為替相場制度

為替相場制度の理論と実証
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為替制度の分類
自由変動
変
動
為
替
制
度
ソフト・ペッグ
管
理
フ
ロ
ー
ト
制
度
B
B
C
ル
ー
ル
ハード・ペッグ
固定為替制度
バ
ス
ケ
ッ
ト
・
ペ
ッ
グ
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ド
ル
・
ペ
ッ
グ
カ
レ
ン
シ
ー
・
ボ
ー
ド
ド通
ル貨
化同
盟
2
国際金融のトリレンマ
アメリカ
ユーロ圏
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出典:小川英治「東アジアの通貨事情が見える「国際金融のトリレンマ」入門 」『プレジデント』2011.6.13号
両極の解 と 中間的為替制度
• 両極の解(two corner solutions):自由変動為替
相場制度(free float)または厳格な固定為替相
場制度(hard peg)
• 中間的為替制度(soft peg) :伝統的な固定為替
相場制度、管理フロート制度
WilliamsonのBBC(Basket, Band, Crawling)
ルール
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為替相場制度採用数の推移
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両極の為替制度 vs. 中間的為替制度
• 為替相場の変動性・固定性には、様々なメリッ
ト・デメリットによるトレード・オフ関係がある。最
適な為替制度が両極(corner solution)にあると
は一概には言えない。
• どの為替制度が良いかは、ケース・バイ・ケース。
• 中間的為替制度より両極の為替制度の方が望
ましいという理論的根拠はない。
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固定為替相場制度のメリット
• 為替相場の安定性
• インフレ的金融政策の抑制
• 金融政策に対する信認
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為替相場の安定性(1)
• 企業が為替リスクに直面している。
• 企業の利潤
  SP Q  C(Q)
*
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S  E  S  , S  V S 
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為替相場の安定性(2)
利潤の期待効用
E U    E     V  
12
 S P Q  C(Q)   S P Q
*
*
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為替相場の安定性(3)
利潤の期待効用最大化
S P  C(Q)   S P
*
*
⇒生産の限界費用に企業の危険負担費用が上乗
せされたものと価格が等しい生産水準で最適化
される。生産量が減少する。
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インフレ的金融政策の抑制
• 政府にインフレを発生させる誘引(通貨発行利
益、インフレ税)がある。
• 固定相場制度下において、金融政策の自由度
を失うことによってその誘引を抑制する。
• インフレ抑制的な金融政策を行う外国の通貨に
自国通貨を固定することによって、自国でイン
フレ抑制。
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図4-4:政府収入に占める通貨発行利益の比率とインフレ率
インフレ率
%
50
40
30
20
10
日本
アメリカ
0
0
5
10
15
20
%
30
25
政府収入に占める通貨発行利益の比率
(資料)Cukierman(1992)pp48-49.
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金融政策に対する信認
• インフレ抑制的な金融政策スタンスをもつ外国
の通貨に自国通貨を固定することによって、金
融政策の自由度に縛りをかけ、民間経済主体
による金融政策に対する信認を高める。(インフ
レ抑制の名声の輸入)
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変動為替相場制度のメリット
• 国際収支調整の費用
• 金融政策の自由度
• 安定的投機
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国際収支調整の費用
• 固定為替相場制度下における国際収支調整の
費用=赤字の場合には失業の増大
• 変動為替相場制度下における国際収支調整の
費用=為替相場の調整
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金融政策の自由度
• 変動相場制度下においては、金融政策の自由度が高
まる。
• 外国の金融引締めによって外国利子率が上昇すると、
資本が自国から外国へ流出する。自国通貨に対して
減価圧力が作用する。
• 変動相場制度下では、貨幣供給を管理可能。
• 固定相場制度下では、為替介入によって貨幣供給が
減少。自国でも金融引締め。
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安定的投機
• Friedman:投機の自然淘汰説
ファンダメンタルズを知らない投機家は市場から
排除される。
結果として、ファンダメンタルズを知っている投機
家のみが市場に残る。
投機は為替相場をファンダメンタルズに向かっ
て安定化させるように作用する。
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投機は本当に安定的か?
• バブルの発生
• 情報の不完全性⇒群衆行動
• 合理的予想を持つ投機家vs.ノイズ・トレーダ
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固定為替相場制、カレンシー・ボード、ドル化、
通貨同盟
• 厳格な固定相場制度のメリット
①制度の信認
②金利のリスク・プレミアムの軽減
• 厳格な固定相場制度のデメリット
①為替相場以外による調整
②国内の中央銀行(最後の貸し手)の不在
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固定為替相場と最適通貨圏
•
•
•
•
供給ショックの非対称性
生産要素の移動
経済の開放度
財政移転
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固定相場制vs.管理フロート制
•
•
•
•
制度の透明性とアカウンタビリティ
立証性
信認⇒ハネムーン効果
介入の効果や制度の維持のための裁量と曖
昧さ
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為替相場制度に関する実証分析
• 各国が採用している為替相場制度の分類は、IMFによる分類
があるが、実際にはIMFの分類とは異なる為替相場政策を
行っている場合がある。
• そのため、実際の為替相場政策を考察するためには、実証分
析が必要。
• 分析手法:Frankel and Wei (1994)
SFrをニュメレールとして各国為替相場を算出し、その変化率
をUS$と日本円とDMなどに回帰することによって、主要国通貨
の係数を推計し、それぞれの主要国通貨との連動性を分析。
S
USD
YEN
DM
 ln
 0  1 ln
 2 ln
 3 ln
SFr
SFr
SFr
SFr
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Frankel and Weiの実証分析
表11-6:Frankel and Wei (1994)の実証結果(タイバーツの場合1991-1992)
モデル
独マルク
豪ドル
NZドル
定数項
米ドル
日本円
-0.0001
0.82**
0.12**
(0.0002)
(0.01)
(0.02)
-0.0002
0.81**
0.12**
0.07**
-0.01
0.01
(0.0002)
(0.02)
(0.02)
(0.03)
(0.02)
(0.02)
R2
D.W.
0.99
2.61
0.99
2.70
I
II
注:**は99%水準で統計的に有意を表す。括弧内は標準偏差。
出典:Frankel and Wei (1994), “Yen Bloc or Dollar Bloc? East Asian Exchange Rate Policies,” T. Ito and A Kruger eds, Macroeconomic
Linkage, Savings, Exchange Rates, and Capital Flows, NBER East Asia Seminar on Economics, Vol.3, The University of Chicago
Press, 1994, p.306
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Ogawa and Yoshimi (2007)の分析結果:
Chinese yuan
U S dollar
1999 1.0002
0.0004
2000 1.0001
0.0006
2001 1.0002
0.0005
2002 1.0004
0.0002
2003 1.0000
0.0002
2004 1.0003
0.0002
2005 0.9399
0.0169
2006 0.9797
0.0107
C hinese yuan
***
***
***
***
***
***
***
***
euro
0.0006
0.0012
0.0000
0.0011
-0.0007
0.0009
-0.0005
0.0007
0.0002
0.0005
-0.0004
0.0006
0.0235
0.0532
0.0231
0.0303
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Japanese yen
-0.0002
0.0002
-0.0002
0.0004
0.0000
0.0004
-0.0004 *
0.0002
0.0002
0.0002
-0.0001
0.0002
0.0728 ***
0.0180
-0.0002
0.0105
Adj.R2
1.000
1.000
1.000
1.000
1.000
1.000
0.960
0.984
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Ogawa and Yoshimi (2007)の分析結果:
Singapore dollar
Singapore dollar U S dollar
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
0.8045
0.0380
0.8230
0.0285
0.7645
0.0301
0.6783
0.0255
0.6455
0.0288
0.5782
0.0228
0.5586
0.0254
0.5948
0.0268
***
***
***
***
***
***
***
***
euro
0.3951
0.1194
0.0753
0.0548
0.0348
0.0572
-0.0155
0.0739
0.2198
0.0613
0.1606
0.0620
0.1405
0.0800
0.2459
0.0758
***
***
***
*
***
MBA国際金融2015
Japanese yen
0.1226 ***
0.0221
0.1392 ***
0.0209
0.2188 ***
0.0254
0.2933 ***
0.0223
0.2388 ***
0.0271
0.2730 ***
0.0207
0.3312 ***
0.0270
0.3105 ***
0.0263
Adj.R2
0.789
0.910
0.880
0.875
0.882
0.910
0.870
0.875
25