第 学年 算数科学習指導案 5

第 5 学年
算数科学習指導案
(小学校
第 5 学年)
指導者
小数のわり算
藤井
清一
1
単元名
「小数のわり算を考えよう」
2
単元の考察
○
本単元は、小学校学習指導要領の算数編、第 5 学年の目標(1)「小数及び分数の意味や表し方に
ついての理解を深める。また、小数の乗法及び除法の意味について理解し、それらの計算の仕方を
考え、適切に用いることができるようにするとともに、分数の加法及び減法の意味について理解し、
それらの計算の仕方を考え、用いることができるようにする 。」と内容A[数と計算]( 3)「小数の
乗法及び除法の意味について理解し、それらを適切に用いることができるようにする 。」イ「乗数
や除数が整数の場合の計算の考え方を基にして、乗数や除数が小数である場合の乗法及び除法の意
味について理解すること 。」ウ「小数の乗法及び除法の計算の仕方を考え、それらの計算ができる
こと。また、余りの大きさについて理解すること。」を基にしている。
○
本単元で学習する主な内容は、①除数が小数の除法の意味、②除数が小数の計算の仕方、③被除
数及び除数が小数の場合の計算の仕方、④除数が小数の場合の商と被除数の大小関係、⑤除数が小
数の除法のあまりの大きさ、⑥除数が小数の除法の商を概数で表すこと、⑦基準量、比較量が小数
の場合の小数倍について、⑧小数倍が分かっているとき基準量を求めることである。これらの学習
を通して、除数が小数の計算の意味や計算の仕方を、整数のときの考えを基に考え、整数の世界か
ら小数の世界へ数と計算の理解や考えを広げることができる単元である。
小数の除法の意味を考えるとき、既習の整数の乗法や除法を基に考えることで、数学的な考え方
のよさが体感でき、算数的な活動を通して、算数のよさや楽しさを実感できると考えられる。また、
計算の仕方についても、整数の乗法や除法の考えを基につくり上げることができ、意欲を高め、進
んで学習する態度を育成することができると考える。さらに、問題解決の思考過程を数直線や図等
を用いて筋道を立てて説明する場面を効果的に設定することができ、数直線の「よさ」や図や数直
線が数量関係の把握に有効であると実感することができ、論理的な思考力を育成することができる
単元である。
○
児童生徒学力診断テストの分析から、本単元にかかわる実態は次のように分析できる。
・問題場面を読みとって数量関係を把握するとき、問題を読んだだけで数量関係を把握しようとす
る傾向があり、絵や図、数直線に数量関係を表現する力が身に付いていない。
・演算決定する際に、公式に当てはめて考えることはできるが、公式のことばの意味と数量関係が
確実に把握できていない児童がいた。
・立式ができているにもかかわらず、その求め方を説明することができる生徒は半数程度にとどま
り、既習事項を基に筋道立てて説明する力が身に付いていない。
○
問題場面を絵や図、数直線に自力で表現する活動が不足していると考えられる。教科書では、す
でに絵や図や数直線が書かれているため、それを見て数量関係を把握したかのような錯覚に陥って
いるのではないかと考えられる。また、立式する際に演算決定は公式に当てはめて考えるものは比
較的容易にできるが、既習事項を基に自力で立式をしたり、絵や図、数直線から立式をしたりする
考えが身に付いていない。さらに、筋道を立てて求め方を説明することについては、立式ができ
- 小・算 4 -
ているにもかかわらず半数以上が説明不足である。
○
児童生徒質問紙調査の結果では 、「やる気がでる授業はどんなときか」の回答は 、「先生の話し
方がわかりやすいとき」が最も多く 、「友達どうしで考えを話し合うとき」が最も低い 。「わかる
授業はどんなときか」に対する回答は、
「先生の話し方がわかりやすいとき」が最も多く、次いで、
「分かるまで 」「図や絵を使って」となり 、「友達どうしで考えを発表し合うとき」が最も低い。
このことから、教師は、簡潔明瞭な発問をすることに工夫する必要があること、思考を育成するた
めの話し合い活動について工夫する必要があることがうかがえる。発表させただけでは、練り上げ
の効果が低いといえる。
また 、「普段からたし算、ひき算、かけ算、わり算で考えるようにしている」児童は、 42%と半分
以下であり 、「計算のきまり」の意味を考えるようにしている児童は、 22.8%と非常に少ない。こ
のことから、演算決定に対して、正確に数量関係を捉えて立式していない児童がいるといえる。
さらに 、「筋道を立てて考え、説明するようにしている」ことについて 、「あてはまる」と回答し
た児童は 12.5%、「あまりあてはまらない」と回答した児童は 36.1%であり、数学的な考え方を身
に付ける「学び方」が身に付いていない実態がある 。「公式の意味を考えるようにしている」と回
答した児童は 34.8%と少なく、
「求め方の意味を考えることが好き」と回答した児童は 18.1%で、
「あ
まりあてはまらない」と回答した児童は 31.2%いた。このことから、公式を覚えて、数値
を代入
して答えを求めることはできても、公式を導いたり、解決方法の手順を考えたりすることのよさを
実感していないことがうかがえる。
○
児童生徒診断テストの問題1で、( 1)の立式は、 76.6%できているが、立式の仕方、求め方を説
明する( 3)の問題は、 42.2%と半数以下になっている実態がある。説明ができている児童でも、説
明の仕方が的確な児童は、 26.9%であった。このことから、友達に分かりやすく筋道を立てて説明
する学習が不十分であるといえる。
3
指導目標
除数が小数の場合の除法の意味について理解し、その計算の仕方を考え、適切に用いることができ
るようにする。
4
評価規準
関心・意欲・態度
数学的な考え方
表現・処理
知識・理解
小数の除法の計算の意 小数の除法にかかわる算 小数の除法の計算がで 整数や小数についての
味や計算の仕方を、数 数的活動を通して、小数 きるとともに、小数が 感覚を豊かにするとと
直線や図などを用いて、の除法の計算の意味や計 用いられる場面におい もに、小数の除法の計
整数の計算の意味や計 算の仕方を、整数の除法 て、計算の意味などを 算の意味や計算の仕方
算の仕方と関連づけて、の計算の意味や計算の仕 数直線や図に表現した を理解し、小数の除法
論理的に考察すること 方を基にして、論理的に り、式を立てたりする がどのような場面でど
の楽しさやよさに気付 考えたり、発展的に考え ことができる。
のように用いられるの
き、小数の除法を進ん たりする。
かを理解している。
で活用しようとする。
5
指導方針
- 小・算 5 -
( 1)
小数のわり算の意味理解においては、身近な題材を用いて場面を想定して考えさせ、既習の内
容である整数のわり算を基に考えさせるようにする。このとき、絵やテープ図や数直線を用いて
数量関係をとらえさせるようにする。
(2)
小数のわり算でも、整数のわり算のときと同じように、1単位あたり量を求める計算がわり算
であることを理解させ、はじめに等分除になる場面から導入し、包含除になる場面も理解させる
ようにする。
(3)
小数を、0.1 がいくつ分と考えたり、乗法や除法に関して成り立つ性質を基にして小数を整数に
してから考えたりする方法について考えさせ、整数のわり算の考えを基に計算の仕方を練り上げ
るようにする。
(4)
問題文から数量関係を把握するときに、絵や図や数直線に表す表現活動を多く取り入れ、式を
作ることを急がず、数量関係のイメージを持つことを大切する。その後、数直線に表すことがで
きれば、演算決定が自ずと決まることを理解させる。
(5)
小数のわり算の筆算においても、乗法や除法に関して成り立つ性質を基に、小数点の位置を決
定することや数を相対的に見る見方が身に付くように、整数のときと同じように計算できること
を基に、小数点を自由に移動できるようにする。
(6)
除数が1より小さい値と大きい値のときの場合で、商の大きさと比べて、大小関係を把握させ
るには、数直線を用いて視覚的にとらえられるようにする。
(7)
小数のわり算であまりの大きさを考えさせるとき、被除数との関係を比較させ、見通しを持っ
て計算できるようにするとともに、検算の大切さを実感させる。
(8)
商が割り切れない場面を考えさせ、四捨五入の考えを基に、上から2けたの概数で表すには何
桁目を四捨五入すればよいかを見積もらせたり、予想させながら考えさせるようにする。
(9)
数量が小数のときも、ある大きさが基にする大きさの何倍にあたるかを、絵や図や数直線を用
いて数量関係を把握させ、整数のときの考えを基に立式させる。
(10) 数量関係の把握には、絵や図や数直線を使うことの良さを実感させ、問題文の文章を視覚的に
表現することで、演算決定しやすくなる良さに気付かせ、また求め方を説明する際にも、正確に
伝えることができる良さを実感させる。
(11) 整数のわり算を基に、小数のわり算の意味や計算の仕方を練り上げる際、基になった考え方を
確認させながら、求め方を説明したり、考えを発表したりする活動を取り入る。このことにり、
よりよい考えを練り上げたり、他の問題に適用できるように考えたりする数学的な考え方を高め
る活動を多く取り入れる。
6
指導計画(別紙)
7
本時の学習
(1)ねらい
問題場面を絵や図、数直線で表して数量関係を表すことを通し、倍を表す数が小数の
ときも、整数のときと同じように、かけ算の式を作ってからわり算の式にすると考え
やすいことを理解する。
(2)準
備
学習プリント
模造紙
ペン
A3用紙
- 小・算 6 -
(3)展
開
主な学習活動
1
時間
前時の学習の復
○指導上の留意点及び支援
観評価項目(方法)
○前時の学習の内容を児童が確認できるように、学
習をする。
習内容をまとめた模造紙を掲示する。
5
ゆりえさんの道のりをもとに
すると、ほかの人の道のりは、
それぞれ何倍ですか。
もとにする大きさ 比べる大きさ
0
0
ひろし ゆりえ
1.8 2.4
□
みさき・・・
ひろし・・・
みさき
3.6
たくや
4.8 (km)
□
2
1
式
式
家から駅までの道のり
3.6 ÷ 2.4 = 1.5
1.8 ÷ 2.4 = 0.75
名まえ
ゆりえ
たくや
みさき
ひろし
道のり(km)
2.4
4.8
3.6
1.8
倍
答え
答え
1.5 倍
0.75 倍
(倍)=(比べる大きさ)÷(もとにする大きさ)
2
問題を読んで、
○前時の学習と比較して、本時の課題をつかむこと
本時の課題をつか
み、課題解決の見
通しを持つ。
ができるように、本時の問題を掲示する。
5
みさきさんの家には、1歳になる弟のゆうきさんがいます。ゆうき
さんの今の体重は 8.4kg です。これは、生まれたときの体重の 2.4 倍
です。生まれたときのゆうきさんの体重は何 kg でしたか。
○「生まれたときのゆうきさんの体重」を求めるこ
とが本時の課題であることをつかめたかどうか確
かめるために、「何を求めるのか」と発問する。
○本時の課題を意識して解決できるように 、「生ま
れたときの体重を求めるには計算を考えよう」と
いう課題を板書する。
○課題解決の見通しを持つことができるように、前
時の学習でどのような解決方法があったか、また、
どのように考えたらよいか考えさせる。
【予想される児童の反応】
・km と倍の関係を数直線に表した。
・絵や図を書いて考えた。
・( 倍)を求めるには 、(比べる大きさ)÷(もと
にする大きさ)で計算した。
- 小・算 7 -
・生まれたときの体重を□ kg で表す。
○見通しを持って課題解決できるように、解決方法
を1つ選ばせる。
3
課題を追求す
○求め方の説明を書くことができるように、学習プ
る。
リントを用意する。
○1つの解決方法で求めることができた児童が、別
の方法で考えることができるように、複数の学習
プリントを用意しておく。
15 ○求め方を比較検討できるように、解決方法ごとに
類型化して、黒板にプリントを掲示する。
○体重の数量関係を絵や図、数直線等で表せない児
童に、個別指導して、前時の学習の考えを思い出
させる。
絵や図で考える
・C1
絵や図で考える
・C2
8.4kg
□ kg
数直線で考える
・C3
0
□
8.4
kg
8.4kg
2.4 倍
2.4 倍
□ kg 2.4 倍
1
□× 2.4 = 8.4
□= 8.4 ÷ 2.4 = 3.5
答え 3.5kg
□× 2.4 = 8.4
□= 8.4 ÷ 2.4 = 3.5
答え 3.5kg
0
お互いの求め方
2.4
倍
1にあたる大きさを求めるのは
わり算だから
□= 8.4 ÷ 2.4 = 3.5 答え 3.5kg
C4 ことばの式で考える
(倍)=(比べる大きさ)÷(もとにする大きさ)
2.4 = 8.4 ÷□
□× 2.4 = 8.4
□= 8.4 ÷ 2.4
4
1
など
○筋道を立てて説明することができるように、黒板
数学的な考え方
(考え方)を発表
に掲示した、求め方の説明を書いたプリントを使 ○問題の数量関係
し合い、共通する
って、発表し合う活動を設定する。
考え方や友達の考
線に表し、倍を
えのよさに気付
く。
を絵や図、数直
15
「どのようにして求めたのか 」、「求め方」を発
表す数が小数の
表してもらいます。それぞれの考えで、共通する
ときも、もとに
考え方や新しい考えを取り入れましょう。
する大きさを求
めるには、かけ
○机間指導をしながら、多様な考え方を発表しても
算の式を作って
らえるように、それぞれの児童の考え方を記録し
わり算で求める
ておき、指名する。
ことを理解して
○話し合いの観点が明確になるように、次の見方で、
いる。
求め方をまとめるよう促す。
◎問題の数量関係
●【共通する考え】という見方
を絵や図、数直
・ C1 と C2 は、かけ算で考えて、わり算にしてい
線に表し、もと
- 小・算 8 -
る。
にする大きさを
●【新しい考え】という見方
□を用いて、か
・数直線にすると、1にあたる大きさを求めるのだ
け算の式で表し
から、わり算の式だと、すぐに考えられた。
てからわり算に
それから、かけ算の式を作ってからわり算にして
する考えを、分
計算したら、答えが一致したので、小数のときも、
かりやすく説明
かけ算の式を作ってからわり算にしてもよいこと
することができ
がわかった。
る。
●(比べる大きさ)=(もとにする大きさ)×(倍) (観察・発表・学
で考えて、8.4 =□× 2.4 の式を作ってから、わ
り算の式にして計算するとよい。
5
本時のまとめを
して、本時の学習
の振り返りをす
る。
○本時の学習を振り返ることができるように 、「ど
5
んな考えが問題を解決するのに役立ちましたか」
と発問する。
【予想される児童の反応】
・絵や図を書くと、式を立てるときわかりやすい。
・倍を表す数が小数のときも、かけ算の式を作って
からわり算にする考え
- 小・算 9 -
習プリント)