Page 1 Page 2 バスケッ トボール授業に関する実践的研究ー … 「空間

Title
バスケットボール授業に関する実践的研究Ⅰ −「空間認識」の視点か
ら−
Author(s)
城後, 豊; 岩崎, 正義; 日下部, 未来
Citation
北海道教育大学紀要. 教育科学編, 59(1): 101-108
Issue Date
2008-08
URL
http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/898
Rights
Hokkaido University of Education
北海道教育大学紀要(教育科学編)第59巻 第1号
JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.59,No.1
平成20年8月
August,2008
バスケットボール授業に関する実践的研究Ⅰ
−「空間認識」の視点から−
城後 豊・岩崎 正義*・日下部未来**
北海道教育大学札幌枚保健体育科教育学研究室
*北海道教育大学大学院教育学研究科
**札幌市立真駒内小学枚
PracticingResearchonClassofBasketballI
−FromtheAspectof“SpacePerceptlOn”−
JOGOYutaka,IWASAKIMasayoshi*andKUSAKABEMiku**
DepartmentofHealthandPhysicalEducationPedagogy,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation,SapporoOO2−8502
*GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation
**
MakomanaiElementarySchool,inSapporoOO5−0012
概 要
本稿は,バスケットボール授業に関する実践研究の課題から,「空間認識」を学習課題として単元に位置
づけ,その指導内容に関する知見を得ることを目的とした。分析の結果,「空間認識」の向上を意図する授
業においては,ゲームを通したバスケットボール技術の学習後,コート上の空間の見つけ方や動き方を学習
することで,その効果が期待できることが示唆された。また,「空間認識」に関する
児童の自己課題を形成
するためには,「ボールの軌跡図」が有効的であった。さらに,「積極的なシュート」を前提に,コート上の
「空間を見つける→空間に動く→空間を使う」という指導順序が成り立つことが検証できた。
【keywords;体育授業,バスケットボール,空間認識】
目 的
体育は,児童にとって人気が高い教科である。「/ト
教科」の上位に入っており,過去10年間においても
同様の結果が報告されている。今日の学校体育では
「運動の楽しさ」2)が重視されており,児童が誰で
学生の学習に関する意識・実態」1)によると,体育
も楽しめるような教材や,「ニュースポーツ的な教
は小学生の「好きな教科」「がんばって勉強したい
材」3)を取り入れた授業実践が行われている。
101
城後 豊・岩崎 正義・日下部未来
しかし,「概念の実体化による認識の誤り」4)と
して,単元を構成し,授業を実施した。具体的に
は,「バスケットボール技術に関する空間認識」
指摘されるように,「楽しさ」5)の解釈の誤りから,
「楽しければ良い」「遊ぶ」「楽しく汗をかく」だ
「コートにおける空間認識」の学習内容について
けという授業実践の実態も報告されている。つま
の分析を行い,若干の知見を得ることにした。
り,「学ぶ内容」が欠けた体育の授業が行われて
いる。体育は,教育の「文化の継承と発展および
方 法
人間形成」6)という目的の中にある「教科」であ
ることから,「何を教えるのか」5)を明らかにし,
1.調査対象及び期日
その定着を目指す授業実践が必要である。体育で
調査対象と調査期日は,表1の通りである。
「何を教えるのか」について,中村は「運動文化
の継承・発展に関する科学」7)とし,高橋は「文
表1 調査対象と調査期日
化としてのスポーツや,スポーツに関する科学」8)
調査対象
としている。つまり,授業実践の上で,授業者は,
札幌市立H/ト学校 第6学年
単元 E ボール運動バスケットボール 8時間
運動・スポーツそのものの特性(文化)や,それ
男子
39
らに関する研究(科学)などから学び,単元を構
女子
計
20
Fi9
調査期R 2006年11月27R(月)∼2006年12月22R(金)
成し,授業を実践していくことが求められている。
特に,現在の小学校学習指導要領の内容に関わ
りながら,第5・6学年の「E ボール運動」の
2.単元計画
領域は8)9),授業についての“議論が非常に盛ん,,
「空間認識」を学習課題として,全8時間のバ
である。その中でも,先行研究では,授業におい
スケットボールの学習内容で構成した。
てどのような学習内容をクローズアップすべきな
表2は,本研究におけるバスケットボール授業
のかについての問題が検討されており,さらなる
の単元計画を示している。
実践的な研究が必要である。この領域では,「ゲー
表2 バスケットボール授業の単元計画
ム」が学習の中心であり,鈴木らが指摘している
学習課題
次 時
ように,学習のねらいは「より良いゲームができ
ロ 蚕
るようになること」10)が目的である。つまり,「ど
ロ
・ためしのゲーム
入
のような授業であると,より良いゲームができる
2
ようになるか」が課題である。
【自分の前にディフェンス
琵 術
「ボール運動」の領域におけるゲームで
は11)12)13)14)15)16),ボールに対して児童が“固ま
る’’状態から,“広がる’’ことが課題とされてきた。
に
関
〈空間を生み出す〉
3
認 4 【ドリブルを使って人の固
塗
まりから抜け出そう】
3
学習課題に関する“広がる必要性’’の実践として
唆されているが,学習の課題としての「空間認識」
・コート上のスペースとは
コ 円
の技
ト に
お
け
る
空
商
・コート上のスペースを見
【コートを広く使って
つけ,その場所に動いた
攻めよう】 りして,コートを広く
使ってゲームを行う
を,内容として位置づけた授業の実践は数少ない。
そこで本研究では,ゲーム中心のバスケット
ボール授業において,「空間認識」を学習課題と
102
・ドリブルを使う場面の判
断
〈密集地帯から抜け出す〉
究は数多く報告されているが,それらは子どもの
術の向上が,“広がる’’ことに関係することは示
・シュートする場面の判断
と積極性
〈自分の前方に障害がない
ときにはシュートする〉
す
間
しかし,“広がる’’ことを目指す教材開発の実践研
は十分ではない。また,「空間認識」註1)17)18)
学習内容
4 ま
と
め
ゲームをしよう】
・学習してきた「広がり」
を生かしてゲームを楽し
む
バスケットボール授業に関する実践的研究Ⅰ
攻めた」の得点における平均値の推移と平均
3.調査内容
本研究では,質問紙による調査を行った。
の差を比較した。さらに,各授業時間におけ
毎時間の質問紙は,「シュー
る「空間認識」の各項目の相関関係を分析し
ト」,「パス」,「ド
リブル」の「基礎技術」と「空間認識」を組み合
た。
わせた「バスケットボール技術に関する空間認
識」,ゲーム中の「コートにおける空間認識」を
いずれも,相関関係の有意性の検定には
質問項目として設定し,授業後に,児童に授業を
FisherのrのZ変換を,平均の差の検定には
振り返ってもらい,記入させた。
Sche鮎の多重比較検定を使用した。
また,授業では,1台のデジタルビデオカメラ
5.統計処≡理
を用いて,毎時間のゲームの様子を撮影し,自作
のバスケットボールのコート図を用いて,「ボー
質問紙の結果の処理は,MicrosoftOfficeEx−
ルの軌跡」を記録した。記録した「ボールの軌跡
ce12003(Microsoft社製)およびStatViewfor
図」については,毎時間の授業の「導入」場面に
Windowsversion5.0(SAS社製)を用いて行っ
おいて児童に提示した。
た。なお,有意水準を危険率5%未満とした。
表3に,毎時間の質問項目註2)19)20)を示した。
結果及び考察
表3 質問紙項目
項
目
前に人(ディフェンス)がいないときに
バスケットボール技術
に関する空間認識
コートの中の空いている場所を見つけた
空間認識
図1及び表4に,「空間認識」全体における平
均値の推移及び,分散分析の結果を示した。
ドリブルで、人の固まりから抜け出した
コートにおける
1.「空間認識」全体の推移と授業間の相関関係
コートの中の空いている場所に動いた
コートを広く使って攻めた
分散分析の結果,授業間において有意な得点の
差(p<.0001)が認められたため,多重比較検
定を行った。その結果,1時間日に対し,5時間
目,6時間目,7時間目,8時間目の得点が,そ
4.分析方法
れぞれ有意に高い値を示した。このことから,単
毎時間の質問紙の各項目に対して,「よくでき
た」に4点を,「まあまあできた」に3点を,「あ
まりできなかった」に2点を,「できなかった」
に1点を与え,自己等尺度評価を実施した。具体
的には,以下の2つの視点から分析した。
(丑 「空間認識」の技術の変化について,1時
間毎の「空間認識」得点全体の平均値の推移
と平均の差を比較した。また,各授業間の相
1
ンスがいないときにシュートをうった」「パ
ている場所を見つけた」「コートの中の空い
ている場所に動いた」「コートを広く使って
4
5
6
7
8
図1 「空間認識」全体の推移
(卦 「空間認識」の項目である「前にディフェ
固まりから抜け出した」「コートの中の空い
3
*;Pく0.05vsl,†;Pく0.01vsl.手;Pく0.001vsl
関関係について分析した。
スを出した後に動いた」「ドリブルで,人の
2
表4 「空間認識」全体の推移
授業時数 ロ 2 3 4 5 6 7 8 p値
M 2.35 2.94 2.90 2.83 3.13 3.13 3.44 3.40
<.0001
SD 0.81 0.67 0.73 0.69 0.65 0.55 0.58 0.63
Postrhoc
5時間目,6時間目,7時間目,8時間目>1時間目
注)Pos卜hoc欄は,1時間日に対して5∼8時間日が有意に高い値を示した
ことを表す
103
城後 豊・岩崎 正義・日下部未来
元を通して各児童が「空間認識」の課題を解決し
ていったことが認められる。また,5時間目以降に,
表5 授業間の相関係数
授業時数 1 2 3 4 5 6 7 8
** ** *** *** ** ** **
1時間日に対して有意な高い値を示していること
2 0.669
から,2∼4時間日で学習した「バスケットボール
技術に関する空間認識」が,5∼7時間日の学習
を通し,「コートにおける空間認識」と相互に向
上していったことが示唆される。つまり,学習の
** *** * ** ***
3
0.649
0.397
4
0.717
5
0.733
6
0.573
0.536
0.555
7
0.666
0.624
0.53
8
0.635
0.772
0.574
0.716
*
0.54
0.632
**
**
0.649
0.499
*
*
***
***
0.782
0.763
0.538
*
***
***
0.691
*
***
***
**
0.794
0.834
***
0.87
0.624
0.786
*;p<0.05,**;p<0.01,***;p<0.001
発展としての転移性が確認できた。
また,1時間日に対して2時間日,3時間日,
相関分析の結果,授業間の得点ほぼ全てに有意
4時間日は,有意な差は見られなかったが,2時
な相関関係(0.53<r<0.87)が認められた。2
間日以降に得点が高くなる傾向がある。このこと
時間日と3時間日の間には,有意な関係は確認さ
から,「シュー
れなかったが,弱い相関関係(r=0.397)が見
ト」「パス」「ドリブル」の技術が伴っ
た「空間認識」への契機となっていることが推察
られた。このことから,本研究で考案した単元に
できる。この単元では,ゲームをビデオ撮影し,
おいて,授業間の「空間認識」の学習内容の関連
ボールの軌跡を図にしたものを,2時間日以降の
が強く,さらに児童の学習が継続していたことが
授業の「導入」場面で碇示し,その図を見て児童
認められる。
が気づいたことなどを自由に発表できる時間を設
けている。児童からは,「コートの端のところに
線が無い」「ラグビーボールみたいな線になって
特に,5時間日,6時間日,7時間日,8時間
目の授業の関係については,相関係数が高く
(0.624<r<0.87),有意な関係(p<0.001)
いる」(図2)などの意見が出され,授業を通し
にあり,学習内容の連続性が強い。先述の「空間
て次第に,「空間」を使うことに関する必要性の
認識」全体の推移において,5時間日以降の得点
意見が出されるようになっていった。
が有意に高かったことから,単元前半において,
ゲームを通してバスケットボールの基礎技術を学
習し,その上に,コートにおける空間の見つけ方
や動き方を学習することで,より「空間認識」の
学習内容が児童に定着していくことが期待でき
る。
2.「空間認識」各項目の推移,授業毎の相関関
係
図2 ボールの軌跡図
「空間認識」の項目である「前にディフェンス
がいないときにシュートをうった」「パスを出し
つまり,具体物を使って明確な課題提示をする
た後に動いた」「ドリブルで,人の固まりから抜
ことが,主体的に自己課題を想起させ,児童の技
け出した」「コートの中の空いている場所を見つ
術を高めるために重要である。特に,「ボール運動」
けた」「コートの中の空いている場所に動いた」
の領域におけるゲームでは,このような「ボール
の軌跡図」の提示が効果的である。
「コートを広く使って攻めた」について,平均値
の推移と,分散分析を行った結果を図3及び表6
に示した。
次に,授業間における「空間認識」全体の相関
係数を表5に示した。
104
その結果,「前にディフェンスがいないときに
÷ノユートをうった」「パスを出した後に動いた」「ド
バスケットボール授業に関する実践的研究Ⅰ
表6 「空間認識」各項目の推移
授業時数
Postrhoc
12345678
前に人(ディフェンス)がいないときにシュートをうった
2.202.542.962.853.073.073.303.27
1.321.251.311.191.151.271.171.22
パスを出した後に動いた
2.923.503.543.543.363.333.673.73
1.000.780.900.650.911.070.620.53
ドリブルで,人の固まりから抜け出した
1.521.831.921.962.181.892.592.31
0.921.091.161.221.160.931.281.46
コートの中の空いている場所を見つけた
1
2
3
4
5
8
2.843.503.273.193.713.633.783.73
5,6,7,8>1
1.030.720.870.940.530.630.420.60
7
コートの中の空いている場所に動いた
8
+前に人(ディフェンス)机lなしヽと割こシュトをうった+バスを出した後に勤しlた
「▲ドリブルで、人の固まりから濃け出した ラlコトの中の空いている■所に動いた
〉トコトの中の空いている■断を見つけた
十コトを広く使って攻めた
図3 「空間認識」各項目の推移
2.363.253.042.653.183.593.633.65
0.990.990.821.160.980.640.560.63
2,5,6,7,8>1 6,7,8>4
コートを広く使って攻めた
2.283.002.692.813.293.263.673.69
1.170.981.051.100.760.810.550.68
‡;p<.0001
リプルで,人の固まりから抜け出した」の3項目
児童に「だんご状態」や「ラグビーボール型の軌
は,単元を通して有意な差は見られなかったが,
跡」を視覚的に知覚させ,課題意識を形成させた
数値が上昇する傾向が確認できた。「コートの中
上に,「空間を見つける」内容を位置づけること
の空いている場所を見つけた」では,有意な差(p
により,効果的な「空間認識」の向上が期待でき
<.0001)が認められたため,多重比較検定を行っ
る。
た。その結果,1時間目に対して5時間目,6時
一方,「ドリブルで,人の固まりから抜け出した」
間日,7時間日,8時間日が有意に高い値(p<
については,他の項目よりも値が低く推移した。
0.05)を示した。また,「コートの中の空いてい
これには,実際のゲーム場面ではパスによる「速
る場所に動いた」は,1時間日に対し2時間日,
攻」が多く見受けられたこと,ドリブルを使う児
5時間日,6時間日,7時間日,8時間日が,4
童が一部に限られていたことが原因として挙げら
時間日に対し6時間日,7時間日,8時間日が,
れる。ドリブルの発生と発展には特有の歴史的背
それぞれ有意に高い値(p<.001)を示した。さ
景註3)19)21)があるため,バスケットボールの授
らに同様に,「コートを広く使って攻めた」では,
業においてどのように位置づけ,どう扱うかは今
1時間日に対し5時間日,6時間日,7時間日,
後の課題である。
8時間日に,3時間日に対し7時間日,8時間日
に,それぞれ有意な差(p<0.05)が認められた。
これらのことから,「空間認識」の各項目にお
表7は,各授業時間における「空間認識」6項
目の相関係数を示したものである。
表7を概観すると,1時間目に相関関係が多く,
いても,単元を通して課題が解決に向かっていっ
2時間日に数が減り,その後,相関関係の数に変
たことが明らかとなった。特に,「コートの中の
動はあるものの,徐々に項目間の関係が密接に
空いている場所を見つけた」「コートの中の空い
なっていくことが確認できる。1時間日に相関関
ている場所に動いた」「コートを広く使って攻め
係が出ているのは,平均値が低いことからも,ま
た」については,多重比較検定の結果とグラフの
だ児童の,学習に対しての理解が深まっていない
推移から,5時間日以降に急な高まりを確認でき
ことが理由として挙げられる。2時間日以降,「空
る。これには,5時間日の学習内容である,空間
間」を授業で意識していくことで,正確な自己評
を「見つける」ということが,「ボールの軌跡図」
価ができるようになっていくことが推察できる。
などでそれまで児童に形成されてきた,いわゆる
「だんご状態」をどうするか,という課題の解決
に向かう糸口になったことが考えられる。つまり,
次に,設問項目別の関係を概括する。
(1)「(丑前にディフェンスがいないときに
÷ノユートをうった」は,平均値の上昇に伴い,
105
城後 豊・岩崎 正義・日下部未来
表7 各授業時間における「空間認識」6項目の相関
彗 =.=
①
②
≡ :
M 釦 ① ③ ⑨ ④ ⑤ ⑥
彗 =.=
パスを出した後に動いた
時
間
*締
四 1.00 0叔5 \ *
四 四 0.665 0.457 \
* 梢
② パスを出した後に動いた
時
間
凹
凹
⑥ コートを広く傭って攻めた
ご+さ 四 0.821 四 仇478 0.384 乱発8 \ ⑥ コートを広く傭って攻めた
① に人(ディフェンス)がいないときにシュートをうった 2.誕 田 \
② パスを出した後に軌、た
3.渕 四 0.3鎚 \
時
1.朗 四 0.611 1戯」6 \
②
パスを出した後に軌、た
時
間
間
凹
3.00 0.鍼 0.391 0.342 仇122 0.246 鋸剃 \ ⑥ コートを広く傭って攻めた
⑥
コートを広く傭って攻めた
①
に人(ディフェンス)がいないときにシュートをうった 田 田 \ 料 ロ
パスを出した後に軌、た
時
間
ロ
田 0.師 0.524 \
四 四 仇47 0.345 \
②
パスを出した後に軌、た
時
間
凹
①
コートを広く傭って攻めた
四 田 0.573 0.561 仇471 0.443 仇431 \ ⑥ コートを広く傭って攻めた
に人(ディフェンス)がいないときにシュートをうった 田 四 \ *
② パスを出した後に軌、た
時
間
田 四 0.424 \
田 四 0.328 0.027 \
凹
料
***
**
3ぷ 田 0.263 \
田 四 0.559 仇307 \
3ぷ 四 −0.86 仇019 十+十丁 \
四 四 0.182 仇319 0.115 仇089 \
四 四 0.279 仇382 0.191 四 0.361 \
*
田 四 0.512 \
*締
四 四 0.521 仇404 \
四 四 0.526 8.439 0.181 \ *
3ぷ 四 0.521 仇622 0.422 仇446 \ *
田 四 0.513 仇335 0.452 仇327 仇45 \
*
*
**
② パスを出した後に軌、た
時
間
凹
⑥ コートを広く傭って攻めた
**
琳
琳
凹
⑥
*
田 四 0.398 \
四 四 0.醐1 仇218 \
田 四 0.455 仇521 0.265 \ ** 料
四 四 0.溺1 仇339 0.166 仇523 \ *
四 四 0.439 仇594 0.276 仇571 0.473 \
① に人(ディフェンス)がいないときにシュートをうった 3.即 四 \
凹
②
M さい ① ③ ⑨ ④ ⑤ ⑥
≡ :
に人(ディフェンス)がいないときにシュートをうった 四 四 \ *** *** * 田 田
田 1.川 0.購 −0.07 仇亜4 0.271 仇667 \ ⑥ コートを広く傭って攻めた
田 四 0.362 \
*締 ***
0.557 仇213
田 四 0.4朗 仇884 0.279 \ *締 *
田 四 0.3朗 仇665 0.425 仇693 \ *
四 四 0.鋸9 仇645 仇26 仇473 仇49 \
*;p<0.05,淋;p<0.01,*淋;p<0.001
他の項目と数多く相関関係を保って推移して
くことを体験したりすることで,「パスを出
いる。これは,空間を見つけたり,その場所
した後に動く」課題の解決への志向が高まっ
に動いたり,またはパスを出した後に動いて
ていると推察できる。このことから,「パス
再度パスをもらうなど,シュートをするため
&ラン」の指導には,「空間をどう見つけ,
に「空間」を意識していたことが考えられる。
動くか」,という指導が必要である。
つまり,積極的なシュートチャレンジを促す
ことは,「空間認識」を向上させる上で重要
た」は「①前にディフェンスがいないときに
である。また,頭上にあるゴールにボールを
シュートをうった」と相関を持ちながら推移
投げ入れるという行為は,他のスポーツには
している。ボールに人が集まる“だんご状態’’
無い,バスケットボール特有の醍醐味である。
からのドリブルの使用は,ノーマークでの
このことからも,「前が空いたら,恐れず
シュートにつながることが推察できる。しか
シュート」することを,バスケットボールの
し,平均値が他の項目と比べて低いことや,
授業では単元を通して指導していくことが必
相関関係が少ないことから,特定の児童の能
要である。
力によってドリブルが使用されたと考えられ
(2)「②パスを出した後に動いた」は,5時間
目以降,「コートの中の空いている場所を見
106
(3)「③ドリブルで,人の固まりから抜け出し
る。このことからも,授業におけるドリブル
の位置づけが課題として挙げられる。
つけた」「コートの中の空いている場所に動
(4)「④コートの中の空いている場所を見つけ
いた」「コートを広く使って攻めた」のいず
た」と「⑤コートの中の空いている場所に動
れかと相関関係を持って推移している。5時
いた」は,単元前半から,相関関係を保って
間目以降の「コートにおける空間認識」の学
いることが確認できる。平均値に注目すると,
習によって,移動先を見つけたり,実際に動
「④コートの中の空いている場所を見つけた」
バスケットボール授業に関する実践的研究Ⅰ
は「⑤コートの中の空いている場所に動いた」
を意図する授業においては,「積極的なシュー
より高い値で推移している。さらに,「(彰コー
ト」を前提に,「空間を見つける→空間に動
トの中の空いている場所に動いた」と,本単
く→空間を使う」という指導順序が成り立つ。
元において最上位の課題として位置づけてい
る「⑥コートを広く使って攻めた」も同様,
相関関係を持ちながら推移している。これら
のことから,「コートの中の空いている場所
を見つける」「コートの中の空いている場所
に動く」技術が形成されていくと,その結果
として,「コートを広く使って攻める」こと
につながることが推察できる。
註 釈
註1)運動・スポーツの研究では「空間認知」「空間知覚」
などと同様な意味で「空間認識」が使われている.
これらはどれも「方向・位置・大小・形状・奥行・
距離」などの「空間」を,感覚系(特に視覚)を通
して「知覚(外界および身体内部の状態を把捉する
はたらき)」し,理解することを指している.つまり,
人物や物体の空間位置を判断することである.これ
以上のことから,「空間認識」の向上を意図す
る授業においては,特に「前にディフェンスがい
ないときにシュートをうつ」,つまり「ノーマー
クならば積極的にシュートをうつ」ことを前提と
し,「空間を見つける→空間に動く→空間を使う」
という指導順序が成り立つことが示唆される。
らのことから,本研究では「空間認識」を「自分の
周囲,または遠くの空間がどのような状態であるか
を知覚すること」と捉えた。
註2)バスケットボール創成期のルールおよびその発展
から,バスケットボールのゲームに必要な基礎技術
を導くと,「シュー ト」「パス」「ドリブル」が挙げら
れる。これらは「文化的な価値」および「科学的な
根拠」を含んでおり,バスケットボールの基礎技術
から外してはならないものである.このことから,
「シュー ト」「パス」「ドリブル」の各技術に関する「空
ま と め
間認識」を考案し,「バスケットボール技術に関する
空間認識」とした.また,先行研究を概観すると,ゲー
本研究では,実践研究の課題から,「空間認識」
を学習内容として設定し,単元を構成し,授業実
践を行った。その分析の結果,児童の自己評価に
よる「空間認識」の向上が検証され,以下の知見
を得ることができた。
1.単元前半において,ゲームを通して「シュー
ト」「パス」「ドリブル」の技術を学習し,そ
の上に,コートにおける空間の見つけ方や動
ム様相が“広がる”に伴い,「だんご型」や「直線型」
において「使われていない」空間が,「使われる」よ
うになる様子が確認できる.そこで,注釈1の「空
間認識」の定義とゲーム様相との関連から,質問項
目の「コートにおける李間認識」を考案した。
註3)今日のスポーツの多くは,ルールが決められるこ
とによってプレーが生まれたり,あるプレーがなさ
れたことにより新たなルールができたりするなど,
ルールとプレーが密接に関わって発展してきた.バ
スケットボールでは,「ボールを持って歩けない」と
き方を学習することで,ゲームにおける「空
いうルールから「ピボット」の必要性が起こり,そ
間認識」の向上が期待できる。また,特に「ボー
れでもディフェンスから逃げ切れないため,ボール
ル運動」の領域において「空間認識」の課題
を落として移動したことから「ドリブル」が生まれた.
を形成するには,ゲームにおける「ボールの
軌跡図」が有効である。
2.単元を通しての指導では,「前にディフェ
ンスがいないときにシュートをうつ」ことが,
「空間認識」の向上に深く関係している。バ
しかし1人によって「ドリブル」が多用されると,
今度はディフェンスがボールを奪えなくなるため,
「ダブルドリブルの禁止」というルールが決められ
たのである.運動・スポーツの文化や,その発展に
関する科学を伝えるという視点から,このような技
術を授業にどう位置づけるかが課題である。
スケットボールの特性の根幹である「シュー
ト」を児童が楽しむためにも,単元を通して
の指導が必要である。さらに,「空間認識」
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城後 豊・岩崎 正義・日下部未来
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