コーン・ビーム3次元CTの臨床応用

コーン・ビーム3次元 CTの臨床応用
Clinical application of a cone-beam 3-D CT
神田
永松
井手
大曲
哲朗 1)
直樹 2)
克美 2)
淳一 1)
Tetsuro Kanda
Naoki Nagamatsu
Atsumi Ide
Junichi Oomagari
小林
古賀
森松
鈴木
尚志 1)
博 2)
康文 2)
聡 3)
Hisashi Kobayashi
Hiroshi Koga
Yasufumi Morimatsu
Satoshi Suzuki
1)新古賀病院
2)新古賀病院
3)新古賀病院
放射線科
放射線部
ガンマナイフセンター
コーン・ビーム3 次元 CT は、円錐状のビームを放射するX 線源と検出器が被検者の周りを回転し、2 次元投影データから3 次元
画像を再構成する装置である。2 次元検出器を用いることにより体軸方向のスキャンが不要となる。このため従来のX 線 CT 装置
と比べ、体軸方向の解像度に優れた像を得ることができる。コーン・ビーム3 次元 CT は高コントラスト領域の評価に良い適応とな
るが、低コントラスト領域には造影剤を使用する必要がある。
今回われわれは、コーン・ビーム3 次元 CT を、高、低コントラスト領域に応用したので報告する。変形性脊椎症、後縦靭帯骨化
症では骨棘、骨化組織が明瞭に描出された。肺動静脈瘻では、造影剤を用いずに流入動脈、流出静脈と病巣の描出が可能であっ
た。血管病変は経動脈性、経静脈性による造影剤の注入により3 次元描出が可能であった。
Cone-beam three-dimensional CT system reconstructs three-dimensional images being made from two-dimensional projection
images during a rotation of the X-ray source which radiates cone-beam and detector around the patient. Utilizing the two-dimensional detector, the scan in the direction of the body axis is not necessary. It can provide higher spatial resolution in the direction
of the body axis compared with the conventional CT. Cone-beam three-dimensional CT is applied in the evaluation of diseases in
organs with high radiographic contrast. It is necessary to use contrast medium in organs with low radiographic contrast.
This paper describes the clinical application of cone-beam three-dimensional CT in organs with high and low radiographic contrast. Osteophyte and ossification were clearly demonstrated in the cases of spondylosis deformans and ossification of posterior
longitudinal ligament. Feeding artery, draining vein and lesion of the pulmonary arteriovenous fistula were visualized without
contrast medium. Three-dimensional imaging of vascular lesions were obtained by transarterial and transvenous injection of contrast medium.
Key Words:
1.
cone-beam,3-D CT
はじめに
らせんCT の登場により撮影時間の短縮、3 次元 CT 血管造
で広範囲の投影像が得られるのが特徴であるが、現時点では
影などが可能となったが、体軸方向の空間分解能の制限とい
イメージインテンシファイアを使用しているため濃度分解能
う課題がある。1998 年に臨床の場に登場したマルチスライス
が低い、撮影範囲が限定されるという課題を残している。
CT は、体軸方向に複数の検出器が配列されており、撮影時
今回われわれは、オープンガントリー型のコーン・ビームCT
間が短縮された。これに対し、コーン・ビームCT は2 次元の
専用機種を臨床に応用したのでその有用性と課題について報
検出器を使用し、円錐状のX 線ビーム投影で得られる2 次元
告する。
投影データから3 次元 CT 画像を再構成する方法である。2 次
元検出器を用いるため特に体軸方向の解像度が優れ、短時間
また新しい試みである3 次元エアログラフィーについても述
べる。
2.
方法
使用した装置は、X 線源と検出器が被検者の周りを回転す
るオープンガントリー型のコーン・ビームCT 専用機種(日立
製)である(図 1)。ガントリーの中にX 線管球とイメージインテ
ンシファイア(I.I.)が180 度対向するように設置されており、円
錐ビームが被検者の周りを360 度 1 回転し、被検者を透過し
たX 線はイメージインテンシファイアで検出され、高解像度
CCD カメラを経て、ボクセル・トランスミッション法を用いた
3 次元処理装置で再構成される。スキャン時間は4.9 秒、X 線
出力は120kV、30∼65mAである。検出器のI.I.は6,9,12,16inch
の4 種類で、1 回転で512 × 512 マトリックスの投影像が288
枚収集される(図 2)。
3.
結果
⒈造影剤を使用しない高コントラスト領域の症例提示
図 3 は肺動静脈瘻のvolume rendering 像である。
検診にて胸部異常陰影を指摘され、鑑別診断のためコー
ン・ビームCT が施行された。コーン・ビームCT では病巣部と
流入肺動脈(A3a)、流出肺静脈(V4a)との関係が明瞭に描出さ
れており、肺動静脈瘻と診断された。図 4 は後縦靭帯骨化症
図 1 :コーン・ビーム CT装置
のvolume rendering 像で、椎弓、棘突起を取り除き頸椎を後
方から見ている。C3-C6 のレベルで縦方向に連続する骨化組
X線管
512画素
X線コーンビーム
512画素
織が立体的に描出されている(矢印)。図 5 は変形性脊椎症(手
術後)のvolume rendering 像である。C5-C6 の骨移植部の後縁
回転軸
に骨棘(矢印)が認められる。この骨棘はMRI では描出されて
おらず、コーン・ビームCT では骨棘の脊柱管への突出の状態
0.4mm角
512画素
高解像度3次元像
X線イメージ
インテンシファイア
が把握しやすい。図6は食道癌の症例で、門歯より23∼32cm
の食道内に Borrmann2 型の腫瘍が認められた。図 6A は volume rendering 像で、左主気管支の後壁に腫瘍による浸潤(矢
印)が認められる。図6Bは同症例の肺動静脈のmaximum intensity projection(MIP)像である。肺動静脈には異常所見はみら
CCD
テレビカメラ
処理装置
2次元検出器
図 2 :システムの概要
れない。
図 3 :肺動静脈瘻
病巣部と流入肺動脈(A3a)、流出肺静脈(V4a)との関係が明瞭に
描出されている。
図 4 :後縦靭帯骨化症
C3-C6 のレベルで縦方向に連続する骨化組織が立体的に描出さ
れている(矢印)。
図 10 は脳血管の静脈相である。肘静脈から注入率 2ml/秒
⒉造影剤を使用した高コントラスト領域の症例提示
図 7 は脳動脈瘤のMIP 像である。内頸動脈内のカテーテル
で90ml のイオパミロン300 を静注し、50 秒後にスキャンした。
病変は認めないが、上矢状静脈洞、直静脈洞、横静脈洞が良
より、イオパミロン300を注入率5ml/秒、総量15mlを注入し、
好に描出されている。図 11 は右総腸骨動脈の閉塞例である。
注入 1 秒後にて撮影した。スキャン時間は5 秒である。前大
肘静脈から注入率 2ml/秒で、90ml のイオパミロン300 を静注
脳動脈に動脈瘤(矢印)が認められる。図 8 は脳の動静脈奇形
し、45秒後にスキャンした。矢印の部位に閉塞が認められる。
で、図 8A はMIP 像、図 8B はvolume rendering 像で、いずれ
も頭頂部から見た像である。拡張した前大脳動脈、中大脳動
脈から流入動脈が Nidus(矢印)に流入している。総頸動脈内
⒊消化管の3D-エアログラフィー(空気造影)の提示
図12は胃体下部大彎前壁寄りの早期胃癌(Ⅱa+Ⅱc)の症例
のカテーテルからイオパミロン300 を5ml/秒、総量 15ml 注入
である。図 12A は胃内に空気を注入してスキャンしたvolume
して撮影した。スキャン時間は5 秒である。図 9 は内頸動脈狭
rendering 像(エアログラフィー)である。図 12B は同症例の内
窄の症例である。総頸動脈内のカテーテルより、イオパミロ
視鏡写真で、病巣部に色素(インジゴカルミン)を散布してお
ン300 を5ml/秒、総量 10ml を注入して撮影した。スキャン時
り癌病巣面の凹凸が明瞭である。エアログラフィーは病巣の
間は5 秒である。総頸動脈から外頸動脈が分岐した直後の内
中心陥凹や辺縁を比較的よく捉えている(矢印)。
頸動脈の狭窄(矢印)が描出されている。
B
A
図 5 :変形性脊椎症(手術後)
C5-C6の骨移植部の後縁に骨棘(矢印)が認められる。
図 6 :食道癌の気管支浸潤
A :左主気管支の後壁に腫瘍による浸潤(矢印)が認められる。
B :肺動静脈の MIP像
肺動静脈には異常はみられない。
B
A
図 7 :前大脳動脈瘤
前大脳動脈に動脈瘤(矢印)が認められる。
図 8 :脳動静脈奇形
A:MIP像
B:volume rendering像
拡張した前大脳動脈、中大脳動脈から流入動脈がNibus
(矢印)に流入している。
4.
考察
Johnson らは、切除肺で0.1mm の血管が描出できるコーン・ビ
ームCT を開発している6)。コーン・ビーム計測の課題として濃
コーン・ビーム3 次元 CT は、円錐状のX 線ビーム投影で得
度分解能が低いこと、散乱 X 線による画像ぼけが生じること
られる2 次元投影データから3 次元 CT 画像を再構成する方法
があるが、これらに対しては馬場らにより高画質化技術が開
である。従来のらせんCT と比べ、特に体軸方向の解像度が
発されている7)。
優れており、冠状断面、矢状断面の再構成画像が高精細であ
り、短時間で広範囲の投影像が得られるのが特徴である。
コーン・ビームCT は、人体の体軸方向の解像度に優れ、短
時間で広い範囲の撮影が施行でき、濃度分解能が低いために
2 次元投影データから3 次元断層像を再構成するアルゴリ
高コントラスト領域に良い適応となる。西谷ら8)によると、肺
ズムが1984 年にFeldkamp らにより提示されている1)。隈崎ら
動静脈瘻では単純X線写真、CTでは診断できなかったが、コ
は高速回転 X 線撮影装置(日立 SF-VA100)を開発し2) 3)、これ
ーン・ビームCT で肺門から病巣へ向かう肺動脈と病巣から肺
によりデジタル血管撮影が3 次元的に観察可能となった。こ
門に戻る肺静脈が明瞭に描出されたと述べている。肺動静脈
の高速回転X線撮影装置によって計測された投影画像は歪み
瘻は肺の動静脈間に発生した異常吻合で、流入肺動脈と流
補正、エアーキャリブレーションを行い、画像が表示される
出肺静脈が円形あるいは類円形陰影に連続する所見が単純 X
。この方法では、2 次元 X 線画像と3 次元画像の両方を観察
線写真、断層写真で認められるが、最も確実な診断方法は肺
することが可能であり、診断に有用である 5)。また1998 年に
血管造影法である。図 3 に提示したようにコーン・ビーム CT
図 9 :内頸動脈狭窄
総頸動脈から外頸動脈が分岐した直後の内頸動脈の狭窄(矢印)
が描出されている。
図 10 :脳血管の静脈相
肘静脈からの静注 50 秒後にスキャンした静脈相。
上矢状静脈洞、直静脈洞、横静脈洞が良好に描出されている。
4)
B
A
図 11 :右総腸骨動脈閉塞
矢印に閉塞が認められる。
図 12 :早期胃癌
A :3-Dエアログラフィー(空気造影)
内視鏡像の所見を比較的よく捉えている(矢印)。
B :色素内視鏡像
病巣の中心陥凹と辺縁が明瞭に認められる。
では造影剤を用いずに病巣部と流入肺動脈、流出肺静脈との
関係が明瞭に描出され、肺動静脈瘻の診断に有用である。小
林らは肺野末梢の7 次分枝の肺動静脈がコーン・ビームCT に
て描出されたと報告しており 9)、肺動静脈と病巣との関係を
5.
結語
現時点におけるコーン・ビーム3次元CTの臨床例を供覧し、
その有用性と課題について述べた。コーン・ビームCT は体軸
方向の解像度が優れているため高コントラスト領域には良い
みるのに有効と考えられる。
後 縦 靭 帯 骨 化 症 (ossification of posterior longitudinal liga ment;OPLL)は日本人の2 ∼ 3%にみられ、頸椎に好発し脊髄
適応と考えられるが、濃度分解能が低いため低コントラスト
領域には造影剤を用いる必要がある。
は骨化組織により前方から圧迫を受ける。骨化組織は単純 X
今後 flat panel(平面センサー)などの2 次元検出器の技術的
線側面像にて描出される。図 4 の如く、骨化組織はコーン・ビ
改良により濃度分解能を高めることが課題であると考えられ
ームCT により立体的に観察できる。頸部変形性脊椎症は脊
る。
椎の退行変性、椎間板変性とそれに伴う椎体縁およびLuschka関節に形成される骨棘による脊髄、脊髄神経根圧迫により
発現する疾患である。頸椎単純 X 線写真では、椎間孔の狭小
化、Luschka 関節腔の狭小化、骨棘形成、椎体辺縁の骨棘形
成がみられる。牧本ら 10)の報告や図 5 に示すように、コーン・
ビームCT では骨棘の立体構造の把握が可能である。西谷ら
8)
は、腰椎分離症では単純 X 線写真、断層写真では不明であっ
た分離の存在がコーン・ビームCT により証明されたと述べて
おり、牧本らは、Hangman's fracture では単純 X 線写真、断層
写真にて同定困難な小さな骨折線がコーン・ビームCT にて描
出でき、脊椎病変での有用性を述べている。またMozzo らは
参考文献
1) L.A.Feldkamp, et al:Practical cone-beam algorithm,
J.Opt.Soc.Am.A,1:612-619,1984
2) 隈崎達夫:新しいデジタル血管撮影システムの開発、日
本医放会誌、51:1068-1077,1991
3) 隈崎達夫:回転デジタル血管撮影、画像診断、17:6472,1997
4) 隈崎達夫 ほか: Cone-beam3 次元 CT ;高速回転 X 線撮
コーン・ビームCT が、頭頸部領域において有用であったと述
影システムから3次元 CT画像の再構成、新世代 3次元 CT
べている11)。
診断、隈崎達夫 ほか、南光堂、東京、1995,17-23,1995
上記の如く、高コントラスト領域では空間分解能の高い3
次元画像が得られるが、低コントラスト領域では造影剤を用
いずに診断に耐えうる画像を得ることはできない。小林らは、
5) 隈崎達夫 ほか: Cone-beam3 次元 CT、新世代 3 次元 CT
診断、隈崎達夫 ほか、南光堂、東京、1995,178-187,1995
6) Johnson RH et al:Feldkamp and circle-and line cone-beam
胆管癌の胆管壁浸潤、総腸骨動脈閉塞などの低コントラスト
reconstruction for 3D micro-CT of vascular networks,Phys
領域では、造影剤を用いることによりヘリカルCT の3 次元画
Med Biol,43:929-940,1998
像より空間分解能に優れた画像が得られたと報告している 。
9)
図 7、図 8 に示すように、経動脈性造影では末梢動脈が鮮明
7) 馬場理香 ほか:コーン・ビーム3 次元 X 線計測技術の開
発、MEDIX、31:42-47,1999
に描出される。隈崎らによると内頸動脈撮影にて直径 0.2mm
8) 西谷 弘 ほか:回転デジタルX 線撮影装置を用いたコ
の動脈まで識別可能である 5)。市川らは 12)、動脈瘤頸部と動
ーン・ビームCT ;肺野および骨病変に対する初期臨床経
脈との位置関係がコーン・ビームCT により理解でき、IVR の
術前戦略に対し有用な画像情報が得られたと報告している。
動静脈奇形(Arterio-venous malformation;AVM)は、先天的な
験、日本医放会誌、58:451-453,1998
9) 小林尚志 ほか:コーン・ビーム3 次元 CT の可能性と課
題、新医療、26:58-62,1999
血管奇形でクモ膜下出血の原因であり、血管造影では太く蛇
10) 牧本裕美 ほか:デジタルX 線装置を用いたcone-beam-
行する流入動脈、Nidus(動静脈の結合部)、太い流出静脈が
CT ;脊椎領域における臨床経験、臨床放射線、44:925-
特徴である。図 8 では、流入動脈、Nidus、太い流出静脈が明
瞭に描出されている。経静脈性造影では、上矢状静脈洞、直
930,1999
11) Mozzo P, et al:A new volumetric CT machine for dental
静脈洞、横静脈洞が描出されているが、経動脈性造影に比べ
imaging based on the cone-beam technique:preliminary
るとノイズが目立つ(図 10)。造影のタイミング、骨のサブト
results,Eur Radiol,8:1558-1564,1998
ラクションなどが改善されれば画質は向上すると思われる。
新しい試みである消化管の3次元エアログラフィー(空気造影)
では、消化管の外形、内腔が多方向から観察できる(図 12)。3
12) 市川和雄 ほか:コーン・ビーム3 次元 CT がIVR 術前評
価に有用であった巨大内頸動脈瘤の 1 例、臨床放射線、
43:621-624,1998
次元エアログラフィーは空気と消化管の粘膜との変曲点を3
13) 小林尚志 ほか:三次元 CT による管腔臓器・大血管の内
次元的に再構成する方法である。コーン・ビームCT による3
視イメージについて; Volumetric CT を用いた新しい試
次元エアログラフィーは、CT 内視鏡モード13)を用いたヘリカ
み、日本医放会誌、52:1195-1197,1992
ルCT によるエアログラフィーに比べ空間分解能が改善され
ているが、現在のI.I.を用いる方式ではボリュームデータが球
状のため視野が制限されている。視野の広いflat panel(平面
センサー)などの2 次元検出器の技術的改良が期待される。