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駿河湾付近に発生する収束線発生時
の気象条件に関する事例解析
指導教員
轡田 邦夫 教授
5AOG4209 伊藤 寛悟
収束線について
静岡県周辺地域で晴天が期待される中、東部や伊豆地方で急に天気が崩れ
ることがある。その場合に収束線が発生。
大陸から吹き出した風が中部山脈にぶつかり
山越えできない気流が鞍部を迂回する結果、
関東を回り込む気流と若狭湾から伊勢湾を通過
し遠州灘に向かう気流が駿河湾付近に収束線を
形成する。
岩瀬(1985)
収束線は秋から春にかけて発生し、
特に県東部や伊豆地方にかけて降水をもたら
すことがある。 佐々木(1997)
収束線発生時の地上風の例(河村 1966)
収束線は御前崎~石廊崎間において
の発生が多く、特に収束線の東側で天
気が崩れることが多い。収束線による
降水は1mm 程度がほとんどだが時と
して10mmを超えることもある。
斎藤(2007)
駿河湾収束線の例(安井ほか 1982)
目的&背景
過去の研究より収束線の発生時期や要因は明らかになっている
が、収束線発生時の降水について指摘した研究は少ない。斎藤
(2007)では、収束線発生時の降水の有無による気象条件の分類
がなされたがそれらの要因が明らかになったとは言い難い。
そこで
本研究では収束線が最も多く発生する駿河湾内におい
て、収束線発生時期の再定義を行い、
降水の有無による周辺地域の気象条件の相違に注目
して解析を行った。
使用データ
・AMeDAS
「地域気象観測システム」
風向、風速、降水量、気温、日照
時間の1時間毎のデータを使用。
・気象台・測候所による
地上気象観測
海面気圧データの1時間毎の
データを使用。
期間 1982年~2007年までの26年間
使用範囲は東北地方から近畿地方ま
での観測点
アメダス観測点
気象台・測候所
解析方法
駿河湾を挟む3組の測点
静岡~三島、牧ノ原~松崎、御前崎~石廊崎間において
・風向が同時に向かい合い、それぞれの測点間で
求めた収束・発散場の少なくとも1組以上が収束
場であり、2時間以上継続した場合に1つのイベン
トとして定義した。
本研究では最も降水となる割合の高い、
収束場が3σ を超えるような強収束の場合
を抽出して解析を行った。
風向
・東側で北東~南東、西側で南西~北西の場
合に向かい合ったとする。
(静岡~三島間は東側で、北北東~東南東、
西側で南南西~西南西)
収束・発散量
W
Wy
Wx
2測点の風成分を測線方向に座標変換。
U=Wxcosθ+Wysinθ
Wy
W
2測点間の収束・発散場は以下で与えた。
divW=(Ue-Uw)/L
U
θ
正なら発散場、負なら収束場
Uw
Wx
Ue
L
4
静岡~三島
牧ノ原~松崎
御前崎~石廊崎
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
3月/1
3月/1
3月/2
3月/2
3月/3
3測線における収束・発散場
3月/3
3月/4
100
・調査期間26年間で収束線は
352回発生し、発生時期は11~
3月(寒候期)に多く特に12月に
最多となっている。
80
60
40
20
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
収束線月別発生回数
月
5
・3σを超えるような強収束の場合
のイベントは12事例で寒候期、特
に12月に多く観測された。
4
12事例中
降水あり
降水なし
3
2
5 事例
7 事例
1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
収束線月別発生回数
10
11
12 月
(3σ)
降水の有無の判定は、静岡県中部~東
部のアメダス観測所で降水が観測された
場合に降水有りと判断。
収束線発生時の曇天率
収束線発生時の平均降水量
県内12観測点で収束線が最も多く発生する寒候期の日照時間の平年値を求め、それ
を上回ったら晴天、下回ったら曇天として、収束線発生時の曇天率を求めた。
曇天率は静岡県西部で20%~40%で東に向かうにつれて50%~70%と高くな
り、御殿場と松崎が最も高い。収束線に伴う降水量は県東部から神奈川県
にかけて多く、曇天率が高い地域と一致している。
H
H
L
L
H
H
L
L
降水観測時の平均気圧・風向分布
降水無観測時の平均気圧・風向分布
東京~名古屋、輪島~石廊崎間における平均気圧差
平均気圧差
降水有り
降水なし
東京~名古屋間
2.0hPa
2.4hPa
輪島~石廊崎間
4.8hPa
3.1hPa
・駿河湾から内陸部にかけて低圧部
が発達している。
・輪島~石廊崎間の気圧勾配が大き
くなっている。
降水観測時の平均気温・風向分布
現地気温を海面気温に修正
気温減率
降水無観測時の平均気温・風向分布
平均 0.6 ℃/100m (対流圏)
・降水観測時は日本海側と太平洋側における温度勾配が大きくなって
いるが、降水無観測時には比較的小さい。
・北関東付近に日本海側から冷たい空気が流れ込んでいる。
降水の有無に関するまとめ
・降水が観測された場合、駿河湾付近から内陸部に
向かって低圧部が発達し、日本海側と太平洋側にお
ける気圧勾配が増大傾向にある。
・降水が観測された場合、日本海側と太平洋側におい
ての温度勾配が大きく、北関東付近に冷たい空気の
流入が見られる。
事例
降水観測時
1982年3月2日
気圧・風向分布
82年3月2日9時 天気図
・御殿場において1時間に
3mm の降水が観測
気温・風向分布
(気象庁)
・駿河湾付近に低圧部が発達
している。
・日本海側からの冷たい空気
が北関東付近に流れ込んでい
る。
・西高東低の気圧配置。
結論
・収束線発生時に降水となる要因
駿河湾付近の低圧部が発達することにより、南北
方向の気圧傾度が増大し、北方からの気流が強
化される。
駿河湾付近に冷たい空気が流入し、移流逆転層
(前線)が発生し降水に至ったと考えられる。
今後の課題
・高層気象データの利用
・海洋との関連
(海水温が降水量に与える影響など)