健常成人におけるgatifloxacinの 体内動態に及ぼす 水酸化アルミニウム

日本 化 学 療 法 学 会 雑 誌
218
健常 成 人 にお けるgatifloxacinの
SEP.1999
体 内動 態 に及 ぼす
水 酸 化 アル ミニ ウム 及 び シ メチ ジ ンの影響
柴
孝也
東京慈恵会医科大学内科学 講座第:*
新 キ ノ ロ ン系 抗 菌 薬gatifloxacin(GFLX)の
ア ル ミ ニ ウ ム ゲ ル[Al(OH)3],並
体 内 動 態 に 及 ぼ す,制
び に 消 化 性 抗 潰 瘍 剤 シ メ チ ジ ン の 影 響 を,6名
常 成 人 男 子 志 願 者 に お い て 検 討 した 。GFLX200mg服
ら0.75μg/mL,14.4か
き唾 液 中 のCmax及
μg・h/mLへ
と 低 下 し,血
れ ぞ れ1.35か
ら42.3%へ
1時 間 前 に シ メ チ ジ ン を 服 薬 し た 場 合 に は,こ
ず れ も み ら れ な か っ た 。 こ の こ と か ら,GFLXの
Key
同 時 服 薬 に よ り,そ
と低 下 し た 。 ま た,こ
ら0.36μg/mL,6.55か
のと
ら3.88
清 中 濃 度 の 変 化 に 対 応 し て い た 。 さ ら に,服
で の 尿 中 未 変 化 体 排 泄 率 は,72.5か
減 す る が,シ
1gの
ら7.79μg・h/mLへ
びAUC 0∼∞ も,そ
の健
薬 後 の 最 高 血 清 中 濃 度(Cmax)
及 び 血 清 中 濃 度 一 時 間 曲 線 下 面 積(AUC)は,Al(OH)3
れ ぞ れ1.71か
酸 剤乾燥 水酸化
薬 後48時
間ま
と 減 少 し た 。 こ れ に 対 しGFLXの
服薬
れ ら薬 物 速 度 論 的 パ ラ メー タ の低 下 は い
胃 腸 管 吸 収 はAl(OH)3の
併 用 に よ り半
メチ ジ ンの 影 響 は 少 ない もの と考 え られ た 。
words:gatifloxacin,AM-1155,水
酸 化 ア ル ミ ニ ウ ム,シ
Gatifloxacin(GFLX,AM-1155)は,グ
ラ ム陽 性
に 及 ぼ す,こ
た 最 近,therapeutic
ペ ク トル を 有 す る,新
点 か ら,キ
ま尿 中 へ と排 泄 さ れ,そ
drug
monitoring(TDM)の
観
ノロ ン薬 の 血 中濃 度 の 測 定 に代 わ る もの と し
薬 剤 は 服 薬 後 速 や か に,
て,唾
液 中 濃 度 の 測 定 の 有 用 性 が 指 摘 さ れ て い る2。 そ こ
用量の大部分 が未変化 のま
で,本
試 験 で は,併
常 成 人 に お け る 検 討 に よ れ ば,本
か つ 良 好 に 吸 収 さ れ た 後,服
内 動 態
れ ら薬 剤 の 併 用 に よ る 影 響 を 検 討 し た 。 ま
菌 及 び グ ラ ム 陰性 菌 に対 し強 い 抗 菌 活 性 と幅 広 い抗 菌 ス
規 の キ ノ ロ ン系 抗 菌 薬 で あ る1)。健
メ チ ジ ン,体
の 血 中 半 減 期 は7∼8時
用 薬 に よる 唾 液 中薬 物 濃 度 の 変 化 に
つ い て も併 せ て 検 討 し た 。
間 と,キ
ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 の 中 で は 比 較 的 長 い と さ れ る2。
近 年,同
系 薬 のciprofloxacin(CPFX)を
I.実
ア ル ミニ ウ
験 材 料 及 び 方 法
ム また はマ グ ネ シ ウ ム を 含 む 制 酸 剤 と併 用 す る こ と に よ
1.被
り,そ
臨 床 試 験 に お け る 被 験 薬 剤 と し て,GFLX
の 胃 腸 管 吸 収 が 低 下 す る こ とが 明 ら か に さ れ3),そ
れ 以 来,キ
ノ ロ ン薬 と制 酸 剤 と の 薬 物 相 互 作 用 に 関 し 幅
広 い 検 討 が 行 わ れ て い る4.5)。そ れ に よ れ ば,吸
程 度 は キ ノ ロ ン薬 及 び 金 属 イ オ ン の 種 類,キ
収低 下の
ノ ロ ン薬 と
験 薬 剤 及 び試 薬
(杏 林 製 薬,Lot
No.S240090)を
1錠 中 にGFLX無
水 物 と して100mgを
る 。Al(OH)3(日
本 薬 局 方,99%細
用 い た 。 本 薬 剤 は,
含有 す る 製 剤 で あ
粒)は
ら,シ
一方
イ ン ・ビ ー チ ャ ム 製 薬 か ら そ れ ぞ れ 購 入 し 使 用 し た 。 分
,臨
床 に お い て,こ
れ ら制 酸 剤 の代 用 とな り得 る 消
ス タ ミ ンH2プ
ロ ッ カー が
ガ メ ッ ト(R))200mg錠
中外 製 薬 か
制 酸 剤 の 服 薬 の タ イ ミ ン グ な ど に よ り異 な る と さ れ る4.5)。
化 性 抗 潰 瘍 剤 の 一 つ と し て,ヒ
メ チ ジ ン(タ
100mg錠
析 時 に 使 用 し たGFLX標
準 品(Lot
は ス ミス ク ラ
No.G145331)及
あ げ ら れ る5)。そ の 一 種 で あ る ラ ニ チ ジ ン の 静 脈 内 投 与 に
び 内 標 準 物 質AM-1202(Lot
よ り,キ
吸収 が低
林 製 薬 で 合 成 し た 。 ア セ トニ ト リ ル は 高 速 液 体 ク ロ マ ト
ノ ロ ン薬 の 胃腸 管 吸 収 に及 ぼ
ル ホ ン 酸 ナ ト リ ウ ム は イ オ ン ペ ア ー ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー
ノ ロ ン 系 抗 菌 薬enoxacin(ENX)の
グ ラ フ ィー(HPLC)用
下 す る 例 も 報 告 さ れ て い る6.7)。
著 者 ら は,こ
れ ま で,キ
す 制 酸 剤 及 び 消 化 性 抗 潰 瘍 薬 の 影 響 に つ い て,一
討 を行 っ て き た8∼l6)。
今 回 我 々 は,制
連 の検
酸 剤 と して 比 較 的使
を,ま
た 消 化 性 抗 潰 瘍 薬 と して シ メ チ ジ ン を 用 い,健
*
〒105-8461東
京都 港 区 西 新橋3-25-8
用 を 東 京 化 成 か ら,そ
常
血 中動 態 及 び尿 中排 泄
を 関 東 化 学 か ら,1-オ
クタンス
れ ぞ れ 購 入 し使 用 した。 そ の 他 の
試 薬 は 全 て 市販 の 特 級 品 を使 用 した 。
2.被
用 頻 度 の 高 い 乾 燥 水 酸 化 ア ル ミニ ウ ム ゲ ル[Al(OH)3]
成 人 男 子 志 願 者 に お け るGFLXの
No.K285314)は,杏
験者
被 験 者 は 年 齢20∼22歳(平
歳),身
均 値 ± 標 準 偏 差,21±0.9
長173∼181cm(176±3cm),体
重69∼78kg
VOL.47
Gatifloxacinと
S-2
(72±3kg)の
健 常 成 人 男 子6名
験 の 目 的,内
容,薬
受 け た 上 で,書
で,試
水 酸 化 ア ル ミニ ウ ム ・シ メチ ジ ン
験 に 先 立 ち,試
219
態 解 析 ソ フ トPAG-CP(R)18)に
剤 の 性 質 な どに つ い て 十 分 な説 明 を
面 に よ り同意 した志 願 者 で あ る 。 被 験 者
度(Cmax)及
びCmax到
よ り解 析 を行 っ た 。 最 高 濃
達 時 間(Tmax)は,実
り求 め た 。 消 失 相(6∼24時
間)に
お け る血 清 及 び 唾 液 中
に は東 京 慈 恵 会 医 科 大 学 健 康 医 学 セ ン ター にお い て 試 験
濃 度 の 片 対 数 一 時 間 曲 線 か ら,最
前 の 病 歴 調 査 及 び 健 康 診 断 を 実 施 し,治
消 失 速 度 定 数(kel)を
求 め,半
[T1/2=0.693/kel]。
ま た,0∼24時
験担 当医師が被
験 者 と して 適 格 で あ る こ とを確 認 した 。
3.臨
床試験 スケ ジュール
試 験 は 第I∼III期
に 分 け,各
2錠 を 単 独 服 薬 し,第II期
1gを
期 で被 験 者 全 員 が 同 一 の
で は1時
を 服 薬 し た 後,同
各 期 に お い て,薬
被 験 者 に は,試
の 服 薬 を,ま
100mg錠
た は8日
験 開 始1週
服 薬 した 。
水 と共 に 服 薬
間 で あ っ た。
後10時)か
らGFLX服
間 ま で の 食 事 を 禁 じ た 。 試 験 期 間 中,被
学 検 査(血
圧,脈
薬 前1時
学 的 検 査(赤
血 球 数,ヘ
ト値,血
小 板 数,白
び に喫
度 な 運 動 は 避 け る こ と と した 。 理
拍,体
た 。 ま た,服
薬
験 者 はア
ル コ ー ル ま た は カ フ ェ イ ン を 含 む 飲 物 の 摂 取,並
煙 は 禁 止 す る と共 に,過
温,心
間,並
電 図)を
服 薬 前 に実 施 し
び に 服 薬 後24時
モ グ ロ ビ ン 濃 度,ヘ
間 に,血
血 球 数,白
蛋 白,総
ス テ ロ ー ル,中
状 赤 血 球),
血 清 ク レ ア チ ニ ン,血
[pH,蛋
び24時
酸,血
薬 前,並
糖,
検査
ロ ビ リ ノ ー ゲ ン,沈
実 施 し た 。 さ ら に,服
6,8及
コレ
清 電 解 質(Na,K,Cl),尿
白,糖,ウ
査(色
調)]を
び に服 薬 後1,2,3,4,
間 に 問 診 を行 い,そ
の 所 見 を記 録 し た 。 自
料 の採 取 方 法
GFLX服
薬 前,並
8,12及
び24時
れ 採 取 し,常
薬 前,並
び 唾 液1mLを
それぞ
法 に よ り血 清 を 分 離 し た 。 一 方,GFLX服
間 で 蓄 尿 し,そ
の 一 部(10mL)を
技 術 セ ン タ ー へ 輸 送 し,分
0∼∞
で 除す る こ とに よ
求 め た[CLT/
乗 じる こ
と に よ り算 出 し た[Vd/F=CLT/F・MRT0∼∞]。
7.統
計 学 的解 析
薬 物 速 度 論 的 パ ラ メ ー タ に つ い て 二 元 配 置 分 散 分 析 を行
い,そ
の 結 果 が 有 意 で あ る 場 合 に は さ ら にDunnettの
多
重 比 較 に よ り併 用 薬 の 影 響 を 解 析 し た 。 有 意 水 準 は5%と
した。
II.結
1.安
果
全性
薬 に起 因す る と考 え られ る 副作 用
は 認、
め られ な か っ た 。
ま た,臨
床 試 験 に お い て,検
査 値 の異 常 変 動 は 認 め ら
れ なかった。
2.血
清 中濃 度
GFLX
200mgの
Al(OH)3
単 独 服 薬 時,並
1gま
び に 同 量 のGFLXと
た は シ メ チ ジ ン200mgの
清 中 未 変 化 体 濃 度 推 移 をFig.1に
併 用 時 にお け
示 す 。 ま た,血
れぞれ容量 を測定
林 製 薬 株 式 会 社 開発
析 時 ま で-20℃
1に 示 す 。
単 独 服 薬 時 のCmax
1.71μg/mL及
以下で保存 し
T1/2
6.88時
14.4
併 用 に よ り,0.75μg/mL
と そ れ ぞ れ 有 意 に 低 下 し た 。 一 方,
間 は,Al(OH)3の
併 用 に よ り7.50時
有 意 に 延 長 した 。 こ れ に 対 し,シ
れ ぞ れ1.72μg/mL及
間 で あ り,影
びAUC 0∼∞
間へ と
メチ ジ ンの併 用 で はそ
び13.4μg・h/mL並
び に6.68時
響 は 認 め ら れ な か っ た 。 一 方,Al(OH)3ま
た は シ メ チ ジ ン の 併 用 に 関 係 な く,Tmaxは1.25∼2.08
析方法
時 間 で あ り,変
血 清 中 未 変 化 体 濃 度 を,高
(HPLC)法17に
6.薬
0∼24+C24/
見 か け の 分 布 容 積(Vd/F)は,CLT/
μg・h/mLは,Al(OH)3の
た。
は,血
F=D/AUC0∼∞]。
及 び7.79μ9・h/mLへ
採 取 し た 。 こ れ ら試 料 は,
い ず れ も速 や か に 遮 光 凍 結 して,杏
5.分
与 量(D)をAUC
さ ら に,投
り見 か け の 全 身 ク リ ア ラ ン ス(CLT/F)を
Table
び に 服 薬 後0.5,1,2,3,4,6,
間 で 血 液 約4mL及
び24∼48時
し た 後,そ
kel]。
0∼∞=AUC
清 中 濃 度 推 移 か ら算 出 さ れ た 薬 物 速 度 論 的 パ ラ メ ー タ を
び に 服 薬 後0∼2,2∼4,4∼6,6∼8,8∼12,
12∼24及
0∼∞
を求 め た[AUC
る,血
他 覚 症 状 は 随 時 記 録 した 。
4.試
0∼24に加 え る こ と に よ り無
限 時 間 ま で のAUC
本 試 験 に お い て,服
接 ビ リ ル ビ ン,総
性 脂 肪,A/G比,BUN,尿
0∼24)を 台 形 法 に よ り算
間 にお け る血 清 及 び唾 液 中 濃 度 理論 値
除 し た 値 をAUC
マ トク リ ッ
血 球 分 画,網
ビ リ ル ビ ン,直
与 後24時
算 出 した
間 の 血 清 及 び唾 液
液
血 液 生 化 学 検 査(GOT,GPT,Al-P,γ-GTP,LDH,
LAP,総
減 期(T1/2)を
Fに 無 限 時 間 ま で の 平 均 滞 留 時 間(MRT0∼∞)を
間 前 か ら試 験 終 了 まで 他 剤
た 試 験 の 前 夜(午
出 し,投
(C24)をkelで
間 前 に シ メチ ジ ン
量 のGFLXを
剤 は 空 腹 時 に 約150mLの
し た 。 各 期 の 間 隔 は,6ま
後4時
で はGFLX
で は 同 量 のGFLXとAl(OH)3
同 時 服 薬 し,第III期
200mg錠1錠
小 二 乗 法 に よ り薬 物 の
中 の 濃 度 一 時 間 曲 線 下 面 積(AUC
服 薬 を 行 っ た 。 す な わ ち,第I期
測値 よ
速 液 体 ク ロマ トグ ラ フ
よ り測 定 し た 。 尿 及 び 唾 液 中 濃 度 の 測 定
に よ り,Vd/Fは1.90か
か ら450mL/minへ
で,変
物速 度論的解 析
結 果 は 平均 値 ±標 準 偏 差 と して 示 した 。
物 動
れ ぞ れ 有 意 に 増 加 し た が,シ
れ ぞ れ2.00L/kg,253mL/min
化 は なか っ た 。
3.唾
液 中濃度
GFLX
200mgの
併用
ら4.21L/kg,CLT/Fは235
と,そ
メ チ ジ ン の 併 用 で は,そ
清 中 濃 度 分 析 法 に準 じた 。
各 被 験 者 の 血 清 及 び 唾 液 中 薬 物 濃 度 に つ い て,薬
化 は な か っ た 。 ま た,Al(OH)3の
単 独 服 薬 時,並
び に 同 量 のGFLXと
日本化 学療 法学 会雑 誌
220
Al(OH)3
る,唾
lgま
た は シ メ チ ジ ン200mgの
液 中 未 変 化 体 濃 度 推 移 をFig.2に
併用時 におけ
有 意 に 延 長 し た 。 こ れ に 対 し,シ
示 す 。 ま た,唾
Cmaxは1.60μg/mLで
液 中 濃 度 推 移 か ら算 出 さ れ た 薬 物 速 度 論 的 パ ラ メ ー タ を
た が,AUCo、
Table
7.04時
1に 示 す 。
単 独 服 薬 時 のCmax
1.35μg/mL及
h/mLは,Al(OH)3の
3.88μg・h/mLへ
T1/2
4.66時
び
間 は,Al(OH)3の
併 用 に よ り9.63時
of gatifloxacin
oral administration
gatifloxacin
of aluminum
in serum
1 h after 200 mg of cimetidine
Table
Each
化 は なかった。
200mgの
単 独 服 薬,並
Fig.2.Concentrations
of 200 mg of
alone, 200 mg of gatifloxacin
with 1 g
hydroxide,
and 200 mg of gatifloxacin
Each point represents
意 な 増 加 が 見 ら れ た 。 一 方,Tmaxは
中排 泄
GFLX
間へ と
あ り単 独 服 薬 時 と 変 化 は な か っ
た は シ メ チ ジ ン の 併 用 に 関 係 な く1.50∼2.17
時 間 で あ り,変
4.尿
in humans.
the mean and SD (n=6).
メ チ ジ ンの 併 用 で は
∞及 びT 1/2は そ れ ぞ れ9.47μg・h/mL及
間 と,有
Al(OH)3ま
∞ 6.55μg・
と そ れ ぞ れ 有 意 に 低 下 し た 。 一 方,
Fig.1.Concentrations
following
びAUCo、
併 用 に よ り,0.36μg/mL及
SEP.1999
oral administration
of gatifloxacin
in saliva following
of 200 mg of gatifloxacin
200 mg of gatifloxacin
with 1 g of aluminum
and 200 mg of gatifloxacin
cimetidine
び に 同 量 のGFLXと
alone,
hydroxide,
1 h after 200 mg of
in humans.
Each point represents
the mean and SD (n=6).
1.Pharmacokinetic
parameters
of gatifloxacin
following
oral administration
of 200
mg of gatifloxacin
alone, 200 mg of gatifloxacin
with 1 g of aluminum
hydroxide,
and 200 mg of gatifloxacin
1 h after 200 mg of cimetidine
in humans
value represents
the mean and SD (n=6).
び
VOL.47
S-2
Al(OH)3
る,尿
Gatifloxacinと
1gま
た は シ メ チ ジ ン200mgの
水 酸 化 ア ル ミニ ウ ム ・シ メチ ジ ン
併 用 時 にお け
中 未 変 化 体 濃 度 及 び 累 積 尿 中 未 変 化 体 排 泄 率 をFig.
3に 示 す 。 各 群 に お い て,薬
物 は 服 薬 後24時
の 大 部 分 が 排 泄 さ れ た 。GFLX服
未 変 化 体 排 泄 率(Table
対 し,Al(OH)3の
1)は,単
薬 後48時
間 まで の 尿 中
独 服 薬 時 の72.5%に
併 用 に よ り42.3%へ
た 。 こ れ に 対 し,シ
間 まで にそ
と有 意 に 低 下 し
メ チ ジ ン の 併 用 で は67.7%で
あ り,
変化は なかった。
は56%,AUC 0∼∞
は46%,服
変 化 体 排 泄 率 は42%そ
びCLT/Fは
221
薬 後48時
れ ぞ れ 低 下 し た 。 ま た,Vd/F及
そ れ ぞ れ122%,91%増
加 し た 。 こ れ ら薬
物 速 度 論 的 パ ラ メ ー タの 変 化 は い ず れ も吸 収 率 の 低 下 に
よ り 説 明 で き る も の と 考 え ら れ た 。 一 般 に,臨
て,ア
CPFX,norfloxacin(NFLX)で
大 き く,fleroxacin
は ほ と ん ど観 察 さ れ ず,ofloxacin(OFLX)
は そ の 中 間 と さ れ る 。GFLXの
III.考
察
床 にお い
ル ミ ニ ウ ム を 含 む 制 酸 剤 に よ る 吸 収 低 下 の 程 度 は,
(FLRX)で
キ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 の 胃 腸 管 吸 収 が,ア
間 まで の 尿 中未
吸 収 低 下 はOFLXと
ほぼ
同 じ く中 程 度 で あ っ た。
ル ミニ ウ ム ま た
一方
,シ
メ チ ジ ン の 併 用 時 に お い て は,血
清 中濃 度 か
は マ グ ネ シ ウ ム な ど の 金 属 イ オ ン を含 む制 酸 剤 との併 用
ら算 出 さ れ た 薬 物 速 度 論 的 パ ラ メ ー タ,並
に よ り低 下 す る こ と は よ く知 ら れ て い る3.5.8.16。そ の 原 因
化 体 排 泄 率 は い ず れ も変 化 せ ず,シ
と し て,こ
の 胃腸 管 吸 収 へ の 影 響 は少 な い も の と考 え られ た 。 シ メ
れ ら抗 菌薬 と金 属 イ オ ン との キ レー シ ョ ン に
よ る 難 溶 性 複 合 体 の 形 成)。11.19.22,消
化 管 内pHの
る 薬 物 の 溶 解 性 低 下 ロ,薬
上昇に よ
物 分 子 へ の 制 酸 剤 の 吸 着23が
考 え ら れ て い る 。 新 規 の 同 系 薬 剤 で あ るGFLXに
も 同 様 な 吸 収 低 下 が 考 え ら れ た 。 そ こ で,今
Al(OH)3,並
び にAl(OH)3の
ついて
回 我 々 は,
代 用 と し て 広 く使 わ れ て
い る ヒ ス タ ミ ンH、 プ ロ ッ カ ー で あ る,シ
メチ ジ ンに つ い
て本 薬 剤 の 胃腸 管 吸 収 に 及 ぼ す 影 響 を検 討 した 。
GFLX
200mgの
単 独 服 薬 時 に お け る 結 果 は,既
告 さ れ て い る 第I相
臨 床 試 験 に お け る 成 績2に
て い た 。Al(OH)3
1gの 同 時 服 薬 に よ り,血
Fig.3.Concentrations
チ ジ ン は200mg単
メ チ ジ ン に よ るGFLX
回 服 薬 後 速 や か に 吸 収 さ れ,1∼3時
間 に お い て 胃 酸 分 泌 を90%以
上 抑 制 し,酸
概ね一致 し
清 中 のCmax
度 も有 意 に 低
下 させ る こ と が 報 告 さ れ て い る24。 今 回 の 試 験 に お い て,
シ メ チ ジ ン 併 用 時 に お け るGFLXのTmaxは1.25時
あ る こ と か ら,GFLXの
吸 収 相 に お い て,胃
間で
内 のpHが
上 昇 し て い る こ と が 十 分 推 察 さ れ る 。 一 方,GFLXを
む 新 キ ノ ロ ン薬 は 両 性 化 合 物 で あ り,一
に報
び に尿 中 未 変
ら 中 性 領 域 に 上 昇 す る と共 に,そ
酸性か
の 溶 解 度 は 急 激 に低 下
す る 。 シ メ チ ジ ン 併 用 時 に お い て,GFLXの
み ら れ な か っ た こ とか ら,胃
般 にpHが
含
内pHの
吸収低 下は
上 昇 に よる溶 解 性 低
in urine and cumulative urinary recovery of gatifloxacin following oral administration of 200 mg of
gatifloxacin alone, 200mg of gatifloxacin with 1 g of aluminum hydroxide, and 200mg of gatifloxacin 1 h after 200
mg of cimetidine in humans.
Each point represents the mean and SD (n=6) .
日本 化 学 療 法 学 会 雑 誌
222
下 が 本 薬 剤 の吸 収 低 下 を惹 起 す る もの で は な い と考 え ら
8)
れた。
Shiba
of
唾 液 中GFLX濃
果 は,既
度 につ い て は,GFLX単
に報 告 され て い る第I相
概 ね 一 致 し た 。 ま た,そ
Al(OH)3の
独 服 薬 時 の結
柴
孝 也,
10)
れら
田
甚
Shimada
臨床 使 用 にあ た り,ア ル ミニ ウ ム を含
メチ ジ
M,
Yasue
In
vitro
and
of
AM-1155,
in
36:
2)
in
G,
Reduced
enteral
the
5)
柴
et
by
T
al:
256,
et
J
17)
Clin
Chemother
E,
gastric
Clin
D,
on
Ther
et
柴
J,
et
al:
and
Effects
ranitidine
in
Chemother
humans.
36:
田 正 樹,
柴
基 礎 的
41
2270•`
中 澤
他:
的 検 討 。
315∼323,
靖,
1993
進 藤 奈 邦 子,
関 す る 基 礎 的,
吉
孝 也,
・ 臨 床
(S-5):
(S-5):
孝 也,
田 正 樹,
他:
臨 床 的検 討 。 日化
206∼215,
1995
前
澤 浩 美,
他:
体 内 動 態 に 及 ぼ す 制 酸 剤 ・消 化 性
吉 田 正 樹,
263∼278,
草 嶋 久 生,
(S-2):
220∼225,
酒井
元,
他:
石 田 了 三,
NM441に
(S-
他: 新 キ ノ ロ ン
高 速 液 体 ク ロ マ トグ ラ
20)
al:
M,
PAG-CP使
Yamamoto
M,
of aluminum,
1505-1510,
Timmers
K, Sternglanz
divalent
cation
nalidixic
and oxolinic
9:
21)
26:
145-155,
Okazaki
on
the
(S-
1999
ス メ デ ィ カ(編):
calcium ions with nalidixic
Bull
252•`
紀,
1996
草川
104∼111,
Nakano
enoxacin
52:
quinolone
Chemother
sulfate,
吉
孝 也,
19)
A
Agents
B,
Effect
1992
(株)ア
1989
Ryerson
al:
the
DR-3355
Agents
浩 美,
18)
absorption
acidity
Pharmacol
Shimada
of
坂 本 光 男,
2):
(Suppl.
Sedman
Antimicrob
615-617,
Nix
J,
enoxacin
ranitidine.
33:
of
J
et
Agents
ferrous
Interactions
Schentag
T,
フ ィー に よ る 体 液 内 濃 度 測 定 法 。 日化 療 会 誌47
with
26
・臨 床 的 研 究 。
of
系 抗 菌 薬gatifloxacinの
interactions
of
0,
absorption
前 澤
1):
ciprofloxacin
Eur
他:
関 す る 基 礎 的 ・臨 床 的 検 討 。 日 化 療 会 誌44
al:
1994
Jr,
or
M
1992
of
D,
1985
Inhibition
Lebsack
absorption.
1995
antacids.
Drug
H
antacids
Effect
16)
P
也,
1995
Agents
Glatzel
of
73∼79,
Sakai
antacids,
柴
孝
1992
Pazufloxacinの
金 属 カチ オ ン含 有 製 剤 に よる 吸 収 阻 害 。
Chemother
7)
15)
al:
1990
孝 也:
Grasela
J,
K,
Antimicrob
7-29,
et
健常 人に
234∼243,1991
Oguma
潰 瘍 剤 の 影 響 。 日化 療 会 誌43
Antimicrob
345,
J
K,
6-fluoro-8-methoxy
absorption
R:
治 療76:
6)
Borner
4:
quinolones.
D):
Kosuge
2635•`640,
presence
Janknegt
Chemother
柴
absorption
Balofloxacinに
pharmacokinetics
new
39:
Microbiol
4)
T,
humans.
Hoffken
in
14)
篤,
Antimicrob
療 会 誌43
multiple-dose
a
on
Chemotherapy
activities
Agents
K,
Temafloxacinの
al:
6-fluoro-8-methoxy
Uematsu
AM-1155,
Chemother
et
1992
M,
quinolone,
H,
antibacterial
Antimicrob
Single-and
3)
Fukuda
new
2108•`2117,
Nakashima
of
vivo
a
quinolone.
T,
他:
344∼349,
39(S-4):
K,
on
13)
藤
1219-1224,
2274,
Hosaka
in
1988
嶋 田 甚 五 郎,
斎
Shiba
Antimicrob
献
the
quinolones
関 す る 基 礎 的
antacid
Shiba
of
ン との 併 用 使 用 は可 能 と考 え られ る 。
1)
郎,
J,
36:
12)
文
五
lomefloxacin.
観点 か ら有
む 制 酸 剤 と の併 用 は 避 け る こ とが 望 ま しい が,シ
嶋
of
能 で あ る こ とを 示 す もの で あ っ た。 唾 液 は容 易 に採 取 で
きる生 体 試料 で あ り,そ の濃 度 測 定 はTDMの
new
38(S-2):
Chemotherapy
11)
度 の 低 下 が 唾 液 中 濃 度 に よ り概 ね 予 測 可
用 と考 え ら れ る 。
Effect
on
胃腸 管 吸 収 に 及 ぼ す制 酸 剤 の
Sparfloxacinに
及 び シ メチ ジ ン の併 用 に よ りT1/2が 延 長 した こ とは 血 清
用薬 に よ る
al:
1990
の 結 果 は血 清 中濃 度 の 変 化 に よ く対 応 して い た 。 しか し,
の原 因 は 明 らか で は な い 。 今 回 の 結 果 は,併
et
antacid,
717-722,
篤,
影 響 。 Chemotherapy
中濃 度 に お け る変 化 に は対 応 して い な か っ た が,こ
T,
an
3:
斎藤
変 化 は な か っ た。 こ れ ら
シ メチ ジ ン併 用 に よ りAUC 0∼∞
が 増 大 した こ と,Al(OH)3
Miyahara
of
お け るFleroxacinの
シ メチ ジ ンの併 用 で はCmaxに
以 上,GFLXの
A,
hydroxide,
少 した が,
併 用 に よ りそ れ ぞ れ73,41%減
血 清 中GFLX濃
Saito
humans.-–ò•¨“®‘ÔVtke
9)
びAUCは,
K,
aluminum
pharmacokinetics
臨床 試 験 で の結 果2}に
のCmax及
SEP.1999
用説 明書
Arita
T:
magnesium,
and
acid. Chem Pharm
1978
R:
Ionization
dissociation
and
constants
acids. Bioinorg
of
Chem
1978
0, Kurata
mechanism
T, Tachizawa
of
H:
Studies
pharmacokinetic
VOL.47S-2
Gatifloxacinと
interaction
with
22)
of
new
1988
Okabayashi
Y,
on
M,
with
Y,
of
metals.
Mechanistic
et
2178,
al:
24)
pyridone
Chem
T,
C,
of
et
aluminum
hydroxide
of
Second
3-25-8
of
subjects
200
mg
of
concentrations
The
were
14.4
to
by
serum
GFLX
In
antacid
ingested
by
half,
conclusion,
containing
他: H2受 容 体 拮
胃酸 分 泌抑 制作 用 。 基礎 分 泌 抑
urinary
hand,
no
reduction
prior
to
GFLX.
These
but
that
cimetidine
in
clinical
use
in
peak
588∼
six
with
later.
on
co-administered
the
male
1
g
The
of
from
1.71
to
h
Al
volunteers.
Al
serum
(OH)3,
and
and
salivary
to
curve
0.75 ƒÊg/mL,
and
the
0.36 ƒÊg/mL,
thus
48
on
pharmacokinetically.
decreased
(OH)3
GFLX
and
from
under
from
72.5
found
the
of
cimetidine,
%
when
reduced
pharmacokinetics
with
of
the
6.55
corresponded
from
was
area
and
closely
parameters
that
cimetidine
concentration-time
1.35
over
and
healthy
GFLX
profile
GFLX
Japan
concentration
from
effect
be
of
(OH)3
indicate
no
can
107:
humans
(OH)3]
analyzed
pharmacokinetic
results
[Al
serum
salivary
of
these
had
GFLX
Al
salivary
excretion
of
the
decreased,
change
gel
hour
were
under
of
The
8461,
in
mg
one
GFLX
area
also
healthy
105-
quinolone,
200
GFLX
administration
This
aluminum.
裕,
Medicine
Tokyo
new
of
of
respectively.
Furthermore,
other
松尾
Medicine,
hydroxide
a
mg
the
curve
ku,
alone,
excretion
concurrent
of
Minato-
GFLX
200
and
respectively.
profile.
the
School
.
2173∼
cimetidine
in
Internal
aluminum
of
by
urinary
concentration-time
3.88 ƒÊg•Eh/mL,
was
the
大 江 慶 治,
and
of
(GFLX),
mg
concentration
7.79 ƒÊ•Eh/mL
salivary
On
the
serum
reduced
dried
followed
and
peak
of
200
cimetidine
shinbashi,
gatifloxacin
ingested
37:
Shiba
University
Nishi-
effects
pharmacokinetics
Fasting
Chemother
1978
gatifloxacin
Department
Jikei
the
hydroxide
1993
592,
Kohya
the
aluminum
Agents
抗 剤cimetidineの
al:
pharmacokinetics
investigated
of levofloxacin
by
三 好 秋 馬,
Pharm
of inhibition
制作 用 につ い て の検 討 。 医 学 の あ ゆみ
Fujisawa
The
We
study
absorption
1992
Kurata
the
Terui
interaction
Effects
on
antacid,
薬 物 動 態3:
rats.
F,
692•`696,
Tanaka
an
223
Antimicrob
acids
40:
in
Hayashi
the
carboxylic
Bull
hydroxide,
quinolones
387∼394,
Studies
23)
aluminum
水 酸 化 ア ル ミ ニ ウ ム ・シ メ チ ジ ン
to
to
to
the
42.3
%.
cimetidine
absorption
of
GFLX.
but
not
with
an