第4章 自然環境と生物多様性を保全するまち - 板橋区役所

第4章 自然環境と生物多様性を保全するまち
第1節 自然環境の現状
1 自然の概況
(1)地形
板橋区の地形は、南から連なる平均海抜30メートル前後の武蔵野台地と北に広がる荒川の沖積低地により
形成されています。最も高い地点は徳丸三丁目の徳丸変電所付近で海抜35.5メートル、最低は新河岸川と荒川
にはさまれた地域で海抜2メートルとなっています。この平らな台地と低地の境目の崖線には小河川による谷
戸が刻まれ、この地域に山あり谷ありの複雑な地形を作り出しています。
(2)地質
武蔵野台地は、古い時代の荒川や多摩川などが流れていた時のはんらん原でした。武蔵野(成増)礫層の砂利
は当時のはんらんで河川が積み残した川砂利です。その後、川の流れはこのはんらん原を掘り下げ今の荒川や
多摩川になりました。いっぽう取り残された部分に富士山などの火山灰(関東ローム層)が堆積し今日の台地
がつくられました。板橋の湧水は、関東ローム層の下部と武蔵野礫層の下部の二層から湧き出しています。
また武蔵野礫層の下の地層から貝化石が見付かっていますが、これは15万年前の東京層のものでこの層が
かつて海の底であったことを物語っています。
図2-4-1 地 層
第2節 自然環境の保全
1 緑地の保全と創出
板橋区は、平成10年に策定した「板橋区緑の基本計画(いたばしグ
リーンプラン’98)」を平成23年3月に改定しました。新しく策定
した「板橋区緑の基本計画(いたばしグリーンプラン’2020)」では、緑
の将来像を「みんなで育む緑にかこまれて あなたと私が輝くまち“板
橋”」とし、緑豊かなまちづくりの推進に取り組むことにしています。
計画の改定にあたっては、区民ワークショップを主体とした計画づく
りを行いました。
(1)植生被覆地の現況
平成21年度に、5年ごとに実施している「緑地・樹木の実態調査」
- 107 -
■ 都立赤塚公園の緑地
を行い、植生被覆地や大径木の本数など、区内の緑の現況を調査しました。平成21年6月撮影の航空写真を
もとにした調査の結果、植生被覆面積(樹木や草、芝生、農作物などの植物体に覆われた面積)は620.3ha、植
生被覆率(区の面積に対する植生被覆面積の割合)は19.3%でした。前回の平成16年度調査と比べて植生被
覆面積は35.0haの増加、植生被覆率は1.1ポイントの増加となりました。
また、樹木についても、航空写真から樹冠の大きな樹木を抽出して、現地調査をした結果、直径100cm以
上の巨木は77本確認されました。
(2)民有地のみどりを保全する
① 保存樹木等の指定
樹林地及び大径木は、都市の自然性と緑の骨格を支える大切な財産です。このため、残された樹林地等を保
存樹林・竹林・樹木として指定し、維持管理にかかる費用の一部を助成するなど、経費の負担を軽減して、所
有者による保全を推進しています。また、生垣は街の安全性と景観の向上に役立っています。延長20m以上
の良好な生垣を保存生垣に指定し、管理費を助成するなど、生垣の保全を図っています。
○保存樹林指定面積
40,591㎡(平成23年3月31日現在)
○保存竹林指定面積
972㎡(
〃
)
○保存樹木指定本数
1,597本(
〃
)
○保存生垣指定延長
3,538m(
〃
)
② 樹林地等の保全
所有者による緑の保全も、限界に至ることがあります。このような場合に板橋に残された貴重な自然を保護
するために、保存樹林・竹林に指定された土地等の緑を買い取る資金として50億円の基金制度をつくりまし
た。この基金により平成4年までに1.6ha(61億円)の緑地を買い取ることができました。
現在緑の基金は、公共施設等整備基金(緑化推進のほか公共施設の耐震補強などを目的とした基金)に移行
しています。区では平成18年に「民有樹林地等保全方針」を定め、「市民緑地制度」の活用を始めとした樹
林地等保全の取り組みを進めています。
③ 市民緑地の開設
平成7年の都市緑地保全法(現在は都市緑地法)の改正により、区独自の保存樹林の制度のほかに、市民緑
地に指定して一般に公開するという緑地保全の仕組みができました。区では、平成12年度に「大門の森」、
平成13年度に「中台三丁目の森」(平成20年度公有地化により区立公園)を開設しています。また平成2
0年度には、新たに「大門東の森」を開設しました。今後は、この制度を民有地の緑地保全の中心的な制度と
して活用していきます。
2 農地の保全
昭和60年当時、89haあった区内農地は、平成11年に41ha、平成22年には27haにまで減少してい
ます。減少要因の多くは、都市化の進展や農業後継者の不足、農業者の相続による農地の処分等があり、今後
も減少する傾向にあります。
一方、都市の農地は農産物を生産する機能に加え、緑地空間として景観を形成し、生活に潤いをもたらすと
ともに、ヒートアイランド現象の緩和・地球温暖化防止など環境保全の機能、災害時の避難場所など防災面の
機能を持ち、都市の住民にとっても重要な機能を果たしています。
このような貴重な農地を保全するため、「農業後継者の育成」、「生産緑地追加指定の拡大」、「苗木育成
- 108 -
事業」、「区民農園」、「農業体験農園」の継続に努め、都市農業に対する理解と食育についての関心を高め
ていきます。
3 自然との共生
自然との共生は、環境保全の重要な柱のひとつといえます。人間は快適さを求め環境を改変し続けて、さま
ざまな環境問題を引き起こしました。自然との共生は、人類も自然生態系の一員であることを知り、自然と調
和した社会を目指すものです。
(1)石神井川・白子川生物調査
区を流れる石神井川、白子川は下水道が完備され湧水を水源としています。水質は昭和50年代と比べると
飛躍的に改善されています。平成22年度は、石神井川では4種類の魚類(モツゴ、トウヨシノボリ、ギバチ、
ドジョウ)と21種類の水生動物(ヨコエビ、カゲロウなど) が確認されました。白子川では14種類の魚類
(コイ、ボラ、アユ、マハゼ、ヌマチチブなど)と17種類の水生動物(テナガエビ、ヨコエビ、カワニナ、ザ
リガニなど)が確認されました。また、タンスイカイメン科が河床の石に付着しているのが確認されました。
■ ドジョウ
■ マハゼ
表2-4-1 魚類調査結果
№
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
目
コイ目
ナマズ目
サケ目
スズキ目
科
コイ科
ドジョウ科
ギギ科
アユ科
ボラ科
ハゼ科
13
14
4目
6科
種名
コイ
オイカワ
アブラハヤ
モツゴ
タモロコ
ドジョウ
ギバチ
アユ
ボラ
マハゼ
スミウキゴリ
ウキゴリ
ウキゴリ属
トウヨシノボリ
ヨシノボリ属
ヌマチチブ
14種
学名
Cyprinus carpio
Zacco platypus
Phoxinus lagowskii steindachneri
Pseudorasbora parva
Gnathopogon elongatus elongatus
Misgurnus anguillicaudatus
Pseudobagrus tokiensis *1
Plecoglossus altivelis altivelis
Mugil cephalus cephalus
Acanthogobius flavimanus
Gymnogobius petschiliensis
Gymnogobius urotaenia
Gymnogobius sp.
Rhinogobius sp. OR +
Rhinogobius sp.
Tridentiger brevispinis
種類数計
個体数計
白
子
川
①
東
埼
橋
上
流
白
子
川
②
白
藤
橋
付
近
石
神
井
川
①
久
保
田
橋
付
近
石
環
神
境
井
省
川
2
②
0
緑 合計 0
橋
7
付
近
>50
4
1
6
3
4
6
1
11
22
3
1
1
2
12
4
32
>100
>100
10
1
1
2
2
>100
6
9
16 369
東
京
都
2
0
1
0
区
部
>50
4
1
VU
12
4
37
3 VU CR
>100
>100
10
1
1
2
2
2
>100
留
14
1
4
429
環境省レッドリスト(2007)
VU:絶滅危惧II類 絶滅の危険が増大している種
東京都の保護上重要な野生生物種(2010) 区部
CR:絶滅危惧ⅠA類 ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
VU:絶滅危惧II類 現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧Ⅰ類」のランクに移行することが確実と考えられるもの
留:留意種 現時点では絶滅の恐れはないと判断されるが、いずれかの理由で留意が必要とされるもの(理由本文を要約)
- 109 -
表2-4-2 魚類以外の水生動物調査結果
№
鋼
目
科
和名
学名
白
子
川
①
東
埼
橋
上
流
付
近
白
子
川
②
白
藤
橋
付
近
石
神
井
川
①
久
保
田
橋
付
近
○
○
1 普通カイメン ザラカイメン
タンスイカイメン
タンスイカイメン科
Spongillidae
2 渦虫綱
順列目
サンカクアタマウズムシ科 アメリカツノウズムシ
Girardia dorotocephala
1
3 腹足綱
盤足目
カワニナ科
チリメンカワニナ
Semisulcospira reiniana
5
4
基眼目
モノアラガイ科
ヒメモノアラガイ
Austropeplea ollula
1
5
モノアラガイ属
Radix sp.
13
6
サカマキガイ科
サカマキガイ
Physa acuta
1
2
7 ミミズ綱
ツリミミズ目
ツリミミズ科
ツリミミズ科
Lumbricidae
2
8
フトミミズ科
フトミミズ属
Pheretima sp.
1
1
9
-
ツリミミズ目
Lumbricida
1
10 ヒル綱
無吻蛭目
イシビル科
シマイシビル
Dina lineata
10
8
11 軟甲綱
ヨコエビ目
マミズヨコエビ科
フロリダマミズヨコエビ
Crangonyx floridanus
8
10
12
ワラジムシ目
ミズムシ科
ミズムシ
Asellus hilgendorfi hilgendorfi
4
2
13
エビ目
テナガエビ
スジエビ
Palaemon paucidens
2
14
ヌマエビ科
カワリヌマエビ属
Neocaridina sp.
17
3
15
アメリカザリガニ科
アメリカザリガニ
Procambarus clarkii
7
16
イワガニ科
モクズガニ
Eriocheir japonicus
1
17 昆虫綱
カゲロウ目(蜉蝣目) コカゲロウ科
サホコカゲロウ
Baetis sahoensis
3
18
フタバカゲロウ属
Cloeon sp.
21
19
Hコカゲロウ
Tenuibaetis sp. H
4
20
トンボ目(蜻蛉目)
トンボ科
シオカラトンボ
Orthetrum albistylum speciosum
1
21
ウスバキトンボ
Pantala flavescens
1
22
カメムシ目(半翅目) アメンボ科
アメンボ
Aquarius paludum paludum
50 100
1
23
トビケラ目(毛翅目) シマトビケラ科
コガタシマトビケラ属
Cheumatopsyche sp.
24
ウルマーシマトビケラ
Hydropsyche orientalis
1
25
ヒメトビケラ科
ヒメトビケラ属
Hydroptila sp.
1
1
26
ハエ目(双翅目)
ユスリカ科
ナガレツヤユスリカ属
Rheocricotopus sp.
1
27
ヒゲユスリカ属
Tanytarsus sp.
1
(2)身近なビオトープ
7綱
14目
20科
27種
個体数
110 104 72
種 数
14 4 18
ビオトープは100年ほど前にドイツで生まれた合成語で、生物の生息空間という意味です。
注)○:群体のため個体数は計測できない
種数の合計は単純集計
環
境
省
2
0
0
7
石
神
井
川
②
緑
橋
付
近
東
京
都
2
0
1
0
区
部
50
1
4
10
留
32
1
留
17
2
1
1
119
10 0
2
東京都の保護上重要な野生生物種(2010) 区部
留:留意種 現時点では絶滅の恐れはないと判断されるが、いずれかの理由で留意が必要とされるもの(理由本文を要約)
(2)身近なビオトープ
ビオトープは100年ほど前にドイツで生まれた合成語で、生物の生息空間という意味です。
ビオトープには、原生林などを自然のままの空間として残す考え方もありますが、自然が減少している都
市では、人が自然と関わり、環境条件を整えて生態系のネットワークを再生し、生き物たちが自立できる空
間を作ることが必要です。また、ビオトープの整備や維持には、地域の生態系を知ることも重要です。
区では、荒川河川敷に平成8年度から平成13年度にか
けて10.8haの自然地を整備しました。
また、平成9年度に公園内に実験的にビオトープをつくり
ました。このほかにも、板橋区立エコポリスセンターの3階
テラスにビオトープを設置し、都会の建物における自然回復
の試みを行っています。
■ 桜川小学校ビオトープ
- 110 -
(3)自然とのふれあい
自然の中に入って遊んだり、生き物を捕まえたりして、子供は自然を学んでいきます。生き物とのふれあい
は子供の成長になくてはならない環境です。しかしビオトープをつくっても、人が生態系に与える影響が大き
ければ自然は維持できません。
区民のみなさんが、身近な自然に関心を持ち、生き物が住める環境づくりに参加し、ビオトープを育ててい
くことが重要です。
(4)カラス公害とその対策
自然界ではエサによって野生鳥獣の個体数がコントロールされています。都内において一時期カラスの急増
を招いたのは、大量に放置された生ゴミ等がエサとなったことも原因です。ハトやカラス等の野生鳥獣にエサ
を与えることは、野生鳥獣を人間に依存させ、自然界のバランスを崩し、生態系を狂わせる原因となります。
自然界の生き物に対しては、エサを与えないのが正しい付き合い方です。
東京圏にカラスが異常に多いのは、エサが豊富にあるために、他県から流入してくるカラスが少なくないこ
とと、山間部のカラスと比較して都内のカラスの繁殖率(卵からふ化し、成鳥となる率)が高いためです。
カラスの被害を防ぐ為には、営巣時期(3月~6頃)に巣のそばに近づかない、襲われそうな時は、帽子を
被ったり、傘をさしたり、杖など棒状のものを携えたりする自衛策や、卵やヒナのいる巣の撤去、カラスの個
体の捕獲などがあります。
環境省や野鳥の会では、ゴミ対策がカラスを減らす基本であると呼びかけています。東京都はカラス問題解
決のためゴミ対策を進めるとともに、並行して、カラスの捕獲事業を行っています。都内では、ゴミ対策が進
み、ゴミ集積所の被害率が減少しています。
東京都のトラップによるカラスの捕獲事業で、平成13年度のカラス対策開始から平成22年3月末までに、
累計で13万9千羽を超える数を捕獲しました。カラスの生息数は、平成13年度当時の約3万6千羽から平
成23年3月末には約2万羽に減少しています。都全域での生息数は、ここ3年間横ばいで推移しています。
図2-4-2 平成22年度カラス生息数の推移
- 111 -
板橋区では、平成10年度に板橋区カラス被害対策会議が発足し、関係部門の情報交換・連携強化を図り、
板橋区の公園や学校、その他公共施設等の巣の撤去を行っています。
板橋区が管理している場所以外の巣については、その管理者が撤去等の処理を行ないます。平成17年度よ
り板橋区では、カラスが人を襲う場合に限り、緊急対策として、巣(卵・ヒナ)の撤去等を行っています。平
成22年度のカラスに関する相談は図2-4-3のとおりで、
カラスの繁殖期である3月から7月にかけて相談が多く
寄せられます。
図2-4-3 平成22年度カラス相談件数
(件数)
70
59
60
50
巣がある
攻撃・威嚇
煩い・群れる
ゴミ散らかし
その 他
合 計
57
48
40
30
15
20
11
10
3
2
0
1
0
1
3
0
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
1月
2月
★ カラス対策の基本的な考え方は、「ゴミ対策(エサを断つ)」です。
① 排出ルールの徹底など、ゴミの出し方を工夫する。
② 防鳥ネットの普及など、ゴミ集積所の管理を進める。
図2-4-4 区内の河川、池、湧水地点
4 水環境の保全と活用
(1)区内の水辺の状況
武蔵野台地の北端に位置する板橋区は、
武蔵野台地と荒川低地とに別れ、その界は
20m余りの崖で、起伏に富んだ地形が形作られて
います。自然の水辺は、暮らしに潤いを与えるばか
りでなく、ヒートアイランド現象の緩和、被災時の
水として大切な地域の財産です。しかし、近年の開
発により畑や緑地が減り、コンクリートやアスファ
ルトの地表面が増え続け、河川や湧水の水量が減少
し、枯渇する恐れすらあります。
現存する自然の水辺は右図に示す荒川、
新河岸川、
白子川および石神井川の4河川と浮間ヶ池、赤塚溜
池、見次公園池の3池、確認された湧水地45地点(19年調査)です。
- 112 -
3月
図2-4-5 河川の流量経年変化
3
2.5
流量 m /s
石神井川
白子川
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
年度
元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
① 荒川
荒川は甲武信岳に源をもち、全長約170kmの関東第二の大河です。広い河川敷は、適正な利用を図
るため荒川将来像計画に基づき、自然保全地、施設系利用地(スポーツ・レクリエーション)、草地系
利用地(野草広場・芝生広場)とゾーニング計画を定め、平成8年度に整備された生物生態園(管理中
につき立ち入ることはできません)に続いて、中規模自然地や草地広場の整備が行われました。
② 新河岸川
新河岸川は川越市西部を源とし、武蔵野台地を荒川と並行して流
れ、北区の岩淵から隅田川となります。板橋区に新河岸水再生セン
ターをはじめ和光市、清瀬市(支流の柳瀬川に放流)に下水処理場
があり、水質、水量とも処理水の影響を強く受けています。舟渡の
旧新日鐵入り江には水辺まで近づける舟渡水辺公園が整備されまし
た。
■ 新河岸川と舟渡水辺公園
③ 石神井川
石神井川は小金井公園北部(小平市)から始まり、西東京市、
練馬区を流れ、板橋区から北区を経て隅田川に合流しています。川
は洪水対策のために7~11mもの深いコンクリート護岸で、川底
は平らになっています。平常時の水質は良好ですが、まとまった雨
が降ると、汚水の混じった雨水が流入(下水が越流)して水位が急
上昇し、流速も倍以上になります。この環境では、せっかく生まれ
た稚魚やヤゴだけでなく成魚のコイも流されてしまいます。平成
14年度から16年度に下頭橋から中板橋の区間に、17年度に加
賀橋付近、東橋付近に、魚巣ブロックを設置し河床部に水生植物
を植栽する工事が行われました。
■ 向屋敷橋上流
(水生植物を植栽した河床)
- 113 -
④ 白子川
白子川は、練馬区の大泉井頭公園の湧水を水源として、板橋区と
和光市の境界付近を流れて新河岸川に合流しています。上流の練馬
区や和光市には多くの湧水があり、白子川に流入しています。昭和
60年頃までは有数の汚濁河川でしたが、流域の下水道整備もほぼ
100%となり、水質は著しく改善されています。満潮時には大量
のコイが現れ、また20年度の生物調査でもアユやマルタ、ハゼな
どの魚が確認されています。
■ 白藤橋付近(生物調査)
⑤ 池
区内には3か所の池(浮間ヶ池、赤塚溜池、見次公園池)があり、憩いの場として親しまれています。
北区との境にある浮間ヶ池は、荒川の旧流路にあたり、水源は池底からの湧水(荒川の伏流水)のほ
か地下水を汲み上げて入れています。赤塚溜池の水源は汲み上げた地下水です。見次公園池では、平成
13年度から浄化目的に地下水を汲み上げ入れ、
水草の植栽や微生物を利用した浄化を行っていますが、
しばしばアオコが発生し水質、景観を悪くしています。汚濁の原因は大量に投入される釣り人の練りエ
サであるため、月曜日を「釣りをしない日」としています。平成20年11月~21年3月には見次公
園池の汚泥の浚渫工事が行われ、池水も入れ替えられました。
⑥ 湧水
板橋区の台地と低地の境にある崖線には多くの湧水がまだ残され
ています。平成18年度の調査では45地点の湧水が確認されてい
ますが、16か所では、測定できないほどわずかな水量です。
平成14年度、赤塚不動の滝が「東京の名湧水57選」に指定さ
れました。雨水が浸透する土の地面が減少しており、湧水地点が消
失する危機に瀕しているなか、名湧水の名に恥じないよう湧水の保
全を一層進めていく必要があります。また、不動の滝の近くの赤塚
公園下にある湧水は、湧水水路を通して赤塚溜池公園にある自然池
■ 赤塚不動の滝
に流しています。
区では、平成19年度に湧水保全地域を学識経験者を含めた検討会により2か所を指定しました。さ
らに、平成22年度に1か所を指定しました。また、湧水保全地域を指定することにより、湧水を保全
するために、雨水を地下に浸透させる事業を集中的に推進していきます。
(2)水環境の保全
地球上の水は、海や川、また、雨や雲となり常に循環しています。
都市型の水環境は、地面の81.8%は建物や道路など不浸透域で、
その排水は合流式下水道に排出されるため、まとまった雨が下水管
に流入すると、汚水もろとも川に放流される仕組みになっています
(越流水といいます)。石神井川や白子川では年に十数回まとまっ
た雨が降るたびに、汚水が流入し、雨が止んだ後に川底に汚れが沈
殿したりします。雨が下水管から川に流出する一方で、地下に浸透
する水が減少し、湧水・地下水や川の水(平常時の川の水は湧水)
が減ってきています。
- 114 -
■ 大雨時の石神井川
湧水量は雨が降ると増えますが、雨が止むとゆっくり減少し、晴天が続いても枯れることがありませ
ん。湧水は大雨をコントロールする機能があります。きれいな水、豊かな水辺を取り戻すには、水循環
を流域全体でみる視点が必要です。
(3)自然水循環の回復
都市の水循環は、雨がすみやかに排除され海に至る直線的な水循環
となっています。自然の水循環は土壌から地下水となるなどいろいろ
の経路を持った水循環となっています。このような自然な水循環を取
り戻すことは、水質浄化、水環境の改善、身近な水の確保、都市型洪
水の防止さらにはヒートアイランド対策や温暖化対策の観点からも大
■ 雨水浸透ます
切なことです。
現在、板橋区など区部の合流式下水道では、雨水も汚水も同じ下水道管に接続されています。1年間
に降る雨は平均1,500mmほどです。仮に屋根面積80m2の住宅で考えると1年間に120トンの雨
を下水に流していることになります。雨水が地下に浸透しにくくなった結果、多くの水辺が失われ、洪
水に弱い都市となりました。
自然の水循環を回復するには、雨水浸透ますの設置が効果的です。雨水浸透ますは、通常設置する溜
めます(雨ます)のかわりに使用するもので、底がなく、回りも穴が開いていて、雨を地下に浸透させ
ます。大雨で浸透しきれない場合は、下水道に入る仕組みになっています。屋根雨水だけを浸透させる
雨水浸透ますは、地下水汚染や目詰まりのおそれがほとんどありません。板橋区の台地は、土質が関東
ローム層で、浸透効果の大きな地域です。区では、洪水対策として500㎡以上の土地に建物を建設す
る場合(個人住宅を除く)、雨水貯溜・浸透施設の設置を指導しています。また、既存の個人住宅には
区の費用負担で雨水浸透ますを設置しています。きれいな雨をそのまま下水に放流せず、地下浸透させ
て、大切な水資源を守ることが大切です。
表2-4-3 雨水浸透ます設置基数
年 度
個人住宅へ区で
設置した基数
~14年
15年
16年
17年
18年
19年
20年
21年
22年
度
度
度
度
度
度
度
度
度
2,406
350
115
10
38
37
44
29
7
計
3,036
また区では、雨水利用の普及を推進してい
ます。雨水利用タンクは、屋根に降った雨を
いったんタンクに貯めて、その雨水を庭の散
水や植木の水やり、トイレの洗浄などに活用
する設備です。雨水の有効利用を図り、水の
自然な循環を回復するためには、雨水タンク
の設置は有効な手段です。
■ 桜川小学校の雨水タンク
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■ 雨水タンク
表2-4-4 区施設における雨水利用状況
建 物 名 称
使用開始
年・月
雨水利用用途
貯留槽容量
(m3)
区役所本庁舎
S62.4
散水
3.0
教育科学館
S63.9
中水道
250.0
上板橋体育館
H5.4
中水道
50.0
熱帯環境植物館
H5.9
散水
11.0
いずみの苑
H7.7
散水
80.0
エコポリスセンター
H7.3
散水・中水道
120.0
仲町ふれあいセンター
H7.3
中水道
250.0
志村図書館
H8.4
中水道
62.0
徳丸福祉園
H9.3
散水
30.0
中台中学校体育館
H10.4
中水道・トイレ
5.0
桜川区民センター・出張所
H11.3
散水
41.0
四葉集会所
H11.3
散水
14.0
小豆沢福祉園
H13.4
散水
16.0
志村坂上出張所
H13.6
散水
16.0
グリーンホール
H16.9
トイレ
63.8
リサイクルプラザ
H18.1
トイレ
60.0
板橋区保健所・板橋健康福祉センター
H20.3
トイレ
45.0
(4)親 水
水辺に近づける施設づくり
切り立った護岸の緩傾斜化などにより、水辺の親水性の回復を図っています。
新河岸川の小豆沢地区(小豆沢河岸広場)と舟渡地区(舟渡水辺公園)の整備を完了しています。
第3節 快適環境の創出
1 良好な都市景観
(1)都市景観の概況
まちの景観に対する関心は高まっており、まちづくりは効率・利便性だけでなく、地域の個性や、やすらぎ
を与える美しい街並みや自然、さらには歴史的な雰囲気などに配慮することが今まで以上に求められるように
なっています。
板橋区の街並みを見ると、志村から赤塚方面にかけて緑豊かな樹林地が残る崖線が“みどり”の骨格軸を形
成し、その北側には憩いの水辺空間を創出している荒川や新河岸川が“みず”の骨格軸を形成しています。ま
た、旧中山道沿いの旧板橋宿や志村一里塚、薬師の泉など歴史を感じさせるところもあります。一方、計画的に
整備された高島平の中高層住宅団地とケヤキ並木通りは都市的で整然とした住環境を形成し、閑静な低層住宅
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街として開発された常盤台は心和む景観を見せています。また、再開発事業によって街の景観が一新した成増
駅北口ではACT(アクト)が、浮間舟渡駅前にはアイタワーがそれぞれ、街のシンボルとしてそびえていま
す。
街は開発されるにつれ、緑や自然は喪失し、無秩序な開発は街の景観を乱すもとになります。緑豊かであっ
た赤塚地域などは開発が進むにつれ、農地や自然が失われ、景観に与える影響も少なくありません。また、区
内には道路などの都市基盤が未整備な地域に老朽化した木造住宅が密集しているところもあり、景観面だけで
なく防災面からの取り組みも求められます。私たちは、先人から受け継いだ豊かな自然や歴史的遺産を保全す
る一方で、新たな都市景観を創出していかなければなりません。
(2)良好な都市景観への取り組み
板橋区の景観に対する取り組みとしては、平成2年及び4年に、区内の好きな街並みや、懐かしい風景、お
気に入りの建物などの写真を募集し、“活き粋いたばしまちなみ景観賞”として表彰しました。川越街道の五
本けやきや中台地域のサンシティ、石神井川緑道など数十件にも及ぶものが褒賞され、板橋区の景観向上に大
きな関心を集めました。
また、平成14年度には、板橋ならではの自然景観、都市景観、名所・旧跡、イベントを、「板橋十景」と
して選定しました。「板橋十景」は、心に残る風景や風物、感動や安らぎを与えるものとして現在でも親しま
れています。
その他、平成22年度策定の「板橋区都市計画マスタープラン(第2次)」では、「美しく魅力あるまちづ
くり」として、板橋区の貴重な景観資源を活かした、魅力ある街並みづくりを進めるとしています。
(3)良好な都市景観への誘導
板橋区の良好な都市景観への誘導として、板橋区の
地域特性や歴史性に配慮した、きめこまやかな景観ま
ちづくりを進めるため、板橋区の目指すべき景観形成
の方針を示す「板橋区都市景観マスタープラン」を平
成20年度に策定しました。
さらに、平成23年度には、上記マスタープランを
指針として、景観法に基づく「板橋区景観計画」を策
定しました。この「板橋区景観計画」は、景観法の諸
制度を活用した取り組みを推進していくことで、板橋
区の良好な景観形成の実現を図ることを目的としてい
ます。建築物等の届出制度や、景観重要公共施設・景
観重要建造物・景観重要樹木の指定、表彰制度など、区、
区民、事業者が協力しあいながら行動していくことを
目指します。
図2-4-6
板橋区の景観構造
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2 公園・緑地
公園は都市の骨格となる都市施設の一つであり、憩いの場であるとともに、レクリエ-ション、防災、環境、
景観形成など、さまざまな役割を持っています。
公園の配置にあたっては、公園不足地域の解消を目指した用地取得、造成整備を行っています。
(1)公園の現況
表2-4-5 公園の現況 (平成22年4月1日現在)
区内全域
区立公園
都立公園
公園数総計
(箇所)
337
333
(うち3箇所は緑地)
4
公園面積総計
(千㎡)
1,882
1,414
(緑地680)
468
公園率(%)
5.85
※ 人口は平成22年4月1日現在
※ 都立公園面積は平成22年4月1日現在
※ 公園率【区面積に対する都市公園面積(都立公園を含む)の占める割合】
(2)公園の整備状況(5ヵ年)
平成18年度から5ヵ年で6ヵ所の公園の新設を行ってきました。
平成22年度末現在、公園率は約5.85%です。
(3)公園の管理
公園の清掃、
除草や花づくりなどの美化活動について、
区民の方々との協働による維持管理を進めています。
現在86カ所の公園で、地域住民により組織された公園愛護協力会への清掃委託を行っています。またボラ
ンティアによる公園管理活動に対して区が必要経費相当の支援を行う地域がつくる公園制度や、公園花壇での
花づくりグループの輪も着実に広がっています(平成23年4月現在、地域がつくる公園制度23グループ、
花づくりグループ支援事業78グループが活動中)。
■ 花づくり活動
■ 地域がつくる公園活動
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