26 KYOTO UNIVERSITY HOSPITAL ANNUAL REPORT 2008 1 内科 ⑩初期診療・救急科 (救急部含む) (「総合診療科」は、 平成21年4月1日より 「初期診療・救急科」 に改称されました。 ) 連絡先:075-751-4399 (時間外事務当直) ■診療科/部の特徴 ■初期診療・救急科がスタート 1)入院加療を含めた急性期疾患の診療の充実を図るた 初期診療・救急医学分野は、当初から診療面では、 「総 め、平成21年4月から「初期診療・救急科」を設立(総 合診療科」 「 救急部」という2つの診療科/部名のもと 合診療科から標榜変更) に診療を行ってきた。しかし、この3年間、主として救急 2)各診療科の専門医が常駐している大学病院の長所を 生かし、コーディネート型救急診療体制を整備 診療を充実させることに重きを置いてきたこと、一般外 来診療では初期診療部門に機能を特化したこと、総合診 3)大規模災害、新興感染症、臓器移植医療、熱傷、敗血 療科が従来行っていた形態での入院・外来診療は行わな 症、産科救急、高齢者救急、脳血管障害など、さまざ くなってきたことなどから、平成21年4月からは「総合 まな状況における救急医療体制の充足を目的とした 診療科」の標榜科名を、分野名と同一の「初期診療・救急 プロジェクトを院内他部署と共同して推進中 科」に変更した。 4)一般人に対する心肺蘇生法講習から救急専門医育成 まで、幅広い教育体制の実施 5)重症救急患者の受け入れをさらに充実できるよう、 院内の体制整備を進めている 現在、 初期診療・救急科ならびに救急部は、 小池 薫 診 療科長、 松田 直之 副診療科長 (京都大学医学部 初期 診療・救急医学分野 准教授) のもと、 助教5名、 医員2名、 後期修練医1名で構成されている。 ■初期診療・救急科としての試み 入院診療:平成20年2月より外傷・中毒・感染症・脳血 管障害を含む多彩な急性疾患に対して入院診療を開始 した。医員を1名から3名に増員し、今後さらに京大病院 の急性期医療のニーズに応えられるよう体制整備を進 めている。 敗 血 症 診 療 プ ロ ジ ェ ク ト:ICT(Infection Control Team)と共同で敗血症診療を開始し、院内のすべての診 ■沿革と業務体制 療科の敗血症患者さんに対する診療体制の強化を図り、 救急医療は国民の安心安全のためには不可欠な医療 特に敗血症性ショックに対しては診療の充実とともに で、その社会的重要性はますます大きくなっている。初 標準化を目指している。 期臨床研修制度における救急ローテーションの義務化 熱傷診療プロジェクト:形成外科・集中治療部と共同 に象徴されるように、救急医療・救急医学の普及と教育 で熱傷の患者さんに対する診療体制を構築中である。近 に対する社会的ニーズも高い。一方、阪神淡路大震災や 隣の救命救急センターとも連携し、地域全体の重症熱傷 尼崎鉄道事故などの大規模災害、臓器移植医療、新型イ 患者診療の体系化を図っている。 ンフルエンザウイルス等の新興感染症など、特殊状況下 初期診療部門:紹介状を持たずに京大病院を受診され における救急医療では、京都大学医学部附属病院のよう る初診患者さんの初期診療にどのように対応するか、関 な高度先進医療実施施設の果たす役割は大きい。 係部署と検討中である。 このような背景のもと、京大病院での救急診療体制充 教育活動:救急医療教育へのニーズに答えるため、一 実のため、平成12年度から千葉 勉 教授(消化器内科 般の方や医療関係者を対象にした心肺蘇生法 (BLS; 教授と兼任)を部長として救急部が編成された。平成18 Basic Life Support)、よ り 高 度 な 心 肺 蘇 生 法(ICLS; 年度に京都大学大学院医学研究科に初期診療・救急医学 Immediate Cardiac Life Support, ACLS; Advanced 分野が新設されたことに伴い、初期診療・救急医学分野 Cardiac Life Support)の普及活動、学生・研修医・一般医 教授を診療部長に迎えて組織を一新し、京大病院での救 を対象とした救急初期診療講習、救急専門医の育成など 急診療体制のさらなる充実を図ってきた。 幅広い教育活動を推進している。これに加えて、一般医 を含めた幅広い層を対象とした急性期疾患の初期診療 法に関する教育システムの構築も目指している(Triage and Actionコース)。院外においては、消防や京都市・京 KYOTO UNIVERSITY HOSPITAL ANNUAL REPORT 2008 都府などの行政機関・団体と連携を図り、社会のニーズ 27 速かつ円滑な診療開始が可能となっている。 に対応した救急医療体制の構築に力を注いでいる。救急 隊との協力関係は救急医療においてはとりわけ不可欠 ■高度先進医療等への取り組み であるため、京都市消防局の救急救命士教育、一般救急 救急医療は単独の診療科・診療部門・診療施設だけで 隊員教育に協力するとともに、左京区等の救急隊員と定 は完結できないため、地域の医療機関、京都市内の救命 期的な勉強会を開催し、救急救命士の活動現場に対する 救急センターおよび基幹病院、消防や京都市・京都府な メディカルコントロール業務にも積極的に参加してい どの行政機関・団体などとも連携して、各種人的交流を る。 含め、地域医療と高度先進医療を融合させた形で救急医 災害医療:大規模災害発生時の社会的な要請に応じ 療システムの確立を目指している。 ら れ る よ う に、救 急 部 医 師 の み な ら ず、看 護 師・事 務 院内においては、救急医療や集中治療病棟に関する委 職 員 の 中 か ら 有 志 を 募 っ てDMAT(Disaster Medical 員会、産科救急・高齢者救急・外傷診療・敗血症診療整備 Assistant Team)講習会に参加し、大規模災害の際には のためのワーキンググループ等を設立した。そこでは、 医療チームを派遣できるように準備している。加えて 各診療科・診療部門と協議を重ねつつ、本院全体として JICA(Japan International Cooperation Agency)の国際 の救急医療に対するコンセンサス作り、集中治療病棟の 緊急救助チーム・医療チームにも登録を行い、国際的な ハード面の充足、院内急変時の救急医療システムの整備 大規模災害時でも本院からの援助が可能となるよう体 などを図っている。一方、新型インフルエンザウイルス 制を整備している。 などの新興感染症に対する救急医療体制を構築するた め、ICTと連携した積極的な活動を展開している。近い将 来、国内における臓器移植症例数の増加が予想されてい 京大病院の中央診療部門のひとつである救急部では、 るが、当院は脳死下臓器提供医療施設であるので、関係 各診療科の専門医が常駐している大学病院の長所を生 する診療科・診療部門とともにその準備を進めている。 かし、各診療科の協力のもと、コーディネート型救急診 療体制を確立している。すなわち、救急外来部門では主 ■部門統計 として救急患者の受け入れ・トリアージ・初期診療を 昨年度、救急外来での診療総数は9,231件(平均25.3 行っているが、必要時にはただちに各診療科が専門診療 件/日 )、救 急 外 来 か ら の 入 院 総 数 は1,637件( 入 院 率 を開始できるシステムを敷いている。その結果、消防局 17.8%、平均4.5件/日、初期診療・救急科で203件)、救急 指令センターと直結するホットラインを介した救急車 車搬入総数は2,520件(平均6.9件/日)であった。救急外 の受け入れ、ならびに窓口に直接緊急来院される患者さ 来受診者数・救急車搬送台数はともに、ここ5年間で倍 んに対しては24時間体制で対応し、京大病院に通院中 増しており、今後も更なる増加が見込まれている。 の患者さんの急変時には多くの場合で受け入れ可能と なっている。一方、当院に受診歴のない救急患者さんに ついては、診療科ごとに救急診療に対する取り組み方が 異なるため、各診療科の実状に合わせた受け入れ態勢と なっている。今後は各診療科・診療部門との連携をさら に深め、重症救急患者さんの受け入れが一層充実するよ う院内の体制整備を進めていく予定である。 看護部門:救急部外来では、救急部と集中治療部を併 任する看護師1名が24時間対応をしている。時間外に は夜勤師長1名、患者数の多い土日祝日については中央 診療部門等の看護師2名が応援する体制を築いている。 検査部門:救急搬送を受け入れたのち、診断・治療を 迅速に開始するためには、検査部門の協力が不可欠であ るが、放射線部および検査部の全面的な協力のもと、救 急診療に伴う緊急検査は速やかに実施でき、患者受け入 れから診断・治療開始までの時間はきわめて短い。 事務部門:救急部外来には専属事務員が配置され、迅 内科 ■救急部としての試み
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