広報誌 - 日本投資顧問業協会

一般社団法人
日本投資顧問業協会
投資顧問
JAPAN INVESTMENT ADVISERS ASSOCIATION
No.78
2015
Contents 目 次
「高まる投資運用会社への注目度」
01 巻頭言 石川副会長 03 協会の動き
12 「忠実義務」の物差し
平成27年4月25日発行 通巻78号
(1) / 2015/04/27 15:46 (2015/04/27 15:39) / wn_15103510_01_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_巻頭言.docx
〈巻 頭 言〉
高まる投資運用会社への注目度
一般社団法人 日本投資顧問業協会
副会長 石川 昌秀
近年、良くも悪くも投資運用会社への注目度が高まっているように感じている。
平成 24 年に発覚した AIJ 事件では、投資運用会社への信頼感は大きく損なわれ、むしろ悪者視され
ていた感さえある。残念ながら、未公開株を巡る詐欺事例、適格機関投資家等特例業務を悪用した事
例、助言会社による外国ファンドの実質販売事例等、資産運用業務を巡る不祥事が絶えないという事
実もある。われわれは、こうしたことを厳粛に受け止め、社会からの信頼を向上するために、一層の
努力を継続していかなければならない。
その一つの道筋として、コーポレート・ガバナンス向上への貢献が考えられる。平成 25 年6月の日
本再興戦略を受けて、
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫が策定
された。機関投資家の影響力を投資先企業の持続的成長の実現に活かすことを目的としたこのコード
により、投資運用会社は資本市場を支える主役の一人として期待されることとなったと言える。これ
までも議決権行使などを通じ、コーポレート・ガバナンスの向上に寄与してきたとの自負はあるもの
の、一般的な投資運用会社にとって、発行体はあくまでも投資先・調査対象であり、建設的な「目的
を持った対話」
(エンゲージメント)という明確な意識は、会社ごとあるいは運用者ごとにかなり濃淡
があったのではないかと思われる。しかし、われわれには資本市場においてより能動的に活動するこ
とが求められている。これは、受託者責任を超えた社会的責任として、その期待に応えていくことが
資産運用会社のレゾンデートル(存在理由)の一つになりつつあるとも言えるのではないか。
この3月にはスチュワードシップ・コードと対をなすコーポレートガバナンス・コード原案が策定
された。かなりのスピード感をもって議論が行われたと仄聞しており、基本原則の多くで株主を意識
したものとなっている。このコードの策定により、投資運用会社の対話の相手である発行体の行動規
範も揃った。お互いに議論すべきことがはっきりしたことにより、エンゲージメントがスムーズに、
かつ効率的に行うことができるのではないかと期待している。投資運用会社は、発行体との「協創」
を達成し、いわゆる「インベストメント・チェーン」の全体最適を図るため、自らの実力を高めてい
く不断の努力をしていかなければならない。実際の経営に携わっていないアナリストが、ただ株主還
- 1 -
(2) / 2015/04/27 15:46 (2015/04/27 15:39) / wn_15103510_01_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_巻頭言.docx
元の強化やROEの向上策、事業の集中と選択を質すだけでは「協創」にはほど遠いであろう。発行
体に対して謙虚な姿勢と革新的であり商業的にも十分、検討に値するアイデアをわれわれが用意でき
るのか、エンゲージメントの場は常に真剣勝負でもある。なお、協会としても、アンケートの実施等
を通じて、今後も継続的に会員の活動をフォローしていく予定。
また、投資運用業務の透明化も投資運用会社にとって極めて重要なことと考える。昨年導入された
NISA は今後さらに対象が拡がっていく見込みであり、ラップ口座を活用した投資資産も順調に拡大し
ていると認識している。こうした動きのなかで、新たに資産運用を行う人も増えていくこととなろう。
企業年金を中心とした投資一任契約では、投資運用会社がお客さまを直接訪問することも多く、コミュ
ニケーションも活発と思われるが、個人のお客さまに対しても、自分たちのお金をどのような人々が
どのように運用しているか、を開示するなどして、お客さまからの信頼を獲得していかなければなら
ない。これは、世間での認知度があまり高いとは言えない投資一任業務のプレゼンス向上に、絶好の
機会であるとも考えられる。投資運用会社はサービス業でもあるとの自覚を常に持つべきである。
第2次安倍政権の発足以来、マーケットが騰勢を強めるなかで、諸外国からも日本の資本市場への
注目度が高くなっている。これに対して、われわれは、強固な自律心のもと、
「インベストメント・チェー
ン」の要として期待に応えていく必要がある。その際には、個人投資家や企業年金における加入者・
受給者といった、スチュワードシップ・コードの本来の目的である「資本の最終的な提供者の繁栄」
に貢献するという視点で業務を行うべきであり、ひいてはそれが本邦資本市場の活性化につながるも
のと固く信ずる次第である。
(明治安田アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長)
- 2 -
(3) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
協会の動き
●各種研修の実施状況
○投資運用会員 会員代表者研修会を開催しました
平成 27 年1月 27 日に投資運用会員 会員代表者研
修会を開催しました。細溝清史金融庁長官を講師に迎
え、
「最近の金融行政について」をテーマに、金融機関
を取り巻く経済環境や金融・資本市場の活性化に向け
た金融行政の具体的取組み等についてご講演いただき
ました。
○平成 26 年度第2回 FM アナリスト研修を実施しました
平成 27 年2月 16 日に不動産系列会員向けFMアナ
リスト研修を「不動産市場の現状と見通し~追加金融
緩和後の市場をどうみるか~」というテーマで開催し
ました。三井住友トラスト基礎研究所
投資調査第2
部主任研究員 室剛朗氏を講師に迎え、平成 26 年 10
月を調査時点とする各セグメント別(オフィス、賃貸
住宅等)不動産マーケットの現状と将来予測を解説い
ただきました。
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(4) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
○個人情報の取扱いに関する研修会を実施しました
協会では投資信託協会との共催で、個人情報の取扱
いに関する研修会を毎年実施しています。本年度は、
平成 27 年2月 17 日に「金融分野における個人情報の
保護について」と題して、金融庁総務企画局企画課調
査室課長補佐 久冨麻都桂氏、同 山口紘一郎氏を講
師に迎え、金融分野における個人情報保護法制の枠組
み、制度の概要および予定されている金融庁ガイドラ
イン等の改正についてご講演いただきました。
- 4 -
(5) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
●大学における寄附講座実施状況について
協会では、大学生に対する資産運用についての啓蒙活動を推進していくため、平成 17 年度から投資
信託協会と共同で、アセットマネジメント・ビジネスの最先端に立つ実務家を講師に迎え、資産運用
に関する知識のみならずビジネスの実態に至るまで幅広い分野について講義を行う寄附講座を提供し
ています。
平成 27 年度は、早稲田大学、一橋大学、大阪大学、京都大学、神戸大学、名古屋大学、東北大学の
7大学において開設を予定しています。
講座設置年度
H27年度
講座開設時期
講座名
対象学生
担当教員
一橋大学
(商学部)
大阪大学
(経済学部)
神戸大学
(経済学部)
早稲田大学
(グローバル
エデュケー
ションセン
ター)
平成18年度~
平成19年度~
平成22年度~
平成17年度~
平成20年度~
平成24年度~
前 期
後 期
後 期
後 期
前
期
前
期
京都大学
(経済学部、
法学部)
名古屋大学
(経済学部)
東北大学
(経済学部)
平成26年度~
後
期
アセットマネ
ジメント論
アセットマネ
ジメントの理
論と実務
アセットマネ
ジメント(資
産運用)の理
論と実務
アセットマネ
ジメント(資
産運用)の世
界
アセットマネ
ジメントの実
務と法
アセットマネ
ジメント概論
アセットマネ
ジメント
商学部、経済
学部、法学部
3・4年の受
講希望者(大
学院生も可)
経済学部3・
4年の受講希
望者
経済学部経済
学科の2・
3・4年の受
講希望者
全学部、全学
年の受講希望
者(大学院生
も可)
経済学部、法
学部3・4年
の受講希望者
経済学部2・
3・4年の受
講希望者
経済学部3・
4年の受講希
望者
林 康史
一橋大学非常
勤講師(立正
大学経済学部
教授)
太田 亘
大学院経済学
研究科教授
中西 訓嗣
大学院経済学
研究科教授
田中 愛治
教授(グロー
バルエデュ
ケーションセ
ンター所長)
川北 英隆
大学院経営管
理研究部教授
前田 雅弘
大学院法学研
究科教授
木村 彰吾
大学院経済学
研究科教授
秋田 次郎
大学院経済学
研究科長・経
済学部長
- 5 -
(6) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
●苦情相談の状況(平成 26 年 12 月~平成 27 年2月)
(1)協会は、お客様等からの会員の行う業務に関する相談、苦情対応及びあっせん業務を、特定非
営利活動法人「証券・金融商品あっせん相談センター」
(FINMAC)に業務委託しています。
(2)平成 26 年 12 月~平成 27 年2月に FINMAC が対応した苦情・相談、あっせんは、苦情が6件、
相談が 35 件、あっせんが0件(表1)となっており、それぞれの具体的内容は表2、表3のよ
うになっています。
苦情・相談の状況(平成 26 年 12 月~27 年2月)
(表 1)受付状況
区
(単位:件)
分
苦
情
相
談
あっせん
合
(注)
・(
計
投資運用会員
2(
投資助言会員
7)
4( 10)
12( 29)
19( 79)
0(
0)
0(
14( 36)
1)
23( 90)
その他
0(
合
計
0)
6( 17)
4( 12)
35(120)
0(
0)
4( 12)
0(
1)
41(138)
)は平成 26 年4月からの累計(以下同じ)
。
・その他には、一般的な問合せや非会員に対する苦情・相談を記載(以下同じ)
。
・苦情とは、会員の行う業務に関し、会員に責任若しくは責務に基づく行為を求めるもの、又は、
損害が発生するとして賠償若しくは改善を求めるものなど、会員に不満足を表明するものをい
う(苦情及び紛争の解決のための業務委託等に関する規則第2条)。
(表 2)苦情の内容
区
投資運用会員
投資助言会員
その他
(1)勧誘・契約に関する苦情
1(
5)
1(
3)
0(
0)
2(
8)
(2)会費つり上げ
0(
0)
0(
0)
0(
0)
0(
0)
(3)運用、助言内容の不満
1(
1)
0(
1)
0(
0)
1(
2)
(4)契約不履行等
0(
0)
0(
1)
0(
0)
0(
1)
(5)その他の苦情
0(
1)
3(
5)
0(
0)
3(
6)
2(
7)
4( 10)
0(
0)
6( 17)
合
分
(単位:件)
計
合
(表 3)相談の内容
区
分
計
(単位:件)
投資運用会員
投資助言会員
その他
合計
(1)業者の内容
1(
1)
4( 10)
0(
0)
5( 11)
(2)途中解約
1(
9)
3( 14)
0(
1)
4( 24)
(3)運用、助言内容の相談
5(
5)
3( 15)
1(
2)
9( 22)
(4)その他の相談
5( 14)
9( 40)
3(
9)
17( 63)
12( 29)
19( 79)
4( 12)
35(120)
合
計
- 6 -
(7) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
●会員の動き(平成 26 年 12 月1日~平成 27 年2月 28 日)
協会の会員は、投資運用業のうち、① 投資一任業務(従来からの有価証券の一任運用、および
不動産等を原資産とする金融商品の一任業務)を行う会員、② ファンド運用業務(ベンチャー企
業育成や事業再生等を目的として組成されたファンドの運用を行う業務)を行う会員、投資助言・
代理業を行う会員で構成されています。
平成 27 年2月末現在の会員数は、次のとおりです。
会員数
投資運用会員
投資助言・代理会員
737
258
○入会会員一覧
・投資運用業者の入会
479
4件
業者名
協会入会日
Acadian Asset Management(Japan)
平26年12月25日
JAG インベストメントマネジメント株式会社
平27年 1月30日
DBJ アセットマネジメント株式会社
平27年 2月27日
三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社
平27年 2月27日
・投資助言・代理業者の入会
11 件
業者名
協会入会日
株式会社 SAIL
平26年12月 2日
TSM アセットマネジメント株式会社
平26年12月 5日
株式会社クラフト
平26年12月 5日
Stream Capital Partners Japan 株式会社
平26年12月15日
HJ アセット・マネージメント株式会社
平26年12月16日
農林中金バリューインベストメンツ株式会社
平26年12月19日
四季リサーチ株式会社
平26年12月22日
株式会社アリーナ・エフエックス
平26年12月26日
一般社団法人日本 FX 教育機構
平27年 1月30日
ポラリス・アドバイザーズ株式会社
平27年 2月17日
EXECUTIVE STAGE 株式会社
平27年 2月26日
○退会会員一覧(7社)
業者名
退会日
資格喪失理由
株式会社プランニングビジョン
平26年10月31日
投資助言・代理業登録の廃止
株式会社アルタビジネスコンサルタント
平26年10月31日
投資助言・代理業登録の廃止
株式会社京阪流通システムズ
平26年12月 2日
投資助言・代理業登録の廃止
アセットサイエンス株式会社
平26年12月16日
投資助言・代理業登録の廃止
池田
平26年12月26日
投資助言・代理業登録の廃止
プロトラスト株式会社
俊彦
平成27年1月31日
投資助言・代理業登録の廃止
グロブナー・ファンド・マネジメント・ジャパン・リミテッド
平成27年2月10日
投資運用業登録の廃止
※当協会ウェブサイトに最新の会員名一覧(電話番号入り)を掲載しています。
詳細につきましては、そちらをご覧ください。
URL: http://www.jiaa.or.jp/profile/kaiin.html
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(8) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
●会員の処分
協会は、定款第 14 条第1項第2号の規定に基づき、法令違反等の事実が認められた会員を、以下
のとおり処分しました。
・株式会社ライフスタイルインベストメント(会員番号 012-02601 号)
(1)処分の種類及び程度
過怠金の賦課 50 万円
会員権の停止 平成 27 年3月1日から3か月
(2)処分の対象となった事実
無登録で外国株式の募集の取扱いを行い、金銭の預託を受ける行為(金融商品取引法第 29
条違反)
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(9) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
統計数値で見る投資顧問業
日本投資顧問業協会では、四半期ごとに投資運用会員の契約資産に関する統計を作成し、協会のホー
ムページ(下記)で公開しています。今回掲載したデータ以外にも、多種の詳細なデータを公開し
ていますので、是非ご覧ください。
日本投資顧問業協会ホームページ統計資料:http://www.jiaa.or.jp/toukei/
1.契約資産残高は過去最高の 222 兆円
単位:兆円
契約資産残高
240
平成 26 年 12 月末時点
220
ファンド運用
200
不動産関連有価証券
180
海外顧客
160
年金以外(国内)
140
国内年金資金
222 兆 421 億円
120
100
80
60
40
20
0
※ 投資一任、投資助言、ファンドの契約資産の合計
※ 数値は、26 年 12 月末以外は全て3月末時点の残高(以下同様)
平成 26 年 12 月末の契約資産残高は、222 兆 421 億円となり、3四半期連続で過去最高を更新しま
した。平成 20 年秋のリーマンショック後、総じて厳しい市場環境が続いてきましたが、平成 24 年秋
以降の市場好転により増加傾向が継続しています。
契約資産の内訳を見てみると、国内年金資金の割合が 50%を超えており、当業界において年金資金
の存在が非常に大きいことが分かります。年金の資金は、公的年金(年金積立金管理運用独立行政法
人など)と私的年金(企業年金基金など)に分けることができますが、その残高推移は次ページのと
おりです。
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(10) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
単位:兆円
公的年金と私的年金の契約資産残高推移
90
公的年金
私的年金
80
70
60
50
40
30
20
10
0
公的年金の残高は、平成 22 年3月末(約 69 兆円)をピークに一時減少しましたが、平成 24 年3月
末以降増加に転じ、平成 26 年 12 月末の残高は 82 兆円となっています。
2.ラップ口座:契約残高、件数ともに過去最高を更新
ラップ口座の件数・金額の推移
金額:億円
件数
300,000
35,000
件数
250,000
30,000
金額
25,000
200,000
20,000
150,000
15,000
100,000
10,000
50,000
5,000
0
0
平成 26 年 12 月末のラップ口座の契約状況は、契約件数が 24 万 9,055 件、契約残高が3兆 1,280
億円となり、過去最高を更新しました。
- 10 -
(11) / 2015/04/27 15:48 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_02_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_協会の動き.docx
● 事業日誌
26.12.3
(平成 26 年 12 月1日~平成 27 年2月 28 日)
プレス発表
・日本版スチュワードシップ・コードの対応等に関するアンケートの結果について
12.10
プレス発表
・契約資産残高統計(平成 26 年9月末)
12.17
第 335 回理事会
(1)入会承認および退会等報告(入会3件、退会5件)
(2)その他報告
27.1.23
第 30 回業務委員会
(1)「会員の処分等に関する規則」の一部改正について
(2)「業務内容開示実施要領」の一部改正について
(3)「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)《コーポレートガバナンス・
コード原案》」に関する意見(案)について
(4)日本版スチュワードシップ・コードへの対応等に関するアンケートの結果について
(5)「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)に対するパブリックコ
メントの結果等について
(6)平成 26 年金融商品取引法等改正(6ヶ月以内施行)に係る政令・内閣府令案に対するパ
ブリックコメントの結果等について
(7)日本証券業協会平均単価検討会における「信用取引・デリバティブ取引に係る平均単価利
用に関する検討とりまとめ」について
(8)「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案」について
(9)金融審議会 「投資運用等に関するワーキング・グループ報告(案)」について
1.23
第 155 回自主規制委員会(書面)
・自主規制ルール遵守状況等調査票(助言)の集計結果について
1.27
投資運用会員
会員代表者研修会(於:東京証券会館)
・「最近の金融行政について」金融庁
・挨拶
1.28
岩間
細溝
清史長官
陽一郎会長
第 336 回理事会
(1)業務委員会委員長報告
(2)自主規制委員会委員長報告
(3)会員の処分等に関する規則の一部改正について
(4)業務内容開示実施要領の一部改正について
(5)自主規制ルール遵守状況等調査票(助言)の集計結果について
(6)入会承認および退会等報告(入会4件、退会4件、会員資格の変更2件)
(7)その他報告
2.16
平成 26 年度第2回FMアナリスト研修(於:東京証券会館)
2.17
個人情報の取扱いに関する研修会(於:東京証券会館)
・不動産市場の現状と見通し~追加金融緩和後の市場をどう見るか~
・金融分野における個人情報の保護について
2.25
第 337 回理事会
(1)入会承認および退会報告(入会4件・退会2件)
(2)会員の処分について
(3)その他報告
- 11 -
(12) / 2015/04/27 15:49 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_03_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_現状と課題.docx
「忠実義務」の物差し
一般社団法人 日本投資顧問業協会
前 調査役 大槻 幸孝
曖昧な義務
アセットマネジメントの業界における職業人生の過半をコンプライアンスに関わる業務に費やして
きた中、近時、投資運用業者に係る「忠実義務」について考えるところが多くなってきた。そこで、
この寄稿をもって協会調査役としての最後の仕事として、備忘録も兼ねて自己の考察及び私見につき、
思いつく限りにおいて述べさせて頂きたい。
忠実義務については、投資運用業に関するところ、
「権利者…のため忠実に…行わなければならない」
(法 42 条1項柱書)となっているが、同2項の「善良な管理者の注意」による義務(注意義務)に比
べると今一つパッとしたイメージが浮かんでこない。
「吾輩は猫である」の中でいうところの「誰も口
にせぬ者はないが、誰も見たものはない。誰も聞いた事はあるが、誰も遇つた者がない。
」類のものと
思われる。
そこで、当該義務については、学生時代の会社法(正確には旧商法第二編…と書くにつれ、随分と
歳食ったなぁと自覚させられる)の時間に、株式会社の取締役に係る「善管注意義務」と一緒に目に
した記憶があったため、多分、似たような定義なのだろうと考え、手元の会社法関連の書籍を何冊か
読んでみた。そうしたところ、
「
(旧商法)254 条3項、民法 644 条に定める善管義務を敷衍し、かつ、
一層明確にしたにとどまり、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したもの
「取締役・会社間の利害対立状況において私利を図らな
とは解することができない 1」という判例と、
い義務 2」という説明に行き着いた。
これら二つの考え方のうち、自己の職務上の体験に照らして考えると後者に近い感覚を持っている
が、忠実義務の内容が後者のような「利益相反防止義務」だけを指すのかというと、これも肌感覚な
がら違う気がする。さしあたって、
「顧客のために忠実に」
「顧客の利益に即した」
「顧客との信頼関係
を損なわない」と、当協会の「業務運営にあたり留意すべき基準について」の冒頭にて口を酸っぱく
して「顧客のため」を連呼していることもあり、少なくとも「顧客の利益を志向する」義務であるこ
とについては確からしい感覚を持ってきた。そういった中で、例えば、同ルールの中にある「…その
時点における諸般の状況を総合的に勘案のうえ、最も顧客の利益に資すると判断される相手方及び条
件による発注に努める」という最適執行に係る規定の「最も顧客の利益に資する」の部分が、自己の
職務上の経験に照らして抽象的かつ端的に、投資運用業者に係る忠実義務の在り方としてしっくりく
るものと考える。勿論、忠実義務のうち、利益相反防止義務のように明確に説明しうるものもあるが、
それが全部ではなく、それ以外にも「最も顧客の利益に資する」ことを志向していると考えられない
振る舞いというのは、やはり投資運用業者としての忠実義務の履行の在り方として相当性を欠くと思
われる。
1
2
最判昭和45年6月24日 民集 第24巻6号625頁 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55040
江頭 憲治郎『株式会社法(第5版)』 有斐閣,2014年
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(13) / 2015/04/27 15:49 (2015/04/27 15:40) / wn_15103510_03_os7 一般社団法人日本投資顧問業協会様_投資顧問第 78 号_現状と課題.docx
この考えを前提とするならば、投資運用業のうち「投資一任契約 3」を締結する者の例を考えると、
「損失負担の禁止 4」についても、忠実義務の視点の延長上で理解することもできると考える。
即ち、忠実義務下において、
「最も顧客の利益に資する」との判断に基づいて行われた結果について
は、仮に損失が生じたとしても投資運用業者に賠償を求められない、という見方である。顧客から投
資判断に係る権限を委ねられた投資運用業者においては、その職業人としての知見・経験に基づく幅
広い裁量の下、
「最も顧客の利益に資する」ための投資判断を行うところ 5 までが履行義務の内容 6 で
あり、
「仕事の完成」を目的とした請負契約(民法 633 条)の場合などとの根本的差異がここにあるも
のと考える。
(この考え方を、会社法の近年のテーマとしての「経営判断原則」に照らして、
「投資判
断原則」とでも呼称するのも一つの考え方と思われる。以下、この呼称を用いる。
)
忠実義務
損失負担の禁止
利益相反防止義務
投資判断原則
ここまで長々と述べたところを簡潔にまとめると、投資運用業者に課せられた忠実義務の履行につ
いての物差しを一言で表現するならば、顧客の為に「ベストを尽くしているか」ということに帰結す
るものと考える。
3
4
5
6
法2条8項12号ロ
法38条の2第2項 等
投資一任契約に係る継続的債務の性質から考えて、個別の金融商品の取引後、ポジションを解消するまでの間、保有資産についてモニタリ
ングを継続することは当然に「投資判断を行う」に含まれる
勿論、注意義務を履行する限りにおいて、という条件付ではある
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益々深い理解が要求される概念
忠実義務について、何故、今頃になってダラダラと考えるのかというと、ここ数年来の「スチュワー
ドシップ・コード」及び「コーポレートガバナンス・コード」において、受託者としての責任という
ものを理解する上で、投資運用業者である受任者としての忠実義務の在り方とともに、両コードにお
ける「対話(=Engagement)
」の相手方である発行会社側の取締役等との向き合い方を考えるとき、共
通の認識としての忠実義務というものが端緒となり得るのではないかと考えたためである。
投資運用業者が顧客との間で忠実義務を負うのと同様、株式会社の取締役等においても「株式会社
のため忠実にその職務を行わなければならない。7」ことが法令上要求されている。そして、今般の両
コードにおいては各々「顧客・受益者の投資リターン」及び「企業価値」の中長期的な向上を企図す
ることから、同じ方向を向いた対話が可能であると考えられる。こうした状況においては、共通言語
としての「忠実義務」を基礎として、互いを理解し、行動することが、目的達成を容易・確実なもの
にすると考える。
即ち、投資運用業者側が、自己の「顧客・受益者」に対する責任として、
「投資先の日本企業やその
事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な『目的をもった対話』
(エンゲージメント)などを通じ
て、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより…中長期的な投資リターンの拡大を図
る 8」ことが出来ているかということに対する評価の在り方と写し鏡の関係で、今度は、株式会社の
経営者側に対する関係においても、
「株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)をはじ
め、様々なステークホルダーに対する責務を負っている…こうした責務に関する説明責任を果たすこ
とを含め会社の意思決定の透明性・公正性を担保しつつ、これを前提とした会社の迅速・果断な意思
決定を促すことを通じて…会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る」ことが出来てい
るかを評価することとなるものと考える。
もっとも、両者とも、その基礎となるものは「委任」等に基づく契約関係によるのであるから「信
頼」より他に拠り所が無い。開示された「結果」を評価の重要な根拠としつつも、そこに至る職務に
おいて「忠実義務を負うべき相手の利益に資する」ことを志向し続けたかが常に評価され続け、委ね
る側が「任せてられない(信頼関係が存続し得なくなった)
」と判断すれば「はい、それまでよ(投資
一任契約の解除、取締役の解任)
」ということとなる。
7
8
会社法355条
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~
http://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf
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なるほど、株式会社における忠実義務とはかくも厳しいものか、と思いつつ、これまた写し鏡の関
係で、投資運用業者に課せられた義務でもあることにつき、武者震いのする思いである。
余論ながら、
「スチュワードシップ・コード」における「スチュワードシップ」という概念そのもの
をより本質的に理解しようと欲するならば、元来の発祥地であるイギリスの文化的素地、単刀直入に
言うとキリスト教等 9 の理解・知識があったらなぁ、という無いものねだりと不勉強への反省がある。
とはいうものの、今般のコード制定がイギリス的素養をそっくり真似て一挙手一投足、まるで影のよ
うに成りきれというものでもないし、この御時世に今更鹿鳴館というのも興醒めに思う。そもそもこ
ちらはヨーロッパではないのだから、こちらができる有りったけのもので真摯に取り組むほかない。
どうせこちらは日本なのだから、彼らに無くて、こちらに有るものとして「中長期的に成長させる」
という意識は、農耕牧畜文明地域であるこちらの専売特許であり、これを育てることで十分に太刀打
ちできると思われる。
再整理
忠実義務に関するおさらい。表にすると、下記の通りになる。
投資運用業者
(投資一任業者)
株式会社の
取締役
投資一任契約(委任10)
基礎的関係(性質)
選任(委任11)
忠実義務
負うべき義務
忠実義務
顧客・受益者の中長期的な
リターンのために
ベストを尽くしているか
負うべき義務
の評価の在り方
中長期的な
企業価値の向上のために
ベストを尽くしているか
有り
利益相反防止義務
有り
損失の負担の禁止
(投資判断原則)
責任の限定
経営判断原則
顧客・受益者の中長期的な
リターンの拡大
目指すもの
中長期的な企業価値の向上
スチュワードシップ・コード
今般のテーマ
コーポレートガバナンス・コード
上記のように並べて整理すると、投資運用業と顧客で形成される世界と、株式会社を取り巻く世界
とを相似の関係で見渡すことができ、幾何的に美しい感覚が得られた。
9
10
11
例 ペトロの手紙1 第4章10 あなたがたは、それぞれ賜物をいただいているのだから、神のさまざまな恵みの良き管理人として、それ
をお互のために役立てるべきである。
「投資顧問業者の注意義務について」 P.3 平成13年9月 社団法人 日本証券投資顧問業協会
投資顧問業者の注意義務研究会 http://www.jiaa.or.jp/syuppan/pdf/komon1023.pdf
会社法330条
(株式会社と役員等との関係)
第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
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考察の終わりに
振り返ってみると、本稿冒頭にて述べた通り、忠実義務については、注意義務が持つメジャー感に
比べると、かなり影の薄い概念であったように思われる。それが何故かと考えてみると、後者に比べ
て、前者に係る規範に直面する機会(忠実義務に基づいて行動せよという状況に遭遇する又は忠実義
務を意識する機会)が少ないことに起因するものと考える。
ただ、現在においては、忠実義務を考え、これを実践するにあたり、不慣れながら一歩ずつ進み続
けることで「経験」を積み重ねることが必要と思われる。
最後に、今後の自分自身への問いかけとして、次のフレーズを胸に、当該課題に取り組みたいと考
える。
「 どんな困難もたちどころに吹き飛ばしてしまう、秘密の呪文を知っている。鏡の前に立ち、自分
自身に向かってこう唱えるんだ。なぜベストを尽くさないのか。12 」
---
Why don’t you do your best!
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(なお、本稿の意見にわたる部分は、筆者の個人的な見解である)
12
上田 次郎『日本科学技術大学教授上田次郎のなぜベストを尽くさないのか』 学習研究社,2004年
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投 資 顧 問 No.78 2015
平成27年4月25日発行
編集兼発行人
宮保 貞
発
一般社団法人 日本投資顧問業協会
行
所
〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町1-5-8
東京証券会館7階
電 話 03(3663)0505(代表)
FAX 03(3663)0510
http://www.jiaa.or.jp
制
作
株式会社プロネクサス
〒105-0022
東京都港区海岸1-2-20
汐留ビルディング
一般社団法人
日本投資顧問業協会
J A PA N I N V E S T M E N T A DV I S E R S A S S O C I AT I O N
http://www.jiaa.or.jp