デジタル処理は必ずしも万能ではない (あるいは何がアナログ・エンジニア

デジタル処理は必ずしも万能ではない
(あるいは何がアナログ・エンジニアを笑わせたのか)
Q.デジタル・システムの方が安くて強力なのに、なぜアナログ信号処理
を推奨するのでしょうか?
A. 場合によっては、アナログ信号
筆者紹介:
James Bryant は、
1982 年 からア ナ ログ・
デバイセズの欧州地区で
処理のほうが安価で、しかもデジタ
ル処理ではできないことも可能な場
アプリケーション・マネー
合があるからです。アナログ信号処
理回路の売上を見ても、このことが
わかります。
ジャを担当しています。
リーズ大学で物理学と哲
学の学位を取得し、さら
ロンドンのサウス・ケンジントンに
ある科学博物館は、ビクトリア女王
の時代に設立されました。この博物
に C.Eng.、Eur.Eng.、
MIEE、FBIS の資格があ
ります。エンジニアリン
館は想像力豊かに運営され、一見の
価値がありますが、そのユーモアの
センスについてはあまり知られてい
ません。最近、私はそこのコンピュータ・サイエン
スの展示エリアを訪ね、笑いに笑いました。しかも
大声で笑ってしまったので、あやうく挙動不審でつ
かまるところでした。私が笑いをこらえ切れなかっ
たのは、
「時代遅れのアナログ・コンピューティン
グ技術」というラベルの貼られたガラス・ケースの
中になんと AD534 アナログ乗算器を見つけたから
でした。アナログ・デバイセズはこの製品を 30 年
以上も前からずっと製造しており、今も相当な販売
収益を上げているのです。
実際、アナログのほうがデジタルよりも明らかに勝
る処理がいくつもあります。デジタル乗算は簡単で
安価ですが、元のデータおよび必要とする出力デー
タのどちらもアナログの場合、アナログからデジタ
ルに変換し、さらにその逆に変換するための A/D コ
ンバータ(ADC)と D/A コンバータ(DAC)が必要
となるため、コストと複雑さはアナログ乗算器をは
グに情熱を傾けるかたわ
ら、アマチュア無線家で
場合は、負荷の電圧と電流をオーバーサンプリング
して実際の電力を求めなければならず、その結果、
コンバータとプロセッサの仕事が増えます。負荷に
含まれる電圧と電流で駆動するアナログ乗算器な
ら、
瞬時電力に比例した出力が得られ、
そこからゆっ
くり積分計算したりサンプリングすることができ
G4CLFを持っています。
ます。
たとえ、対象が複雑な波形の実効値(rms)電圧のみ
の場合でも、アナログの rms 計算は数ギガヘルツで
行われ、オーバーサンプリングするデジタル・シス
テムに比べて 100 倍も高速です。
さらに、
最高分解能のADCでさえ、
そのダイナミック・
レンジはアナログ・ログアンプに比べて 20dB ∼
30dB ほど小さいといえます。つまり、アナログ信
号処理のほうがデジタルに比べてコストと性能では
るかに勝っている領域は、まだいくつもあるのです。
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その他のRAQについては、
るかに上回ることがあります。また、高速システム
では、デジタル伝搬遅延が大きくなり過ぎることも
あります。
さらに、たとえ最終的にはデジタル・データが必要
な場合でも、ADC の前にアナログ信号を処理する
ほうが効率的なこともあります。たとえば AC 電力
測定の場合です。測定する信号が単純な 50 Hz ない
し 60Hz のサイン波で、負荷が抵抗性の場合なら、
測定は簡単です。しかし、信号がもっと複雑だった
り、リアクタンスな負荷であったり、周波数が高い
も あ り、コ ー ル サ イ ン
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をご覧ください。
アナログ処理の詳細については、
下記 Web サイトをご覧ください。
www.analog.com/jp/RAQ/Issue10/info
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