こちら - 山梨県立女子短期大学

学長式辞
新入生の皆さん、山梨県立大学へのご入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを心より歓迎し、
お祝い申し上げます。また、ご両親をはじめとするご家族の皆様、関係者の方々にも心よりお祝いを申し上
げます。
大学は、
「自己学習の場」です。高校までの学習とは違います。
大学は、
「生き方を学ぶ場」です。これからはそれぞれの「生き方」を追求するところです。
大学は、
「挑戦する場」です。個人として、大人としてさまざまな課題に果敢に挑戦しなければなりません。
私たちは、あなた方を待っていました。まずは、山梨県立大学のことを紹介しましょう。
本学は、10 年前の平成 17 年4月に、国際政策学部、人間福祉学部、看護学部の3学部と大学院看護学研
究科から成る山梨県立大学として設置されました。前身の山梨県立看護大学と山梨県立女子短期大学を統合
し、池田キャンパスと飯田キャンパスの両キャンパスを有しています。行政改革によって5年前に公立大学
法人となり、地域のニーズや時代の変化に対応し、県民の期待に応える個性豊かな魅力ある大学をめざして
います。山紫水明の自然環境に恵まれ、桃、ぶどう、すももはもとより、日照時間、貴金属製品出荷額、人
口 100 万人当たりの図書館数、一日の食事時間、障害者を対象としたボランティア活動の年間行動者率、65
歳以上人口 10 万人当たりの老人福祉センター数も日本一の県です。昨年度のある調査で、長野県を抜いて田
舎に住みたい県日本一に輝いたところでもあります。豊かな自然環境、豊かな産業、豊かな社会生活を営め
る県の中央に位置する大学となっています。
2年前には、大学等が自治体と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・地域貢献を進める大学を支
援する文部科学省の「地(知)の拠点整備事業(大学 COC 事業)
」
(Center of Community)に採択され、地域
コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図っています。
「グローカルな知の拠点となる大学」
、
「未来の実践的な担い手を育てる大学」
、そして「地域に開かれ地域と向き合う大学」を理念・目的として掲
げる本学では、これまで地域に根ざすフィールドワークなどの実践的な少人数教育を推進してまいりました。
さて、大学は、
「自己学習の場」です。
大学は、あらゆる学校制度の頂点に位置し、高等学校以下の普通教育とは異なった学術中心の場であり、
オリジナルな探求を通じて真理を追究し、新たな知識を生み出す機関でもあります。ユニバーシティと呼ば
れる大学の最大の原理は、学生にも教授にも共通して求められる自己決定(self-direction)であり、それゆ
え大学は本質的にはあらゆる面において強制にはなじまないところです。大学は、いってみれば「大人の学
校」であり、そのため自主的判断のできる人間であることを前提としています。
大学に入学したばかりの皆さんにはまだ実感がわかないかも知れません。あるいは高等学校と大した違い
はないと感じている学生もいるかも知れません。しかし、大学教育のシステムにも、こうした自己決定ある
いは自主的判断を尊重したものが多く採用されています。例えば、授業科目の選択や進路の選択、研究方法
の決定や指導教授の決定などは、一人前の大人として学生は扱われているのです。学年制と単位制を併用し
た高等学校とは違って、大学では単位制のみになっています。しかも、大学の単位制は高等学校のそれとは
異なり、学生の自学自修を前提に成り立っています。大学の図書館や実験室等の施設・設備が立派なのは、
学生が自主的に学び、研究し、知識を身につける能力をもっていることを前提としているのであって、それ
なくしては真のユニバーシティともいえないからです。
まずは、大学とは、これまでの学校とは異なり、自らの選択で授業科目・コースを選び、自ら研究課題を
みつけ、設備の整った図書館等で自ら研究する習慣を身につける「知的陶冶」の場所であることを自覚して
もらいたいと思います。
次に、大学は、
「生き方を学ぶ場」です。
21 世紀は生涯学習社会とも特徴づけられています。生涯学習社会の構築は、就学前教育に始まる学校教育
から大学教育、さらには家庭や社会の領域を含めてひとつの大きな学習体系を確立するところにねらいがあ
ります。その意味では、皆さんの大学における学習はこれで終わりということではありません。むしろこれ
からも生涯にわたって学び続けることになります。かつて、ユニバーシティは、人間を知性、品性、道徳に
おいて理想的な人間にしたてることを目的としていました。今日なお、こうした全人的教育は大学において
も生きており、それは日本の教育の誇れるものでもありますが、もっと長い目で学校教育に続く生涯学習の
セカンドステージにいるという意識をもつことも大切ではないかと考えます。
生涯にわたる学習を三つの段階レベルで考えた場合、皆さんのこれまでの学校教育においては「生きる力」
を学んできたはずです。今日の学校教育が目標としている「自ら学び、自ら考える力」の育成はすでに完了
しており、生きる力はすべての学生が有していることになります。この「生きる力」を基礎に、大学生活あ
るいはその後の長い社会生活においては「生き方を学ぶ」第二の時期に入ります。それぞれの人生目標に向
かって多様な生き方があることはいうまでもありません。人生目標も中・長期的なもの、短期的なものとそ
れぞれ設定されているかも知れません。いずれにせよ、大学生活においては、「課題探求能力」の育成を軸
とした「生き方を学ぶ」ための自分探しをしてもらいたいと思います。4年間あるいは大学院時代を含めれ
ばそれは十分すぎるほどの時間があるはずです。
本学も、独自な能力と資源をもっています。他の大学では経験できない幅広い領域や選択肢が教育や研究
の分野に用意され、またそれぞれ異なった背景、文化、そして経験を有する多くの人々と相互作用の機会が
設けられ、さらに研究を遂行するためのすばらしい施設・設備が利用可能となっています。知的好奇心や探
求心を身につけるには絶好の環境の中に置かれている皆さん一人ひとりが、自らをじっくりと見つめなおし、
自らの課題を見出して解決する力を是非とも養ってもらいたいと期待しています。そして、それは遠い将来
には生涯学習の第三段階「生きがいを学ぶ」時代に結びつくはずです。
そして、何よりも大学は「挑戦する場」です。
皆さんは多くの夢と期待に胸を膨らませて、大学キャンパスでの生活がこれから始まります。皆さんは、
勉学に励み、課外活動を満喫し、多くの友情に囲まれることでしょう。大学での活動は、大学の中だけには
とどまりません。大学を取り巻く地域、日本の各地、そして世界が活動する場所です。我々は今大変な問題
に直面しています。科学と技術の進歩は、社会に大きな恩恵を与えてきましたが、他方で、数多くの問題を
も発生させてきました。エネルギー・資源に関する問題、産業・経済の活性化の問題、少子高齢化の問題を
含む人口構成の問題などの種々の問題です。これらは地球規模の課題です。地球市民としてこれらの課題解
決に向けた活路を見出していかなければなりません。
「百聞は一見に如かず」とは、お馴染みの言葉ですが、海外へ行った人の話を聞くと「日本にいるだけで
は絶対にわからなかったことがたくさんある。テレビや新聞、本やインターネットなどで間接的に手に入る
情報量を 1 とすると、実際に海外へ行って現地で体験して得た情報量は 100 にも 200 にもなる」と、多くの
人が口を揃えて言います。私自身も海外に行ったことがあるのでよくわかるのですが、日本にいてわかるこ
とと現地へ行ってわかることとは全く違います。何が一番違うかというと、
「空気」
「雰囲気」です。知識と
して知っていることと、実際に体験して知ることとの間には、大きな隔たりがあるといっていいでしょう。
本当の意味で血となり肉となる知識や技能は、実体験から得るのが一番なのかも知れません。
その意味で、本学で学ぶ皆さんには、まさしく「百聞は一見に如かず」を実感し、それぞれの生活や体験
を通して、生きた知識や技能を獲得していってもらいたいと思います。そのためには、それぞれが挑戦すべ
き夢を持つ必要があります。
「挑戦」には失敗はつきものです。ですが、失敗とは「その方法ではうまくいか
ない」というだけの話であり、エジソンの言葉にある通り「失敗すればするほど、我々は成功に近づいてい
る」のです。失敗を恐れないチャレンジ精神や勇気は、若者の特権であり社会の価値そのものです。
是非とも、皆さんの夢を、本学のキャンパスを起点として、実現していってもらいたいと願っています。
皆さんが、本学で幅広い学識と強靭な自立心を身につけ、明るく希望の多い未来を切り拓いていってくれる
ことを強く期待して、私の式辞といたします。本日は、本当におめでとうございます。
平成 27 年4月3日
山梨県立大学学長
清水一彦