コンバータの接地(あるいは救いの哲学!)

コンバータの接地(あるいは救いの哲学!)
Q.最近、ADCのデジタル・グラウンド・ピンを
システムのアナログ・グラウンドに接続するようにアドバイスされましたが、
信じられません。間違いではありませんか?
筆者紹介:
James Bryant は、
1982 年 からア ナ ログ・
A. 間違いではありません。
アナログ(AGND)とデジタ
ル(DGND)のグラウンド接
デバイセズの欧州地区で
続が別々にあるデータ・コン
バータ(ADC と DAC)の接続
では、これが唯一の安全な方
ジャを担当しています。
アプリケーション・マネー
リーズ大学で物理学と哲
学の学位を取得し、さら
法です。びっくりされたのは、
いわゆる「範疇的誤謬」とい
に C.Eng.、Eur.Eng.、
MIEE、FBIS の資格があ
う哲学的な誤りによるもので
ります。エンジニアリン
す。幸いなことに、電子工学と
同様、哲学についても若干の
知識がありますので、ちょっ
グに情熱を傾けるかたわ
ら、アマチュア無線家で
も あ り、コ ー ル サ イ ン
と説明させてください。
範疇的誤謬は、私たちが 2 つ
の対象の名前が同じであったり、あるいは似ている
時など、この 2 つを同じだとか同じ種類のものだと
考えるときに陥ります。ここでは「デジタル・グラ
ウンド」という名前です。デジタル・グラウンドは、
システムのデジタル回路のグラウンド電流を運ぶ
システム・グラウンドの一部です。しかし、コンバー
タのデジタル・グラウンド(DGND)は、コンバー
G4CLFを持っています。
い難いと申し上げましたが、コンバータのデータ
シートで AGND と DGND をそれぞれシステムのア
ナログとデジタル・グラウンドに接続するように
推奨しているものがあります。データシートにそう
書いてあったら、これは間違いですから無視してく
ださい。[2]
さらに、システムのアナログ・グラウンドとデジタ
タのデジタル回路からの電源電流と、
そのデジタル・ ル・グラウンドのスター結線をデータ・コンバー
インターフェースからのリターン電流を流すピン タ上に置くことはあまりお勧めできません。スター
結線は電源の近くに配置してください。
グラウンド・
です。
この 2 つは別物です。コンバータの DGND ピンの最 インピーダンスが十分に低い場合は、この配置に
適な接続先は、AGND ピン(つまり、同じ IC パッケー よってコンバータのデジタル・インターフェース
ジ上の、まったく同じ電位)への接続です。これに のノイズ耐性が若干低下しますが、これは大した問
よって、チップ内の 2 つのグラウンド間の容量性ク
ロストークが最小になり、その結果、コンバータ出
力のロジック関連のノイズも最小限に抑えられま
す。もちろん、可能ならば、コンバータ IC では内部
アナログ/デジタル・グラウンド共通のピン 1 つに
することが望ましいのですが、デジタル・グラウン
ド電流がピン・インピーダンスに流れて電圧降下
が生じるために多くの場合はできません。
このため、
AGND ピンと DGND ピンを分離することが重要に
なります。
ただし、この接続はパッケージ上 [1] のみにしてくだ
さい。以前にもデータシートは理想的なものとは言
題ではありません。むしろ、これによってシステム
のアナログ部のノイズ性能が大幅に改善されると
いうことのほうがずっと重要です。
[1]
インピーダンスは可能な限り小さくしてください。抵抗、インダク
この記事に関する
ご意見・ご感想は、
[email protected]
までお寄せください。
その他のRAQについては、
www.analog.com/jp/RAQ
をご覧ください。
タ、フェライト・ビーズで AGND と DGND を分離しないでください。
[2]
このルールには唯一の例外があります。
グラウンド・ノイズの詳細については、
下記 Web サイトをご覧ください。
www.analog.com/jp/RAQ/Issue9/info
[1]
フランシスコ・デ・サルヴァは 1775 年にスペインで電気通信を提案しました。しかし、このアイデアは 4 月 18 日の時点でまだマサチューセッツまで到達していませんでした。
[2]
ポール・リヴィアの本職は銀細工師でした。その作品は、米国のボストン美術館に展示されています。
[3]
デジタル・アイソレータは、デバイスからわずか 5mm のワイヤに 1MHz で 500A の電流が流れても影響を受けません。
www.analog.com/jp