放射光X線回折を利用した 角層細胞間脂質の構造解析に基づく 医薬品

2008A1784
BL40B2
放射光X線回折を利用した
角層細胞間脂質の構造解析に基づく
医薬品・化粧品の開発
○小幡誉子1,押村英子2,簗瀬香織3,國澤直美4,笠原淳仁5,
村越紀之5,坂本一民5 ,天野智史6,内田尚志6,佐野則道7,
酒井恵7,野邊誠8,八田一郎9,太田昇9,井上勝晶9,
八木直人9,渡邉大至1,髙山幸三1
(1星薬科大学, 2味の素㈱,3クラシエホームプロダクツ㈱,4㈱資生堂,
5㈱成和化成,6久光製薬㈱,7P&Gイノベーション合同会社,8ユースキン
製薬㈱, 9高輝度光科学研究センター)
皮膚の構造
http://matsumotobigan.com/nagoya/seijyo/seijyou_p/seijyou-kakusitusou.html
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec18/ch201/ch201b.html
角層のレンガ/モルタルモデルと透過型電子顕微鏡写真
透過型電子顕微鏡写真
レンガ
(角層細胞)
モルタル
(細胞間脂質)
P. W. Wertz, et al., J. Invest. Derm., 89, 419-425 (1987).
経皮吸収型製剤とは
長所:肝初回通過効果回避
消化管への副作用軽減
血中濃度の長時間維持
除去による投与中断
短所:吸収量が少ない
吸収に長時間を要する
角層のバリア機能
吸収促進物質の併用
角層細胞間脂質研究の方法
試料
●角層(ラット、マウス、ブタ、ヒト)
●モデル脂質
測定手法
●顕微鏡(CSLM)
●示差走査熱量測定(DSC)
●赤外吸収(FTIR)
●電子スピン共鳴(ESR)
●X線回折
角層細胞間脂質構造解析の問題点
測定試料は少量
角層細胞間脂質は角層全体のおよそ10
角層細胞間脂質は角層全体のおよそ
10%
%
S/N比が悪い
S/N比が悪い
実験データの詳細な解析が困難
放射光X
放射光
X線回折の利用
角層細胞間脂質の構造と役割
ラメラ構造
短周期ラメラ (約6nm)
長周期ラメラ (約13nm)
充填構造
斜方晶 (約0.42nmx2、約0.37nmx1 )
六方晶 (約0.42nmx3)
細胞間脂質の一部が構造化
生体保護の物理的障壁
皮膚の物質透過制御
角層細胞間脂質構造研究の意義
生体保護機能解明
皮膚疾患治療法確立
角層細胞間脂質
構造研究
機能性化粧品
開発
外用剤・経皮
吸収型製剤開発
課題申請・実験
実施にあたって
これまでの製品開発研究の経験のなかから皮膚表面への作用が予想される
化合物について細胞間脂質の構造情報を中心にデータベースとしてまとめる
ことで、
ことで
、新製品の開発の基盤情報を確立することを
新製品の開発の基盤情報を確立することを目標とした
目標とした。
。
実験方法
角層の剥離:トリプシン処理により
皮膚組織から剥離したヒト角層
(BIOPREDIC International, France)を
洗浄・乾燥して水分量の調節を行っ
て実験に供した。
製剤成分の適用ならびにX線回折測
定:角層を溶液セルに充填して、
SPring-8 ビームラインBL40B2に
おいて、溶液セルを用いて種々の化
合物を角層に直接適用しながら、経
時的に小角(SAXD)・広角(WAXD)
X線回折測定を行った。
角層の小角・広角X
角層の小角・広角
X線回折像
SPring-8 BL40B2
SPring検出方法:
検出
方法:Imaging
Imaging Plate、
Plate、露光
露光30
30秒
秒
試料:角層およそ5
試料
:角層およそ5mg
mg
角層の小角・広角X
角層の小角・広角
X線回折プロファイル
六方晶
長周期ラメラ
ラメラ構造の周期
炭化水素の充填構造
短周期ラメラ
斜方晶
ソフトケラチン
角層細胞間脂質の充填構造
0.42nm (S=2.4 (nm-1))
0.37nm (S=2.7 (nm-1))
脂質の充填構造の種類
六方晶
斜方晶
・六方晶と
・六方
晶と斜方
斜方晶が混在
晶が混在
0.42nm x 3
0.42nm x 2
0.37nm x 1
ヒト角層のX
ヒト角層の
X線回折プロファイル
小角領域
広角領域
8000
3500
斜方晶+六方晶
Intensity (cps)
Intensity (cps)
短周期(1)
6000
長周期(3)
4000
2500
斜方晶
1500
2000
長周期(4)
0
500
0.0
0.1
0.2
S (nm-1)
0.3
0.4
2.2
2.4
S (nm-1)
2.6
2.8
水の適用による回折プロファイルの変化
小角領域
広角領域
斜方晶+六方晶
短周期(1)
適用2時間後
長周期(3)
適用2時間後
適用開始直後
適用開始直後
斜方晶
充填構造由来の回折ピーク解析
格子面間隔
2000
1500
0.4160
0.4155
0
30
60
90
0
120
30
60
90
120
700
積分強度
600
500
400
0.37555
Peak position (nm)
Integrated intensity
(cps)
斜方晶
格子面間隔
0.37535
0.37515
0
30
60
90
Time (min)
120
0
30
60
90
Time (min)
120
Full width at half maximum (nm-1)
0.4165
積分強度
Peak position (nm)
Integrated intensity
(cps)
2500
Full width at half maximum (nm-1)
斜方晶+六方晶
0.020
半値幅
0.015
0.010
0
30
60
90
120
0.020
半値幅
0.015
0.010
0
30
60
90
Time (min)
120
種々の化合物の適用による細胞間脂質由来広角X線回折プロファイルの変化(1)
広角領域
化合物名
斜方晶 &六方晶 (2.4
nm-1)
斜方晶(2.7 nm-1)
水
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
アルギニン塩酸塩
(10% 溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
グリセリン (50%溶液)
ラウリル硫酸ナトリウム
(10%溶液)
Intensity : 不変
Position : 不変
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
Intensity : 不変
Position : 不変
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
ラウリン酸ナトリウム
(10%溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行?
エタノール
Intensity : ↓↓
Position : 不変
Intensity : 不変
Position : 不変
Intensity : ↓↓↓
Position : 不変
Intensity : ↓↓
Position : 不変
Intensity : ↓↓
Position : 不変
Intensity : 不変
Position : 不変
Intensity : ↓↓↓
Position : 不変
Intensity : ↓↓
Position : 不変
ミリスチン酸イソプロピル
d-リモネン
dl-カンフル
(5%エタノール溶液)
種々の化合物の適用による細胞間脂質由来広角X線回折プロファイルの変化(2)
広角領域
化合物名
斜方晶 &六方晶 (2.4
nm-1)
斜方晶(2.7 nm-1)
水
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
グリセリン (5%溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
グリセリン (10%溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
グリセリン (30%溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
1,3-ブチレングリコール
(5%溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
1,3-ブチレングリコール
(10%溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
1,3-ブチレングリコール
(30%溶液)
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
Intensity : ↓
Position : 僅かに小角側へ移行
まとめ
ミリスチン酸イソプロピル
水
エタノール
液晶化脂質に影響?
短周期ラメラの膨潤
充填構造の膨潤
細胞間脂質の液晶化
角層細胞への影響
保湿剤溶液
d-リモネン
水分蒸散抑制
細胞間脂質の液晶化
界面活性剤溶液
細胞間脂質へは無作用
今後の展望
●製剤の適用状況を考慮した実験系の確立
●角層内の他成分(ソフトケラチン等)
に対する化合物の影響の検討