経営革新承認 企業訪問 No.16

経営革新承認 ドライアイス筑豊
有限会社
企業訪問 No.16
ニッチな洗浄技術で業容拡大目指す
1982 年(昭 57)の創業以来、冷菓・食品関係の顧客や冠婚葬祭場にドライアイスを販売してきた
ドライアイス筑豊。だが 2014 年の8月に就任した井上新社長は大きな不安を感じていた。景気の波
をほとんど受けない安定業種ではあるが、大きな発展もなかった。そこに思わぬ事が起きた。主要納
入先の生活協同組合(生協)がドライアイスの運用方法を変更し、納入がなくなった。井上社長は「廃
業を考えた」ほど追い込まれたが「会社をたたむくらいなら新しいことをやってみよう」と考え直した。
その新たな挑戦が、九州ではほとんど知られていないドライアイス洗浄だった。
水や薬品を使用しない洗浄
ドライアイス洗浄はブラスト力ではなく、ドライ
競合するのは薬液、ウオータージェット、研磨。
アイスの性質を利用して汚れを剥離する。マイナス
それぞれに長所短所があるため洗浄箇所・製品に
78・9度Cでの熱収縮とドライアイス昇華時の体積
よって使い分けることですみ分けができると考えて
膨張効果を利用する。微粉末状のドライアイスは柔
いる。井上社長は「薬剤を使うと今まで最大1日程
らかいため研磨力が弱く、素材を傷つけない。また
度かかっていた作業が数時間で済む。急ぎの作業に
直接固体から気体へと昇華するためぬれない。この
向いている」と見ている。
ため水洗いできない素材に向いている。ほかにも圧
ランニング面から使用するドライアイスのコスト
縮空気がドライアイスを溝などの奥まで送り込み、 が課題だが「作業時間の短縮による人件費の削減で
剥離するため手や器具が届きにくい場所まで洗浄で
カバーできる」
という。まずはニッチな分野でのニー
きるのが特徴だ。
ズを探っていく。
プラスチック射出成形機のスクリュウに付着した炭化物
洗 浄 前
12
BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2015.3
洗 浄 後
新分野へ挑戦
井上社長の父で創業者の井上武人会長は、創業以
の井上社長が悩んでい
来筑豊地域でドライアイスの販売を手がけ、飯塚で
た時にたまたま目にし
は知られた会社だった。生協や冠婚葬祭向けの特定
たのが、中部地区で浸
な事業のため、バブル経済やリーマン・ショックの
透しているドライアイ
影響もほとんど受けなかったという。だが生協のド
ス洗浄だった。
ライアイスの
自動車部品会社が集
運用方法変更
積する同地区で、ぬれ
や技術進歩か
ずに強力洗浄できるこ
らすると「10
の方式の存在を知った。
年 20 年 後 は
調べてみると九州では
先細り。新し
ほとんど存在すら知ら
い何かに挑戦
れていない。
「これだ!」
。早速、独・グリーンテッ
エンジンルームの洗浄も可能
し な ければ」 ク製品の国内販売代理店グリーンテックジャパン
車両に洗浄装置(右下)とコンプレッサーを
搭載して出張作業する
と考えた。就 (津市)に連絡を取り、14 年 11 月に洗浄機を購入
任したばかり
した。
九州一円に出張
購入に先立ち、飯塚商工会議所に経営相談したとこ
が低いが「技術を高め、近い将来九州各県に支店や取
ろ経営革新計画の存在を聞いた。
「最初はよく分からな
次店を置きたい」
と意欲をみせる。その熱い意気込みは、
かった。しかし経営革新塾に入り、講師の方にいろい
ドライアイスを使っても冷めそうにない。
ろと指導していただいたことで見えてきた」
と感謝する。
承認計画「ドライアイス洗浄サービスの展開」では、
洗浄機とコンプレッサーを車両に搭載して、九州一円
に出張する。まずは存在を知ってもらおうと、出血覚
悟の無料デモンストレーションを福岡県内で始め、最
近ようやく受注に成功した。九州ではまだまだ認知度
ドライアイス筑豊のキャラクター
企業概要
井上 新 社長
お問い合わせ
企 業 名
代 表 者
所 在 地
T E L
F A X
E メール
U R L
社 員 数
事業内容
ドライアイス筑豊 有限会社
井上 新
福岡県飯塚市片島1の5の 22
0948- 24- 1683
0948- 24- 8436
[email protected]
http://www.dryice-chikuho.co.jp/
3人
ドライアイス関連商品販売、洗浄サービス
経営革新センター TEL:092-622-5432
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