ACR Plenary Session

Highlightsfrom
American
College
of
Rheumatology
American College of
Rheumatology 64th Annual
Scientific Meeting
Octorber 29-Novenber 2, 2000, Philadelphia, PA
Contents
ACR Basic Research Conference …………… 2
ACR Review Course …………………………… 3
Opening Lecture ………………………………… 4
ACR Plenary Session ………………………… 5
ACR Clinical Science Symposium ………… 5
ACR Mini-Symposium ………………………… 6
Hot News ………………………………………… 6
ACR Abstract Concurrent Session ………… 7
Poster Session …………………………………… 8
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第64回ACR学会印象記
越智隆弘 大阪大学医学部長
『Philadelphia 2000』と題した米国リウマチ学会(American College of Rheumatology; ACR)の第64 回年次総
会Annual Scientific Meeting がARHP(Assosiation of
Rheumatology Health Professionals)の第35回年次総
会Annual Scientific Meeting とともに,2000 年10 月
29 日∼11 月2 日の5 日間にわたってPhiladelphia のPennsylvania Convention
Centerで開催された。ACR会長J. Croft博士は開会宣言において,3,000名以上に上
ったポスター発表への参加者に感謝を述べ,発表者や参加者が増え,ACR がますます価
値のある学会になっているとした。事実,ILAR,APLAR,EULAR,PANLARなどの
各理事長が一堂に集まり,後進国への研究資材援助,教育者派遣などを議論し,まさに
ACR が世界のリウマチ学の要の役を果たしていることを実感した。
長年世界のリウマチ学を引っぱってきた偉大な先人の1 人であるPhiladelphia 出身の
Hollander博士が2000年の初めに亡くなったことでSchumacher博士によるMemorial Lectureが行われた。ステロイドの関節内注入をして魔術師のような驚きを与え,ま
た晩年は魚釣りを好んだHollander 博士の話から始まり,リウマチ病態研究の世界的な
推移を見事にまとめた口演は,聴く者を引きつけた。口演の中には日本人の研究内容も2
∼3 盛り込まれていた。
免疫細胞,滑膜細胞,軟骨細胞,骨細胞等をめぐってリウマチ病,膠原病に関わるマ
クロからシグナル伝達までの多岐にわたる研究が発表された。しかし最も多くの人々が集
まったのは治療の進歩に関する研究発表であった。目新しい発表としてIL-18の研究も散
見された。IL-18 は動物実験での有用性やその血管新生への働きなどからみると新しい治
療法にも応用できるものとして期待できるようである。
また,今年,最もマスメディアに注目された話題は,リウマチに対する全く新しいアプロ
ーチ方法であるBリンパ球除去に関する報告であった。Bリンパ球除去によってリウマチ因
子を産生する細胞を排除して免疫系の正常化を図るとする方法であるが,予備試験の対象
5例では,全例が正常な日常生活を取り戻し,DMARD投与も中止しているという有望な
結果が得られていると報告された。
多くの参加者の興味の的であるRAの薬物療法は今年も過去数年と同様に生物製剤に関
する報告に注目が集まっていたが,特に,“抗TNF 抗体”は1 つのカテゴリーとみなされ
るようになっており,本総会でも新たに得られた臨床での長期安全性データに関する議論
や,ヒト化モノクローナル抗TNF抗体であるD2E7 などの新たな抗TNF 抗体の報告など
多くの発表がみられた。その中でも,etanercept およびinfliximab の臨床は,たくさ
んの症例を経験しており,長期安全性データに対して活発な議論が行われた。やはり,感
染症や発癌性については報告も多く,今後の使用についても注意が必要である。その他の
生物製剤としてIL-Ira,IL-6ra などの臨床段階の成績もあり注目されていた。
DMARD に関してはleflunomide に関する新しいデータ(MTX との併用データが多か
った)も発表されたが,その安全性,高い価格,患者への未知の影響などの問題点を上げ
る声が聞かれた。新しいDMARD としては,FK506 の日本での臨床試験も報告されて
いた。ただし,多くのリウマチ専門医は,最も有効なDMARD 標準治療の確立やリウマ
チ治療戦略へのDMARD の最適な組み込み方により大きな関心を寄せている。University of Texas Southwestern Medical Centerの後援により「革新的なリウマチ治療」
と題して行われたCR/REF Industry Round-table Satelite Symposium でも,
「新世紀におけるリウマチに関するDMARD 併用療法」,「質問票を用いたDMARD のモ
ニタリング治療」など,DMARD による治療の来世紀に向けた新たな方向性が示され,
DMARD への期待がうかがわれた。欧米では爆発的に売れているCOX2 製剤も種々の臨
床試験が報告されていた。従来のNSAID と比較して胃腸障害の発現頻度は明らかに出現
率が低下しているが,腎障害は理論通りにはいかず,今後の課題と考えられる。
日本からは約130 題ほどのポスターをはじめ口頭発表があり,参加者も年々増加する
傾向にある。内容的には日本の研究レベルが完全に欧米レベルに肩を並べていることを感
じる。頑張らねばと思う。口頭発表では日本,韓国,中国などのアジア諸国の若い先生方
の台頭が目を見張っていた。例年同様あたかも国際学会のように世界各国から約7,000
名のリウマチ専門家が集まり,早朝から深夜までリウマチ性疾患の基礎から臨床まで活気
あふれる討議が行われた。1 年に1 度全世界のリウマチの研究者が1 カ所に集まり,自由
な発想で論議を交わしているグループの輪をいたるところで見ることができる。日本での
学会場においても近い将来このような学会に変えてゆかねばならないと感じている。
次回のACR はサンフランシスコにおいて開催される。さらなる研究の成果を期待して
いる。
20248 01 0C1 0C1 B 7
ACR Basic Research
Conference
て宿主保護で重要な役割を果たしているとされ,etanercept が直接的な死亡原因であるか否かは明らかでは
ないが,etanercept 投与後に感染症により死亡した患
● RAにおける抗TNF抗体治療の
● 展望
者が数例報告されている。また,最近では治療中に多
数の汎血球減少症発症が認められたことについて臨床
医に対して警告が出されたことや,長期間にわたって
ACR 総会開幕前に 2 日間にわたって行われた Basic
Research Conferenceでは,リウマチの診断,治療,管
非活動性であった結核が治療中に再燃した例が数例み
られたことも留意すべきことである。
理におけるめざましい進歩をしっかりとフォローするた
難治性 RA 患者では抗 TNF 抗体単独投与あるいはメ
め,現在,注目の的である抗 TNF 抗体治療の将来と試
トトレキサートとの併用投与により,劇的な改善がみ
験進行中の新薬に関する講演などが行われた。
られることは確かであるが,早期あるいは中等期のRA
L.G.Anderson 博士(Portland, USA)によると,etan-
患者に対してはその費用と長期安全性に対する懸念の
ercept やinfliximab などの抗 TNF 抗体のような臨床的
ために,抗 TNF 抗体治療はまだ推奨されておらず,現
に有効な生物学的製剤の登場により,難治性RA 患者数
段階における治療指針は表 1 のようになっている。
が減少し,また,患者の疼痛が有意に軽減されるだろ
うと期待されている。
Etanercept および infliximab に対する試験結果から
は,患者によっては抗 TNF 抗体に対する反応発現が非
● 研究・開発中のRA治療薬
●
常に迅速な患者がいる。一方,反応が鈍いか,全く効
E. C. Keystone 博士(Toronto, Canada)は,近年,RA
果がない患者も存在する。このような患者に対しては
の病態解明により,RA の生物学的製剤のターゲットは
これまでのDMARD 治療がより有効性が高い可能性が
接着分子,T 細胞,B 細胞,マクロファージ/樹状細
あり,TNF α以外のサイトカインが原因であると考え
胞,MHC /抗原/ T 細胞受容体複合体,ケモカイン,
られた。
サイトカイン,血管新生,滑膜表層細胞,リソソーム
大きな問題の1 つは抗 TNF 抗体が高価なことである。
酵素などと多岐にわたるようになり,現在,約140 種類
1 人当たりの費用は約$15,000 ∼ 20,000 /年に上り,
の RA に対する新薬が前臨床試験段階に,また,約 85
QOL の改善度と治療費用のバランスが取れていなけれ
種類が臨床試験の段階にあるが,このような薬剤の中
ば良い治療法とはいえないとされた。
でもわずか何種類のみが市場に登場することと,臨床使
また,治療の短期的あるいは長期的な安全性につい
ても懸念されている。TNF αが感染や悪性腫瘍におい
表1
新しいサイトカイン拮抗薬の中でも注目されている
各病期における治療指針
病期
新患/早期
2
用に耐えうる新薬の開発が困難であることを強調した。
機能障害度
I
症状
治療目的
治療法
運動時および静止時の関節可動
範囲正常,X線所見異常なし
障害予防
スルファサラジンまたは
ヒドロキシクロロキン
中等期
II∼III
関節変形,運動制限
骨びらん,関節裂隙の狭小
X線所見での関節亜脱臼
障害コントロール
メトトレキサートまたは
leflumonide
高度∼末期
III∼IV
臨床検査あるいはX線所見
での進行した関節障害
障害修復
抗TNF抗体
American College of Rheumatology
のは,ヒト化モノクローナル抗TNF α抗体であるD2E7
であるが,現在,第 II 相試験が開始されている。また,
第I 相試験中のPEGylated humanized anti -TNF α fragment(CDP870)は,約 14 日間と半減期が長いことが利
点であり,高価なほ乳類の細胞培養技術が必要ないま
までの抗 TNF 抗体と異なり細菌培養を使用して安価に
産生できることが特徴である。IL -1 受容体拮抗薬(IL1ra)は,単独投与およびメトトレキサートとの併用投
与で第II,III 相試験において良好な結果が示されたが,
皮下注射部位での局所反応が患者の約半数と高率に認
められた。Osteoprotegerin(OPG)は,前臨床試験で
RA での骨破壊予防に対する新たな治療法として有望な
結果が得られている。
また,CTLA4-IgG はヒトCTLA4 の細胞外ドメインの
が,同時に,RA に伴う心血管系疾患による死亡率上昇
可溶性キメラタンパクで,ヒトIgG1 のFc 部位の断片で
などの間接的な結果についても考慮する必要があると,
あり,最近,RA 患者中で検出されている。CTLA4-IgG
J. R. O’
Dell 博士(Nebraska, USA)は述べた。
は,抗原提示細胞でCD80 およびCD86 分子に結合し,
現在,関節障害を予防するためには早期から
CD28 を介する副刺激信号を阻害してT 細胞の活性化を
DMARD による積極的な治療が必要であることは広く
抑制する。経鼻的に投与するhuman cartilage glyco-
認識されるようになってきたが,早期 RA を時期,病理
protein-39 による抗原特異的治療に関しては,前臨床試
組織学,機能,X 線所見,病態に基づいて詳細に定義
験で良好な結果が得られた後,現在,第I 相試験へと進
すること,また,各患者においてDMARD 初回投与時
んでいる。p38MAP キナーゼ酵素は,IL-1,IL-6,IL-1
に単独投与あるいは併用投与のどちらがより有効であ
β,TNF αなどの特定のサイトカインへのシグナルを
るかを判定する予測因子を解明する必要がある。
仲介する物質であるが,MAP キナーゼ阻害薬
COBRA 試験では早期 RA での DMARD による step-
(SB242235)は動物実験においてアジュバント誘発関節
down bridge 療法が有効であることが示され,スルファ
炎を有意に抑制することが示され,現在,p38MAP キ
サラジン(SASP)+プレドニゾロン+メトトレキサート
ナーゼ阻害薬が開発されている。さらに,シクロスポリ
によるstep-down bridge 療法はSASP 単独療法よりもX
ン,抗IL-12,IL-1ra などの抗TNF 抗体治療に追加的あ
線所見での関節破壊を有意に抑制するという明確な証
るいは相乗的な効果を与える様々な併用療法も検討さ
拠が得られた。このようなデータが発表されたことから
れている。
も,SASP など従来から使用されている薬剤を含む積極
的なDMARD 併用療法をRA と診断されてから数カ月以
内に開始する方法が標準治療として普及し始めた。
ACR Review Course
今後,新しい生物学的製剤が早期RA の治療に適して
いるかどうかはまだ明らかになっていない。例えば,
● DMARD単独療法を超える新しいRA治療
●
etanercept とメトトレキサートを直接比較した試験で
は,etanercept はメトトレキサートと比較して効果発現
が非常に迅速であったが,長期においては高用量メト
RA 治療の有効性を評価するためには,治療開始前に
トレキサートの方が有効性が高かった。Etanercept の
治療ゴールを設定する必要があり,短期的な治療ゴー
ような薬剤を導入薬として使用する目的は,発症初期
ルは関節障害改善などの直接的な結果であってもよい
での迅速な症状進行の抑制であり,長期的な抑制には
3
サート+leflunomide,leflunomide +SASP +ヒドロキ
シクロロキン,その他の薬剤の6 種類の治療法における
有効性を比較することが必要である。
Opening Lecture
● 先天性免疫応答機構
●
第64 回ACR 年次総会は,長年にわたって先天性免疫
etanercept 以外の標準的な薬剤の使用が適している。
応答の研究を続け,この分野に大きな貢献を残してい
さらに,新しい生物学的製剤に関しては,常にその長
るJ. Atkinson 博士(St Louis, USA)によるOpening Lec-
期安全性に対して疑問があり,特に etanercept では,
ture で開幕した。
骨髄抑制や再生不良性貧血などの重篤な副作用に対す
る懸念が示されている。
Atkinson 博士はこの5 ∼ 10 年間で先天性免疫応答機
構の解明は大きく進み,特にループス腎炎と慢性関節
また,すでに骨破壊が認められるRA 患者に対する治
リウマチ(RA)の病態解明に役立ったとした。また,RA
療は,メトトレキサート単独投与では最適な反応が得
を含む多くの自己免疫性疾患発症は,先天性免疫応答
られない場合にはSASP,ヒドロキシクロロキンのいず
と適応免疫機構(adaptive)の相互作用により説明でき
れかを追加投与するか,または2 剤の追加投与が有効で
ること,また,臨床面からは自己免疫性疾患やその他
あるとの臨床試験結果が得られている。一方,シクロ
の疾患に対しても先天性免疫応答の操作により治療で
スポリンのメトトレキサートへの追加投与は短期的には
きる可能性があると述べた。
有効であるが,有効性の消失,高血圧やクレアチニン
このような先天性免疫応答を操作する最初の治療薬
上昇などの副作用のために長期的な投与は好ましくな
として使用されると予想され,また,現在,臨床応用
い。また,etanercept やinfliximab の追加投与も有効で
へ最も近づいている薬剤がC5 に対するヒト化モノクロ
ある。Leflunomide に関しては関節障害に対する効果は
ーナル抗体である。これはC5a形成を阻害する作用を有
認められるが,60%で肝酵素上昇が示されていることか
している。第 I,II 相試験はすでに終了あるいは終了し
ら,併用投与時には注意が必要である。
つつあり,RA を対象とした第 I/II 相試験も含まれ,そ
さらに,ミノサイクリンの有効性は忘れられることが
の結果ではこのヒト化モノクローナル抗体単回投与は
多いが,早期 RA にも骨破壊が確立しているRA にも高
ACR 改善基準達成率を明らかに向上させたと報告され
い有効性を示す。
ている。
今後,RA 治療において解明すべき点を上げると,ま
さらに,前臨床試験中である化合物には,より早い
ず,各治療に対する反応性の差を予測する因子の解明
段階で補体活性化経路を阻害するC3 のような補体阻害
が早急に求められている。また,早期 RA においては,
薬が挙げられ,注目されつつあるとした。また,RA の
step-down bridge 療法とstep-up bridge 療法のどちらが
補体活性化経路の最終産物であるC9 欠損が日本人で頻
有効性が高いか,導入治療としてはステロイドと抗
繁にみられるが,これに関する試験は行われていないよ
TNF 抗体のどちらが適しているか,さらに,すでに骨
うであるとし,先天性免疫応答と自己疾患に関連する
破壊が認められるRA においては,メトトレキサート+
重要な情報が得られると考えられることから,このよう
etanercept,メトトレキサート+ infliximab,メトトレ
な日本人を対象とした試験が必要であると結んだ。
キサート+ SASP +ヒドロキシクロロキン,メトトレキ
4
American College of Rheumatology
ACR Plenary Session
節障害の予測因子であった。
また,骨びらんと関節裂隙の狭小化のスコアの変化
● 関節障害予測因子となりうる早期RAに
● おける手関節炎症
M. Boers 博士(Amsterdam, The Netherlands)は,
は同様であったが,MCP 関節はPIP 関節の4 倍以上も
関節裂隙の狭小化を進展する傾向が強く(p < 0.001),
MCP 関節の軟骨はPIP よりも高率かつ容易に破壊され
やすい傾向をもつことが示唆された。
COBRA(Combinatietherapie Bij Reumatoide Arthritis)試験のフォローアップデータを発表し,各関節にお
ける疼痛や腫脹などの炎症を示す要因が関節破壊の予
測因子となりうるとした。
ACR Clinical Science
Symposium
早期 RA 患者 155 例を対象とした最初のCOBRA 試験
では,プレドニゾロン+メトトレキサート+ SASP 併用
療法は,SASP 単独療法よりも関節障害の進行抑制があ
ること,また,リウマチ因子陽性患者,HLA-DR4 陽性
● RA治療薬における皮膚関連副作用
●
今年のClinical Science Symposium では,一般臨床医
患者,試験開始時に疾患活動性の高かった患者でより
に対する啓蒙を目的として,リウマチ治療に使用され
障害進行速度が速いことが示された。
試験開始時での各関節における関節障害,腫脹,疼
ている様々な薬剤における皮膚関連副作用に関しての
痛の存在はSharp スコアの独立した強力な予測因子で
レビューがV. P. Werth 博士(Philadelphia, USA)から発
あった
(p <0.001)
。腫脹スコアが1 ポイント増加すると
表された。
関節障害進行リスクは3 倍,Sharp スコアおよび疼痛ス
RA における薬剤に起因する皮膚関連副作用に関する
コアでは進行リスクが2 倍になることが示された。各関
データは,1987 ∼ 1997 年のスウェーデンにおける調査
節の疼痛,腫脹の1 年間の累積スコアはさらに強力な関
から得られた結果があるが,報告された薬剤起因性副
表 2 RA治療薬における主要な皮膚関連副作用
シクロフォスファミド,アザチオプリン 皮膚癌,皮膚過敏症,カポジ肉腫,中毒性表皮壊死症
メトトレキサート
口内炎
leflumonide
アレルギー性皮膚炎,脱毛
シクロスポリン
多毛症,歯肉増殖,皮膚腫瘍,毛包炎,アクネ
etanercept
皮下注部位の局所反応
グルココルチコイド
アクネ,皮膚の菲薄化,産毛,線条,発疹,局所発赤
ヒドロキシクロロキン
痒,苔鱗様発疹,蕁麻疹様発疹,皮膚・粘膜・毛髪・爪の色素変化,
固定薬疹,遠心性環状紅斑,脱毛症
ミノサイクリン
皮膚,爪等の色素沈着
D ―ペニシラミン
皮膚障害,落葉状天疱瘡,尋常性天疱瘡,偽弾性線維性仮性黄色腫,弛緩性皮膚,
蛇行状穿孔性弾力線維症
金
金皮症,苔鱗様発疹
SASP
皮膚血管炎
NSAID
皮膚血管炎,仮性ポルフィリン症,蕁麻疹,スティーブン・ジョンソン症候群,
中毒性表皮壊死症
5
作用1,234 例中 181 例(14.7%)が皮膚関連であった。
免疫抑制剤の中でも最も繁用されているシクロフォ
スファミドやアザチオプリンでは,皮膚癌,その他の皮
膚過敏症,カポジ肉腫,中毒性表皮壊死症の発症リス
クを増加させる可能性があるとされている。カポジ肉腫
に関しては,すべてのタイプでヒトヘルペスウイルス8
(HHV8)が95%の確率で検出されていること,HHV8 は
免疫抑制剤により活性化され,免疫抑制剤投与中止に
よりウイルスが活動を停止することから,HHV8 がその
原因となっていることが示唆されている。
また,メトトレキサートは頻繁に口内炎を引き起こ
メトトレキサートを使用した経験のないRA 患者に対
し,リウマチ結節や扁平上皮癌がみられる可能性もあ
して,1)etanercept,2)leflunomide,3)メトトレキサ
る。一方,leflunomide では重症な皮膚関連副作用は,
ート≦ 15mg/日,4)SASP,5)DMARD 未使用の異な
ほとんど認められず,アレルギー性皮膚反応や脱毛は
る5 種類の治療法における費用効果を分析しており,治
高率で発生するが,メトトレキサートよりも口内炎発
療費には,薬剤費用,モニタリング費用,副作用に対
症頻度は低い。
する対処費用,手術費用,人件費が含まれた。
その他のRA 治療薬における副作用は表 2 に示した。
SASP が5 種類の治療の中で最も費用が安く,かつ有
効性が最も高く,メトトレキサートと leflumonide は
SASP よりも費用は高く,有効性は低かった。メトトレ
ACR Mini-Symposium
キサートとSASP が禁忌であった場合におけるleflunomide とetanercept の増加費用効果比(ICER; incremen-
● メトトレキサート未経験RA患者における
● 各種治療法の費用効果分析
tal cost-effectiveness ratios)を表3 に示した。
このような結果から,SASP は6 カ月間でACR20 を達
成するための費用効果の高い薬剤であることが示され
現在では,早期RA 患者での治療選択肢が広がり,各
た。また,感度分析では,すべての治療方法が臨床的
治療の有効性と費用のバランスをみることも重要にな
に受け容れられるためにはleflumonide の薬剤費を30%
ってきた。
「医療における経済」というテーマを取り上
以上削減する必要があるだろうとされた。他の治療法
げたMini-Symposium では,H. K. Choi 博士(Boston,
と比較して最も有効な治療であったetanercept は6 カ月
USA)が早期 RA におけるセカンドライン薬剤の費用効
間でACR20 を達成するための費用が最も高く,これを
果を比較した結果を発表した。
費用効果が高いと考えるか否かはその有効性に満足で
きるか否かの問題である。
表3 Leflumonideと etanerceptの直接増加費用/
ACR20(6カ月)
治療法
治療なし
(DMARD未使用)
6
推定ACR20
直接費用/
達成率
ACR20($)
27%
leflunomide
55%
4,300
etanercept
68%
37,900
Hot News
● Bリンパ球除去によりRA進行を遅延
●
今年,最も注目を集めたのはB リンパ球除去という
全く新しいRA に対するアプローチであった。RA ではリ
American College of Rheumatology
ウマチ因子と呼ばれる自己抗体が血中に認められるが,
完全に正常な日常生活に戻り,DMARD 投与も中止し
最近の研究ではいくつかのリウマチ因子(特にIgG リウ
ている。大規模試験が進行中であり,結果が待ち望ま
マトイド因子群)は症状発現だけではなく,症状を維持
れる。
する悪循環の原因となっている可能性が示された。そ
こで,これらのリウマトイド因子産生細胞の除去によ
ACR Abstract Concurrent
Session
り悪循環を止め,長期寛解へと導こうというものであ
る。
現在進行中の試験では,DMARD に無反応になった
● COBRA試験の遺産:DMARD併用療法により
● 得られた関節障害改善の優位性は長期間で
● 維持される
RA 患者 5 例に対して,低用量プレドニゾロン,シクロ
スファミド,抗 B リンパ球モノクローナル抗体(rituximab)の 3 剤の使用により,5 例全例が ACR50 を達成
し,6 カ月後には3 例でACR70,18 カ月後には長期罹患
「早期RA におけるDMARD の治療成績」と題された
患者において期待される最良の改善であるACR70 が5
Abstract Concurrent Session ではR. B. M. Landewe 博
例全例で達成された。
現在までに合計 20 例に治療が施行されたが,無効症
士(Maastricht, The Netherlands)から,最初のCOBRA
例は2 例のみであり,最初の試験の対象となった5 例は
試験に参加したリウマチ専門医達が試験終了後も対象
表4 併用療法および単独療法における関節破壊進行度
関節破壊進行度/年
(Sharp-Van der Heijde法)
治療終了時の関節破壊進行度/年
単独療法
COBRA 併用療法
(MTX +プレドニゾロン+SASP)
中央値
(IQR)
8.3
(2.7; 13.0)
5.2
(2.1; 9.4)
平均値
10.0
7.5
中央値
15.0
6.6
p*
0.11
0.003
(Sharp-Van der Heijde法)関節破壊進行度
*Mann-Whitney test
100
80
60
COBRA
(low-dose MTX+ low-dose
prednisolone+SASP)
SASP
40
20
観察期間
治験
0
0
0.5
予測
4
8
年
図 1 併用療法における関節破壊抑制の経時的変化
7
ていることはよく知られているが,現在,血管新生に
IL-18 が関与しているか否かを検討する試験が多数施行
されているとした。IL-18 は活性化されたマクロファー
ジから分泌され,Th1 型細胞活性を刺激して IFNγ,
GM-CSF 産生を促進することがわかっている。
IL-18 がヒトにおける微小血管内皮細胞(HMVEC)の
走化性に与える影響をボイデン走化性測定法で検討し
た結果では,IL-18 が nM の範囲で濃度依存的に
HMVEC 走化性を促進することが観察され,1nM で有
意差が認められた。また,IL-18 を特異的抗体あるいは
非特異的免疫グロブリンにより中和すると,1nM およ
び10nM のIL-18 で走化性がそれぞれ64%,51%に減少し
た。さらに,in vitro においてIL-18 が内皮細胞結節形成
患者の観察を継続し,長期にわたる X 線所見上の疾患
を誘発するか否かをみるために,Matrigel matrix で結
進行を比較したCOBRA 試験のフォローアップ試験結果
節形成を定量的に測定したところ,IL-18 の1nM および
が発表された。
10nM はコントロールと比較して,結節形成をそれぞれ
治療プロトコールは特定しなかった。94%の患者で平
77 %,87 %増加させた。
均観察期間 4 年間で 3 枚以上の手足の X 線写真が得ら
また,in vivo で血管形成能を観察するために,Ma-
れ,判定医 2 名がSharp-Van der Heijde 法によりレント
trigel plug 中のIL-18 をマウスに移植したところ,IL-18
ゲン変化を解析した。
は明らかに血管新生を誘発し,IL-18 での包埋したスポ
その結果,Sharp-Van der Heijde 法による平均関節
ンジをマウスに移植するもう1 つの in vivo の血管新生モ
破壊進行度/年は,併用療法群 5.2 に対してSASP 単独
デルでは,IL-18(10nM)はコントロールと比較して血管
療法群 8.3 と,併用療法で破壊進行が抑制されていた
新生を4 倍に増加させ,IL-18 がRA における血管形成因
が,その差は有意ではなかった(p=0.11)
(表 4)
。また,
子という機能を有することが新たに示された。
COBRA 試験での治療による関節破壊進行速度の維持
あるいは軽減が統計学的に矛盾のないデータであるこ
とが検出力分析から示された。SASP 単独療法における
Poster Session
関節破壊進行度を8.3/年と仮定すると,6 カ月間の併用
療法による関節破壊抑制の優位性は 8 年後に失われる
ことになるが,早期RA においてこの併用療法を施行し
た場合には,4 年後にもまだその優位性は維持され,最
悪の場合でも8 年後まで,おそらくその優位性は長期間
で維持されるとされた(図 1)
。
● 早期RA:従来の治療法に対する反応は
● よいか?
症状発症から12 カ月未満,DMARD を使用した経験
がなく,リウマチ専門医にRA と診断された英国全土の
新患患者をフォローアップするYEAR 試験が開始され,
● 血管新生メディエーターとしてのIL-18の
● 新たな役割
その経過がA. Quinn 博士から報告された。ファースト
ライン治療はSASP 2g/日とし,3 カ月で目標ACR 改善
基準を到達できなかった場合は3g/日に増量,6 カ月で
C. Park 博士(Chicago, USA)は,血管新生はRA の滑
膜炎症進展における鍵であり,様々な炎症性サイトカ
インがこの血管増殖反応において重要な役割を果たし
8
ACR50 が達成できなかった場合はメトトレキサートを
追加するとしている。
204 例が6 カ月を経過したが,SASP のみの使用に留
American College of Rheumatology
まっている患者は3 カ月 74 %,6 カ月 70%で,8%が3 カ
5 %と比較して,5nM のIL-18 で刺激した滑膜線維芽細
月でACR 寛解基準を満たした。6 カ月で70 %がACR20,
胞では染色細胞の 67 ± 6 %と ICAM-1 発現を増強し
58 %がACR50,15 %がACR 寛解を達成し,メトトレキ
(p <0.05,n=6)
,また,VCAM-1 に関しては,IL-18 刺
サート追加投与患者は42 %であった。
激ありは 1 9 ± 5 %,刺激なしは 7 ± 3 %と I L - 1 8 は
また,仕事をもつ患者の68%で仕事に何らかの支障を
VCAM-1 発現を増強し
(p <0.05,n=7)
,IL-18 が滑膜線
きたしていたが,6 カ月後には 32 %へ改善した(p <
維芽細胞中でのケモカイン,ICAM-1,VCAM-1 発現誘
0.05)
。また,失業者は試験開始時は5%であったが,6
発という働きをしていることが新たに示された。
カ月後には22 %に増加し,仕事に復帰できた患者はお
らず,早期RA でも仕事に支障をきたしていること,従
来の治療では発症6 カ月以内に高率で失業が起こってい
ることが示された。
● 全身硬化症における難治性間質性肺疾患に
● 対するブシラミンによる治療の成功
強皮症疾患モデルであるtight-skin マウスでの皮膚線
● 滑膜線維芽細胞産生ケモカイン,ICAM-1,
● VCAM-1の新たな誘発物質IL-18
維化がブシラミンにより著明に予防されることはすでに
T. Ogawa 博士らが報告しているが,今回は,平均年齢
56 ±3.5 歳の広汎性全身性硬化症患者6 例にブシラミン
様々な濃度のリコンビナントIL-18(0.6 ∼10nM)で滑
(200 ∼ 300mg/日)を12 ∼ 36 カ月間投与し,高解像度
膜線維芽細胞を刺激すると,IL-18 は IL-8,ENA-78,
CT および肺機能試験による肺状態の評価が発表され
GRO-αを濃度依存的に増加させることがJ.Morel 博士
た。
らの実験で証明された。
6 例全例が,ペニシラミン(n=6)
,シクロフォスファ
その報告によると,10nM のIL-18 で滑膜線維芽細胞
ミド
(n=3)
,高用量プレドニゾロン
(n=2)による積極的
を24 時間刺激した場合には,IL-8 を150 %,ENA-78 を
な治療を施行していたにも関わらず,労作性呼吸困難
300 %,GRO-αを12%増加した(p < 0.05,n=5)
。5nM
を伴う間質性肺疾患の悪化が認められていたが,ブシ
のIL-18 では4 時間後に最初にIL-8 が検出され,48 時間
ラミン投与により6 例全例で著明な改善が示された。投
後に最高濃度に到達した(3.6 ± 1.2ng/m l )
(p < 0.05,
与開始6 カ月後には全例で高解像度CT 所見中にスリガ
n=5)。5nM のIL-18 により6 時間刺激すると細胞内 IL-8
ラス様陰影の広がりや線維化の進行がみられず,3 例で
は2 倍となった(p <0.05,n=6)
。
DLco の25 %以上,2 例でFVC %の25 %以上の増加が
また,IL-18 がICAM-1,VCAM-1,2 つの接着分子へ
認められた。さらに,皮膚菲薄化や指可動範囲限界な
与える影響をみているが,刺激しなかった細胞の48 ±
どの臨床症状に関しても,ブシラミンによりそれらの症
状の著明な改善が示され,ブシラミンは忍容性も良好
で重篤な副作用も認められず,硬化症に対する新しい
薬剤として有望であることが示唆された。
● RAの滑膜組織におけるケモカイン産生に対
● するSASPとその代謝産物の影響
SASP とその代謝産物であるスルファピリジン(SP)
,
5-アミノサリチル酸がケモカイン産生に与える影響を検
討した試験では,RA 患者 6 例から採取した滑膜組織で
はSASP 投与により,IL-8 およびGRO-αの分泌減少が
みられ,また,SP では IL-8(20%),GRO-α(53%),
9
MCP-1(42%)が明らかに減少し(p < 0.05),一方,5ASA はケモカイン発現に全く影響を与えなかったこと
が,M. Volin 博士から報告された。
また,様々な濃度の SASP,SP,5-ASA で治療した
RA 患者4 例から採取した滑膜組織中の線維芽細胞をIL-
● 日本でもNSAID起因性消化管障害症例が
● みられるのか? 8,948例を対象とした
● クロスセクション試験
日本ではNSAID 起因性消化管障害はまれであるとさ
1 βで刺激した場合,SP はIL-8(24 %)
,GRO-α(24 %)
れているが,このような説とは異なり,日本でも頻発し
分泌を著明に減少したが(p < 0.05)
,驚くべきことに,
ていることを示す結果をH. Yamanaka 博士らは示した。
SASP と5-ASA ではケモカイン分泌の増加がみられた。
さらに,滑膜組織中の線維芽細胞が分泌するケモカ
1999 年 10 月に東京女子医大外来を受診した患者
8,948 例中 2,812 例(31.4%)に NSAID が処方されたが,
インの種類あるいは分泌量の減少が滑膜組織へ与える
RA2,365 例,痛風 90 例,その他の結合組織疾患患者 70
影響を検討するために,in vitro でSP を投与した後の
例,変形性関節症あるいは他の筋肉骨格系疾患 274 例
IL-1 β刺激線維芽細胞におけるIL-8 発現を分析してい
が含まれていた。RA2,365 例中 732 例(31.0 %)は悪心,
るが,IL-8 を発現している線維芽細胞数はSP 投与後も
腹痛,嘔吐,便秘などの様々な消化管症状を有してお
有意な変化は認められず,SASP はその代謝産物である
り,合計206 例(8.7%)が胃潰瘍/十二指腸潰瘍の既往が
SP の効果を通して,炎症性ケモカインである IL-8,
あり,41 例(1.7 %)は重症消化器系合併症のための入院
GRO-α,MCP-1 の分泌を減少させていることが示唆さ
歴があった。これら消化管疾患罹患率は高齢者でより
れた。
高率であり,特に全身状態が悪い患者では高かった。
自己質問形式によりNSAID 起因性消化管障害リスクを
● 早期重症RA患者におけるメトトレキサート+シク
● ロスポリンA+関節内コルチコステロイド併用療法
● とSASP単独療法の費用効果比較
発症 12 カ月未満で未治療の予後不良の早期 RA 患者
82 例を,メトトレキサート+シクロスポリンA +関節内
コルチコステロイド併用療法と,SASP 単独療法に割り
付けて,2 年間投与し,その有効性と費用効果について
比較した結果がB. Griffiths 博士から報告された。
併用療法ではより迅速な症状改善が得られたが,
表すSCORE 値の平均はRA では16.3 ±3.84 とRA 以外の
疾患 13.6 ±4.9 よりも高く,リスクが大きいことが示さ
れた(p <0.0001)
。
● 早期RA患者におけるSASP投与中の
● 血中MMP-3濃度
M. Posthumus 博士らはSASP 2g/日を投与した症状
持続 1 年以下の早期 RA 患者 84 例を,84 例全例を対象
とした群,12 週間後に SASP に反応したと判定された
ACR20 を達成した患者数は併用療法 58 %,SASP45 %
52 例を対象とした群,反応しなかった32 例を対象とし
と有意な差は認められず,両群ともに10 %の患者で持
た群の3 群に分け,各群における血中 MMP-3 濃度,赤
続的な寛解が得られた。
沈,CRP 等の炎症や症状を示す指標を測定し,SASPの
一方,薬剤費用は単独療法の $219/年と比較して併
血中 MMP-3 濃度への影響を比較した。
用療法では$2,883/年と有意に高く,投薬中の治療費お
全例群,SASP 反応群ではすべての指標が有意に減少
よびモニタリング費用も併用療法でわずかに高かった
した
(p <0.05)
。一方,無反応群では赤沈,CRP,腫脹
($675/年,$580/年)。総費用は併用療法では$4,310/
関節数,DAS が減少したが,血中 MMP-3,RAI(リッ
年,SASP 単独療法では $1,290/年であった。また,
チーインデックス),圧痛関節数は増加した。また,
quality adjusted life years(QALYs)は併用療法群で試
MMP-3/CRP 比は全例群と反応群で増加し,非反応群
験開始時よりも平均 0.16,SASP 群では平均 0.11 上昇
では12 週間後にわずかな上昇が認められたに過ぎなか
した。
った。
疾患活動性を示すその他の指標とは異なり,血中
10
American College of Rheumatology
MMP-3 濃度はSASP 反応群では低下し,無反応群では
%
120
低下しなかった。また,SASP 投与中のMMP-3/CRP 比
の変化から,CRP よりも血中MMP-3 の反応変化が遅い
*
P<0.0001
†
60
40
B. Leung 博士らは,RA におけるIL-18 の重要性を示
20
す直接的な証拠を得るために,IL-18 欠損DBA/1 マウス
0
におけるII 型コラーゲン誘発関節炎の発症を検討した。
Control
3
10
30
100
300 μg/ml
SASP concentration
野性型(34 例)とIL-18 欠損マウス(30 例)をウシII 型
コラーゲンで免疫したが,IL-18欠損マウスでは43 %と,
*
*
80
*
*
● IL-18欠損マウスにおけるII型コラーゲン
● 誘発関節炎発現頻度および重症度の軽減化
TRAP positive cells
ことが示された。
* P<0.01
† P<0.001
100
図2 SASPによる破骨細胞様細胞形成の抑制
野性型の88 %と比較して著明にリウマチ発現率が低下
した(p < 0.05)
。また,リウマチを発症したIL-18 欠損
マウスでもコントロールマウスよりも重症度は軽減され
このような結果から,SASP による骨芽細胞中での
(p < 0.05)
,滑膜炎症や軟骨破壊の軽減も認められた。
破骨細胞分化因子の合成阻害が,SASP が破骨細胞形
また,IL-18 欠損マウスでは,IFN-γ,TNF-α,IL-6 と
成へ与える最も強力な阻害作用である可能性があり,
抗II 型コラーゲンIgG2a抗体値の有意な減少がみられた
さらに,SASP は in vitro での破骨細胞様細胞だけで
が,IL-4,IL-5,IL-12 などのTh2 反応増強を示す証拠
はなく,器官培養系における骨吸収も抑制したことか
は得られなかった。
ら,骨芽細胞を介した間接的影響だけではなく,破骨
さらに,この疾患モデルでは,リコンビナントIL-18
をIL-18 欠損マウスに毎日投与することで,リウマチの
細胞へ直接的影響を与えている可能性もあることが示
された。
症状の悪化および in vitro のII 型コラーゲン反応の悪化
が確認され,炎症性リウマチ進展において,IL-18 が重
要な役割を果たしていること,IL-18 は関節内 Th1 反応
とTNF-α産生を促進させることが示された。
● SASPによるin vitroでの破骨細胞様
● 細胞形成および骨吸収の阻害
Y. Tajiri 博士らは,SASP 30 μg/ml 以上で濃度依存
的に in vitro でのマウス破骨細胞様細胞形成を阻害する
こと(p < 0.01)
(図 2)
,また,10 μ g/ml 以上ではピッ
トアッセイ法による吸収窩を減少させること(p <0.05)
を報告した。また,ラット頭蓋骨器官培養実験では
SASP は30 μg/ml 以上で骨吸収を阻害し(p <0.05)
,3
μ g/m l 以上で骨芽細胞における破骨細胞分化因子
mRNA 発現とタンパク合成を阻害,つまり破骨細胞様
細胞形成を阻害することが確認された。
11