平成19年度 - 日本大学

1.2 テーマ【I−2】 地震時の地盤振動評価に関する研究
1.2.1 はじめに
本テーマでは、構造物への入力地震動を適切に評価するための地震時地盤振動評価手法を実
測記録に基づいて確立することを目的とし、地震観測網の整備・管理、観測記録の整理、デー
タ処理法の開発を主に実施している。平成 19 年度に実施した内容を報告する。
1.2.2 観測網の整備
本テーマでは、旧習志野キャンパス地震観測網*1-2-1, 2(旧観測網)を利用し、船橋地域地震観
測網として観測体制を再構築してきた*1-2-3。昨年度までに船橋キャンパス(図 1-2-1)と二和校
地(図 1-2-2)にて合計 141 成分を整備した(表 1-2-1、2)
。旧観測網から利用している機器で
老朽化などにより観測に支障が生じた部分については、段階的にシステムを更新している。平
成 19 年度は、船橋キャンパス内の地盤 D 地点、2 号館、3 号館、8 号館を観測対象とする D238
観測システムにおいて、図 1-2-3 に赤色で示すシグナルコンディショナを整備した。
1.2.3 観測記録の整理
a) 平成 19年の観測状況
本観測網は A(地盤 A 地点)
、B(地盤 B 地点)
、E(地盤 E 地点)
、D238(地盤 D 地点、2
号館、3 号館、8 号館)
、A14(地盤 A 地点の一部、14 号館)の 5 つの観測システムで構成され
ている。これらの観測システムは互いに独立しており、トリガ信号は同期されていない。その
ため、各観測システムで観測事象数は異なる。平成 19 年 1 月から 12 月末までの1年間に 33
事象がいずれかの地点で観測された。それらの震央分布を図 1-2-4 に、地震諸元を表 1-2-3 に示
す。3 月下旬に稼動した A 観測システムでは 27 事象を観測した。これは GL-106.7m という深
部でトリガ判定を行っているためであり、多くの事象を感知可能であることが実証された。よ
って、A システムのトリガ信号を他システムに転送できれば、100ch を超える多点同時観測が
可能となる。一方、D 地点、E 地点、8 号館では計測器の不調により、一部が欠測した。
これまでと同様に、観測地震の震央は関東近辺に偏在するが、新潟県中越沖地震(地震番号
N0707161013)など遠方で発生した大規模地震も観測された。最大地震動は平成 19 年 6 月 2 日
14 時 43 分 14 秒に茨城県南西部で発生した事象(地震番号 N0706021443)によるものであり、
地表面最大加速度(PGA)は D 地点で 33.49gal(EW 成分)
、B 地点で 31.84gal(EW 成分)
、E
地点で 46.97gal(NS 成分)
、最大速度(PGV)は D 地点で 0.97kine(EW 成分)
、B 地点で 0.87kine
(EW 成分)
、E 地点で 1.37kine(NS 成分)を記録した。その他の事象では PGA が 30gal 未満、
PGV が 0.2kine であった。図 1-2-5 に、D、B、E 地点の GL0m 水平成分記録による速度応答ス
ペクトル(h = 5%)を示す。同図中に赤線で示す新潟県中越沖地震(N0707161013)の速度応
答スペクトルは、観測地点や成分によらず類似したスペクトル形状を呈しているが、長周期成
分が卓越している点で他の地震動と大きく異なっている。
1 / 18
N
0m
50m
100m
図 1-2-2 キャンパス位置
図 1-2-1 船橋キャンパス観測地点
図 1-2-3 D238 観測システム構成
2 / 18
表 1-2-1 地盤観測地点の概要
観測地点
A地点
工学的基盤(深部
目的
地盤)挙動の把握
場所
14号館前広場
PS検層 密度検層
ボーリング資料
標準貫入試験
動的三軸試験
GL-106.68m
GL-80m
地震計位置 GL-43.28m
B地点
地表面挙動の
把握
9号館南側
C地点
地表面挙動の
把握
部室棟西側
なし
なし
地表(GL0m)
地表(GL0m)
地震計種別
観測点(成分)数
加速度
3(9)
加速度,速度
1(6)
加速度,速度
1(6)
基準方位
MN 6.5°E
MN 0°
MN 0°
Bシステム
-
観測システム
備考
A(GL-106.7,43.3m)
A14(GL-80m)システム
2006年3月再設置
(GL-156m撤去.
GL-107m設置.
GL-44m再設置.)
D地点
E地点
浅層地盤挙動の把握 地表面挙動の
把握
水平アレー
3号館南側
二和校地
PS検層 密度検層
なし
標準貫入試験
動的三軸試験
GL-46.45m 地表(GL0m)
GL-25.75m
GL-15.84m
GL-7.8m
GL-3.0m
地表(GL0m)
加速度,速度
加速度,速度
6(24)
1(6)
加速度計:MN 6.5°E MN 6.5°E
速度計:MN 155.5°E
D238システム
2005年6月撤去 (二和校地E地点
へ移設)
Eシステム
2005年6月より
観測開始
表 1-2-2 構造物観測地点の概要
観測地点
2号館
3号館
14号館
耐震補強効果の検証
地盤-杭基礎-構造物系
耐震補強効果の検証 耐震補強効果の検証 耐震補強効果の検証 の動的相互作用検討
目的
構造ヘルスモニタリング
の検討
構造種別
RC造
RC造
RC造
地上SRC造,地下RC造
支持層
約 GL-10m
約 GL-10m
約 GL-10m
GL-26.0m
RC杭:350φ
RC杭:350φ
RC杭:300φ
RC杭:800φ,1600φ
基礎種別
基礎形式
杭長:5∼6m
杭長:5∼6m
杭長:8m
杭長:19.19m,17.95m
北棟:地上5階,地下1階
階数
地上4階,地下1階
地上4階,地下1階
地上4階
東棟:地上4階
竣工年
1965年
1965年
1968年
2004年
耐震補強法
枠組鉄骨ブレース補強
中間層免震
トグル制震
トグル制震
耐震補強実施年
1997年
1998年
2001年
2004年
北棟:約 MN 9°E
建物短辺方向方位
約 MN 9°E
約 MN 9°E
約 MN 9°E
東棟:約 MN 99°E
地震計種別
加速度
加速度
加速度
加速度
地下1階床
地下1階床
1階床
杭基礎(北棟4本):
地下1階天井
2階天井
杭頭(GL-9.05,7.41m)
地下1階天井
4階天井
2/5点(GL-15.2m)
4階天井
4階天井
先端(GL-25.0m)
躯体:
地震計位置
地下1階天井(北・東棟)
1階天井(東棟)
2階天井(東棟)
3階天井(北・東棟)
5階天井(北棟)
杭基礎(北棟):12(28)
躯 体(北棟):12(21)
観測点(成分)数
6(11)
6(11)
5(13)
躯 体(東棟):10(12)
杭基礎(微動):1(2)
躯 体(微動):3(6)
A14(地震)システム
観測システム
D238システム
D238システム
D238システム
微動システム
欠測(修復不可能):
杭基礎3成分
東棟:
備考
2007年3月より開始
常時微動観測:
2006年3月より開始
3 / 18
8号館
M5
M4
船橋キャンパス
図 1-2-4 震央分布
表 1-2-3 観測された地震の諸元
地 震 諸 元※1
地震番号
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
0701081900
0701091318
0701160317
0701241030
0702042059
0703221028
0705082101
0706010728
0706021443
0706041333
0706060709
0706281826
0707032331
0707161013
0708160415
0708160416
0708160747
0708160820
0708160832
0708160922
0708180414
0708181336
0708181655
0708181706
0708182316
0708241413
0710072236
0711111948
0711130405
0711262251
0711270805
0711301836
0712020924
発生日
2007.01.08
2007.01.09
2007.01.16
2007.01.24
2007.02.04
2007.03.22
2007.05.08
2007.06.01
2007.06.02
2007.06.04
2007.06.06
2007.06.28
2007.07.03
2007.07.16
2007.08.16
2007.08.16
2007.08.16
2007.08.16
2007.08.16
2007.08.16
2007.08.18
2007.08.18
2007.08.18
2007.08.18
2007.08.18
2007.08.24
2007.10.07
2007.11.11
2007.11.13
2007.11.26
2007.11.27
2007.11.30
2007.12.02
発生時刻
18:59:35.89
13:18:03.76
03:17:57.75
10:30:01.89
20:59:16.55
10:28:55.50
21:01:34.83
07:28:58.53
14:43:14.93
13:33:55.02
07:09:41.88
18:26:26.00
23:31:14.14
10:13:22.55
04:15:06.6
04:16:
07:47:43.0
08:20:32.6
08:32.31.6
09:22:11.9
04:14:43.5
13:36:37.3
16:55:08.8
17:06:57.6
23:16:00.6
14:13:34.7
22:36:4.2
19:48:54.1
04:05:47.9
22:51:37.5
08:05:56.1
18:36:58.0
09:24:38.5
北緯
東経
D
MJMA
C
Δ※2
X
(km)
199.83
89.57
221.97
60.30
69.42
85.71
61.38
79.77
67.57
64.96
54.18
80.67
70.33
241.83
61.34
64.10
63.82
66.34
64.32
55.02
54.24
53.75
49.99
49.73
36.00
75.33
58.45
71.38
236.21
57.99
110.37
76.12
(°)
37.267
36.050
34.938
36.051
35.590
35.959
36.060
36.094
36.135
36.090
35.858
35.813
35.858
37.557
35.443
(°)
138.920
139.798
138.893
139.888
140.154
139.808
139.890
139.681
140.034
139.864
140.483
139.187
140.599
138.610
140.530
(km)
13.34
78.55
174.52
45.67
67.23
78.49
46.32
59.39
49.84
47.58
35.32
15.44
48.42
16.75
31
4.8
4.3
5.8
4
4.3
4.2
4.5
4.5
4.6
4.4
1.1
4.1
4.5
6.8
5.3
4
3
3
2
3
3
3
3
4
3
4
3
C
4
(km)
199.38
43.04
137.16
39.38
17.28
34.42
40.27
53.26
45.62
44.23
41.09
79.18
51.01
241.25
52.93
35.397
35.405
35.352
35.392
35.348
35.358
35.342
35.425
35.405
35.522
35.683
36.047
35.658
37.303
35.868
36.427
36.203
140.558
140.548
140.565
140.550
140.360
140.352
140.345
140.317
140.313
139.942
140.725
139.902
140.058
141.757
140.488
140.695
139.983
27
29
24
28
23
24
20
29
26
26
45
44
71
44
40
53
54
4.4
4.9
4.4
4.7
4.8
4.5
5.2
4.3
4
2.9
4.8
4.3
3.5
6
4.1
4.7
3.9
3
3
2
3
A
4
4
3
3
1
2
3
1
4
1
4
2
58.13
56.85
61.85
57.90
49.98
48.64
49.89
40.72
42.39
24.89
60.41
38.47
7.37
232.08
41.98
96.81
53.65
震央地名
新潟県中部
茨城県南西部
伊豆半島中部
茨城県南西部
千葉県中部
茨城県南西部
茨城県南西部
埼玉県東部
茨城県南西部
茨城県南西部
千葉県北部
東京都
茨城県南部
新潟県南部沖
千葉県東方沖
不明
千葉県東方沖
千葉県東方沖
千葉県東方沖
千葉県東方沖
千葉県南部
千葉県北東部
千葉県南部
千葉県北東部
千葉県北東部
東京湾
千葉県東方沖
茨城県南部
千葉県北西部
福島県沖
千葉県北東部
茨城県沖
茨城県南部
A
地
点
×
×
×
×
×
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
B
地
点
−
−
−
−
−
−
○
−
○
−
−
−
−
○
○
○
−
−
−
−
−
−
○
−
−
−
−
○
−
−
−
−
○
C
地
点
観測状況※4
D
E
2
地 地 号
点 点 館
− ○ −
△ − ○
△ ○ ○
△ ○ ○
△ ○ ○
△ − ○
− ○ −
△ − ○
△ ○ ○
− − −
− − −
− − −
− − −
△ ○ ○
△ ○ ○
△ − ○
− − −
△ − ○
− − −
− − −
△ ○ ○
× − ×
△ ○ ○
− − −
− − −
− − −
− − −
△ − ○
− − −
− − −
△ − ○
− − −
△ − ○
3
号
館
−
○
○
○
○
○
−
○
○
−
−
−
−
○
○
○
−
○
−
−
○
×
○
−
−
−
−
○
−
−
○
−
○
8
号
館
−
○
○
○
○
○
−
○
○
−
−
−
−
○
△
△
−
△
−
−
△
×
△
−
−
−
−
○
−
−
△
−
△
14
号
館
−
−
○
−
−
−
−
○
○
−
−
−
−
○
○
○
−
○
−
○
○
×
○
−
−
−
−
○
−
−
○
○
○
備考
A欠測
A欠測.D238新システム初記録
A欠測
A欠測
A欠測
A欠測
A修復後初記録
A14新システム初記録.14東棟初記録
平成19年新潟県中越沖地震
気象庁速報.D238:36-38ch欠測
気象庁速報.
気象庁速報.D238:36-38ch欠測
気象庁速報.
気象庁速報.
気象庁速報.D238:36-38ch欠測
気象庁速報.A14,D238停電により欠測
気象庁速報.D238:36-38ch欠測
気象庁速報.
気象庁速報.
気象庁速報.
気象庁速報.
気象庁速報.D238:36-38ch復旧後初記録
気象庁速報.
気象庁速報.
気象庁速報.
気象庁速報.
気象庁速報.
※1 震央位置は全て世界測地系(日本測地系 2000)であり、気象庁発表記録*1-2-4 に基づく。D は震源深さ、MJMA
は気象庁マグニチュード、C は最大震度(A=5 弱、B=5 強、C=6 弱)
、Δ は震央距離、X は震源距離をそれ
ぞれ示す。
※2 震央から A 地点(北緯 35.725°、東経 140.058°)までの距離。
※3 気象庁速報値*1-2-5 による地震諸元。
※4 ○全点観測。△一部不良。×欠測。−トリガ起動せず。/未配置。
※2006 年 12 月 6 日以降は SNTP を利用して、A-14 および D-2-3-8 観測システムの時刻を校正している。
4 / 18
10
10
1
1
0.1
0.1
N
0.01
0.5
0.1
Period (s)
E
1
5
0.01
0.5
0.1
Period (s)
1
5
(1) D 地点(GL0m)
10
10
10
10
1
1
1
1
0.1
0.1
0.1
0.1
E
N
0.01
0.5
0.1
Period (s)
1
5
0.01
0.5
0.1
Period (s)
E
N
1
5
0.01
0.5
0.1
Period (s)
1
(2) B 地点(GL0m)
5
0.01
0.5
0.1
Period (s)
1
5
(3) E 地点(GL0m)
図 1-2-5 速度応答スペクトル(h=5%)
b)地盤鉛直方向の震動特性
鉛直アレー観測を実施している地盤 A、D 地点の増幅特性を検討する。A、D 地点の地盤検
層結果と地震計深さを図 1-2-6 に示す。それぞれの地点で全記録を振動数領域で重ね合わせ、
パワースペクトルの段階でバンド幅 0.2Hz の Parzen ウィンドウ処理を行い、Hv 推定*1-2-6,7 によ
り得られた水平挙動の最浅部/最深部 FRF とコヒーレンス関数を図 1-2-7 に示す。A 地点 NS
方向では 1Hz 付近で明瞭なピークが見られ、
EW 方向成分のコヒーレンス関数は全体的に低い。
D 地点では 2∼2.5Hz、5∼5.5 Hz、7∼8Hz 付近でピークが見られ、ピーク付近ではコヒーレン
ス関数が低下する。
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
地震計位置
A地点
D地点
α点
地震計位置
0
GL0m
GL-3.0m
ローム
粘土
10
GL-43.3m
GL-7.8m
上部砂質土
GL-15.8m
20
GL-25.8m
下部砂質土
30
GL-106.7m
40
GL-46.5m
3
density (g/cm )
Vp (m/s) Vs (m/s)
3
Vs (m/s) Density ρ (g/cm )
Vp(m/s)
(1) A 地点
(2) D 地点
図 1-2-6 地盤検層結果と地震計深さ
5 / 18
20
20
NS
EW
15
NS
EW
15
10
10
5
5
0
180
0
180
90
90
0
0
-90
-90
-180
1
-180
1
0.5
0.5
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
0
10
(1) A 地点(GL-43.3m/GL-106.7m)
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
(2) D 地点(GL0m/GL-46.5m)
図 1-2-7 FRF(地盤 A、D 地点)
c)校舎の震動特性
各校舎での全地震記録のパワー・クロススペクトルを振動数領域で重ね合わせ、バンド幅
0.2Hz の Parzen ウィンドウを施してから Hv 推定*1-2-6,7 により FRF を推定した。以下に示す FRF
とコヒーレンス関数は、最上階/1FL の水平動によるものである。この FRF は水平動のみが拘
束された基礎固定系の伝達関数に相当する。
(1)2、3 号館
2 号館(鉄骨ブレース補強)
、3 号館(中間層免震)について示す。両校舎では、図 1-2-8 に
示す位置に地震計を設置している。赤色で示した成分について、水平挙動 RFL/1FL の FRF と
コヒーレンス関数を図 1-2-9 に示す。2 号館では短軸(Y 軸)方向より長軸(X 軸)方向の方が
ピーク振動数は高く、短軸方向と長軸方向で剛性が異なることが示されている。短軸方向は中
央側と東側で振幅が異なることから、ねじり成分が含まれている可能性がある。3 号館でも短
軸(Y 軸)方向より長軸(X 軸)方向の方がピーク振動数は高いが、その差はわずかである。
また短軸方向の振幅と位相は、中央側と東側でほぼ同じである。2、3 号館ともに同一線上(各
フロア中央)同士では、ピーク振動数付近を除きコヒーレンス関数は高い。
Z( U)
Y( N)
X( E)
RF
4F
3F
2F
1F
B1F
図 1-2-8 2 号館、3 号館観測点
6 / 18
25
25
N2RFC
N2RFE
20
25
N2RFC
20
25
N3RFC
N3RFE
20
N3RFC
20
15
15
15
15
10
10
10
10
5
5
5
5
0
180
0
180
0
180
0
180
90
90
90
90
0
0
0
0
-90
-90
-90
-90
-180
1
-180
1
-180
1
-180
1
0.5
0.5
0.5
0.5
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
(a) NS(Y:短軸)方向
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
0
10
(b) EW(X:長軸)方向
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
(a) NS(Y:短軸)方向
(1) 2 号館(RFL/1FL)
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
(b) EW(X:長軸)方向
(2) 3 号館(RFL/1FL)
図 1-2-9 FRF(2、3 号館)
(2)8 号館
8 号館では図 1-2-10 に示す位置に地震計を設置している。赤色で示した成分について、水平
挙動 RFL/1FL の FRF とコヒーレンス関数を図 1-2-11 に示す。短軸(Y 軸)方向より長軸(X
軸)方向の方がピーク振動数は高い。短軸方向は中央側と西側で若干振幅が異なるが、長軸方
向では中央側と西側とで大差ない。北側西部分に併設されている 2 階建て別棟の影響は不明で
ある。
25
25
N8RFS
N8RFW
20
Z( U)
Y( N)
X( E)
N8RFS
N8RFN
N8RFW
20
15
15
10
10
4F
5
5
3F
0
180
0
180
2F
90
90
RF
1F
0
0
-90
-90
-180
1
-180
1
0.5
0.5
図 1-2-10 8 号館観測点
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
(a) NS(Y:短軸)方向
10
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
(b) EW(X:長軸)方向
図 1-2-11 FRF(8 号館 RFL/1FL)
7 / 18
10
(3)14 号館
14 号館では、図 1-2-12 に示す位置に地震計を設置している。赤色で示した成分について、北
棟に関して RFL/1FL、
東棟に関して 4FL/1FL の水平挙動 FRF とコヒーレンス関数を図 1-2-13
に示す。北棟では長軸(X 軸)方向、短軸(X 軸)方向とも 1.5Hz と 4.8Hz にピークが見られ
る。振幅は長軸方向の方が大きい。東棟では、短軸(X 軸)方向より長軸(Y 軸)方向の方が
若干ピーク振動数は高い。さらに短軸では 2.2Hz 付近にもピークが見られる。振幅とコヒーレ
ンス関数について、短軸(X 軸)方向は南北両端で大きく異なる。
Z( U)
Y( N)
X( E)
Z( U)
RF
X( E)
Y( N)
5F
RF
4F
4F
3F
3F
2F
2F
1F
1F
B1F
(1) 北棟
(2) 東棟
図 1-2-12 14 号館観測点
25
25
25
X1Y8RF
X5Y8RF
X9Y8RF
20
X5Y8
20
25
X7AY3
X8AY3
20
X8Y6
X8Y1
20
15
15
15
15
10
10
10
10
5
5
5
5
0
180
0
180
0
180
0
180
90
90
90
90
0
0
0
0
-90
-90
-90
-90
-180
1
-180
1
-180
1
-180
1
0.5
0.5
0.5
0.5
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
(a) NS(Y:短軸)方向
10
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
(b) EW(X:長軸)方向
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
(a) NS(Y:長軸)方向
(1) 北棟(RFL/1FL)
10
0
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
(b) EW(X:短軸)方向
(2) 東棟(4FL/1FL)
図 1-2-13 FRF(14 号館)
8 / 18
10
d)校舎の振動特性
実測記録を同定して得られる動特性変化の要因は、経年変化や周辺環境などが複雑に絡み合
っているとされ、未だ明らかにされていない。動特性変化の要因を検討するため、14 号館では
2006 年度から常時微動の連続観測を開始した*1-2-8。
図 1-2-14 に観測対象である北棟の概要を示す。X5-Y8 通りの 4 箇所(RFL、4FL、1FL、杭先
端)に設置した水平 2 方向(X、Y)のサーボ型加速度計を用いて観測を実施している。今回の
検討対象には、図 1-2-14 に示す 2 点(RFL と 4FL)の観測結果のみを用いている。
(1)校舎使用の有無とモード同定値
14 号館は講義棟であり、授業時間には多くの学生に利用される。校舎使用の状況がモード同
定値に及ぼす影響を検討するため、校舎の使用日(4 月 12 日)と未使用日(4 月 15 日)の記録
からモード特性を同定し、比較する。24 時間を区分して、毎正時より 5 分間を 1 時間分の代表
値として用い、自己相関関数により推定した自由振動応答に ERA*1-2-9 を適用してモード特性を
同定した。1 次固有振動数とモード減衰定数を同定した結果を図 1-2-15 に示す。短軸(Y 軸)
方向における 4 月 12 日の結果に若干ばらつきがみられるが、
平均値では両日とも概ね一致する
結果が得られた。校舎使用の状況が 1 次モード同定値に与える影響は少ない。
(2)気温の変化とモード同定値
2007 年の観測期間中において、比較的気温の高い日と低い日の記録からモード特性を同定し、
比較する。低温日として 1 月 1 日、高温日として 8 月 15 日を選択した。両日とも校舎は使用さ
れていない。気象庁発表*1-2-5 による船橋観測所での 1 時間ごとの気温を図 1-2-16 に示す。キャ
ンパスと船橋観測所との直線距離は約 1.6km であることから、両地点で同一の気象状況を仮定
している。同図には先に校舎使用の有無の検討に使用した 4 月 12 日と 15 日の気温変化も併せ
て示している。両日の気温はほぼ一致し、1 月 1 日と 8 月 15 日のほぼ中間値であった。1 月 1
日は最高 8.2℃、最低-0.8℃であった。8 月 15 日は最高 34.6℃の 真夏日 、最低 26.7℃の 熱
帯夜 であった。また、各日とも風速は 4m/s 以下であった。
先ほどと同様に処理して得られた 1 次固有振動数を図 1-2-17 に、モード減衰定数を図 1-2-18
に、それぞれ気温と対応させて示す。1 次固有振動数について、長軸(X 軸)方向では 3 日と
もほぼ一致するが、短軸(Y 軸)方向では高温日に高い傾向が見られる。モード減衰定数につ
いては、両軸で 3 日ともほぼ一致した。なお、風速と 1 次固有振動数、モード減衰定数にも明
瞭な相関関係を確認することはできなかった
表 1-2-4 に図 1-2-15、17、18 で示した 1 次固有振動数とモード減衰定数の 24 時間平均値(ave.)
と変動係数(CV)を示す。固有振動数は変動係数が各日とも小さく、安定した値が同定された
と判断できる。モード減衰定数は変動係数が固有振動数に比べて大きいが、概ね 0.3 程度であ
り、減衰の同定値としては安定した結果が得られた*1-2-10 と判断できる。
9 / 18
X4
X5
X6
X7
X8
X9
N
X1
X2
X3
X4
X5
X6
X7
X8
X9
RFL
63,600
5FL
Y9
4FL
18,400
3FL
EXP.J
Y8
2FL
Y7A
Y7
1FL
B1FL
Y6
(1) 平面図
22,400
X3
GL
6,450
X2
3,800
X1
(2) 断面図
図 1-2-14 対象観測点
Jan. 1, 2007
Apr. 12, 2007
Apr. 15, 2007
Aug. 15, 2007
Apr. 12, 2007
Apr. 15, 2007
0.05
0.05
0.04
0.04
0.03
0.03
0.02
0.02
0.01
0.01
40
30
20
10
0
0
1.7 1.72 1.74 1.76 1.78 1.8
0
1.6 1.62 1.64 1.66 1.68 1.7
-10
Frequency (Hz)
Frequency (Hz)
0
5
10
15
20
Time (o'clock)
(1) X(長軸)方向
(2) Y(短軸)方向
図 1-2-15 1 次固有振動数と減衰定数
図 1-2-16 気象庁船橋観測所の気温
Jan. 1, 2007
Apr. 15, 2007
Aug. 15, 2007
Jan. 1, 2007
Apr. 15, 2007
Aug. 15, 2007
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
1.6 1.62 1.64 1.66 1.68 1.7
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
1.7 1.72 1.74 1.76 1.78 1.8
Frequency (Hz)
Frequency (Hz)
(1) X(長軸)方向
(2) Y(短軸)方向
図 1-2-17 気温と 1 次固有振動数
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
0
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
0
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Damping const.
Damping const.
(1) X(長軸)方向
(2) Y(短軸)方向
図 1-2-18 気温と 1 次モード減衰定数
表 1-2-4 1 次固有振動数と減衰定数の平均値、分散
(1) X(長軸)方向
(2) Y(短軸)方向
Frequency (Hz) Damp ing const.
Frequency (Hz) Damping const.
ave.
CV
ave.
CV
Jan. 1
Apr. 12
1.657
1.644
0.003
0.006
0.021
0.021
0.173
0.206
Jan. 1
Apr. 12
Apr. 15
Aug. 15
1.645
1.651
0.003
0.005
0.021
0.025
0.179
0.295
Apr. 15
Aug. 15
10 / 18
ave.
CV
ave.
CV
1.751
1.742
0.004
0.010
0.024
0.024
0.387
0.287
1.747
1.774
0.004
0.005
0.026
0.023
0.169
0.298
1.2.4 FRF 推定法の開発
鉛直アレーでは観測結果として FRF が参照される。本節では、FRF の推定法として一般に多
用される Hv 推定の問題点を指摘し、既に提案した手法(Hp 推定)*1-2-11 により、その問題点が
解決できることを数値例によって確認した。
a)数値モデルと観測値
図 1-2-19 に示す水平成層地盤において、地表面を含む 6 箇所の観測点(●印)で観測値が得
られるとする。1 次元重複反射理論に基づいて線形解析した各観測点の応答加速度信号に、表
1-2-5 に記す雑音を時間領域で混入させて観測値とした。一例として、観測点 1、5 の応答信号
を図 1-2-20 に、混入させた雑音の時刻歴を図 1-2-21 に、それらのパワースペクトルを図 1-2-22
に示す。また、各観測点の S/N 比(応答信号 RMS 値/雑音 RMS 値)を図 1-2-23 に示す。
一定雑音は、平均値 0、標準偏差σの正規分布を持つ乱数に、観測点 6 における応答信号の
RMS 値を乗じて表現した。図 1-2-21(1)と図 1-2-22(1)より、雑音の RMS 値は観測点によらずほ
ぼ同一であり、周波数依存性が低く白色雑音に近い。また図 1-2-23 より、地表面に近い観測点
ほど応答信号が増幅するため S/N 比が大きくなる。各手法による特徴を把握するため、雑音の
大きさを表すσを 0.1、0.3、0.5 の 3 通りに変化させて検討した。比例雑音は、平均値 0、標準
偏差σの正規分布を持つ乱数に各応答信号のフーリエ変換絶対値を乗じた値をフーリエ逆変換
して表現した。図 1-2-20(2)と図 1-2-21(2)より、雑音は応答信号の大きさに比例し、周波数に依
存した有色雑音である。図 1-2-22 より、各観測点の S/N 比がほぼ同一であるので、Hv 推定で仮
定された雑音性状と類似する。また、σ= 0.5 とした一定雑音と、σ= 0.4 とした比例雑音の観
測点平均 S/N 比はほぼ一致し、観測系としてはほぼ同一レベルの雑音を混入させている。
いずれも乱数の値を変化させて、
異なる雑音を含む観測値を10組作成した。
観測時間は10.24s、
サンプリング時間は 0.01s である。
6
5
4
3.7m Vs = 105m/s, ρ = 1.55g/cm3, h = 0.02
3.2m Vs = 178.5m/s, ρ = 1.82g/cm3, h = 0.02
7.7m Vs = 315m/s, ρ = 1.97g/cm3, h = 0.01
3
2
Vs:S 波伝播速度
ρ:質量密度
h:減衰定数
31.85m
●:観測点
Vs = 416.5m/s, ρ = 2.13g/cm3, h = 0.01
1
図 1-2-19 地盤モデル
表 1-2-5 雑音性状
一定雑音
比例雑音
雑音性状
全観測点で一定の RMS 値
(各観測点の雑音比が異なる)
各応答信号のフーリエ変換値に比例
(各観測点の雑音比が類似)
11 / 18
標準偏差σ(雑音の大きさ)
0.1 (小)、0.3 (中)、0.5 (大)
0.4
8
4
0
-4
-8
0
2
4
6
Time (s)
8
8
4
0
-4
-8
0
10
(a) 観測点 1
2
4
6
Time (s)
8
10
(b) 観測点 5
図 1-2-20 応答信号
1
1
1
1
0
0
0
0
-1
0
2
4
6
Time (s)
8
10
-1
0
2
(a) 観測点 1
4
6
Time (s)
8
10
-1
0
(b) 観測点 5
2
4
6
Time (s)
8
10
-1
0
(a) 観測点 1
(1) 一定雑音(σ= 0.5)
2
4
6
Time (s)
8
(b) 観測点 5
(2) 比例雑音(σ= 0.4)
図 1-2-21 混入させた雑音の例
Signal
1
10
0
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
-7
10
0
1
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
10
0
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
-7
10
0
(a) 観測点 1
Noise
1
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
(b) 観測点 5
10
0
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
-7
10
0
1
2
4
6
8
Frequency (Hz)
(a) 観測点 1
(1) 一定雑音σ= 0.5
10
10
0
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
-7
10
0
2
4
6
8
Frequency (Hz)
10
(b) 観測点 5
(2) 比例雑音σ= 0.4
図 1-2-22 信号と雑音のパワースペクトル
図 1-2-23 設定した S/N 比
b) 各手法による FRF 推定結果
各手法による FRF の推定結果について、観測点 1 を基準点、観測点 5 を対象点として例示す
る。一定雑音(σ= 0.5)および比例雑音(σ= 0.4)を設定した場合の結果を図 1-2-24(1)、(2)
12 / 18
10
にそれぞれ示す。位相については、全手法で大差は見られない。振幅に関して、比例雑音では
全手法で設定値が表現されたのに対し、一定雑音では各手法による特徴が現れている。
10
2
10
10
10
2
1
10
0
10
設定値
推定値
-1
2 4 6 8
Frequency (Hz)
2
1
10
1
0
10
0
2
1
10
0
10
-1
10
180
90
0
-90
-180
0
10
10
設定値
推定値
10
180
90
0
-90
-180
10
0
(a) H1 推定
設定値
推定値
-1
-1
2 4 6 8
Frequency (Hz)
10
180
90
0
-90
-180
10
0
(b) H2 推定
設定値
推定値
2 4 6 8
Frequency (Hz)
10
180
90
0
-90
-180
10
0
(c) Hv 推定
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
(d) Hp 推定
(1) 一定雑音σ= 0.5
10
2
10
2
10
1
10
10
0
10
設定値
推定値
-1
10
180
90
0
-90
-180
0
10
2
1
10
0
10
設定値
推定値
-1
2 4 6 8
Frequency (Hz)
10
180
90
0
-90
-180
10
0
(a) H1 推定
10
2
1
10
1
0
10
0
設定値
推定値
-1
2 4 6 8
Frequency (Hz)
10
180
90
0
-90
-180
10
0
(b) H2 推定
設定値
推定値
-1
2 4 6 8
Frequency (Hz)
10
180
90
0
-90
-180
10
0
(c) Hv 推定
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
(d) Hp 推定
(2) 比例雑音σ= 0.4
図 1-2-24 観測点 5/観測点 1 の FRF
c) 各手法による FRF 特徴と評価
各手法の特徴が現れた 0∼2Hz、1 次共振振動数付近、逆共振振動数付近、雑音評価の 4 項目
について、以下に詳述する。
(1) 0∼2Hz
対象とする信号は加速度であり、この帯域の振幅は小さい。図 1-2-24 の設定値より、対象点
は基準点と等しいか、やや大きい信号を持つ。また、図 1-2-22(1)より信号成分に比べ雑音成分
が著しく大きい。図 1-2-24(1)より、Hp 推定ではややスパイクが多いが、スパイクは設定値の周
りで発生しており平均精度は高く、適切に推定する。H1 推定と H2 推定値は設定値から大きく
外れる。H1 推定では対象点挙動を過小に推定し、H2 推定では過大に推定する。両者の幾何平均
を採る Hv 推定が結果として設定値に近い。図 1-2-24(2)より、比例雑音でもこの帯域では、全手
法で雑音の影響を受けてスパイクが生じるが、スパイクは設定値の周りで変動しており、推定
値は適切である。
13 / 18
(2) 1 次共振振幅値(ピーク値)
FRF では混入する雑音に応じて、その影響を受けるピーク推定値が重要である。図 1-2-25 に
1 次共振点付近(1.8∼2.8Hz)の FRF 振幅推定値を、雑音の大きさσをパラメータとして示す。
H2 推定と Hp 推定の振幅値は、雑音の影響が少なく適切である。対して、Hv 推定と H1 推定は、
この順に雑音の大きさの影響を強く受ける。ピークでは対象点の信号成分が大きく、基準点の
雑音比が FRF 形状を支配する。このため H2 推定の精度は高い。H2 推定とは逆に、基準点に混
入する雑音の影響を受けて H1 推定の推定精度は極めて低く、雑音の大きさに対応してピーク値
も大きく変動する。比例雑音では、全手法で適切に評価されている。
設定値
一定雑音σ = 0.1
一定雑音σ = 0.3
80
一定雑音σ = 0.5
比例雑音σ = 0.4
80
80
80
60
60
60
60
40
40
40
40
20
20
20
20
0
1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8
Frequency (Hz)
0
1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8
Frequency (Hz)
(a) H1 推定
(b) H2 推定
0
1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8
Frequency (Hz)
0
1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8
Frequency (Hz)
(c) Hv 推定
(d) Hp 推定
図 1-2-25 1 次共振点付近(1.8∼2Hz)における観測点 5/観測点 1 の FRF
(3) 8∼10Hz
基準点より対象点の振幅が小さい逆共振状態を検討の対象としている。任意に選択される基
準点の採り方によっては、対象点の逆共振点は他の点のピークに相当するので、逆共振点にお
ける推定精度の検証も重要である。図 1-2-26 に逆共振点付近(8∼10Hz)の FRF 振幅推定値を
雑音の大きさσをパラメータとして示す。逆共振点では、対象点より基準点の信号が大きいた
め、対象点の雑音比が FRF 形状を支配する。よって H1 推定の精度は高い。逆に H2 推定の精度
は低く、Hv 推定はこれらの平均を採る。Hp 推定ではスパイクが生じるが平均精度は高い。比例
雑音では、全手法で適切に推定されている。
設定値
一定雑音σ = 0.1
一定雑音σ = 0.3
一定雑音σ = 0.5
比例雑音σ = 0.4
2
2
2
2
1.5
1.5
1.5
1.5
1
1
1
1
0.5
0.5
0.5
0.5
0
8
8.5 9 9.5 10
Frequency (Hz)
(a) H1 推定
0
8
8.5 9 9.5 10
Frequency (Hz)
0
8
(b) H2 推定
8.5 9 9.5 10
Frequency (Hz)
(c) Hv 推定
0
8
8.5 9 9.5 10
Frequency (Hz)
(d) Hp 推定
図 1-2-26 逆共振点付近(8∼10Hz)における観測点 5/観測点 1 の FRF
14 / 18
(4) 雑音評価
Hv 推定と Hp 推定で得られた雑音比を、あらかじめ設定した雑音量と比較して、各手法の精
度を検討する。図 1-2-27 に Hp 推定で得られた系の雑音比を示す。系の雑音比は雑音の全点総
和を観測値の全点総和で除して与えられ、Hp 推定による雑音推定結果の指標として用いること
ができる*1-2-11。
設定値に対して Hp 推定は精度良く雑音が推定されている。
図 1-2-28 に観測点 1、
5 での雑音比と Hv 推定で得られた雑音比を示す。同図の雑音比は、観測点1および 5 それぞれ
での雑音の観測値に占める割合を示しており、Hv 推定の雑音推定結果の指標として用いること
ができる*1-2-11,12。Hv 推定による雑音比は 2 箇所の観測点の雑音比を平均化して評価する。よっ
て、比例雑音のように基準点と対象点の雑音比が一致する場合に Hv 推定は良好な結果を示す。
1
1
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
2 4 6 8
Frequency (Hz)
設定値
推定値
0
10
0
(1) 一定雑音σ= 0.5
2 4 6 8
Frequency (Hz)
10
(2) 比例雑音σ= 0.4
図 1-2-27 系の雑音比
設定値(観測点5)
設定値(観測点1)
Hv推定
1
1
1
1
1
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.6
0.6
0.6
0.6
0.6
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0
0
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
0
0
(a) 設定値
(観測点 1)
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
0
0
(b) 設定値
(観測点 5)
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
(c) Hv 推定
0
1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8
Frequency (Hz)
0
8
8.5 9 9.5 10
Frequency (Hz)
(d) 1.8∼2.8Hz 拡大 (e) 8∼10Hz 拡大
(1) 一定雑音σ= 0.5
1
1
1
1
1
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.6
0.6
0.6
0.6
0.6
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0
0
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
(a)設定値
(観測点 1)
0
0
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
(b)設定値
(観測点 5)
0
0
2 4 6 8 10
Frequency (Hz)
(c)Hv 推定
0
1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8
Frequency (Hz)
8.5 9 9.5 10
Frequency (Hz)
(d)1.8∼2.8Hz 拡大 (e) 8∼10Hz 拡大
(2) 比例雑音σ= 0.4
図 1-2-28 観測点 1 と 5 の雑音比
15 / 18
0
8
以上より、FRF 推定の際に基準点を観測点 1 とした場合には相対的に基準点の雑音の影響が大
きく、対象点の雑音の影響が小さくなるので H2 推定で設定された雑音性状に類似する。逆に、
基準点を観測点 6 とした場合には H1 推定で設定された雑音性状に類似する。Hv 推定は常に H1
推定と H2 推定の幾何平均値を示す。
以上の評価結果を表 1-2-6 にまとめて記す。既往の手法に比べて提案手法(Hp 推定)の方が
良好な評価項目が多く、総合的に優れている。
表 1-2-6 推定手法の評価結果
雑音性状
0∼2Hz
8∼10Hz
一定雑音
ピーク値
雑音評価
0∼2Hz
8∼10Hz
比例雑音
ピーク値
雑音評価
H1 推定 H2 推定 Hv 推定 Hp 推定
×
×
◎
○
◎
×
△
○
×
◎
△
◎
−
−
×
◎
○
○
○
○
◎
○
◎
◎
○
◎
◎
◎
−
−
△
◎
1.2.5 おわりに
a) 観測網の整備
2、3 号館観測に関係する観測システムを更新した。今後は、現在欠測となっている箇所につ
いて至急修繕し、観測網の管理と整備を継続する。また、A 観測システムから他の観測システ
ムへトリガ信号を転送し、多点同時観測体制を整備する。さらに、情報ネットワークを利用し
た観測記録公開の実施、防災情報システム構築の検討を行う。
b)観測記録の整理
平成 19 年には 33 事象の記録が得られた。データベース整備を今後も実施する。
今年観測された記録は微小地震であり、十分に耐震補強効果を検証できる加速度振幅レベル
とは言えないが、類似形状で補強法のみが異なる 2 号館と 3 号館で動特性が大きく異なること
が示された。実測による耐震補強効果を検証するためには、8 号館と 14 号館も含め、今後も観
測を継続することが重要である。また、14 号館では常時微動の連続観測記録を用いて、校舎使
用の状況や気温と、1 次モード特性との関連を調査した。校舎使用の状況が同定値に及ぼす影
響は少ないが、短軸(Y 軸)方向の 1 次固有振動数が気温に依存する可能性が示された。この
理由については現在不明であるが、今後も観測を継続してデータを蓄積し、動特性の変化を長
期的な視野で検討する必要がある。
c) データ処理法の検討
数値モデルを用いて、雑音の性状や大きさが FRF の推定精度に及ぼす影響について検討し、
以下の知見を得た。
1) 提案手法(Hp 推定)では、全観測点における雑音量の総和を全観測値に比例させて推定し
16 / 18
ている。そのため、各観測点における雑音比の影響が低減され、一定雑音のような想定さ
れていない雑音が混入した場合であっても、ほぼ適切な FRF を推定できる。
2) 推 定 さ れ た FRF 振 幅 に は 、 共 振 点 付 近 で |H1|≦|Hv|≦|Hp|≦|H2| 、 逆 共 振 点 付 近 で
|H1|≦|Hp|≦|Hv|≦|H2|の関係が確認された。Hp 推定によって既往手法の各長所を取り入れた
結果を得ることができる。
3) 一定雑音のように観測点で雑音比が異なっている場合に、既往手法に生じる問題点を指摘
した。つまり、共振点では H1 推定の、逆共振点では H2 推定の推定誤差が大きくなる。ま
た、雑音比が大きいとき、H1 推定は FRF を小さく、H2 推定は大きく推定する。Hv 推定は
両者の平均的な FRF を与える。
4) 今後、観測網で得られた記録へ適用し、Hp 推定の有用性を実証する。
参考文献
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[1-2-2] 仲村成貴、阿世賀宏、花田和史、新井寿昭、塩尻弘雄、鈴村順一:実大モデルによる上
部構−杭基礎系の動的特性に関する研究(起振実験の概要)、第 10 回日本地震工学シ
ンポジウム論文集、pp.1587-1592、1998.11.
[1-2-3] 日本大学理工学部地震動・耐震構造研究グループ:船橋地域地震観測網の状況とデータ
管理、日本大学理工学部理工学研究所所報、第 112 号、2006.1.
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[1-2-10] 日本建築学会:建築物の減衰、2000.
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造工学論文集、Vol.52A、pp.219-226、2006.4.
[1-2-12] 花田和史:地盤−構造物系の動特性と動剛性の同定法、電力中央研究所総合報告、UO5、
1988.
17 / 18
発表論文リスト
[1-2-1] 仲村成貴、鈴村順一、花田和史:常時微動記録に基づく構造物の動特性、第 56 回理論
応用力学講演会講演論文集、pp.81-82、2007.3.
[1-2-2] 宇野州彦、塩尻弘雄、川口和弘、仲村成貴、中原知洋、大島貴充:解析手法や境界条件
等の違いが地盤−基礎−上部構造物からなる系の動的挙動に与える影響評価、土木学会
地震工学論文集、報告、pp.1151-1158、2007.8.
*[1-2-3] 仲村成貴、林弘昭、鈴村順一、花田和史:地震動および常時微動観測に基づく構造物
の動特性、土木学会第 62 回年次学術講演会概要集、第 I 部門、pp.1199-1200、CD-ROM、
2007.9.
18 / 18