樹木を模した小型模型の風力係数とその推定法 ν ρ

樹木を模した小型模型の風力係数とその推定法
東海大学大学院 学生会員 ○福田 耕司
東海大学工学部 学生会員
大川 良輔
東海大学 正会員 杉山 太宏・平岡 克己
1.まえがき
屋上緑化やのり面の樹林化など緑化事業が注目される中,強風に対する樹木の転倒危険度を予測することは,
設計・施工・維持管理上重要な要素である.しかし,樹木の風力係数を調べた例はほんの数例である.本研究は,
樹木を模した小型模型によって風洞実験を行い,風力係数 CD に及ぼす樹形・樹高の影響を調べるとともに,CD
の簡便な推定方法について検討した.
2.実験方法
表-1 試験に使用した枝葉部模型の形状
実験装置の模式図が図-1 である.塩
(a)
(b)
(c)
(d)
ビの角材(10mm×12mm)を樹木幹部と
(e)
ベニヤ板
(a)∼(e):A=144.5cm2
以下同様に,
(f)∼(j) :A=200cm2
(k)∼(o):A=312.5cm2
(p)∼(t):A=450cm2
h/b=0.64 プラスチック板
(f)’∼(j)’:A=200cm2
h
して土槽の蓋に樹木模型の根元を固
定し,根元から 9cm の位置にひずみゲ
b
h/b=1.77
h/b=1.30
h/b=1.00
h/b=0.79
ージを貼り付けた.表-1は樹木の枝
の面積 A に対して,縦横比 h/b を変化
風力
10
枝葉部
重心点
(風心点)
させたものを各 5 種類,全部で 20 枚
樹木幹部
((a)∼(t))用意した.また,枝葉部模型
ひずみゲージ
ビニール袋
9cm
はベニヤ板より軟らかいプラスチッ
ク板((f)’∼(j)’)も用意して,縦横比 h/b
ならびに面積 A による CD への影響を
H=110mm
8
6
4
2
土槽
0
調べた.
h/b=1.00
2
:(c) ε=10.4v
2
:(h) ε=14.0v2
:(m)ε=20.5v
2
:(r) ε=28.9v
-3
ある.厚さ 5mm のベニヤ板を 4 種類
ひずみ ε (×10 )
葉部を見立てた枝葉部模型の形状で
D=300mm
0
10
20
風速 v (m/sec)
2.1 静的曲げ試験
枝葉部の重心点に釣糸でつり下げ
たビニール袋を結び,鉛球 500g を載
荷し幹部のひずみを計測した.重心点
は形状(h)の位置にすべて統一した.
図-1 実験装置の模式図

ν2 
w = CD  ρ S ×  × A・・・(1)
2

図-2 ひずみと風速の関係
W:鉛球の質量(kgf)
CD:風力係数
ρs:空気密度 0.1205(kg・s2/m4)
v:風速(m/sec)
A:風を受ける面積(m2)
2.2 風洞実験
静的曲げ試験と同様に設置した樹木模型に風洞装置によって段階的に定常風を与え,風力による幹部のひずみ
εと風速 v を測定した.ひずみと風速ならびに静的曲げ試験から求めたひずみと質量の関係から,式(1)によって
風力係数 CD を求めた.また,風を乱して樹木模型を揺らし,風心点に設置した加速度計で加速度を測定した.
3.実験結果と考察
3.1 静的曲げ試験と風洞実験による風力係数 CD の推定
図-2 は,各面積の縦横比 h/b=1.00 で得られた定常風による風洞実験のひずみと風速の関係である.当然ながら
面積が大きいほどひずみも増加し,ひずみは速度の二次式で表される.また,重心点を一致させた静的曲げ試験
でのひずみεと質量 m の関係はε=10040m となった.両実験結果から式(1)によって風力係数 CD を計算し,風速
キーワード:緑化,のり面,樹木模型,樹形,風荷重,風力係数
連絡先:〒259-1207
平塚市北金目 1117
東海大学土木工学科
TEL 0463-58-1211
FAX 0463-50-2045
との関係を調べたのが図-3 である.
2
1.2
る.面積が小さいほど CD は大きく
なるが,縦横比の影響は明確には現
れなかった.風を乱して得られた各
風力係数 CD
は風速には依存しないことがわか
1.1
A=450cm2
(p)
(q)
(r)
樹木模型の卓越周波数ωと縦横比
の関係について調べたのが図-4 で
ある.ばらつきはあるが面積ごとに
ω=α(h/b)+βとして直線で近似し,
8
卓越周波数 ω (Hz)
図のように,ベニヤ板の場合,CD
A=144.5cm
(c)
A=200cm2
(h)
2
A=312.5cm
(m)
1.0
0
10
20
6
4
2
30
:A=144.5cm2 ω=0.0350h/b+7.80
:A=200cm2
ω=-0.307h/b+7.35
2
:A=312.5cm
ω=-0.145h/b+6.22
2
:A=450cm
ω=-0.565h/b+5.86
0
1
風速 v (m/sec)
2
枝葉部の縦横比 h/b
図-3 風力係数と風速の関係
図-4 卓越周波数と縦横比の関係
その結果を図中に記した.係数αと
3
10
βは,図-5 のように面積の増加によって減少する傾向を示したので,
β=-65.5A+8.62
同じく直線近似した.図-4 と図-5 から樹木模型の卓越周波数ωは面
ω=(0.12-13.7A)(h/b)-65.5A+8.62・・・・・・・・・・・・(2)
8
1
6
0
4
と表すことができる.図-6 はすべての卓越周波数ωと CD の関係をプ
ロットしたものである.面積が小さいほど卓越周波数ならびに CD は
α=-13.7A+0.12
増加している.そこで,CD=ξ・ω+ηとして係数ξ,ηを求め,式(2)
-1
を代入すると,式(3)のように CD を面積 A と縦横比 h/b の関数として
0
0.01
0.02
0.03
0.04
2
0.05
2
面積 A (m )
表すことができる.
図-5 係数α,βと面積の関係
CD=(0.0049-0.56A)(h/b)-2.69A+1.19・・・・・・・・・・・(3)
3.2 プラスチック板の実験結果
実樹木は風を受けると枝葉部面積が減少する.この影響を調べる
1.2
ニヤ板と同様にして求めた CD と風速の関係である.プラスチック板
では,風速の増加とともに面積が減少するため CD が増加している.
また,縦横比の影響がベニヤ板よりもより顕著に現れている.ベニ
風力係数 CD
ために軟らかいプラスチック板を使って実験を行った.図-7 は,ベ
1.0
CD=0.041ω+0.84
2
A=144.5m2
A=200cm 2
A=312.5cm
A=450cm 2
ヤ板の結果と同様に,枝葉部の縦横比は CD や卓越周波数を推定する
指標となる可能性が示唆される.
0.8
4.まとめ
4
5
6
7
8
9
卓越周波数ω (Hz)
三角形ベニヤ板を樹木の枝葉部に見立てた風洞実験を行って,面
図-6 風力係数と卓越周波数の関係
積と縦横比から風力係数 CD が推定可能なことを示した.実樹木では
1.2
樹種や樹齢,枝葉部の形状など,より多くのパラメータが必要であ
るが,簡便な方法で CD を推定できる方法を模索していきたい.
1) 大塚泰洋,杉山太宏,赤石 勝:風洞による風荷重が樹木モデルの振動
と地盤応答に及ぼす影響,第 28 回関東支部技術研究発表会(Ⅶ),pp816∼
817,2001.
2) 大塚泰洋,上杉聡,杉山太宏,赤石 勝:風による模型樹木,実樹木の
振動と地盤振動特性に関する研究,第 29 回関東支部技術研究発表会
(Ⅶ),pp1040∼1041,2002.
3) 福田耕司,大塚泰洋,杉山太宏,赤石勝:樹木模型の樹形形状と風荷重
の関係,第 30 回関東支部技術研究発表会(Ⅶ),[00086.pdf],2003
風力係数 CD
参考文献
1.0
0.8
0.6
0.4
0
C D=ax2+bx+c
a( ×10-4) b(×10-3) c
(f)' 0.268
5.13
0.907
(g)' 0.752
5.29
0.783
(h)' 2.55
6.90
0.660
(i)' 3.12
7.68
0.695
(j)' 3.48
6.89
0.680
10
20
風速 v (m/s)
図 -7 プ ラ ス チ ッ ク 板 で の
風力係数と風速の関係
係数β
係数α
積 A と縦横比 h/b により,
2