
・防災機能の強化と環境への取組
ル、低層部にはイベントホール、商業施設など、仕事
と遊びの境界がなく、カジュアルな渋谷らしいワーク
□建物の概要
【事業主体】東京急行電鉄株式会社、東日本旅客鉄道
株式会社、東京地下鉄株式会社(共同事業)
【所 在】東京都渋谷区渋谷二丁目 23 番 外
●旧東横線渋谷駅を記憶に残し、ダイナミックに変わる
1927 年の開業時から渋谷の発展に貢献してきた
【用 途】事務所、店舗、駐車場等
旧東横線渋谷駅を記憶として残すべく、国道 246 号
【敷地面積】約 15,300㎡
を横断する歩行者デッキに高架部分を再利用し、かま
【延床面積】約 270,000㎡
ぼこ屋根などのデザインを一部取り入れます。
【階 数】(東棟)地上 46 階 地下 7 階
(中央棟)地上 10 階 地下 2 階
6
スタイルを支援する施設を集結させます。
渋谷駅南街区の開発を通し、回遊性を確保するとと
もに、渋谷駅南側地区の玄関口としてにぎわいの拠点
Machinami vol.53
となることも目指してまいります。
■エリアマネジメントの取り組み
なお、渋谷駅南街区の開発計画についても、都市再
2013 年 5 月、官民が連携し、今後大きく変貌を
生特別地区の制度を活用し、以下の整備方針を掲げ、
遂げる渋谷駅前の新たな魅力づくりに協力して取り組
都市計画提案を行い、2013 年 6 月、都市計画決定
むため、
「渋谷駅前エリアマネジメント協議会」が発
を受けたものです。
足し、これまでの渋谷の魅力を継承しつつ、工事期間
中から、地域の活動団体等とも協力した情報発信やイ
都市再生特別地区の都市計画提案における整備方針
ベントの開催などを通して賑わいを創出し、渋谷をエ
・鉄道改良事業などと合わせた市街地の再編による
ンターテイメント性あふれ、利用者にとって安全で快
大規模ターミナル駅の交通結節機能の強化と利便
適なエリアにすることを目指して、エリアマネジメン
性・安全性の向上
ト活動を推進しています。
・国際競争力を高める都市機能の導入
・防災機能の強化と環境への取組・渋谷川の再生
■おわりに
これらの開発を通して街全体の活性化を促すこと
□建物の概要
で、渋谷が、日本はもとより世界への流行発信地とな
【事業主体】東京急行電鉄株式会社および
り、憧れの対象として訪れたくなる街「エンタテイメ
東横線隣接街区の地権者(共同事業)
ントシティしぶや」となり、また、次世代の産業が育
【所 在】東京都渋谷区渋谷三丁目 21 番 外
まれる場を提供していくことを通し、
「日本一訪れた
【用 途】事務所、店舗、ホテル、駐車場等
い街、渋谷」を実現してまいります。
【敷地面積】約 7,100㎡
【延床面積】約 116,500㎡
【階 数】地上 35 階 地下 4 階
【高 さ】約 180 m
【設 計 者】株式会社東急設計コンサルタント
■お問合せ先
東京急行電鉄株式会社 渋谷開発事業部 事業計画部
TEL:03-3477-6326
【デザインアーキテクト】
小嶋一浩+赤松佳珠子 / シーラカンス
アンドアソシエイツ(CAt)
【予定工期】2014 年度~ 2018 年度
【開業予定】2018 年度
建物外観イメージ
Machinami vol.53
7
特集:渋谷のまちづくり
道玄坂一丁目駅前地区の概要 ~街へつながる歩行者動線の計画~
道玄坂一丁目駅前地区市街地再開発組合 理事長 舩坂 英彦
■はじめに
連続性、周辺地域との連携を図る計画としています。
渋谷駅周辺開発の西側に位置する道玄坂一丁目駅前
2 階以上には店舗、中層階以上にオフィスを計画し
地区市街地再開発(以下、道玄坂街区)に関しては、
ており、最上階には産業進出支援となるスモールオフィ
都市再生特別地区、道玄坂一丁目地区 地区計画、東
スと屋上広場、それらに併設する飲食店などで上層階
京都市計画交通広場、東京都市計画道路区画街路、東
にも特別な設えを計画し、足元から最上部までを街が
京都市計画駐車場、第一種市街地再開発事業と様々な
連続して積み上がったような構成を計画しています。
都市計画等に関わる手続きを経て平成 26 年 4 月に道
それは平面的な繋がりだけではなく、歩行者動線か
玄坂一丁目駅前地区市街地再開発組合(以下組合)の
ら生まれる立体的な街との連続性が建物計画に反映さ
設立がされました。
れていくことが重要と考えています。
平成 27 年度には権利変換の後に本体工事着工を開
立体的に街と繋がるための機能として、また、建物
始する予定で平成 30 年度の完成を目指しています。
の顔として、北東角の位置には、アーバンコアと呼ば
れる空間があります。
このアーバンコアが周辺から人々を吸寄せ、そして
■計画と歩行者動線
道玄坂街区は現東急プラザと周辺地権者を中心とし
街へも繋がっていく街区の玄関となり、シンボルとし
た開発ビル計画に加え、1 階に交通機能のバスターミ
て位置付けられる最良の計画となるように、実現に向
ナルと観光支援施設、地下荷捌き駐車場の地域用スペー
けて取り組んで参ります。
スなどを設けた周辺環境と密接に繋がる計画です。
歩行者動線に於いても、1 階、2 階、地下 1 階レベ
ルと複数のレベルで駅からの動線を計画し、周辺道路
整備を同時に行うことで街へ繋がっていくことへの貢
献をしています。
建物外観イメージ
計画地
■施設の概要
施設の構成としては、足元にバスターミナル、観
光支援施設、地権者店舗など利用者の回遊性を高める
配置計画としており、歩行者の快適な動線と賑わいの
8
■お問合せ先
東急不動産株式会社 都市事業ユニット
都市事業本部 渋谷プロジェクト推進部
TEL:03-5458-0719
Machinami vol.53
渋谷駅桜丘口地区
~高低差を利用した歩行者の回遊動線の創出~
渋谷駅桜丘口地区市街地再開発準備組合 理事長 岸上 家幸
■はじめに
渋谷駅周辺開発の南西に位置する渋谷駅桜丘口地区
市街地再開発(以下、桜丘口地区)に関しては、平成
26 年 6 月(16 日)に都市再生特別地区桜丘町1地区、
桜丘地区地区計画、東京都市計画道路の変更、東京都
市計画駐車場、第一種市街地再開発事業と様々な都市
計画等の決定がされました。
今後は、再開発事業における組合設立の後に本体工
事着工を開始する予定で、平成 32 年度の完成を目指
しています。
■駅と周辺市街地をつなぐネットワーク形成
渋谷駅周辺の中でも、桜丘口地区が位置する桜丘は、
JR 線や国道 246 号によって、まちが東西・南北に分
断されている上、地形の高低差が大きく、歩行者の回
遊性が低くなっていました。そこで計画では、本開発
と一体的に整備される予定の JR 線南口改札口につな
がる縦動線アーバンコアや歩行者デッキ等を多層にわ
たって整備することで、駅や周辺市街地がつながる歩
行者の回遊動線を創出します。合わせて、これまで未
着手であった都市計画道路補助第 18 号線や、地下駐
車場を繋ぐ地下車路ネットワーク等の整備を行うこと
で、大規模ターミナル駅の交通結節機能の強化と歩行・
回遊の利便性・安全性の向上に貢献します。
部には住宅を配置するとともに、生活支援という視点
から、多言語に対応した国際医療施設やサービスアパー
トメント、子育て支援施設を導入する計画です。また、
現在渋谷が誇るクリエイティブ・コンテンツ産業の更
なる充実を図りながら、国際競争力を更に強化する機
能として、大学機関とクリエイティブ・コンテンツ産
業の連携を創出する起業支援施設を整備します。
これらのまちづくりにより、渋谷駅周辺開発エリア
における国際競争力の強化に貢献します。
なお、低層部のアーバンコアやオフィスエントラン
スなどは、有事の際に帰宅困難者の一時滞在場所とし
て活用する予定です。施設には複数系統の電力供給を
行い、災害時においても 72 時間以上※(※ガス供給
が継続している場合)の電力供給ができる計画として
おり、帰宅困難者の一時滞在施設には、優先的にエネ
ルギーを供給する予定です。
■開かれたまちづくり
桜丘口地区では、多様な個性が織りなす、複合的で
活気に満ちたまちづくりを目標とし、様々なデザイン
分野の専門家と地権者とが一体となって、デザインの
検討を進めております。また、平成 26 年 10 月には、
地区内の5つの場所のデザインについて公募を行い、
デザインやアートに関心のある多くの方から、斬新で
想像力に満ちたご提案をいただきました。
今後も、桜丘口地区を訪れる皆様が、楽しく、安全・
快適に過ごせるまちづくりの実現に向けて取り組んでい
きます。
計画地
■施設の概要
整備予定の都市計画道路補助第 18 号線を挟んで、
JR 線側に A 棟、南西側に B 棟及び教会を計画してい
ます。A 棟と B 棟の低層部には、駅や周辺市街地をつ
なぐアーバンコアや歩行者デッキ等に加えて、商業施
設や広場空間を配置することで連続する賑わいを形成
し、更なる回遊性の向上を目指します。
A 棟及び B 棟の中層階以上にはオフィス、B 棟の上層
配置図
■お問合せ先
東急不動産株式会社 都市事業ユニット
都市事業本部 渋谷プロジェクト推進部
TEL:03-5458-0719
Machinami vol.53
9
特集:渋谷のまちづくり
渋谷駅街区土地区画整理事業の概要と駅前広場整備について
独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本部 事業推進部
渋谷駅エリア計画チーム 渋谷駅エリア基盤調整チーム
本地区は 6 駅 8 線の鉄道路線が結節するとともに、
都内最大級のバスターミナルを持つ日本有数の公共交
通拠点である渋谷駅を中心とした地区です。
渋谷駅は、周辺商業地の玄関口でもあり、都市活動
の拠点ですが、駅施設は大正時代からの増改築で複雑
化しており、利便性に欠け、駅前広場等の駅周辺部で
も安全で快適な歩行者空間の確保、交通結節機能の強
化、錯綜する交通動線の改善など、多くの課題を抱え
ています。
本事業は、渋谷駅の機能更新と再編、駅ビルの再開
発と一体的に都市基盤と街区の再編を土地区画整理事
業の手法を用いて行い、公共施設の整備改善と宅地の
利用増進を図ることを目的としています。
■事業概要
本事業は平成 22 年 10 月に事業認可を受け、東西
駅前広場を中心とした約 5.5 haの範囲で行っており、
平成 38 年度末の事業完了を予定しています。
事業施行者は、個人の共同施行により、地権者であ
る東急電鉄を代表施行者、事業の技術支援を行う同意
施行者として、UR都市機構が、地権者(JR東日本、
東京メトロ)から施行同意を得て、事業を施行してい
ます。
設計図
■整備概要
本事業の基盤整備における当地区の特徴として、重
層的な都市基盤施設の整備があげられます。
駅東口では、地上・地下の駅前広場、豪雨対策とし
て地下貯留槽(雨水 4,000 tを貯留)を整備します。
また、暗渠化された都市河川の渋谷川を、地下広場新
設と街区再編に合わせて移設し、下水道化を図ります。
10
東口駅前広場断面イメージ(駅東口から南東側を臨む)
駅西口では、駅前広場、地下タクシープールを整備
します。地下にタクシープールを設け、限られた空間
を有効活用し、地上広場空間の拡充を図ります。
■駅前広場の整備について
本事業は、既成市街地の駅前広場整備であるが故に、
鉄道・バス等の交通機能を確保しつつ整備を行う必要が
あることに加え、複数の都市基盤整備を同時に行ってい
ます。上空ではメトロ銀座線の移設工事が行われ、同時
に地下広場、地下貯留槽、渋谷川等の地下施設整備を行っ
ています。このように、限られたエリアの中で、異なる
事業主体が上下に重なる施設を同時に整備することは、
当事業の基盤整備が困難である理由の一つです。
広場のデザインについても、ハチ公広場やスクラン
ブル交差点などは世界的に注目を浴びており、日本の
顔といえるような空間となるよう、関係者と十分な調
整を行いながら整備を進めていく必要があります。
■おわりに
事業認可から約4年が経過した平成 26 年現在では、
東口駅前広場を中心に整備が進行中であり、今後西口
広場についても整備に着手する予定です。
オリンピック・パラリンピック開催に向け渋谷駅周
辺の開発が進む中、安心・安全な街を世界へ発信でき
るよう、関係者の皆様のご協力の下、事業を進めてい
きたいと思います。
■お問合せ先
独立行政法人 都市再生機構 東日本都市再生本部
事業推進部 渋谷駅エリア計画チーム
TEL:03-5323-0864
Machinami vol.53
生まれ変わる渋谷 ー今昔、そして未来へー
渋谷駅街区 ( 高さ 230 m・延床 27 万㎡ )
東横線の線路ホームを撤去し、東口バスロータリーを移
したところに現れる「渋谷駅街区」の敷地。ここに地上
230m 延床 27 万㎡のランドマークが経つ風景をまだ誰
も想像し得ない。しかし近い将来、鉄道事業者と行政、民
間開発事業者、地権者等が三位一体で取り組んでいる渋谷
の大改造は、訪れる人々に感動的な新しい風景を提示して
くれるに違いない。渋谷は今、
生まれ変わろうとしている。
谷を結び、川を活かし、丘と丘をつなぎ、そこから生まれ
る回遊性あふれる魅力的な都市空間は、渋谷の街の歴史と
思い出を抱えながら新たな未来を示してくれるだろう。
今
昭和 年
「ひばり号」
空中ケーブルカー
道玄坂一・二丁目・
宇田川町付近
昔
27
撮影:赤石定次
昔
道玄坂二丁目付近
昭和 年
ハチ公前広場
今
32
今
昭和 年
渋谷駅前交差点
宇田川町・
神南一丁目付近
昔
32
今昔写真提供/白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
Machinami vol.53
11
世界の都市・環境デザイン
穏やかさの向こう側 ースイスの環境デザインー
スペース大原 主宰 伊藤 達信
スイスという国は経済が比較的安定していて、その
における立ち振る舞いを心得ることであり、都市と建
せいか社会全体として保守的なところがある。現代建築
築の境界面をきちんとデザインすることなのだと気づ
においても「スイスボックス」という言葉があるよう
かされた。
に、シンプルに矩形で構成されたものが多い。もちろん
また、与えられた敷地に対してどういったボリュー
近年ではそれとは違った動きも見られるが、依然として
ムを置くのかについて執拗に検討を重ねることにも
大半がその延長線上にあると言っていいと思う。ただ
びっくりさせられた。一見シンプルなかたちであって
し、彼らはスタイルとしてミニマルなものをつくろうと
も、ちょっと高さやプロポーションが変わるだけで都
しているわけではなくて、きわめて思慮深い検討を積み
市におけるその建築の意味が大きく変わってくる。そ
重ねた結果としてそうなっている。規模を問わず建築が
ういった微細な違いを見分けるためには、まずどのよ
都市景観をかたちづくるという共通認識があるので、コ
うなボリュームを置くのかということに綿密な議論が
ンペの際にもその建築が周辺環境に対して与える影響が
重ねられなければならず、多くの場合設計の初期段階
重要視される。選ばれた計画は一定期間公示され、反対
での大きな割合を占める。そしてその段階における決
署名が一定数集まった場合には、住民投票が行われ、時
定がそのまま、周りの環境に対してどう反応したかと
には廃案になることもある。
いうことの結果として表れることもある。
個人的な経験に基づくものなので、いくぶん偏った
周囲から突出しようとするのではなく、馴染みなが
視点からの記述となるが、学校教育と実務両面から学
らも(時に結果として)少しだけ違っているような建
んだスイスでの都市における建築のつくり方について
築のあり方は、一見地味ではあるけど、周辺環境と何
書いていきたいと思う。
らかの関係をとり結ぶことでその建築の持つ意味が増
すように感じる。もちろん奇抜なものを好まない気風
がドラスティックな変化を許さないというネガティブ
な側面もあるが、成熟した社会の中での建築のあり方
としてひとつの可能性を示しているように思う。
ディーナー&ディーナーが設計したホフシュトラッ
セのオフィスビルは、バーゼル中央駅近くの線路沿いに
建っている。それほど目立つ建物ではないのだけれど、
開口部の作り方、壁の素材の切り替え方、隣の建物との
取り付き方などがとても繊細にデザインされていて、ス
イスらしい建築のひとつと言える。
バーゼルの街並み
■都市における佇まい
まず驚かされたのが、ファサードに対する意識の高
さである。日本にいたときはほとんど平面・断面計画
の結果として表れてくるものであると認識していたの
だけれど、スイスでは都市全体の構成はもちろんのこ
と、両隣の建物がどれくらいの高さで、いつ建てら
れ、どんな形式を持っているかなど細かいところまで
配慮した上で設計を進める必要があった。それは都市
12
Machinami vol.53
ホフシュトラッセのオフィスビル
■過去からの学び
はならず、それをうまく咀嚼してかたちにしている。
もうひとつスイスに行って驚いたのが、自分のプロ
派手さはないが、都市における建ち方、空間のプロ
ジェクトを発表する際に、必ず参照事例がつけられる
ポーションがすばらしく、スイスのモダニズム建築の
ことであった。どの建物を参照し、どのように読み解
好例である。(なかなか取り上げられることがない
いて自分の設計に反映させるのかということがかなり
が、このような質の高いモダニズム建築がスイスには
重要視されていた。よくよく考えてみれば例えば論文
いくつもある。)
では当たり前のことなのだけれど、それまで自分が受
私がインターンシップをしたミラー&マランタとい
けてきた日本での教育とは大きく違っていたので、は
う事務所が2008年に設計したシュワルツパークの
じめはものすごく違和感があった。もちろんただ真似
集合住宅では、その細長く木を避けながら折れ曲がっ
をすれば良いということではなくて、それをどうやっ
た建ち方や平面計画、入口の視線の抜け方などを取り
て解釈して自分の設計に援用するのかということが大
入れて設計している。現代の建築家が、先達の仕事に
切であり、むやみにオリジナリティを誇示するのでは
敬意を払いながら取り入れた一例である。
なくて、今すでにあるもののいい部分をうまく取り入
れることが、よりよい建築を設計することにつながる
という考え方である。
■文化的サステナビリティ
以上のことを踏まえると、空間的にも時間的にも継
続性を大切にしているということが言える。都市とい
バーゼルに、オットー・ゼンという建築家が
うのは一度にでき上がるものではなくて、長い時間を
1930年代に設計したパークハウスという集合住宅
かけて多くの主体が手を加えていくことで些細なもの
がある。モダニズムに影響を受けながらも、教条的に
が集合して、ちょっとずつかたちづくられていく。た
だ古い街並みを保存するだけでなく、それらを尊重し
た上でさらに新たな層を積み重ねていく感覚は、ひと
つひとつは違いながらも全体として調律のとれた空気
感をかたちづくることにつながり、さらには時代の要
請に合わせて随時更新されていくことにもなる。サス
テナビリティという言葉を聞くと、どうしても狭義の
環境的な持続可能性を思い浮かべてしまうけれど、た
だそれだけに留まらず、昔からあるものを一旦受け入
れた上でどのように受け継ぎ、更新していくかという
側面も多分に含んでいるのではないかと思う。
パークハウス
日本で「建築家」というと、どうしてもスター建築
家のような特別な存在として考えてしまいがちだけれ
ど、そうではない部分がもっとクローズアップされて
よいし、スイスにおける建築家のあり方はそのヒント
を与えてくれるような気がする。
伊藤 達信(いとう たつのぶ)
工芸ギャラリスト スペース大原主宰
1982 年岐阜県多治見市生まれ。慶應義塾大学法学
部を卒業後、同 SFC 研究所(坂茂研究室)を経て
スイス・イタリア語圏にある建築大学 Accademia
di architettura di Mendrisio へ留学。スイス・ド
イツ語圏にある建築事務所 Miller&Maranta にて
勤務後帰国。東日本大震災を機に意を決して地元に
帰る。現在はやきものを中心として扱う工芸のギャ
ラリー、スペース大原を主宰。
シュワルツパークの集合住宅
Machinami vol.53
13
寄稿:被災地レポート
岩手県の復興の現状について
岩手県県土整備部都市計画課 相原 和俊
■はじめに
昨年平成 25 年 4 月より、岩手県に行政経験者枠で
の任期付職員(3 年間)として採用され、県土整備部
都市計画課に配属されました。私が所属している都市
計画課まちづくりチームを中心として、岩手県の復興
の現状をレポートいたします。
平成 26 年度の都市計画課まちづくりチームは、派遣
職員(東京都 1 名、大阪府 1 名、和歌山県 2 名)と県職
員 3 名と任期付職員である私の 8 名のチームです。
■岩手県の被害の概要
県の面積・人口
岩手県は東西約 122 キロメートル、南北約 189 キ
ロメートルとその広さは北海道に次ぐ面積で、日本の
面積の 4%を占めています。東京都、神奈川県、千葉
県、埼玉県の1都 3 県で 13,559㎢であるのに対し、
岩手県は 15,279㎢です。また、県の人口は平成 25
年に 130 万人を割り込み、平成 26 年 10 月 1 日現
在の推計人口は 1,284,384 人です。
地震及び津波の概要
平 成 23 年 3 月 11 日 14 時 46 分、 三 陸 沖 を 震 源
とするマグニチュード 9.0 の平成 23 年東北地方太平
洋沖地震が発生(1900 年以降に世界で発生した地
震の中で 4 番目の規模)し、県内では大船渡市、釜石
市等で最大震度 6 弱を観測しました。地震により発生
した津波は明治 29 年、昭和 8 年の三陸地震津波、昭
和 35 年のチリ地震津波を凌ぎ、陸前高田市、大槌町、
山田町等で壊滅的な被害を受けました。
翌月の 4 月 7 日には宮城県沖を震源とするマグニ
チュード 7.1 の余震が発生しています。
被害の状況
東日本大震災津波では、本県では死者・行方不明者
5,804 名、家屋倒壊数 25,706 棟等、沿岸地域を中心
に極めて深刻な被害を受け、さらに、4 月 7 日の余震で
は内陸地域の道路施設を中心に被害が拡大しました。
公 共 土 木 施 設 の 被 害 額 は 2,479 億 円 余 り( H
26.5.31 現在)で、過去最大だった平成 14 年の梅
雨前線豪雨及び台風 6 号による災害の約 10 倍に及ぶ
規模となりました。
■岩手県東日本大震災津波復興計画の概要
平成 23 年 8 月、「人命が失われるような津波被害
14
は今回で終わりにする」という決意のもと、科学的、
技術的な知見に立脚し、沿岸地域をはじめとした岩手
県全体が、東日本大震災津波を乗り越えて力強く復興
するための地域の未来の設計図としての計画を策定し
ました。災害の苦しみ、悲しみを乗り越え、
「安全に、
暮らし、働くことができる地域社会」を取り戻すため
です。
復興実施計画(第 1 期 平成 23 年度~平成 25 年
度)においては、応急仮設住宅建設等の緊急的な取組
を重点的に進めるとともに、本格的な復興に向けた基
盤の構築を進めました。計画を構成する各事業ごとに
設定した指標のうち、実質的な目標値の 8 割以上を達
成したものが 92.2%となる一方、被災地においては、
今なお多くの方々が応急仮設住宅等での不自由な生活
を余儀なくされています。
復興実施計画(第 2 期 平成 26 年度~平成 28 年度)
においては、復興基本計画が目指す「いのちを守り 海
と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」に向
け、被災者が一日も早く安定した生活を取り戻すことが
できるよう、これまでの取組の成果と課題を踏まえ、復
興に向けた「『安全』の確保」、
「『暮らし』の再建」、
「『な
りわい』の再生」の 3 つの原則に基づく「本格復興」の
取組を強力に推進することとしています。
また、地域の社会経済の持続的な発展のためには、
被害からの復旧にとどまらず、長期的な展望に立って
三陸の復興の姿を
創り上げていくと
い う よ う な、 具 体
的な取組も同時に
進めていくことが
不可欠であると考
「岩手県東日本震災津波復興計画」より
えています。
■復興まちづくり面整備3事業の進捗状況
(1)土地区画整理事業
本県の沿岸市町村で計画されている震災復興に係る
土地区画整理事業は、7 市町村 18 地区で進められて
おり、平成 26 年 9 月末現在、全地区で都市計画決定・
事業認可済みとなり、17 地区で工事に着手していま
す。このうち、15 地区において今年度中に仮換地指
定着手を目指しており、来年度の夏頃までには、全地
区の仮換地指定着手を目指しています。
Machinami vol.53
どの地区も、防潮堤整備と組み合わせて既往最大ク
ラスの津波に対応できるまちづくりを進めています。
(2)津波復興拠点整備事業
津波復興拠点整備事業は、東日本大震災を契機に創
設された制度であり、一団地の津波防災拠点市街地形
成施設として都市計画決定し整備する区域の土地を買
収して、被災地の復興を先導する拠点市街地をいち早
く形成することを目的としています。本県の沿岸市町
村で計画されている津波復興拠点整備事業は、6 市町
10 地区で進められており、平成 26 年 9 月末現在、
10 地区で都市計画決定済みであり、そのうち 9 地区
で事業認可を得て 8 地区で工事に着手しています。
本県の津波復興拠点整備事業は、土地区画整理事業と
一体的に整備する地区が 7 地区、単独で整備する地区
が 3 地区となっています。今年度中には全地区で工事
着手する予定ですが、早い地区では、産業系の本設再建
用地として既に貸付に着手している地区もあります。
(3)防災集団移転促進事業
防災集団移転促進事業は、計画されている 52 地区
88 団地の全てで大臣同意を得て、平成 26 年 9 月末
現在、80団地で造成工事に着手し、その内 24 団地
が完成しています。
防災集団移転促進事業は、住宅団地の計画策定にお
いてその規模が適切なものとなるよう、住宅団地に移
転を希望する方の意向を十分確認し実施することが
必要不可欠です。このため、
各市町村では用地の取得時、
工事の着手時等において希
望者の意向を再確認し計画
を見直しながら事業を推進
しています。
陸前高田市高田地区
面整備3事業の進捗状況
H26.9.30 現在
津波復興拠点整備事業 防災集団移転促進事業
土地区画整理事
( 7 市町村、18 地区) ( 6 市町、10 地区) ( 7 市町村、88 団地)
市町村
都市計画 事業
工事 都市計画 事業
工事
大臣
工事
工事
決定
認可
着手
決定
認可
着手
同意
着手
完成
野田村
1
1
1
-
-
-
2
2
1
宮古市
2
2
2
2
1
-
5
5
2
山田町
4
4
3
1
1
1
4
3
1
大槌町
4
4
4
2
2
2
17
12
-
釜石市
4
4
4
2
2
2
11
9
1
大船渡市
1
1
1
1
1
1
23
23
7
陸前高田市 2
2
2
2
2
2
26
26
12
合計
18 地区 18 地区 17 地区 10 地区 9 地区 8 地区 88 団地 80 団地 24 団地
形成していくために、岩手県内沿岸部の市町村や復興
に携わる関係者が、東日本大震災津波からの復興まち
づくりを進める上で、早い段階から景観の視点を含め
た検討の際の参考とする手がかりとなるものやどのよ
うな点に留意し配慮していけば良いかなどを、本県沿
岸部の自然環境や歴史 ・ 文化 ・ 風土などの特徴を踏ま
えながら取りまとめたものです。
また、昨年度と今年度の二カ年、「景観と暮らしのデ
ザインガイド」の作成に取組んでいます。これは、ま
ちの骨格となる道路や宅地など基盤整備が進んでいく
なかで、地域らしさとは何かを議論する段階となって
いることから、地域らしく美しい景観、親しみのある“ふ
るさと”を再生するために、住民の方々と 「景観と暮
らし」 について議論して、基盤整備と実際の暮らし及
び地域にふさわしい景観が調和するようなまちづくり
を行うためのデザインガイドを作成するものです。
この取組を通じて、被災された方々が 「ふるさとに住
み続けたい」 と考え、復興に携わる人々が 「復興して良
かった」 と思えるような“ふるさと”の再生につなげて
いくことが大切です。「ふるさと景観再生の手引き」 を
もとに、これまでの暮らしを大切にしたまちづくりの場
で具体的に活用されることを期待するものです。
■おわりに
震災の年の 10 月に釜石にボランティアに行き、そ
れが、岩手とのつながりの始まりでした。私の任期は
3年ですので、来年度までです。ちょうど折り返し点
を過ぎたところです。
平成 26 年9月末現在、発災から 3 年半を過ぎて、
応急仮設住宅には、10,840 戸、23,621 人の方々
(ピーク時の約8割)がまだお住まいです。被災され
た方々に寄り添う行政がどこまでできているのかと自
問自答しつつ、後方支援の日々が続きます。
岩手県東日本大震災
津波復興計画では、平
成 23 年度から平成 30
年度までの 8 年間を計
画 期 間 と し て い ま す。
道半ば、まだまだ人が
足りません。
震災遺構となる宮古市たろう観光ホテル
■景観と暮らしのデザインガイドの作成
県では、東日本大震災津波からの復興まちづくりに
合わせて良好な景観の形成を図っていただくことを目
的として『ふるさと景観再生の手引き』(岩手県沿岸
地域復興に向けた景観形成の基本的考え方)を平成
24 年 9 月に策定しました。復興と共に良好な景観を
Machinami vol.53
相原 和俊(あいはら かずとし)
1950年 東京都八王子市生まれ
S49.4 東京都交通局高速電車建設本部に採用される
H 2 .4 都市整備局へ異動
H23.3 都市計画局にて定年退職
同年4,5月 50日間 スペイン・サンチアゴ巡礼
で 870 kmを 42 日間で歩く
H25.4 岩手県県土整備部都市計画課
任期付職員として採用され現在に至る
15
不燃化特区の取組
台東区の防災まちづくりと不燃化特区の取組み
台東区 都市づくり部 地区整備課
■谷中二・三・五丁目地区の概要
す。また、台東区は、区全体の8割が商業・近隣商業
谷中二・三・五丁目地区(以下、「谷中地区」
)は、
地域で占められていますが、谷中地区は、区内にわず
台東区の北西部に位置し、西は文京区、東は荒川区に
かに残る住居系の地域です。近年では、
文京区の根津・
接する 28.7ha の地区です。周辺に不忍通り、言問
千駄木と共に「谷根千」と呼ばれ、観光客からの人気
通り、道灌山通りなどの幹線道路や、JR日暮里駅・
が高まっています。
どうかん
西日暮里駅、東京メトロ千駄木駅・根津駅などがあり、
交通利便性が高い地域です。
一方で、震災・戦災を免れたため復興事業による基
盤整備が行われていません。狭あい道路や崖線による
中世の記録に残るほど谷中(屋中)は古い地名であ
行き止まりや階段のため車両が通り抜けられない道路
り、そのころから人々が集落を営み生活していたと考
が多く、古い木造住宅が多数存在し、不燃領域率が低
えられています。明暦の大火(1657 年)後、江戸
く(43.6% 平成 25 年 3 月時点)
、防災上の問題を
の中心部にあった寺社の移転先となり、寺町として発
抱えています。
展してきました。現在も数多くの寺社や長屋建ての住
宅が存在し、江戸時代の面影を残す歴史ある住宅地で
■これまでの防災まちづくり
区では防災性の向上と居住環境の改善のため、谷中
地区同様、震災・戦災の復興事業が行われていない根
岸三・四・五丁目地区と共に平成 14 年度から密集住
宅市街地整備促進事業(以下、
「密集事業」
)を開始し
ました。住宅市街地総合整備事業(密集住宅市街地整
備型)
、東京都防災密集地域総合整備事業による国と
都の補助を活用し、整備を行ってきました。
平成 18 年度には、マンホールトイレやかまどベ
ンチ、防災用深井戸を備えた防災広場「初音の森」
(7,150㎡)を整備しました。広場に隣接する谷中コ
ミュニティセンターも、備蓄倉庫等を配備し広場と一
体的に災害時の活動拠点としても機能する施設へと現
在改築中です。
(平成 27 年 3 月完成予定)
また、緊急車両の通行を可能とするため、防災広場
と谷中小学校(避難所)を結ぶ骨格的な道路である六
阿弥陀通り(主要生活道路 A 路線)と、そこにつなが
防災広場「初音の森」
16
Machinami vol.53
る七面坂(主要生活道路 G 路線)を、沿道の権利者
新たな建替え支援制度は、平成 26 年 7 月 1 日の助
の協力の下、それぞれ幅員 6 mと 8 mへの拡幅整備を
成制度の施行を皮切りに開始されました。現在は、地
行っています。
区内の老朽木造住宅を全戸訪問し、事業の周知、建替
道路・広場整備と並行して、不燃建築物への建替え
を促進してきましたが、古くからの借地が多く権利関
え意向の確認等を行っています。
制度導入から間もないため、
助成件数はまだ少なく、
係が複雑であり、また、高齢化が進んでいるため、地
今後は、建替え相談会等を開催し、周知にさらに力を
区全体での(特に内部市街地の)建築物の更新が進ま
入れていきます。
ない状況が続いていました。
また、建替えによる木密地域の再生産を防止するた
め、密集事業地区内の準防火地域を東京都建築安全条
■不燃化特区における新たな取組み
例に基づく「新たな防火規制」区域としました。
平成 25 年度、谷中地区について、区は不燃化建替
不燃化特区の指定は受けていませんが、根岸三・四・
えの促進をコア事業として不燃化特区に応募しまし
五丁目地区の「新たな防火規制」区域においても、上
た。その後、平成 26 年 4 月 1 日、谷中地区は東京都
記の①、②の助成制度を利用可能とし、不燃領域率の
により不燃化特区の指定を受け、地区全体の防災性の
向上を目指しています。
向上を目指し、密集事業では対象外であった戸建住宅
や規模の小さい共同住宅の建替えに対する助成金や士
業(専門家)派遣などの新たな建替え支援制度を創設
しました。
■今後の谷中地区まちづくり
谷中地区における防災まちづくりの重要性は、谷中
地区まちづくり協議会等を通じて、地区内の住民の
方々に浸透してきています。全戸訪問の際、東日本大
【新たな建替え支援制度】
震災によって、実際に自分の住む建築物に不安を感じ
①戸建建替え助成・共同住宅建替え助成
たという声も多く聞かれました。
個人または中小企業者が自己の所有する老朽住宅等
しかし一方では、谷中地区の歴史ある街並み、「谷
を整備基準に適合した準耐火建築物または耐火建築物
中らしさ」を活かしたまちづくりが住民から求められ
の戸建住宅・共同住宅に建て替える際、解体除却、建
てきています。
築設計及び工事監理に要する費用に対し助成をしま
す。(上限 300 万円)
「谷中らしさ」といっても、個々人で抱くイメージ
は異なります。また、建築技術の進歩から、防災性の
敷地の細分化を避けるため、敷地面積の要件を設け
向上が必ずしも街並みの保
ています。(戸建建替え助成:原則 50㎡以上、共同
存と相容れないわけではあ
住宅建替え助成:原則 100㎡以上)
りません。今後は、不燃化
※既存の「三世代住宅助成」(120 万円)を併給す
特区制度におけるまちづく
ることができます。
りコンサルタント派遣等を
②老朽建築物除却助成
活用しながら、住民との話
個人または中小企業者が、延焼防止上有効な空地と
し合いを重ねていきます。
して整備するため自己の所有する老朽建築物を解体除
その上で、街並みを活かし
却する際に要する費用に対し助成します。(上限 150
つつ防災性の向上を図るた
万円)
めの具体的方策の検討も行
③士業(専門家)派遣
い、地域特性に合った良好
建築計画や資金計画、相続等、建替えにあたっての
相談を受けるため、公益財団法人東京都防災・建築ま
なまちづくりを推進してい
きます。
ちづくりセンターの「まちづくり専門家等登録派遣制
路地の風景
度」を活用して、建築士、弁護士、ファイナンシャル
プランナー等の専門家を老朽建築物所有者等に対し派
遣します。(無料。1 年度につき 5 回まで)
■お問合せ先
台東区都市づくり部 地区整備課
TEL:03-5246-1365
Machinami vol.53
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センターからの情報
平成27年4月1日から施行
東京都木造住宅耐震診断事務所
登録制度について
住宅性能表示制度の
見直しが近づきました
住宅性能表示制度の評価方法基準の改正について、
平成 27 年4月1日の施行日が近づきました(平成
26 年2月 25 日公布。)今回の改正により、制度が大
きくリニューアルされる内容となっております。設計
住宅性能評価の申請日により適用される基準が変わり
ますので、申請される際はご注意ください。改正の概
要は下記のとおりです。
また、平成 25 年 10 月 1 日に改正された住宅省エ
ネ基準につきましても、経過措置期間が平成 27 年 3
月末をもって終了します。旧基準(平成 11 年基準)
が適用できなくなりますので併せてご注意ください。
● 評価方法基準の改正の概要
(平成26年2月25日 国土交通省告示第151号)
1 省エネ基準の見直し等に伴う改正
省エネ法に基づく住宅省エネ基準の改正(H25.10)
及びエコまち法に基づく低炭素建築物認定基準の制定
(H 24.12)に伴い、省エネに関する部分を改正する。
平成 27 年 4 月1日施行(「5-1 断熱等性能等級」につ
いては、今年の 2 月 25 日の公布日より先行適用)。
2 液状化に関する情報提供
東日本大震災を踏まえ、専門家への相談や流通時の
判断材料として利用できるよう、液状化に関して把握
されている情報を、評価書に参考情報として記載する。
平成 27 年 4 月1日施行。
3 必須/選択項目の範囲の見直し
住宅性能表示制度の多様な事業者での利用が進み、
より多くの住宅取得者が住宅の性能に関する情報を得
られる環境整備を行うため、必須/選択項目の範囲を
見直す。平成 27 年 4 月1日施行
4 その他の改正事項
鉄骨造の防錆措置について JIS 規格改廃を反映し
た改正を行う。その他改正事項あり。平成 26 年 2 月
25 日の公布日より施行。
● 関連情報
詳細については、一般社団法人住宅性能評価・表示
協会のホームページをご覧ください。
http://www.hyoukakyoukai.or.jp/
■お問合せ先
建築防災部 住宅性能課
TEL:03-5466-2052
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都内には昭和 56 年以前の「旧耐震基準」により建
てられた、倒壊など人命に関わる被害を受ける可能性
がある建築物も少なくありません。そのため、速やか
な耐震化が喫緊の課題となっています。
東京都木造住宅耐震診断事務所登録制度は、木造住
宅に特化した耐震診断・補強設計・工事監理について、
都民の皆様が安心して木造住宅の耐震化に取り組んで
いただくことを目的とし、当センターは、平成 18 年
12 月に東京都知事から「指定登録機関」の指定を受
け、事業を実施しています。
東京都⽊造住宅耐震診断事務所登録制度(平成26年度)
東京都木造住宅耐震診断事務所登録制度
( 平成 26 年度 )
登録機関の指定
報告
【指定登録機関】
(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター
耐震診断事務所の登録
新規及び更新講習会の実施
耐震診断事務所登録名簿の公表
東京都
耐震診断事務所登録名簿の公表
⽊造住宅耐震診断登録事務所
耐震診断技術者
建築士事務所
耐震診断資格者
都 ⺠
耐震診断・耐震改修の実施
耐震診断・耐震改修の依頼
また、
『建築物の耐震改修の促進に関する法律』の
一部改正(平成 25 年 11 月 25 日施行)により、「要
緊急安全確認大規模建築物」及び「要安全確認計画記
載建築物」の耐震診断が義務化されました。それに伴
い、
義務化された建物の耐震診断を行える者の要件(建
築士であり、かつ国土交通大臣が定める講習会を修了
した者)が示されました。
この要件を満たした者は「耐震診断資格者」と位置
付けられますが、耐震診断を行う建物の構造ごとに講
習会を受講しなければなりません。
この改正により、東京都木造住宅耐震診断事務所登
録制度実施要綱の一部も改正され、平成 26 年 8 月 1
日付で施行されました。主な改正点は以下の 2 点です。
・講習会受講資格者が「建築士」から「木造耐震
診断資格者」に変更
・終了考査の廃止
なお、平成 26 年度の「東京都木造住宅耐震診断技
術者育成講習会」は、平成 27 年 2 月 13 日(金)に
開催を予定しています。
■お問合せ先
建築構造部 耐震改修評定室
TEL:03-5466-7615
Machinami vol.53
特定緊急輸送道路沿道建築物の
耐震化の取組み
東京都は、平成 24 年 4 月 1 日に「東京における緊
「歴史的建造物の保存を支援する
チャリティイベント」について
当センターでは、東京の歴史的建造物を次代に継承
急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を
していくための「東京歴史まちづくりファンド事業」
施行し、都内の緊急輸送道路約 2,000㎞のうち、特
において、平成 25 年度より東京都都市整備局と共催
に沿道の建築物の耐震化を推進する必要がある道路約
し「歴史的建造物の保存を支援するチャリティイベン
1,000㎞について、特定緊急輸送道路に指定し、そ
ト ( 以下「イベント」という。)」を開催しています。
の沿道建築物(約 5,000 棟が対象)に耐震診断を義
務付けました。
平成 26 年度では 3 回のイベントを計画しており、
既に下記の2回を実施しました。2 回のイベントは申
当センターは、平成 23 年度から耐震診断アドバイ
込者も多く、抽選を行うほどの大盛況でした。
ザー派遣業務を平成 25 年度から耐震化アドバイザー派
[第 1 回]
7月20日開催
「早稲田大学大隈記念講堂」
大隈記念講堂の保存・改修に
関する講演会、ブランデンブ
ルグ国立管弦楽団トップメン
バーとソリスト共演によるコ
ンサート(木管 6 重奏)
定員 900 名
遣業務を東京都から受託し、条例の円滑な施行や特定沿
道建築物所有者等の耐震化への取組を支援しています。
耐震診断については、条例対象の建築物のうち 87%
以上が着手しています(平成 26 年10 月末時点)。また、
平成 25~26 年度は、耐震診断を終えた建築物が補強
設計、耐震改修へ向け検討する件数が増加しているこ
とを受け、東京都は所有者等が確実に耐震化に取組め
るよう、助成期限の延長を検討しています。
[第 2 回]
11月16日開催
「自由学園」
歴史的建造物群のツアー形式による見学会 定員120名
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1000
3500
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800
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デ 2000
᩿
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ᩘ 1500
女子部食堂
次は、歴史的建造物が複数まとまって立地する神田
万世橋地区において、講演会(
「万世橋駅の今昔につ
1000
いて」ほか)とクラシックコンサートのイベントを平
200
500
0
成 27 年 1 月 25 日に予定しています。
度
26
年
度
年
25
度
24
年
度
0
23
年
男子部体育館
10月末時点
平成 25 年 11 月 25 日付け改正耐震改修促進法の
施行に伴い、耐震改修助成等について、国費が拡充さ
なお、このチャリティイベントの参加費は、「東京
歴史まちづくりファンド」への寄付金とさせていただ
いています。
れたことにより、耐震化に向けた機運が高まっていま
神田万世橋地区にある都選定歴史的建造物
す。今後、その発生が懸念される首都直下地震などに
よる被害拡大を防止するため、当センターは、東京都、
関係区市町村と連携し無料の耐震診断アドバイザー派
遣や耐震改修、建替え相談に応じる無料の耐震化アド
バイザー派遣を更に積極的に取組、特定緊急輸送道路
いせ源本館 神田まつや 竹むら 沿道建築物の耐震化推進に向け、引き続き協力してま
東京歴史まちづくりファンドについてご興味のある
いります。
ぼたん
方は、当センターのホームページをご覧ください。
建築物の耐震化に向けたご相談は、お気軽に当セン
ターにご連絡ください。
http://www.tokyo-machidukuri.or.jp/machi/
fand/index.html
■お問合せ先
まちづくり推進部 まちづくり推進課(沿道耐震化窓口)
TEL:03-5466-2064
■お問合せ先
まちづくり推進部 まちづくり推進課
TEL:03-5466-2103
Machinami vol.53
19
センターからの情報
「東京まちづくりの会」
を発足しました
東京シニア円滑入居賃貸住宅
東京都の高齢者向け住宅登録制度です
高齢者の入居を拒まない賃貸住宅をご登録いただき
住宅瑕疵担保履行法他、各法令を遵守し、事故抑制
高齢者等に紹介する、東京都独自の制度です。まちづ
に資する品質の高い住宅を供給することで東京のまち
くりセンターが窓口となっています。
づくり発展に寄与することを目的として、平成 26 年
ご登録いただいた住宅は、センターのHPでご紹
7 月 1 日付で住宅保証機構㈱の認定団体「東京まちづ
介するほか、電話、来所による住宅探しのご相談に
くりの会」
を当センターを事務局として発足しました。
は、家賃や立地の条件が合う住宅のリストを、お渡
本会の会員は「まもりすまい保険」の届出事業者が
しします。登録基準は、専用部分(または共用部分)
対象者で、保険法人が定める新築住宅の設計施工基準
に、台所、水洗便所、洗面設備を備えていること等で、
に加えて本会の品質管理基準に適合させることで、保
登録は無料です。 険料の割引が可能となり、また、建築に関する情報提
*お気軽に、お問合せください*
供を受けることができます。
本会規約の目的にご賛同いただける届出事業者であ
■お問合せ先
経営管理部 東京シニア担当
TEL:03-5466-2477
れば、どなたでも入会することができ、入会金、年会
費は無料です。
会員数は 11 月末の時点で 500 社となりました。
詳細につきましては下記までお問合せいただくか、
当センターのホームページをご覧ください。
■お問合せ先
住宅保険部 住宅保険課
TEL:03-5466-2474
宅建試験情報
平成 26 年度の宅地建物取引主任者資格試験(宅建
試験)は、10 月 19 日(日)に実施されました。
≪東京都における宅建試験の実施結果≫
申込者数 48,107 人、受験者数 38,032 人、
受験率 79.1%
平成 27 年度の宅地建物取引士資格試験 ( 宅建試験 )
は下記の予定で進めています。変更される場合もあり
■編集後記
今号では今注目が集まる渋谷駅の再開発プロジェクトを
ますので、平成 27 年 6 月 5 日(金)の実施公告以降、
特集とした。長年検討されてきた再開発が、ヒカリエの開
改めてご確認ください。
業を皮切りに一気に加速し始めた。当センターも渋谷にあ
り、渋谷駅前の変化を毎日肌で感じている。地権者と民間
【試験日】
平成 27 年 10 月 18 日(日)
企業、行政の連携により進められる、単なる施設更新では
ない大規模なまちづくりに期待したい。(岡本)
【インターネット申込】
7 月 1 日(水)~ 7 月 15 日(水)21:59 まで
【郵送申込】
7 月 1 日(水)~ 7 月 31 日(金)
※期間中の消印があるもの
■お問合せ先
経営管理部 宅建試験担当
TEL:03-5466-2470
【 編集・発行 】
発行日:12月
事務局:公益財団法人
東京都防災・建築まちづくりセンター
まちづくり推進部 まちづくり推進課
〒 150−8503 東京都渋谷区渋谷二丁目 17 番 5 号
シオノギ渋谷ビル
TEL:03–5466–2103 FAX:03–5778–2791
URL:http://www.tokyo-machidukuri.or.jp
制作・印刷/株式会社カントー
定価:
( 本体 190 円+税)
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Machinami vol.53
東京の街を、
建物を、
安全安心・快適に
…それが私達の使命です
当財団は、東京都知事指定第一号の指定確認検査機関
として、平成 11 年より建築確認検査業務を行っています。
本誌表紙にあります「渋谷ヒカリエ」も、現在工事中の「渋
谷駅街区」も当財団の確認です。また、「道玄坂一丁目駅
前地区の再開発計画」を始め、渋谷駅周辺の多くの建築
計画ついて、ご相談を受けたり、確認検査を行っております。
渋谷を拠点として、都内全域に、建築確認検査業務を通
じて、建物と人をつなぐ安全安心をお届けしています。ど
うぞご用命ください。
特許取得済