解 析 力 学 解析力学 まとめ 1 解析力学 まとめ これは2012年度の解析力学の講義録である。講義で重要なところをまとめてある。決して講義その ものではないので注意すること。講義中でしか話していないことで省略されていたり、逆に講義では時間の 都合で話せなかったことも書いてある。自らのノートと照らし合わせながらよく復習しておいて欲しい。ま た、講義ノートにミスプリ等を見つけた人は吉永まで連絡して欲しい。教えてくれた人に対しては、成績評 価について多少便宜を図りたい。 §1 最小作用の原理 1-1 ハミルトンの原理 系の粒子の位置を一意的に決定するのに必要な独立な量(座標)の個数をその系の自由度という。自由な1 粒子は ( x, y, z ) の 3 つの座標で指定できるので自由度は 3 である。3 次元空間に N 個の粒子があったとき、 その位置を示す座標を q1 , q2 , q3 , qn (n = 3 N ) とする。N 個の粒子の位置を決めるのに十分な n = 3 N 個の座 i を一般速度、一般加速度という。以下、座標、速度、 標 qi (i = 1, , n) を一般座標といい、その時間微分 qi , q 加速度と省略する。 座標、速度、加速度には関係式が存在し、これを運動方程式と呼ぶ。特に力学ではニュートンの運動方程 式と呼ぶ。ニュートンの運動方程式は最小作用の原理(またはハミルトンの原理)から次のように得られる。 まず、ある座標と速度と時間の関数、 L(q1 , q2 , qn , q1 , q2 , qn , t ) が存在すると仮定する。 L をラグランジ アン(あるいは、ラグランジュ関数)という。自由度が 1 のとき、簡単に L(q, q , t ) と省略する。 最小作用の原理とは、系はラグランジュアンの積分、 S = ∫ t2 t1 L(q, q , t )dt が最小の値を取るような軌道を 運動する、というものである。 S を作用と呼ぶ。ここで、始状態の時間、位置を (t1 , q (1) ) 、終状態を (t2 , q (2) ) とした。 今、座標 q = q (t ) が作用 S を最小にする軌道であったとする。このことは、 q (t ) の代わりに少し変化させた 2 解析力学 まとめ q (t ) + δ q (t ) を持ってくると、 S が必ず増加することを意味する。 δ q を q (t ) の変分という。始点、終点は固 定するので、= t t1= , t t2 では δ= q (t1 ) δ= q (t2 ) 0 とする。このとき、 q → q + δ q による S の変化 δ S は t2 t2 t2 t1 t1 t1 ∂L ∂q ∂L ∂q ddddd S = ∫ L( q + q, q + q , t )dt − ∫ L( q, q , t )dt = ∫ q+ q dt d dt t2 ∂L ∂L d ∂L S= q |tt12 + ∫ − ddd qdt = 0 t 1 ∂q ∂q dt ∂q 始点、終点は固定なので( δ q = 0 )、第 1 項はゼロになる。任意の δ q に対して S の変化 δ S がゼロになる、 というのが最小作用の原理である。任意の δ q に対して第 2 項がゼロであるためには d ∂L ∂L − = 0 でなければならない。 n 自由度に対しては dt ∂q ∂q d ∂L ∂L 0, = = − ( i 1,, n ) dt ∂qi ∂qi q = q を用い、第 2 項を部分積分して dd となる。これを、オイラー・ラグランジュ方程式(EL 方程式)と呼ぶ。ラグランジュを用いた力学の定式 化をラグランジュ形式と呼ぶ。 1-2 ラグランジアン ラグランジアンの形を決めよう。簡単のために 1 粒子 1 次元の問題を考える。もちろん我々が欲しい方程式 = F = − はニュートンの運動方程式 mx L ( x , x ) = dV である。ここでは、天下り的にラグランジアンを与えよう。 dx 1 2 1 mv − V ( x ) = mx 2 − V ( x ) 2 2 とすると、オイラー・ラグランジュ方程式は ∂L = mx , ∂x d ∂L ∂L ∂V = mx, = − dt ∂x ∂x ∂x よって d ∂L ∂L ∂V − = mx + =0 dt ∂x dx ∂x dV = すなわち mx − = F となり、ニュートンの運動方程式が導けた。結局、 dx L = (運動エネルギー)-(ポテンシャル) とすればよいことが推測できる。 宿題 T= 円筒座標、球座標では運動エネルギーは 1 2 m 2 2 2 m 2 2 2 2 2 2 ms = r + r ϕ + z 2 )= r + r θ + r sin θϕ ( 2 2 2 ( と表されることを示せ。 1-3 具体的な例題 A. バネ(1 次元) 3 ) 解析力学 まとめ 1 2 1 2 1 1 = mv , V ( x) kx 、 L = T − V = mv 2 − kx 2 2 2 2 2 ∂L d ∂L ∂L = mv , = mv = ma, = −kx ∂x dt dx ∂x d ∂L ∂L よって、 0 = − = ma + kx, → ma = −kx となり、ニュートンの運動方程式が導けた。 dt ∂x ∂x T B. 平面振り子 1 T = m ( x 2 + y 2 ) , V =mg h 2 −l cos θ , x= l sin θ , y = x = l cos θ θ , y = l sin θ θ より、 1 ∂L T = ml 2θ 2 , V = −mg l cos θ 。および、 = ml 2θ より、 2 ∂θ ∂L ∂ ∂V ∂ cos θ = (T − V ) = − = mg l = −mg l sin θ 、より、 ∂θ ∂θ ∂θ ∂θ d ∂L ∂L g g − = ml 2θ + (md l sin θ ) = 0 、 θ = − sin θ ≈ − θ (θが小さいとき) dt ∂θ ∂θ l l C. 平面内(xy 平面内)での惑星の運動 1 GMm T= m ( x 2 + y 2 ) , V= − 2 r x= r cos θ , y = r sin θ , x = r cos θ − r sin θ θ, y = r sin θ + r cos θ θ より、 1 GMm なので、 L = T − V = m r 2 + r 2θ 2 + 2 r Mm d ∂L ∂L Mm mr mrθ 2 − G 2 (有効ポテンシャル中の万有引力) − = mr − mrθ 2 − G 2 = 0 → = r dt ∂r ∂r r d ∂L ∂L d − = 0 → mr 2θ = 0 、(面積速度一定の法則、あるいは角運動量の保存則) dt ∂θ ∂θ dt ( ) ( ) 4 解析力学 まとめ D. 一様重力場中の円錐上の運動 1 つの質点が、軸が鉛直で頂点が下を向いている滑らかな円錐(半頂角 α )の面上を運動する。その運動方程 式を求めよ。 1 T= m ( r 2 + r 2 sin 2 αϕ 2 ) , V= mgr cos α 2 1 よって L = T − V = m ( r 2 + r 2 sin 2 αϕ 2 ) − mgr cos α 2 r についての運動方程式は = mr mr sin 2 αϕ 2 − mg cos α 、 E. 球面上の運動 自分で考えてみよ。 5 d mr 2 sin 2 αϕ ) = 0 ( dt 解析力学 まとめ §2 保存法則 2-1 エネルギー ラグランジアンを L(q1 , q2 , qn , q1 , q2 , qn , t ) = L ( qi , qi , t ) とする。 = E ∑ q i i ∂L −L ∂qi を系のエネルギーと 呼ぶ。( L が時間にあらわに依らないとき) dE d ∂L dL d ∂L qi = − ∑ ∑ qi = −∑ dt dt i ∂qi dt dt i ∂qi i d ∂L ∂L ∂L ∂L qi + q= = ∑ qi + qi − i dt ∂qi ∂qi ∂qi i ∂qi ただし、 d ∂L ∂L = dt ∂qi ∂qi ∂L ∂L qi + qi ∂qi ∂qi 0 を用いた。よってエネルギーは保存する。ラグランジアンが = L T (qi ) − V (qi ) のよ うに書ける場合は、エネルギーは保存する。ポテンシャルがあらわに時間に依るような場合、( V = V (qi , t ) の場合は)はエネルギーは保存しない。 m ∂L qi2 と書ける場合は、 ∑ qi = 2T より、 E = 2T − L = 2T − (T − V ) = T + V となる。 ∑ 2 i ∂qi i T= すなわち、エネルギーは運動エネルギーとポテンシャルの和になる。 2-2 運動量 一般座標 qi に対し Pi = ∂L ∂L を一般運動量という(大文字を用いることにする)。また Fi = を一般力とい ∂qi ∂qi う。一般運動量は力学で習った運動量とは違うことがあり、「一般」を今後もつけて使う。EL 方程式より Pi = Fi を得る。以下では、多粒子系を扱うために、 a を粒子の番号を表すものとする( a = 1, 2, , N )。 − V と表されている場合は、= Pa ∂L = pa となり、一般運動量は通常の運動量に一致 m= av a ∂v a a ∂L ∂V ∂L する。 P = ∑ を系の全運動量とよぶ。 = − = Fa は a 番目の粒子に働く力を表している。よって ∂ra ∂ra a ∂v a d d d dP d ∂L ∂L dP = ∑ = dd ∑= ∑a Fa 。孤立系では ∑a Fa = 0 なので dt = 0 。すなわち運動量は保存する。2 粒子 dt a dt ∂v a a ∂ra のとき F1 + F2 = 0 は作用反作用の法則として知られている。 = L 2 1 ∑ 2m v a a 宿題 球座標、 r , θ , ϕ に対して一般運動量を与えよ。 ( ) m 2 2 2 2 2 2 r + r θ + r sin θϕ − V (r ) のとき 2 ∂L ∂L ∂L = mr 2 sin 2 θϕ 。よって Pr = mr 、 Pθ = mr 2θ 、 Pϕ = mr 2 sin 2 θϕ = mr 、 = mr 2θ 、 ∂ϕ ∂r ∂θ L= 宿題 電磁場中のラグランジアンは L = 1 2 mv − qϕ + qv ⋅ A 2 6 で与えられる。EL 方程式を求めよ。 解析力学 まとめ ∂L = mv + qA ∂v d d d d ∂L dr ∂A d d =ma + q ⋅ gradA + q dt ∂v dt ∂t ∂L d d −qgradϕ + qgrad v ⋅ A d= ∂r ddddddd ddddd grad A ⋅ B= A ⋅ ∇ B + B ⋅ ∇ A + B × rotA + A × rotB ddd d ddd ∇ v ⋅ A = v ⋅ gradA + v × rotA d ddd d ∂L ∂L dddd ∂A 0= − = ma + qv ⋅ gradA + q − −qgradϕ + qv ⋅ gradA + qv × rotA dd dt ∂r ∂r ∂t よって、 ma = q E + v × B 、一般運動量は ∂L P = =mv + qA =p + qA ∂v p は通常の運動量である。すなわち、電磁場が存在するときは、通常の運動量と一般運動量は異なる。 ( ( ( ) ) ( ) ) ( ) ( ( ) ) 2-3 中心力と角運動量の保存 d d d ddd = r × ( mv ) = r × p を角運動量という。 =r × F =r × (ma ) となるが、中心力のとき a ∝ r なので dt すなわち、中心力のとき角運動量は保存する。 1 二次元の場合: L= m r 2 + r 2θ 2 − V (r ) 2 ∂L L は θ に依らないので、 = Pθ = mr 2θ が保存する。 ∂θ ( d d =0。 dt ) 2-4 循環座標と保存則 ラグランジアン L に、ある特定の座標 qi が含まれない場合、この座標を循環座標という。このとき d ∂L ∂L = Pi = = 0 なので一般運動量は保存する。 dt ∂qi ∂qi 2-5 拘束系 一般的にはラグランジアンに現れる一般座標は独立でなければならない。ただし場合によっては拘束のある 座標を用いた方が良い場合がある。今、 q1 , q2 , q3 , qn の座標間に m 個の拘束条件があるとする。 m ϕ= 0= (k 1, 2, , m) 。このとき λk を未定係数としてラグランジアンを = L L(0) + ∑ λkϕ k (qi ) と書 k ( qi ) k =1 (0) く事が出来る。 L は拘束条件を考えないときのラグランジアンである。この時 EL 方程式は d dL(0) dL(0) = − dt dqi dqi ∑λ k dϕ k = (i 1, , n) dqi となる。これをラグランジュの未定定数法という。一般力は Fi = 7 ∂L で与えられたが、拘束条件から来る力 ∂qi 解析力学 まとめ Fi ( c ) = 例 ∂ m λkϕ k ( qi ) は、系を拘束するための力、すなわち拘束力を与える。 ∑ ∂qi k =1 3 角の斜面 、L 通 常 の 解 き 方 で は 、 斜 面 上 に 一 般 座 標 q を と る 。 こ の と き= d ∂L ∂L = mq = = −mg sin q 。よって q = − g sin q dt ∂q ∂q 1 mq 2 − mgq sin q 。 こ れ よ り 2 拘束条件を使ったやり方では、粒子は最初は、 xy 平面上を自由に動けるとする。 その上で、粒子はなめらかな斜面上( y = x tan θ )に拘束されているとする。従って、 1 m ( x 2 + y 2 ) − mgy + λ ( y − x tan θ ) 2 d ∂L ∂L x について: − = 0 mx + λ tan θ = 0 dt ∂x ∂x d ∂L ∂L y について: − = 0 my + mg −= λ 0 dt ∂y ∂y = L 拘束条件を時間で2回微分した式、 0 y − x tan θ = 0 に、上の式を代入して、 λ − mg + λ tan θ tan θ = すなわち、 λ = mg cos2 θ 。これを代入して、 x について: mx + mg cos θ sin θ = 0 y について: my + mg sin 2 θ = 0 を得る。 ∂ λ ( y − x tan θ ) ) = λ= mg cos2 θ y 方向の拘束力は Fy( c ) = ( ∂y ∂ −λ tan θ = −mg sin θ cos θ x 方向の拘束力は Fx( c ) = ( λ ( y − x tan θ ) ) = ∂x §3 ハミルトン形式(Hamilton formalism) 3-1 ハミルトン方程式(正準方程式) 8 解析力学 まとめ 一般運動量は Pi = ∂L で定義された。以下では表記の煩わしさを避けるために、一般運動量は小文字 ( pi ) で ∂qi = H 表記する。このとき、 ∑ pi qi − L は系のエネルギーであるが、 H = H ( pi , qi , t ) のように座標と運動量 i で表されているとき、これを系のハミルトニアンという。このとき dL = ∂L ∑ ∂q dqi + ∑ i ∂L dqi = ∂qi ∑ p dq +∑ p dq = ∑ p dq +d ( ∑ p q ) − ∑ q dp i i i i i i i i i ∂H を得る。 ∂qi 1 これをハミルトン方程式、もしくは正準方程式という。多粒子系で、 = L ∑ mav a2 − V ( ra ) と表されている a 2 ∂L 場合は、= Pa = pa であったので、 m= av a ∂v a pa2 pa 1 2 = − ∑ mav a − V = H ∑ pa ⋅ qa −= L ∑ pa ⋅ ∑ 2m + V ma a 2 a a a a dH = d ( ∑ pi qi − L ) = −∑ p i dqi + ∑ qi d pi 、よって より qi = ∂H ∂pi i , p i = − と表され、ハミルトニアンは運動エネルギーとポテンシャルの和であるが、重要なところは、ハミルトニア ンは、エネルギーと違って、(一般)運動量で書き表されているところである。 例 1 次元調和振動子 1 1 L = T − V = mv 2 − kx 2 2 2 ∂L p = p = mv 。これより、 v = ∂v m 従って、 2 1 2 1 2 p 1 p 1 p2 1 H =− px L =− pv mv + kx = p ⋅ − m + kx 2 = + kx 2 = T +V 2 2 m 2 m 2 2m 2 ハミルトン方程式(正準方程式)は、 x = ∂H p = ⇒ ∂p m ∂H p = mx = mv 、 p = − = −kx 。以上より、 mx = − kx ∂x エネルギー E が一定のとき 2 (単振動の方程式)を得る。 p2 1 2 + kx = E 2m 2 2 x y 1 、(楕円の方程式)。座標と運動量 ( x, p ) で表された空間を位相空間という。 + = a b 宿題 3 次元ポテンシャル V (r ) 中の 1 粒子ハミルトニアンをデカルト座標、円柱座標、球座標で求めよ。 9 解析力学 まとめ 3-2 最小作用の原理 最小作用の原理は作用 S = ∫ t2 t1 Ldt を最小にするような運動が実現するというものであった。これをハミルト ∑ p q − L なので ∫ Ldt = ∫ ( ∑ p dq − Hdt ) = ∫ ∑ ニアンに対する最小作用の原理に書き換えよう。 = H Ldt= ( ∑ pi qi − H ) dt= ∑ p dq − Hdt 、より i S= i i i qi( 2 ) t2 i t1 i qi(1) i t2 pi dqi − ∫ Hdt t1 以下では、(記法の)簡単化のため、1 自由度とする。 S の変分を取ると、 ∂H ∂q ∂H ∂p ∂H ∂p S = ∫ pdq + pd ( q ) − qdt − pdt = p q |qq + ∫ p dq − dt − ∫ q dp + dddddddd ( 2) (1) ∂H ∂H dq ∂H よって dq = dt , dp = − dt 。すなわち、 = ∂p ∂q dt ∂p ∂H ∂H qi = − , p i = , 1, , n ) を得る。 (i = ∂pi ∂qi , ∂H dt ∂q dp ∂H を得る。多自由度のときは、 = − dt ∂q 3-3 ポアソン括弧式 = f と g を一般座標 qi と一般運動量 pi の任意の関数とする。このとき { f , g} ∂f ∂g ∂f ∂g − をf i ∂qi ∂qi ∂pi ∑ ∂p i と g に対するポアソンの括弧式という。このとき、 ∂f ∂f ∂H ∂f ∂H ∂f ∂f df ∂f ∂f =+ ∑ qi + p i =+ ∑ − =+ {H , f } dt ∂t ∂pi ∂t ∂qi ∂pi ∂t i ∂qi i ∂pi ∂qi df 従って、 f が時間に依らず一定である条件は = 0 なので、もし物理量 f があらわに時間に依らない dt 場合は、 { H , f } = 0 となる。 宿題 3 次元ポテンシャル V = V (r ) が球対象のとき、角運動量 = r × p は保存することをポアソンの括弧式 を計算して示せ。 §4 正準変換 4-1 ハミルトン方程式とポアソン括弧式 10 解析力学 まとめ f を座標、運動量の関数 f = f ( pi , qi , t ) とすると = {H , f } ∂H ∂f ∂H ∂f − i ∂qi ∂qi ∂pi ∑ ∂p i であった。特に f = p j とすると j よって j より、 df ∂f = + {H , f } dt ∂t {H , p } = − ∂∂qH j よって j {H , q } = ∂∂pH また、 f = q j とすると df ∂f = + { H , f } 。ここで、 dt ∂t dq j dt = dp j dt = − ∂H 。 ∂q j ∂H 。従って、ハミルトン方程式を与える。これ ∂p j は、座標、運動量の関数である f の運動方程式を与える。 p2 1 + mω 2 x 2 の場合 2m 2 dp dq p = {= H , q} = { H , p} = −mω 2 x 、 dt dt m dH ∂H 当然、 = + {H , H } = 0 より、 H 、すなわち、エネルギーは保存する。 dt ∂t 例 調和振動子 H = 4-2 量子力学との対応 量子力学では物理量は演算子で与えられる。座標 xˆ 、運動量 pˆ も演算子になる。一般的に演算子は交換しな ˆˆ − px ˆˆ = い。例えば、座標と運動量は、[ xˆ , pˆ ] ≡ xp i という交換関係がある。一般に物理量は、座標および運 ( ) 動量で表される。ある物理量を fˆ = fˆ xˆ , pˆ , tˆ とする。これは演算子である。このとき をハイゼンベルクの運動方程式という。ここで = { i ˆ ˆ H , f ⇒ Hˆ , fˆ 例 } dfˆ ∂fˆ i ˆ ˆ = + H, f dt ∂t h であり、 h はプランク定数と呼ばれる。これは、 2π と同一視するとポアソン括弧式を用いた古典力学の運動方程式に一致する。 調和振動子 dfˆ ∂fˆ i ˆ ˆ + H , f を用いると dt ∂t 1 i 2 1 i 1 i dxˆ i pˆ pˆ= = = ×2 pˆ [ pˆ , xˆ ] + [ pˆ , = xˆ ] pˆ ) pˆ = , xˆ ] , xˆ [H ( dt 2m 2m 2m i m dpˆ i 1 i i = mω 2 xˆ 2 , pˆ =mω 2 xˆ [ xˆ , pˆ ] =mω 2 xˆ − = −mω 2 xˆ dt 2 i dx p dp ここで演算子の記号を取ると、 = 、 = −mω 2 x は古典力学の方程式に一致する。 dt m dt [ xˆ, pˆ ] = i より、 = 4-3 正準変換 = Qi Q= , q Q1 , Q2 , , Qn を q1 , q2 , , qn とは独立な座標とする。 i ( q, t ) ( q1 , q2 , , qn ) 。このような変換 を点変換と呼ぶ。この変換でラグランジアン方程式の形は不変である。 d ∂L ∂L − = 0 dt ∂qi ∂qi d ∂L′ ∂L′ − = 0 ただし、 L = L ( qi , qi , t ) を L′ = L′ Qi , Q i , t とする。ハミルトン方 dt ∂Q i ∂Qi ( 11 ) 解析力学 まとめ 程式はどのような変換で不変であろうか? Qi Q= , pi pi ( p, q, t ) という変換を考える。このとき、新しいハミルトニアン H ′ を用いて i ( p, q, t ) ∂H ′ ∂H ′ Q i = , Pi = − ∂Pi ∂Qi となる条件を導く。このような ( p, q ) → ( P, Q ) の変換を正準変換と呼ぶ。どち らの座標系でも最小作用の原理は成り立つので、最小作用の原理から、古い座標では、 ′ d ∫ ∑ pi dqi − Hdt = 0 新しい座標では、 d ∫ ∑ PdQ 0 となる。このためには括弧内の差は i i − H dt = i i 座標と運動量の任意の関数 F の完全微分である必要がある。よって = ∑ PdQ − H ′dt + dF ∑ p dq − Hdt i i i i 。 あ る い は dF = ∑ p dq − ∑ PdQ + ( H ′ − H ) dt i i i i 。これより ∂F ∂F ∂F となる。さらに、F = F (q, Q, t ) のように新旧の座標の関数であ pi = − H+ , Pi = , H′ = ∂qi ∂Qi ∂t ( ることがわかる。F を正準変換の母関数と呼ぶ。d F + ばわかるように G= F + p= i ∂G ∂qi , Q= i ∂G ∂Pi ∑ PQ とすれば i ∑ PQ=) ∑ p dq + ∑ Q dP + ( H ′ − H )dt i i i i i i とすれ i , H=′ H + ∂G ∂t となり、母関数 G は古い座標 q と新しい運動量 P の関数となっている。このような変換をルジャンドル変 換と呼んでいる。 例 母関数 F を F = ∑ q Q とすると i i ∂F ∂F pi = = Qi , Pi = − = −qi ∂qi ∂Qi このように正準変換では、座標、運動量は自由に移り変わる。すなわち、正準変換により、座標あるいは運 動量という概念が失われる。 例 熱力学でのルジャンドル変換 dU = TdS − PdV に対して F =U − TS − SdT − PdV (U + TS =F ) 。 dF = 熱力学では独立な変数は二つある。内部エネルギーは、 S と T の関数であるが、ルジャンドル変換の結果、 ヘルムホルツの自由エネルギーは V と T の関数になる。 4-4 ハミルトン・ヤコビ方程式 作用をある決まった初期状態( t = t0 )から出発し、EL 方程式を満たす軌跡にそって、ラグランジアンを積 分したものと考える。このとき、作用は(終点、 t = t0 の)座標と時間の関数と考えることができる。 = S t Ldt ∫= t0 = ∫ ( ∑ p dq − Hdt ) の式より、 dt dS i i dS L= pi , dqi 。作用を座標と時間の関数とみなすと ∂S ∂S dS ∂S ∂S dS ∂S ∂S = −∑ qi = L − ∑ pi qi = − H ( q, p ) 。すなわち + H q, = 0 = +∑ qi 。これより ∂t dt ∂qi ∂t dt ∂t ∂qi ∂q あるいは、詳しく書けば、 ∂S ∂S ∂S + H q1 , , qn , , , 0 。これを、作用 S に対する偏微分方程式をハ = ∂t ∂q1 ∂qn ミルトン・ヤコビ方程式という。 12 解析力学 まとめ §5 回転系、およびネーターの定理 5-1 回転によるベクトルの時間的変化 n を原点を通り,回転軸方向を向く単位ベクトルとする. z' 質点の位置ベクトルを r とすると,回転の微小回転 dθ に 対して,位置ベクトルを変化させるとすると、位置ベク dd トルの変化は= dr ndθ × r で与えられる.従って,時間的 k (t ) z ω y' d dr dθ d dθ y とすると, × r で与えられる. ω = n i t () dt dt dt d dr d dθ で角速度であり,方 x = ω × r となる.ω は大きさは dt dt x' 向は回転軸方向を向く. A(t ) を時間に依存する任意のベクトルとする.成分で表 すと, A(t ) = Ax i + Ay j + Ax k で表される.今,原点の周りに,座標軸を示すベクトル i , j , k 自身が角速度 dA dAx dAy dAz di dj dk ベクトル ω に従って回転するとすると, = + Ay + Az i+ j+ k + Ax が成立する. dt dt dt dt dt dt dt di dj dk dA d A ここで,前の結果, = ω × i , = ω × j , = ω × k を用いると = + ω × A を得る.ただし, dt dt dt dt d t d A dAx dAy dAz = i+ j+ k は,回転座標系で見たときのベクトル A(t ) の時間的変化を表す。 dt dt dt dt 変化は= n j (t ) 5-2 回転座標系 慣性系( S 系)を回転した回転系( S ′ 系)で粒子の運動を考える。 d dddd このとき v = v ′ + ω × r = v ′ + ω × r ′ となる。∵ r ′ − r = dr = ω × r dt 。 1 2 = L mv − V (r ) に代入すると、 2 2 1 1 2 1 2 L= m (v ′ + ω × r ′ ) − V ′(r ′= ) mv ′ + mv ′ ⋅ (ω × r ′ ) + m (ω × r ′ ) − V ′(r ′) 。 2 2 2 よって、(以下、ダッシュ記号を省いて記述する)ラグランジュの全微分は、 dddd ∂V ddddddddd dL = mv ⋅ d v + md v ⋅ (ω × r ) + mv ⋅ (ω × dr ) + m (ω × r ) ⋅ (ω × dr ) − d dr ∂r ∂V ∂L ∂L d ∂L ∂L これから、 =mv + m (ω × r ) 、 = m (v × ω ) + m ( (ω × r ) × ω ) − 。よって EL 方程式 − = 0 dd ∂v ∂r ∂r dt ∂v ∂r d ddddd dv ∂V dddd より m + m ω × r + m (ω × v )= m (v × ω ) + m ( (ω × r ) × ω ) − d dt ∂r d dddd ∂V dv ddd すなわち、 m = − d + m r × ω + 2m (v × ω ) + m ( (ω × r ) × ω ) ∂r dt ( ) ( ) コリオリ力 遠心力 あるいは、 d dddd d v d dddd m = F ( r ) + m r × ω + 2m (v × ω ) + m ( (ω × r ) × ω ) dt ( ) 13 解析力学 まとめ a を静止系での質点の加速度, α を回転系での質点の加速度とすると, ma = ma − mω × (ω × r ) − 2mω × v − mω × r を得る .慣性力 は3種 類あり , −mω × (ω × r ) を遠 心力 , −2mω × v をコリオリ力, −mω × r を回転加速度による力とよぶ.遠心力は物体が静止していてもかかる力 であるのに比べ,コリオリ力は質点が速度を持たないと働かない力であることに注意しよう.最後の慣性力 は回転が一定であれば,ゼロになる.回転軸が z 軸の時は, ω = (0,0, ω ) とすると, ω × r = (−ωy, ωx,0) , ω × (ω × r ) = (−ω 2 x,−ω 2 y,0) , ω × v =(−ωv y , ωv x , 0) となる. d d dr′ 注1: v ′ ≠ であることに注意すること。 v ′ は回転座標系から見たときの速度を表す。 dt d δ dv δv 注2: は、回転系でみたときの加速度なので、本来は、 と表すべきである。すなわち、一旦回転 dt δt 系のラグランジアンを得た後は、すべて回転系での物理量になる。 5-3 ハミルトン形式 以下はダッシュの記号を取る。また ω = 0 とする。(一様回転) 1 2 1 2 だったので、運動量は、 mv + mv ⋅ (ω × r ) + m (ω × r ) − V ( r ) 2 2 mv 2 m 2 ∂L − (ω × r ) + V (r ) となり、ハミ p = =mv + m (ω × r ) と表される。エネルギーは、 E = p ⋅ v − L = 2 2 ∂v 2 2 m 2 1 p ルトニアンは H = − p ⋅ (ω × r ) + V (r ) となる。 p − m (ω × r ) − (ω × r ) + V (r )= 2m 2 2m こ こ で 、 p ⋅ (ω × r ) =ω ⋅ ( r × p ) =r ⋅ ( p × ω ) と 変 形 で き る こ と に 注 意 す る と 、 ハ ミ ル ト ン 方 程 式 dd dr ∂H dp ∂H ∂H ∂V p の最初の式より、v = − (ω × r ) 、二番目の式より、p = = dd , = − − =p × ω − を dt ∂p dt ∂r ∂r ∂r m ラ グ ラ ン ジ ア ン は 、= L 得る。 5-4 ネーターの定理 一般座標のある関数 Fj ( qi , t ) を用いて、一般座標を微小変化させる( ε は微少量): qi → qi′ = qi + ε Fi 。こ のとき、もしラグランジアンの関数系が変わらない場合は、 ∑ i ∂L Fi は保存量となる。これをネーターの ∂qi 定理という。 証明: 最初のラグランジアンを L ( qi , t ) 、変換後のラグランジアンを L′ ( qi′, t ) とする。 ( ) このとき、 L′ =L ( qi′, qi′, t ) =L qi + ε Fi , qi + ε Fi , t =L ( qi , qi , t ) + ε ∑ i ∂L ∂L Fi + Fi q q ∂ ∂ i i ラグランジアンの関数系が変わらないので( L′ = L )、第二項はゼロになる。また、EL 方程式より、 = 0 ∑ i ∂L ∂L Fi + F= i ∂qi ∂qi ∑ i d ∂L ∂L d ∂L Fi + F= Fi ∑ i ∂qi dt i ∂qi dt ∂qi 証明終わり。 例:多粒子系で相互作用がお互いの粒子の位置ベクトルの差にのみ依る場合、 14 解析力学 まとめ L= ∑ 2m v − ∑ V ( r 1 2 a a a a a >b − rb ) このとき、 ra → ra′ + ε Fa という並進にたいして、ラグランジアンの形は変わらない。関数として、 Fa = 1 と すれば、 ∂L ∂L = mv F ∑ ∑= ∑= ∂r ∂r a a a a a a a P a すなわち、系に並進対称性がある場合は、全運動量は保存する。 §6古典場の解析力学 6-1 一次元の場 x = 0 、 x = の 2 点に弦が張られている。線密度は ρ 、平衡からの変位を φ ( x, t ) とする。弦の長さは ∫0 ( dx ) + ( dφ ) 2 2 = ∫ 0 2 2 1 ∂φ ∂φ 1 + dx ≈ ∫ 1 + dx 0 ∂x 2 ∂x ∂φ 1 ∂φ が小さければ、弦の伸びは最低次で となるので、 dx となり、張力 τ によるポテンシャルエネル ∂x 2 ∫ ∂x 2 1 ∂φ 1 ∂φ ギーと弦の運動エネルギーはそれぞれ、 V = τ ∫ dx 、 T = ρ ∫0 dx 2 ∂x 2 ∂t 2 2 1 ∂φ 1 ∂φ ランジアンは、L = T − V = ρ ∫ dx − t ∫ dx ≡ ∫ dx 0 2 0 ∂t 2 ∂x 2 で与えられる。よってラグ 1 ∂φ 1 ∂φ となる。 = ρ − t は 2 ∂t 2 ∂x 2 2 ラグランジアン密度と呼ばれる。 L を時間で積分したものが作用なので、作用 = S t1 t2 0 dt ∫ dx ∫= 2 ∫∫ dx dt となる。 6-2 一次元の場に対する最小作用の原理 φ,t = ∂φ ∂φ 、φ, x = と書き表すと = S ∂t ∂x ∫ ∫ ∂ ( ) える。 dd S dx dt φ,t + ∂φ,t 1 , φ ) dxdt ∫ ∫ ρφ ∫ ∫ (φ = 2 ,t ,x 2 ,t 1 − tφ,2x dxdt 。φ に関する変位 δφ を考 2 ∂ d (φ, x ) ∂φ, x ∂ ∂ (δφ ) 、 δ (φ,x ) = (δφ ) を用いて部分積分すると、 ∂t ∂x ∂ ∂ ∂ ∂ ddφ S= − ∫ dx ∫ dt + + 境界項 ∂φ ∂x ∂φ ∂ t , t , x δ (φ,t ) = δφ = ( x, t1 ) δφ= ( x, t2 ) 0 、 δφ= ( 0, t ) δφ= ( , t ) 0 で、境界項はゼロになる。また、 δφ は任意のため、被積分項 [] = 0 。即ち、 ∂ ∂ ∂t ∂φ,t ∂ ∂ 0 + = ∂x ∂φ, x これ が 1 次元 場に対す る EL 方 程式にな る ( に φ 依存性 がない場合 ) 。 に φ 依存性が ある場合 、 15 解析力学 まとめ 2 2 ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ 1 1 = (φ , φ,t , φ, x ) は、− + + = 0 となる。EL 方程式に、 = ρ φ − t (φ, x ) ( ) t , 2 2 ∂φ ∂t ∂φ,t ∂x ∂φ, x ∂ 2φ ∂ 2φ を代入すると EL 方程式は、 ρ 2 − t = 0 となり、これは弦に対する波動方程式である。 ∂t ∂x 2 ------------------------------------------------------------------------------------------------- 宿題:波動方程式の一般解を求めよ。また位相速度はどう書けるか? ------------------------------------------------------------------------------------------------次に運動量をどう定義できるか、考えよう。粒子のとき、 p = ∂L ∂ で定義された。場に対しては、 Π = ∂φ,t ∂q 定義する。これを、運動量密度と呼ぶ。このとき、ハミルトニアン密度は、 ∫ て、波のエネルギーは = = E = dx ∂ φ − dx , t ∫ ∂φ,t で =� = Πφ,t − で定義する。従っ となる。 ------------------------------------------------------------------------------------------------- 宿題:弦の場合に ∏ 、 を具体的に求めよ。 ------------------------------------------------------------------------------------------------- 6-3 三次元の場 2 2 2 2 2 1 1 1 1 ρ (φ,t ) − t (φ, x ) + (φ, y ) += φ, z ) ρ (φ,t ) − t ∇φ ⋅∇φ ( 2 2 2 2 ( 3 次元の場合は、 = ) とすれば良いこと が予想される。作用は、時間と3次元空間の積分で、 S (φ , φ , φ , φ , φ ) dxdydzdt ∫ (φ , φ , φ ∫= ,t ,x ,y ,z ,t と表される。一次元と同様にして、EL 方程式は 3 次元の波動方程式、 ,x , φ, y , φ, z ) dVdt ∂ ∂ ∂t ∂φ,t ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + + x φ y φ ∂ ∂ ∂ ∂ ,x , y ∂z ∂φ, z 2 ∂ 2φ ∂ 2φ ∂ 2φ ∂ 2φ 2∂ φ v − + + 2 = − v 2 ∆φ= 0 2 2 2 2 ∂t ∂y ∂z ∂t ∂x を得る。ただし、 v = 0 より、 = τ とした。 ρ 6-4 シュレディンガー方程式 y ( x, y, z , t ) を複素数の場(複素場)として、ラグランジアン密度として、 * 2 * i ∂ψψ ∂ * = ∇ψψψψψψ ⋅∇ + V + − * ∂t 2m 2 ∂t ( ) とする。このとき、作用は ( ) S = ∫ y ,y ,t ,y , x ,y , y ,y , z ,y * ,y *,t ,y *, x ,y *, y ,y *, z dxdydzdt 2 dd ∂y i ∂y * * * ∇ ⋅∇ + + −y * V y y y y y dVdt ∫ 2m 2 ∂t ∂t 2 ∂ψ * 部分積分を行うと、 = ∆ + V − i S 表面項+ ∫ ψψψ − dVdt ∂t 2m ∂ ∂ 2 より、 と書けるが、ψ * とψ は独立に取れるので、ψ * で偏微分すると = 0 ψψψ = − ∆ + V を得る。 i ∂t 2m ∂ψ * = ( ) 16 解析力学 まとめ これはシュレディンガー方程式と呼ばれる。シュレディンガーが 1926 年に量子力学の基本的方程式として、提 出したものである。 17
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