一筆地調査 南海測量設計㈱ 1 地籍調査における一筆地調査 1.地籍調査の基本概念 創設主義と修正主義 (1)創設主義 登記簿に記載されている内容とは無関係に、現在の権利及び利用関係で直接に新たな権利 関係及び筆界を定める(創設する)方法・・・土地改良(圃場整備)、土地区画整備等 例.1 公図では実線が境界であるが、調査時に111番地の一部が畑になっている場合 調 畑 査 110番地 前 畑 111番地 宅 地 公図や登記簿に記載されている内容と無関係に、現在の権利、利用関係で新たな権利関係及び 筆界を定める。 調 査 110番地 後 畑 111番地 宅 地 (2)修正主義 現在登記簿に登記されている内容を前提として調査を行ない、現実の権利又は利用関係の 変動に応じ、分割調査及び合併調査並びに一般の登記手続をすることにより、現在の権利 又は利用関係に合致した地籍に修正する方法。 地籍調査においては、一般原則である「修正主義」による調査の方法を採っている。 例.2 公図では実線が境界であるが、調査時に111番地の一部が畑になっている場合 調 畑 査 110番地 前 畑 111番地 宅 地 現在の登記簿に記載されている内容を前提として調査を実施し、現実の権利又は利用関係の変動に 応じ、分割調査及び合併調査並びに一般の登記手続をすることで、現在の権利又は利用関係に合致し た地籍にする。 調 111番地2 分割又は110番地に一部合併の調査 査 110番地 後 畑 畑 111番地1 宅 2 地 一筆地調査の手順 登記所で 調査素図 土地登記簿・公図 調査地区説明会 調査票・標札 の確認 標札の配布 の作成 地籍測量 土地所有者の C工程・D工程 同 意 ・ 押 印 地籍測量 一筆地調査 土地所有者による F1工程 (筆界の確認) 筆界の測量 調査図・調査票 筆界杭・標札 の設置 の作成・点検 仮閲覧 F2工程 地籍図原図の作成 G工程 所有者の同意・押印 H工程 所有者への閲覧 地籍図複図作成 地 地籍簿案作成 図 地籍簿案 地積測定 登記所及び 籍 「誤り訂正申出」 登 記 所 へ 市町村役場での 地籍図・地籍簿案 一般への閲覧 の送付 認 証 国土交通大臣の認証 (1)確定測量等の国土調査指定 土地改良事業の確定測量、土地区画整理の確定測量等で 地籍調査の成果と同等以上の精度を有していれば 国土調査法第19条第5項の規程により、地籍調査と同一の効果があるものと して指定を受けることができる。 類似の測量・調査を同一の地域で重複して行うことを防止し、地籍調査と平行して総合的に地籍 の明確化に資することができる。 なお、公的な測量・調査だけでなく、民間の宅地開発に伴う測量成果についても、国土調査 法第19条第5項の指定を受けることができる。 (上記のような事業による成果を、19条第5項による成果という) 3 2.調査の計画及び準備 (1)調査素図の作成と地図作成(準則第15条) 及び地籍調査票の作成(準則第18条) 1. 公 図 から 調査素図 準則第16条 現地調査で使用する 準則運用基準第8条 ◎ を作成 調査図の基となる地図 公図と現地の不符合 ・地図訂正と地籍調査・・・地籍調査では公図の修正を行うことができます。 2. 登記簿・土地台帳・課税台帳 登記簿 地籍調査票 を作成 ・・・・・・・登記所備付 土地台帳・課税台帳・・市町村備付(作成後登記簿と照合) * 地籍調査票作成時 大字・小字・地番・地目・所有者住所・所有者氏名 記入事項 所有権以外の登記(抵当権・地役権・質権・地上権等) (現地調査時に調査の経緯を記録すると共に、所有者から同意の署名、押印を取る) (2)現地調査の通知(準則第20条) 通知対象者 ◎ 土地所有者・・登記簿上の所有者 ◎ 共有者・・・・共有者全員に通知する。共有者が多い場合には委任状で1名で可 ◎ 利害関係人・・要役権者(地役権・抵当権・質権等)には通知はしなくて良い。 ◎ 代理人・・・・委任の証がなければならない。(単なる耕作者では代理権がない) ◎ 住所不明者への追跡調査(再通知) 追跡調査によって住所不明者の無いようにする。 ・昭和54年2月7日 54国土国第27号 4 国土調査課長指示 (3)市町村界の調査(隣接市町村界の確認・調査) 準則第22条第1項 準則第22条第2項・・土地所有者、利害関係人の同意を得る 市町村界の調査には、隣接する市町村の役場関係者、土地所有者、利害関係人に立会を 求める通知をする * 市町村会として隣接する土地の所有者、利害関係人が設定した境界を市町村界として 調査をおこなうことの同意を求める ◎ 地番区域の調整(字・大字) 地籍調査だけでは調整はできない。 ・昭和29年10月26日 審計土地第158号 経済審議庁計画部長通達 小字の廃止、字界の変更等は議会での議決を必要とし、地籍調査では廃止・変更はできない 5 3.現地調査(準則23条) (1)現地調査の基本 ・属人主義・・・土地所有者順に調査する ・属地主義・・・調査素図の地番順に調査する 地籍調査では属地主義で調査を行う (2)土地の現況に異動が無い場合 ・面積には異動のあることを説明する (3)所有者の調査 ・所有権・・・登記簿に記載されている者(死亡していても所有権は存在する) ・なぜ実質の所有者を調査しないのか? 修正主義では権利の移動には立ち入らない ①地籍調査 法第20条第2項 法による不動産登記に関する政令 1条1項 ②公信力の問題 ◎ 動産は売買で占有できる A B 借 ◎ C 用 売 CはAに対して所有権を主張できる。 買 不動産は売買だけでは所有権を取得できない 不動産は登記をすることによって第三者に対抗できる。 A B 白紙委任状 C 売 CはAに対して所有権を主張できない。 買 (AからCへの所有権移転登記が必要) 6 (4)分割があったものとしての調査(法32条、準則第24条) ◎ 分割調査が可能な場合 1.土地の一部の地目が異なる 101番地 登記簿上地目 現況地目 山林 山林 現況地目 (101−1) ◎注 宅地 (101−2) 農地を農地以外の地目としての分割は農地法上の農地の転用にかかるため農業委員会の 許可が必要である。 例:田→宅地 2.地番区域を異にする 畑→山林 大字・字界 字A101番地 地目 (字Bの最終地番) 宅地 地目 宅地 3.管理上分割(分譲地等) ブロック等 101番地 (101−1) (101−2) (101−3) (101−4) (101−5) (101−6) 注:土地の一部に地役権が設定されている場合はいずれの場合でも分割調査はできない。 101番地 公 102番地 通行地役権(102番地に通行する道等) 道 7 (5)合併があったものとしての調査(法32条、準則25条) ◎ 合併調査が可能な場合 字A 101番地 所有者 松山 宅地 字A 太郎 102番地 所有者 字A 101番地 所有者 松山 松山 宅地 太郎 宅地 太郎 ② 所有者(登記簿上の所有者)+②地目が同じ+同一地番区域内+接続している+筆界確 認不能又は面積が狭小な場合+③所有者の同意 注:合併禁止条件 1.いずれかの土地に所有権の登記及び承役権についてする地役権の登記以外の登記が存する 場合(抵当権・質権・先取得権・地上権等) ただし、その登記が担保物権で、登記原因、登記目的、受付番号が同一の場合には、合併 調査が可能である。 2.いずれかの土地が農地法3条2項の農地又は採草放牧地である場合。 3.いずれかの土地に所有権の登記がない場合。 4.共有地について持分が異なる場合も合併調査はできない。 例1 101番地 (1) 102番地 101番地と101番地は共有者の A持分 1/2 A持分 1/3 B持分 1/2 B持分 2/3 持分が異なるため合併調査はできない。 例2 101番地 (2) 102番地 102番地のA、Bの共有の持分は、民法上の A持分 1/2 A持分 記載なし 推定は1/2ずつあるが、単に推定であるので B持分 1/2 B持分 記載なし 確定持分が登記されてない場合には合併調査は できない。 8 (6)一部合併があったものとしての調査(法32条、準則26条) 101番地 102番地 101番地の一部が畑に なっている場合。 山林 畑 畑 101番地を101番地1、101番地2に分割 101番地1 101 102 番地2 101‐2番地を102番地に合併 101番地1 山林 ◎ 102番地 畑 102番地 101番地2を合筆 一部合併調査が可能な場合 ①分割調査が可能+②筆界確認が不可能であり、合併調査が適当であると認められる場合 +所有者の同意 ◎ 一部合併調査が不可能な場合 1.分割調査ができない場合 2.合併禁止条件が存する場合 9 (7)地目の調査(準則29条) ◎ 地目認定基準 ・ 地籍調査作業規程準則運用基準第15条において次の23種の地目に区分されている。 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内池、運河用地、水道用地 用悪水路、ため池、堤、保安林、公衆用道路、公園、鉄道用地、学校用地、雑種地 ・地目調査要領(昭和42.2.18付け経企土第7号通達)においては、さらに詳細な基準を 示している。 (必携P.342) (参 考) ・不動産登記法施行令第3条 ・不動産登記事務取扱手続準則第117,118条 地目調査要領区分 1 田とは、農耕地で水をたたえて耕作する土地をいう。 い はす き りゅう (藺、蓮の栽培、田の設備を廃しないで杞 柳 を栽培する土地、陸田は田とする。) 杞柳:やなぎ科の落葉低木行李を作る材料 2 藺:井草畳表の材料 畑とは、農耕地で水をたたえないで耕作する土地をいう。 (果樹、茶、桑等を栽培する樹園地、牧草の栽培地、筍を採取する目的で竹を栽培する土地等) 3 宅地とは、建物の敷地及びその維持もしくは効用を果たすための土地をいう。 (庭園、業務を行うために必要な空地、通路等も宅地とする。) :農地に付随する建物の敷地・海産物乾燥場に付随する建物の敷地・ラジオ、テレビ放送所内 の建物の敷地・ガスタンク及び石油タンクの敷地等は宅地とする 4 塩田とは、海水を引き入れて塩を採取する土地をいう。 5 鉱泉地とは、鉱泉(温泉を含む)湧出口及びその維持に必要な土地をいう。 6 池沼とは、灌漑用でない水の貯留池をいう。 7 山林とは、耕作の方法によらないで竹木の生育する土地をいう。 (焼畑、切り替畑を含む) 8 牧場とは、獣畜を放牧する土地をいう。(建物の敷地、区域内の土地は全て牧場とする。 ) 9 原野とは、耕作の方法によらないで雑草、潅木類の生育する土地をいう。 10 10 墓地とは、人の遺骸又は遺骨を埋める土地をいう。 11 境内地とは、境内に属する土地で、宗教法人法第3条第2号、3号に掲げる土地をいい、宗教 法人の所有に属しないものを含む。(神社・仏閣の敷地又は竹木その他の定着物の存する土地及 び参道) 12 運河用地とは、運河法第12条第1項第1号、第2号に掲げる土地をいう。 13 水道用地とは、もっぱら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場、揚水場、水道 線路に用する土地をいう。 14 用悪水路とは、灌漑用または悪水排泄用の水地をいう。 15 ため池とは、灌漑用の用水貯留池をいう。 16 堤とは、防水のために構築した独立した堤防をいう。河川、ため池、用悪水路、運河等に付属 する堤防はそれぞれの地目に含める。 17 井溝とは、農耕地または村落等の間にある通水路をいう。 18 保安林とは、森林法に基づき農林大臣が保安林として指定した土地をいう。 19 公衆用道路とは、一般の交通の用に供する道路をいう。私設であっても一般公衆の交通の用に 供されるものは公衆用道路とする。 20 公園とは、公衆の遊楽のために供する土地をいう。(一般の休憩、鑑賞、散歩、遊戯、その他 レクリェーションの用に供する園路、広場、花壇、休憩所、池等の施設を有する土地の全部) 21 鉄道用地とは、鉄道の駅舎、付属施設および線路の敷地をいう。 22 学校用地とは、校舎および付属施設の敷地ならびに運動場をいう。 23 雑種地とは、以上のいずれにも該当しない土地をいう。 個人専用の道路・建物のない木場及び石切り場の土地・水力発電用の用水路及び排水路・競馬場 の馬場・宅地に接続しないテニスコート及びプール・鉄塔および変電所の敷地・建物の設備がな い記念碑等の敷地・物干し場、物置き場および井戸 11 ◎ 認定する際の注意事項 1.法令で定められた種類(23種)以外の名称は使用できない。 2.1筆の土地に数種の地目を定めることはできない。 3.1筆ごとの土地の状況及びその利用目的に重点を置いて、土地全体としての利用状況を観察 して定める。 4.現在の利用目的が一時的と認められる場合、例えば、仮設建物の敷地、植木などの仮植地の ような一時的な利用状況によっては地目を定められない(現在の利用状況が引き続き継続され ることが確実に見込まれる場合に地目認定の要素となる。 ) 5.特に、中間地目、例えば、宅地とするための造成工事によって整地が完了し、側溝や道路が 整備されていても建物の建築について建築基準法6条1項の確認を受け、あるいは、建物の建 築を目的とした都市計画法29条又は43条1項の都道府県知事の認可を受けているなど,近 い将来建物の敷地に供されることが確実に見込まれる状況にあることが必要である。 6.登記簿上の地目が農地である土地に関する地目の認定ついては、農業委員会に通知、照会す る。 12 (8)筆界の調査(準則30条) ◎ 土地の境界とは 自然の状態においては公有水面により限定遮断されるまでの範囲で連続する広がりをもつ 土地について、所有権等の私権の対象となりうる不動産として公示するため、人為的、法律的 に一定の範囲に区画限定するところの線である。 ・ ・・簡単には、登記された1筆ごとに区画された線 (筆の概念は登記されることによって生ずる) ◎ 筆界調査上の留意点 1.必ず土地所有者その他の利害関係人又はその代理人の確認を得る。 2.登記名義人が死亡しているときには、その相続人が確認権限を有する。 ・相続人が確定しているときはその者・・・遺産分割協議書等 ・確定していない場合には、法定相続人全員 3.代理人立会の場合には、法定されていないが、代理権限範囲を明記した委任状を提出 させることのより、事後の紛争の有力な証拠となる。 4.紛争、境界確定訴訟継続中,所有権確認訴訟継続中等のように、筆界の確認が困難な 場合には、筆界未定として処理する。 5.事後に紛争が会った場合に、速やかに対処できるように地籍調査票の裏面等に、経過の 詳細を記載しておく。 13 (9)地番の調査(準則31∼34条、36条) 1.地番の設定は、登記官固有の権限 2.仮地番 準則31条・・地番が明らかでない場合 その地番区域内に最終地番がある場合は、最終の地番を追って仮地番を定める。 その地番区域内に最終地番がない場合は、隣接の地番の枝番号を付けて仮地番を定め る。 32条・・分割があったものとして調査する場合 分割前の地番に枝番号のない場合には、これに「の1」、「の2」のように枝番号を付け て仮地番とする。 分割前の地番に枝番号がある場合には、一筆には分割前の地番、他の各筆には、本番 の最終の枝番号を追って仮地番を定める。 33条・・合併があったものとして調査する場合 合併前の地番中の首位のものを仮地番とする。 本番に枝番号のある土地を合併しようとするときは、その枝番号を除いたものを仮 地番とする。 (合併によって所有者の住所地番が変らないように留意する) 34条・・新たに土地の表示の登記をすべき土地を発見した場合 その地番区域内に最終地番がある場合は、最終の地番を追って仮地番を定める。 その地番区域内に最終地番がない場合は、隣接の地番の枝番号を付けて仮地番を定め る。 35条・・地番の変更を必要とし又は適当とする場合 (地番の重複、地番の誤りがある場合) 例 103番甲→ 103番3 103番イ→ 103番4 103番2−2→ 103番5 ◎34条の場合を除き所有者の同意を必要とする。 ◎ 仮地番の設定要領 「仮地番の設定及び地番対照表の作成要領」(昭和32.10.24経企土第179号通達) ・登録免許税との関係 ・地方自治法260条との関係・・地番変更によって、所有者の住所地番が変ってしまう場合 14 (10)新たに土地の表示の登記をすべき土地(新規登録地)の調査(準則34条) ◎ 新規登録地とは 不動産登記法に基づく土地の表示のなされていない未登記の土地(登記簿の設けられていな い土地) 1.新たに生じた土地及び所有者 (1)公有水面の埋立による土地(公有水面埋立法24条) ・海、湖等の公有水面の一部を埋め立てて造成した土地についてその登記手続を行って いない場合 ・所有者・・・竣工の認可による埋立権者 (2)海底の隆起等による土地 ・海底が隆起し、河口に土砂が堆積する等の自然現象によって、既存の土地に接続しない 全く新たな土地の生じた場合。 ・所有者・・・国(民法239条2項) 2.未登記の既存土地 登記の原則からすれば、日本領土内における既存土地については全て登記されているのが 原則であるが、昭和35年に登記簿と土地台帳との一元化以前においては、土地台帳が主とし て固定資産税を課するための基本台帳としての性格を有していたために、国、地方公共団体の 所有する公有地等の非課税地については、未登記のものが多い・・・新規登記するか否かに ついては、所管官公署の意向による。 ◎ 留意点 所有者の認定について 認定のための主な資料としては、国有地払下げ証明書、公有水面埋立法による竣工認可 の告示等の所有権を証する資料の提示を求め、認定根拠を地積調査票に記録して、調査の正 確さを期する。 15 (11)現地確認不能地の調査(準則35条) ◎ 現地確認不能地とは 既登録の土地で、公図にも表示されているが、現地において確認することができない土地 法文上明確ではないが、実務上では 1.滅失地又は不存在地でありながら、滅失又は不存在であることについて、所有者の承認が 得られない場合(35条3項) 2.現地調査において、現地について確認することができない(位置特定ができない)場合 ◎ 留意点 現地確認不能地として調査したものは、そのまま登記所に送付されることになるが登記所に おいても当該土地の登記簿は従前のまま何らの処置もされないため、あたかも当該土地が存す るような状態になる。 地積調査実施時においては所有者も承知していることであるので問題が起こる可能性は少 ないがその後10年後ないし20年を経過したころには、相続等も発生し、相続人が登記簿を 見た場合、登記所地図には表示されていないということで、当時の地積調査に誤りがあったの ではないか等、不要のトラブルを発生させる原因にもなりかねないので不存在地、滅失地とし て処理することについて、所有者等に十分説明をして承認を得ることが必要である。 但し、共有地については共有者全員の、相続人が確定していない場合には相続人全員の承認 が得られなければ、不存在地、滅失地として処理することはできない。 16 (12)滅失地、不存在地の調査(準則35条) ◎ 滅失地とは 既登記の土地の一部又は全部が陥没して海又は湖の一部になる等物理的に消滅した土地 ◎ 不存在地とは 登記簿にのみ記載されている土地で、例えば登記の錯誤あるいは二重登記となっているよ うな、現地には当初から存在しない土地 ◎ 留意点 1.滅失地又は不存在地として調査する場合には、必ず所有者の承認を要する。 2.新河川法の施行後(昭和39年法律167号 昭和40.4.1施行)においては、 登記されていた土地が河川敷の一部になった場合においても私権が認められることにな ったので、滅失処理しない取扱いである。従って通常の調査を行う。 3.春分及び秋分における満潮時において、海面下に没する土地については、私人の所有権 が認められないので、滅失の取扱いとなる(昭和31.11.10法務省民事甲2612 民事局長回答)。しかし、土地が海面下に没するに至った経緯が、天災等によるものであり かつ、その状態が一時的なものである場合には、私人の所有権は消滅しない。 (昭和36.11.9法務省民事甲2612民事局長回答) 17 (13)長狭物の調査(準則28条) ◎ 長狭物とは 道路、運河、用悪水路、堤防、鉄道線路、河川等のことであり、地積調査独特の用語である。 1.一筆地調査をする場合 101 102 103 104 105 この筆界が不明の 場合は全体として 道路(旧里道) 115 116 筆界未定 117 118 119 道路拡張部分 長狭物の新設又は拡幅等によって既登記の土地の一部が長狭物の敷地になっているにもかかわ らず、これに伴う登記手続が未了の場合には、現地調査の際、長狭物となった部分について、 地目変更の調査及び分割調査を行う。 2.一筆地調査をしない場合 101 102 104 106 107 :103番地・105番地 103 は現地確認不能地 105 道路(旧里道) その他は一部地目変更 115 116 117 118 119 ・分割 道路拡張部分 運用基準第14条 既登記の土地の全部が長狭物の敷地となっているもの及び未登記の長狭物の敷地に ついては、原則として現況により長狭物の両側の境界を調査するにとどめ、現地確認 不能地として処理する。 ・・・長狭物内現地確認不能地(ただし、調査してはならないことではない) 18 (14)代位登記の申請(法32条の2、準則27条) 合併及び合併があったものとしての調査を行う場合、合併条件が整わないときに、合併制限 を解消するために申請を行う。 1.相続又は会社法人等の合併による所有権移転の登記 2.所有権保存の登記 ◎ 土地の表示の変更・更正及び登記名義人の表示変更・更正の登記については、これらの事項に 国土調査の成果とすることができるので、代位登記をする場合はほとんどない。 19 4.点検、取りまとめ ◎ 抽出検査(E工程・H工程における抽出量の特則) ・最低10筆の抽出検査 ◎ 公告と閲覧(法17条)(閲覧する成果:地籍図・地籍簿案) ・閲覧期間と民法140条 公告の日から20日間(初日不参入) ・誤り訂正届出の処理 1.地方税法第381条7項に準ずる取扱い 「誤り訂正申出書」の提出 申 出 人 (1)申出書の様式は、「取扱要領」第8で定める別記様式第2に に準ずるもので可。 (2)申請事項を立証できる資料を可能な限り添付する。 「取扱要領」第9に準じた処理を行う。 市町村長等 (1)申出事項につき、関係地図及び簿冊との照合調査を行う。 (2)必要に応じ、現地を再調査する。 (1)申出事項が事実と認められる場合 (2)申出事項が事実と 認められない場合 次の書面を用意しておく ①修正される土地の所有者又はその代理人 取扱要領第9に定める の同意書 別記様式第4に準ずる ②地図訂正、地積更正で面積が増加する 通知を行う。 場合には、隣接土地所有者及び利害関係 人の承諾書 修正申請書の提出(必携P377) 取扱要領第9に定める ア:申請書副本 別記様式第4に準ずる イ:地積測量図(面積の修正を 通知を行う。 要するものに限る) ウ:上記①、②の書面について は登記所の要求ある場合に 添付 申 登 記 所 出 人 所有者及び利害関係人 20 申 出 人 2.個人が直接行う場合 申 出 人 ◎登記簿表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人等 (不動産登記法準則113、115条による) ◎一般的な提出書類 例1 「地図訂正の申出」 ① 申 出 書 ② 添付書類 申出書副本 イ 誤りであることを明確にできる資料 ウ 隣接所有者の承諾書 エ 地積測量図 例2 ア 「地積更正の登記申請」 ① 申 請 書 ② 添付書類 申請書副本 イ 地積測量図 ウ 代理権限証書 エ 筆界確認書 例3 ア 「地目更正の登記申請」 ① 申 ② 添付書類 例4 請 書 ア 申請書副本 イ 代理権限証書 ウ 転用許可書等 「登記名義人表示更正の登記」 (この登記申請に限っては、地方税法381⑦による 申出は原則として認められないことになっている。) ① 申 請 書 ② 添付書類 ア 申請書副本 イ 住民票の写又は戸籍謄抄本 ウ 登記簿上の名義人と申請人が同一人で 登 記 所 あることの証明書 21 一 筆 地 調 査 の 概 略 B工程 作 業 内 容 1.推進委員会の設置 構 成 :市町村職員、議会議員、農業議員、地区代表者及び学識経験者の中から当該市町村が選任委嘱された もの。 所掌事務:趣旨の普及・宣伝、現地調査の立会 2.作業班の編成(準則7条) 班長等を定め、責任の分担、所在を明らかにする組織を確立する。(下記4の作成時に編成することもある。 ) 3.準備作業 (1)土地所有者名簿の作成 税務課等の課税台帳より市町村外居住者、住所不明者を仕分け整理し、連絡不行届きなどが生じないよう にする。(地籍調査票の作成を平行して行うこともある)。 (2)市町村広報誌、チラシの配布 調査の目的、意義、概要の伝達及び認識の高揚を図る。 (3)地元説明会の開催 ①土地所有者と座談会を開き、調査の内容、方法、筆界基準杭の設置等につき具体的に説明し、その必要性 ・重要性の理解を得、協力の確保に努める。 ②出席者名簿を作成する。 E工程 作 業 内 容 土地所有者等に関する事項 4.作業進行予定表の作成(準則13条) 面積、筆数、地形的条件、所有者等の協力体制、後続 作業の日程を総合的に勘案して綿密に作成する。 5.調査資料の作成、点検、検査(準則 15∼18 条) 調査図素図、調査図一覧図、地籍調査票、・・・登記簿 及び登記所地図からの転記漏れのないよう特に留意し 入念に照合、点検する。 6.現地調査の立会い通知(準則20条) 連絡不徹底がないよう十分注意する。 22 同意書徴収の有無 E工程 作 業 内 容 7.市町村界、字界の調査(準則22条) (1)関係市町村の責任者及び境界に接する土地所有 土地所有者等に関する事項 同意書徴収の有無 関係市町村の関係職員及び 立会者の同意書 境界に接する土地所有者等 を必要とする。 者の立会、確認を得て、その分岐点、屈曲点等必 が立会の上、境界杭を設置す 要な位値に境界杭を設置する。 る。 (2)個人の筆界杭設置前に終了するよう配慮する。 (民有地間の筆界杭設置指導の役割を果たすため) 8.標札、筆界表示杭の設置(準則21条) (1)一筆ごとの筆界主要点に、隣接所有者立会・協 所有者は、標札及び筆界表示 杭(主な筆界点)を設置する 議の上で杭を設置してもらうが、その際、元の一 筆地の形状に正しく復元できるかどうかを十分理 解できるように懇切に指導する。 (2)長狭物との境界については、その管理機関、関 係者と協議の上、その取扱方法を定めて杭を設置 する。 9.現地調査の実施(準則23∼36条) 立会、筆界の確認を行ない (1)同意(承認) (1)各資料に基づき、土地所有者の立会のもとに一 同意(承認)を要するものに を得ることとさ 筆地を調査し素図に表示を訂正、補記し調査図を ついては、署名、押印を行う れている調査に 作成する。 (代理人の場合は委任状を ついては調査票 提出する。 ) (2)地籍調査票に、立会人の署名、押印を得ると共 の該当事項に○ に所要事項の記載をし、分割、合併、一部合併、 印を付し年月日 滅失、不存在、地番変更の調査を行うばあいには を明記し署名・押 これに同意する旨の署名、押印を得る。 印する。 (3)調査確認済みの筆界杭には、ペンキ等で明認方 (2)地籍調査票に 法を施す。 署名・押印する。 (4)筆界表示杭のうち、筆界基準杭を設置する。 (3)所有者が法人 の場合は、代表権 10.現地調査の点検、取りまとめ を有する者又は (1)調査図、調査票等の整理、点検、検査を十分に その者から代表 行ない調査が適正であることを確認する。 権を与えられた (2)不立会調書、住所不明者等調書を作成する。 者の立会・同意を 得る。 23 H工程 作 業 内 容 土地所有者等に関する事項 同意書徴収の有無 11.地籍図原図、地籍簿案の作成 (準則74、84、88条) 12.地籍図原図、地籍簿案の公告(法 17 条1) (1)市町村外に在住する者については、予め閲覧実 施の旨の通知を行う。 閲覧者簿に署名・押印し異議 (1)同意(承認) のある者は、「誤り等訂正申 を得ることとされ 出書」を提出する。 ている調査につい ては調査票の該当 (2)閲覧者名簿を作成する。 事項に○印を付し 13.誤り訂正申出事項の処理(法 17 条2、3) 年月日を明記し書 名。押印する。 関係資料との照合調査及び必要に応じて再調査をし (2)地籍調査票に 所要の修訂正を行う。 署名・押印を得る。 14.成果の認証・送付(法19、20条) (3)所有者が法人 の場合は、代表権 を有する者又はそ の者から代表権を 与えられた者の立 会・同意を得る。 24 一筆地調査をはじめるまでの準備 1 専門員の委嘱 一筆地調査をはじめ地籍調査業務全般にわたり、事業の円滑な推進をはかるための 地籍調査専門員を委嘱します。専門員は一筆地調査の立会及び境界紛争等の和解調停 に あたります。一筆地調査は町職員と専門員1名ないし2名による班編成で調査を行い ます。 2 境界の確認 土地の所有者は、一筆地調査開始以前に「自分の土地はここまで」という境界を筆 ごとに決めておいてください。境界の決定は必ず関係者双方、あるいは全員立会の上 で決めてください。 なお、国土調査係員は境界決定の協議に直接関与しないことにしております。 3 境界杭の設置及び境界の刈払い 境界が確定したら一筆ごとの境界に境界杭を打ってください。境界杭は役場からお 渡しする頭が赤色(又は黄色)のプラスチック杭です。赤色の筆界杭が打てたら次に 境界線の方向を表示します。表示方法は、境界杭を中心に次の境界杭の方向にそれぞ れ竹杭・棒等を打ち、ナイロンテープでつないでください。 なお、境界線が明瞭になるように曲がりには境界杭を打ってください。 また、山林や原野等の境界で雑草木等が茂っていると測量ができませんので、境界 がよく見通せるように境界線に沿って刈払いをしておいてください。 刈払いが不完全なときは調査の誤りのもととなりますし、刈払いが未了のときは測 .... 量が出来ず「筆界未定」という取り扱いになります。 4 地目の決定 地目は現況によって定めます。 (※水田の場合は、畦畔がしっかりしていれば水田で残 す。) 25 5 分筆、合筆について 分筆・合筆については希望により出来ますが次のとおり条件があります。 ○分筆しなければならない場合 ア、一筆の土地の一部が別地目になっている場合。 イ、道路、水路等をはさんで一筆の土地がある場合 ○合筆できる土地(次の条件の全てをそなえているものに限る) ア、所有者が同一であること。 イ、地目が同じであること。 ウ、字が同じであること。 エ、合筆地番が地続きであること。 オ、抵当権設定登記その他の権利登記がないこと。 (参考) ■抵当権(共同担保関係)に関するものであってもそれらの担保権の登記と 記原因、その日付、登記の目的及び受付番号が同一である登記のみが他 登 の土 地に存ずるものである場合は合筆できる。 (地上権は合筆できない) ※共有地の 場合、持分の登記がされており持分が同じの場合は合筆できる。 6 筆界未定について 地籍調査において、筆界が確認できない場合等はやむを得ず「筆界未定」として 処理します。 この処理は、 「調査区全部の筆界が決定しなければ地籍調査が終了しない」というこ とでは、地籍調査はいつ終わるかわかりません。したがいまして、これを避けるため 「地籍調査作業規定準則」で、この筆界未定の処理が定められているものです。 筆界未定として処理した場合の今後の問題について具体的に説明しますと、次のと おりです。 ◆筆界未定地は境界紛争又は立会相手がいない土地で、境界の測定ができないため、 地籍図に筆界未定として表示(例えば、50+51等の表示)をします。②筆界未定 地になると、地籍調査では分筆・合筆及び地目変更並びに地積更正ができません。 ◆筆界未定地になると、地籍調査終了後において当事者が筆界未定の解除手続きをさ れない限り、永久に「筆界未定地」ということになり、今後次のような大きな損害を もたらします。 ア、土地を売買する場合や抵当権等を設定しようとする場合は、相手方の承諾が必 要です。 イ、売買等で分筆しようと思っても、分筆が非常に困難となります。 26 ウ、合筆しようとしても合筆が困難となります。 エ、農地である場合は、農地転用が困難となります。 オ、地籍調査後において境界線を決めようとする場合には、隣接土地所有者の承諾 が必要となります。 カ、筆界未定地の解除をする場合は、当事者が法務局(登記所)へ申請手続きをさ れないと解除することができません。 この場合、地積測量図等が必要となり、これらの諸費用はすべての当事者の負担と なり、相当多額の費用が必要となります。 27
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