■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 【スペシャルレポート】 『ユーロの反発と、米当局の「strong dollar 政策」の変化』 株式 会社CKキ ャピタル 代表取 締役CEO 西原 宏一 (2015 年 3 月 26 日(木 )) ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 1月のREPORTでご紹介したとおり、今年の主役はなんといってもユーロ。そのユーロは多 くの参加者が想定していた以上のSPEEDで急落。2015年初頭のユーロドルは1.21021ドル。 それが2ヶ月強であっという間に1.0462ドルへ暴落。この1.0500ドルレベルというのは多く のGLOBAL BANKの今年のユーロドルの下値めど。それがあっという間に到達したため、多く の欧米銀行はユーロドルのめどを下方修正しているところ。 こうしたドル急騰劇(ユーロドル急落劇)の中で気をつけたいのが、現在通貨高をいっ てに引きうけている米国。前REPORTでも触れましたが、米国が通貨高を牽制するようなコ メントがでればシナリオが大きくかわるため要注意。そして今月に入って、米当局から気 になるコメントがいくつか発せられている。 1)AIIBと米国 米当局からのコメントは後述に譲るが、今月に入ってマーケット参加者の話題をさらっ ている金融機関についてまずご紹介させていただく。 それはAIIB。AIIB(アジアインフラ投資銀行)とは中国主導の国際金融機関で、予想に 反して、多くの国が参加を表明している。イギリスが手をあげてから、欧州諸国が参加を 表明。オセアニア諸国も追随模様。ここにきてアメリカも参加をほのめかしているが、報 道によれば、イギリスはAIIBに参加することを、事前にアメリカに伝えなかった模様。こ れではアメリカの面目はまるつぶれ。こうした一連の流れが、アメリカの「strong dollar 政策」に変化を起こす可能性があるとの指摘もでている。 ルー米財務長官がコメントしているように、現在米経済は好調。懸念は日欧をはじめと する周辺国の経済状況の悪化。そこである程度のドル高(ユーロ安、円安)を容認しても、 日欧の経済を支えようという狙いが日欧米にあったものと思われる。しかし、今回欧州が AIIBに参加を表明し、このことを米国はこころよく思っていないはずである。このAIIBに 関する報道が即為替に影響がでるとはいわないが、中長期では米国のstrong dollar政策に 影響を及ぼす可能性もあるため、マーケット参加者はAIIBの行方に注目している。 2)強い米経済とstrong dollar政策の行方 ~米当局からのドル高懸念コメント~ 一方、マーケット参加者の想定を大きく超えて、2か月で1700PIPS急落したユーロドル。 ここにきて米当局からドル高牽制コメントが目立ってきた。 まず、ファーマン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長のコメント。3月10日の講演で 「国外経済の成長減速に一段と強いドル(stronger dollar)が加わり、現在の米国の輸出に 向かい風を吹き付けていることに疑いの余地はない。この向かい風は国内総生産(GDP)全 般にも吹き付けている」(出所:Bloomberg) このコメントから、あきらかにわかることは米国の「strong dollar政策」は強い米経済 があってこそ。米経済が強いからこその「strong dollar政策」であり、米経済が弱体化す るようでは方向を変換せざるを得ない。しかし、その後ルー財務長官は「強いドルは米国 にとってプラスであり、力強い米国経済を反映している」と発言し、「strong dollar政策」 に変更がないとコメント。ここから読み取れるのは、これから金利の正常化に向かう米国 はある程度のドル高は容認するが輸出が急激に減速するようでは困るということ。 つまり、ここ数ヶ月のドル高、ユーロ安は米企業が対応できないほどの SPEEDであり、こ のペースで進むようであれば、介在せざるを得ないということである。前述のように今年 に入ってのユーロドルの急落は凄まじいものがあり、確かに2015年に入ってからのSPEED で急落すれば、あっという間にparityはもとより0.9000ドルまで到達してしまう。 3)1.0500ドルに到達後のユーロドル こうした中、一時1.0500ドルブレイクまで急落していたユーロドルは調整中。 ユーロドル(月足) ※ Bollinger band ミドルラ イン: 200SMA 上記ユーロドルの月足チャートでは、上限のバンドでtopoutし反落。そして下限のバンド で反発中。下限のバンドをチェックすると1.0426ドルで、この局面の安値は1.0462ドルと、 このBollinger bandの下限で反発していることになる。このように長期のテクニカルでは、 ユーロドルはいったんサポートに到達。 もちろんGrexitが現実化する可能性もあり、まだユーロを取り巻く環境は不安定だが、 欧米勢にとってはイースターホリデーも近いことから、彼らからの利益確定によるユーロ の買い戻しも目立っていて、相場はいったん調整に入ったと想定している。 多くのヘッジファンドにとっても、先週からのユーロドルの反発は好都合。米当局のド ル高牽制コメントを無視して、ユーロドルを売り進めば、「strong dollar政策」の変更の 可能性が高まり、今年の彼らの主要な収益源であるユーロドル続落シナリオが根底から崩 れてしまう。イースターホリデーを控えて、彼らはユーロドルの利益確定をある程度終え ており、現状のようにユーロが大きく反発する局面では、再びユーロドルのショートを構 築するいい機会となる。 わずかな期間で1.05まで急落したユーロドル。本邦個人投資家の皆さんも、今年はユー ロドルの戻り売りを繰り返して、収益を上げられた方も多いと思うが、このステージはい ったん利益確定して、ユーロドルが再び反落するチャンスを狙いたいところ。
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