レーザー照射によるセメ ン ト系材料の着色ガラス層の形成

第22巻第11号
レ ー ザ ー 研究
(917)
レーザーオリジナル
レーザー照射によるセメント系材料の着色ガラス層の形成
市原英樹*・永井香織*・ウィグナラージャシバクマラン*
(1994年9月26日 受理)
Colored Glass LayerFomation on the Suface ofA Cement Composite
HidekiICHIHARA*,KaoriNAGAI*and Siv&kumaranWIGNARAJAH*
(Received September26,1994)
This paper describes methods of coloring glass layers formed on the surface of a cement
composite by laser irradiation,We found that blue and green coloured glass Iayers are
obtained easily by t薮e addition of Co−base and Cr−base pigments to mortar whereas yellow and
pink are difficult to obtain.This is because glass formation temperatures are higher than ye1−
low and pink color formation temperatures and,in addition,the constltuents of cement and
aggregate tend to obstruct coloring.To obtain luster colours,we found necessary to add a
transparent glaze to the mortar composition。The addition of glaze lowers glass formation
temperatures and reduces the relative volume of cement and aggregate.The relative ease of
obtaining blue and green colors compared to yellow and pink is explained by considering出e
mechanisms ofcolor formation.
Key Words:Cement composite,Glass layer,Colouring,Laser treatment,Colored glass layer
ガラス化処理後の諸物性について報告した46)。
1.はじめに
ガラス化処理後の無機材料は,独特な表面性状
筆者らは,建築材料の表面処理へのレーザー
を保有するため,内装材としての使用に適して
エネルギーの応用についての検討を行い,レー
いるが,意匠性の向上を考えると,表面ガラス
ザーの特徴である瞬間加熱性およびエネルギー
層の着色が重要な要素である。
制御性を活かすことにより,天然石材の粗面化
処理1),木材表面の炭化処理2)および無機材料
ガラスの着色は,タイルや食器製造の分野で
表面の溶融・ガラス化3)が可能であることを示
熱冷却は炉内でゆっくり行われ,基材全体の温
した。その中でも,特に無機材料表面の溶融・
度がほぼ均一である。一方,レーザーによる表
ガラス化を詳細に検討し,天然石材およびセメ
面溶融の場合は,加熱冷却が瞬時に起こり,基
ント硬化体の安定したガラス層を得るための基
材の厚さ方向に急激な温度勾配が存在する。こ
材調合および乾燥条件,レーザー照射条件等と,
のような急熱急冷プロセスによるガラスの着色
確立された技術である。しかし,この場合の加
*大成建設(株)技術研究所(〒245横浜市戸塚区名瀬町344−1)
*Tec㎞ologgyResearchCenter,TaiseiCorporation(34牛1,Nase−cho,Totsuka.ku,Yokohama245,Japan)
一49一
レーザー照射によるセメント系材料の着色ガラス層の形成
(918)
平成6年11月
本研究では,レーザー照射により形成される
青色顔料は,AlおよびCoを主成分としてい
る。Coによる青色の着色は一般的に知られて
セメント硬化体表面のガラス層の着色方法を検
おり,その着色形態は,Co2+が4個の酸素イオ
討し,着色に必要な温度条件および基材調合を
ンを配置してCoO4群を形成することによる7)。
見いだすと共に,炉内加熱による着色との相違
緑色顔料は,S孟およびCrを主成分としている。
を明らかにした。なお,着色の検討は,青色,
Crによる着色は,Cr3+とCr6+の2種類が考え
緑色,黄色およびピンク色の4色に限定して行っ
られる。どちらの形を取るかは,溶融時の酸化
た。
還元条件によって変化する。Crによって緑色
を呈するためにはCr3+の形を取らなければな
らない。還元雰囲気で溶融すると,Cr3+の含
についての研究は従来行われていない。
2.実験方法
2.1材料
着色実験に使用した基材は,白色ポルトラン
有量が多くなり緑色を呈するが,酸化度が増す
ドセメント(以後白セメントと記す)と新島産
黄色顔料は,ZrおよびPrを主成分としてい
とCr6+が多くなり,黄色味を帯びてくる7)。
ソーダ流紋岩(抗火石)を主な構成材料とするセ
る.Zr−Pr系の顔料は,乳白黄色を着色させる。
メント硬化体であり,その調合比は,白セメン
Zrは白剤として広く使われており,Prは黄色
トと抗火石=1:2(重量比)である。一般的な白
の着色が可能である。この顔料での着色方法は,
セメントおよび抗火石の化学成分をTab夏e Iに
溶融したガラス中に顔料が一様に分散して光の
示す。SiO2成分を多く含んだ抗火石を調合し
散乱を起こし,乳白黄色を着色する。白剤を添
た目的は,ガラス化量を多くするためである。
加した着色は,処理温度の影響が大きい。
着色用添加材として,透明粕薬および各色の
ピンク色の顔料は,ケイ石,石灰石,酸化錫,
顔料を用いた。紬薬とは,ガラスと同じく非晶
ホウ酸などの適量配合物に重クロム酸化カリや
質であり,一定の化学組成をもたず固溶体とみ
酸化クロムを加えて焼成して作成したSn−Cr系
なす場合がある。セメント硬化体の低融点化を
である。この顔料は,非常に細かい状態の酸化
目的として使用した紬薬は,Na20やB203を多
クロムを色留剤として酸化錫に吸着沈殿させて
く含み,600℃以上で透明で光沢のあるガラス
を形成するものである。Table Hにその化学成
ピンク色顔料を得る8)。
分を示す。
2.2 レーザー装置および照射方法
顔料は,磁器タイルの着色に使用している青
レーザー装置は,(株)東芝製1.2kW炭酸ガス
色,緑色,黄色およびピンク色の4種類を用いた。
レーザー加工装置を用いた。発振器により作ら
Table I Composition o£white portland cement
and Soda rhyolite(KOKASEKI)
れたレーザー光を,焦点距離125mmの集光レ
ンズで一旦集光させ,この集光したレーザー光
の焦点をはずすことにより,材料表面に投入す
(wt%)
Igloss SiO2Al203CaO Fe203MgO SO3
VVhite portland
2.1 23.3 4。7 66.1 0.2 0.6 2.4
cement
る熱エネルギー密度を変化させて実験を行っ
た。レーザー照射条件は,基材照射時の表面温
度を測定することにより決定した。
Soda rhyo蚊te 15 83。0 14.0 15
2.3 実験内容
Fig.1に実験内容のフロー図を示す。セメン
Table H Composition of transparent glaze
wt%
Ig loss SiO2Al203CaO Na20K20PbO B203
0.5 32.6 3.2 12.1 20,42 1.510.175 18.5
ト硬化体における着色ガラスの形成を目的に,
セメント硬化体の着色傾向の確認を,青色,緑
色,黄色およびピンク色の4色について行い,
一50一
第22巻第11号
研究
レ ー ザ
Conf1rmation of colo red
Table 田Laser treatment conditions for various
9τass layer fo㎜atlon on
surface temperatures
cementcomposite surface
Colohn
NOCOlorin.
Laser treatment conditions
Investigationofthe
Investigation of the factors
Temperatures
cause ofco!oring
thatpreventcob肖ng
(℃)
chemica重mechanlsm of
colorlbrmation)
(919)
Temperalure stability of color with
600
700
800
900
1000
1100
1200
1300
1400
respecUoglassformationtempera豊ロrc
Co】orformaしlo百trelldwithrespecUo
single constituents oftlle cementcomposite
Countermeasures
[nves重igat五〇n of additves重o faci1髭ate
color釦omla江lon
Deleminaこio騨of重rcatmenttemperaこures
suited R》r co盟or fo㎝ation
Fig。1Experimental皿ow chart。
Power Treatment speed Dfs
(W) (mm/min.) (mm)
200
200
400
600
600
700
1000
1000
1200
2000
1000
2000
2000
2000
2000
2000
1000
1000
100
100
100
150
100
100
150
150
150
着色可能な顔料と着色困難な顔料を把握した。
着色条件において重要な要因である。着色実験
また,その着色要因および着色に対する阻害要
に用いるレーザー照射条件を設定するために,
因を,レーザー照射時の表面温度別に把握した。
レーザー出力,基材移動速度,焦、煎基材間距
着色可能な顔料の場合は,着色機構を検討した。
離(以後Dfsと記す)を変化させてセメント硬化
着色できない顔料の場合は,着色の阻害要因を
体基材に照射し,照射時の表面温度を(株)チ
抽出し,着色を可能とする方法を選定し,検討
ノー製携帯型デジタル放射温度計(IR−AH)を用
を行った。
いて測定した。レーザー照射時の基材表面温度
は,0.5秒間隔で3回測定し,平均値を求めた。
3.レーザー照射条件の決定
Fig.2にレーザー照射条件と表面温度の関係を
照射時の表面温度は,ガラス層の形成および
示す。Fig.2より,600℃∼1400℃までの100℃
ごとの処理温度に適合するレーザー照射条件を
選定しTable皿に示す。
4.実験結果
2000
4.1 各顔料におけるガラス層の着色傾向
1800
セメント硬化体に,青色,緑色,黄色および
ハ
5一)1600
ピンク色の顔料を5%添加することにより,着
)1
曾1400
{
.…i
讐
01200
81000
色ガラス層の形成が可能かを600℃∼1400℃の
範囲で検討した。Fig。3に600℃,700℃および
1400℃における青色および緑色の着色状況を示
’一一=
〆頭’
…
α
簿
8
§800
お
600
昏
B}一=’^_『i、一.}.1
!、,
グF 匙
…
i l
京て’
置
l l
し,Fig.4に黄色およびピンク色の着色状況を
… ト・へ一隔㍗一・}
や
示す。Fig.5には,各色の顔料を添加したセメ
71””’ド
ント硬化体の着色可能な温度領域とガラス化温
鴇監鴫}書’”、『、
度領域を示す。
400
200 400 600 800 10001200三400
Laserpower(W)
Fig.2Relation between laser irradiation conditions
and surface temperature。
Fig.3およびFig.5より,青色および緑色の場
合には,容易に着色ガラスが得られ,700℃か
らガラス化すると同時に着色も可能となること
がわかった。
一51一
(920)
レーザー照射によるセメント系材料の着色ガラス層の形成
平成6年1i月
10mm
繍oo℃
Fig.3Color formation on cement composite containing yeIlow and pink pigments.
観鮎
Ye燵ow
k 外
悔
が
脅
㎏
ぐ
5
拠
譜
Pink
愁
臥
600℃
700℃
1400℃
Fig。4Color formation on cement composite containing blue and green pigments.
一方,Fig.4およびFig.5より,黄色とピンク
ロColor fomation.Temperature range
色においては,600℃∼700℃の低温側において
國Glass fomation Temperatures rξmge
着色が可能な温度領域が存在するのに対し,ガ
B璽ue
ラス化は700℃∼1400℃の高温側で生じ,一致
する処理温度が700℃において存在する。しか
Green
Yellow
し,700℃のガラス層は,ガラス化量が少なく,
白色などが混在し色が安定しないことがわかっ
Pink
たQ
600 700 800 900 10001100 1200 13001400
Temperatures(℃)
Fig。5Glass formation and color formation temper−
4.2 着色可能な顔料の種類とその理由
ature ranges for different pigments,
着色可能な顔料の種類は,青色および緑色の
一52一
第22巻 第11号
研究
ザ
レ
(921)
顔料であった。青色の場合は,Coイオンが,
また緑色の場合はCrイオンがガラスの形成に
る。このことから,Coはガラス構造の一部と
なって青色を呈し,Coイオンが網目形成イオ
深く関与していることが考えられる。
ンの役目を果たしているといえる。
Coによる青色の着色形態は,Coがガラス形
とにより着色も可能となる。これは,Co2+が
Crによる緑色の着色の場合は,SiO4四面体
の網目構造の空孔にあるNa+やCa2+などの網
目修飾イオンとCr3+が置換され,そこが着色
Si4+と置換して網目形成イオンの役割を果た
中心となる7)。このことは,Fig.8に示すx線回
し,Sio4四面体とCoO4群が相互に結びつくた
めである7〉。Fig,6は,顔料のみ,Fig.7は着色
折図から緑色を呈したガラス層は非晶質であ
り,Co系顔料の着色形態と同様,Crイオンが
ガラスのX線回折図を示す。顔料は,結晶質で
あるが,着色ガラスは非晶質であることがわか
かった。
成の骨格になっているために,ガラス化するこ
ガラス構造の一部として存在していることがわ
4,3 着色困難な色の要因とその理由
20K
4,3。1 着色の阻害要因とその対策
Fig.4およびFig.5より,セメント硬化体に黄
色およびピンク色顔料を添加したガラス層に
は,目的の色を着色することは700℃で可能で
あるが,着色ガラス層が安定しないことを示し
た。これは,セメント硬化体を構成する材料の
着色傾向が大きく影響していると考える。そこ
亀DX
聖0、0 ノ 驚 50、Q
2が
で,白セメントのみに顔料を重量比で5%添加
Fig。6XRD pattem ofblue pigment.
し,レーザー照射を行い,着色状況の確認を行っ
た.その結果をFig.9に示す。
1㌧八痢
F圭g.9よりセメントのみの場合は,黄色およ
びピンク色共に600℃∼900℃までは,照射部は
溶融しなかった。1000℃∼1400℃になると共に
溶融部分が存在するようになるが,黄色の場合
は黄褐色を呈し,ピンク色の場合は緑色を呈し
た。このことから,白セメントのみでは,溶融
10.0 20.0 50、0 4、 50、0
した部分に黄色およびピンク色を着色させるこ
2θ
とは困難であることがわかった。Fig.4および
F玉g,7XRD pattem of blue glass layeL
Fig,5のセメント硬化体の場合は,温度が高く
なるとガラス化量は増えるが青緑色が着色され
淑 施 ・1
㌦,/
る。この青緑色は,セメント硬化体の組成が影
、潮帽
IDO
響していると考えられる。ガラス層の着色およ
びガラス化の安定性を目的として,粕薬の混入
を検討した。
闘鯛
,L
4,3。2 セメント硬化体の低融点化に伴う黄
一 一 ....『i
田.0 2
色およびピンク色の着色の検討
2β
Table∬の成分を有する粕薬における,黄色
Fig.8XRD pattem of green glass layer.
一53一
( 922 )
- f-
, tec
z 2(
h .
.+
=4 )
L
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1 Omm
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1 oooic
600 c
i 400 c
Fig. 9 Color formation on white portland cement containing yellow and pink pigments.
1 Omm
Furnace heated
Laser treatment
Fig. 10 Color formation of glaze containing yellow pigment.
1 Omm
Furnace heated
Laser treatment
700ic
Fig. 11 Color formation of glaze containing pink pigment.
- 54
i 6 l 11 I
第22巻第11号
レ
ザ
研究
(923)
およびピンク色の顔料の着色温度範囲を把握す
るために,顔料を5%添加した粕薬の600℃∼
1400℃での,炉内焼成とレーザー照射による着
色の検討を行った。Fig.10およびFig.11に黄色
およびピンク色の顔料を5%添加した紬薬にお
ける炉内焼成とレーザー照射の700℃および
毒
噸鞍 轡 メ磁
800℃までの着色状況を示す。
Fig.10およびFig.11より,黄色およびピンク
ぜ 繍b』㍑穫♂
色は共に,炉内焼成では600℃∼700℃の温度範
囲で着色が可能であり,800℃∼1400℃では,
黄色は透明なガラスになり,ピンク色は多少緑
色になった。一方レーザー照射においては,
600℃∼1400℃の全ての条件において着色が可
能であった。
この結果より,炉内焼成とレーザー照射によ
Fig.14Cross section of laser treated glaze contain−
ing pink pigment.
最表面が例えば1400℃の高温になり,透明に
なってもその下のいずれかの部分に炉内焼成で
確認された着色温度領域が存在するためと考え
る着色状況は,著しく異なることがわかった。
られる。
これは,Fig.12に模式的に示すように,照射時
Fig,13に,軸薬に顔料を添加させ,レーザー
に基材の深さ方向に温度勾配が生じ,ガラスの
照射によって得られたガラス層の,黄色におけ
る断面写真を示し,Fig.14にピンク色の場合の
断面を示す。
ColourleSS glaSS layer
Fig.13より,黄色の場合は,最表面付近に透
coloured glass layer
1400℃
明なガラスが形成され,その下部に黄色の着色
’曝講。灘..
ガラスが形成されている。Fig.14より,ピンク
色の場合は,ガラス層の最表面付近には透明な
・Base Mate揺al
600℃』
緑色のガラスが形成され,その下部にピンク色
の着色ガラスが形成されている。このことは,
Fig.12Schematic diagram illustrating the effect of
レーザー照射の着色状況がFig.12の模式図通り
temperature gradient on color formation by
であることを示している。Fig.14の最表層の緑
laser irradiation treatnlent.
色ガラスは,ピンク色の顔料を構成するSn−Cr
系結合物のCrがCr3+となり,網目修飾イオン
としての役割を果たしている。処理温度が高く
廠鍛綱r蝋⑳ss
槻穣
撒響礪
なるとガラス化量が増加し,緑色の濃度が高く
見えるため,この緑色着色が阻害要因となる可
能性がある。しかし,粕薬を混入することは,
糊
》II l 葦,猛ss
黄色とピンク色の着色ガラスの形成において,
有効であると考えられ,次にセメント硬化体に
この粕薬を混入させた場合の着色傾向を確認し
1騨翫織 ・
.鞠.塵£』窒
た。
Fig,15およびFig.16に黄色,ピンク色の顔料
Fig.13 Cross section of laser treated glaze contain−
ing yellow pigment。
を5%添加したセメント硬化体に粕薬の混入量
を25%∼200%に変化させ,600℃一4400℃の処
一55一
レーザー照射によるセメント系材料の着色ガラス層の形成
(924)
理温度でレーザー照射を行った場合,着色可能
平成6年11月
とがわかった。
な温度範囲を示す。
6.おわりに
粕薬混入量を増加させることによる,黄色お
よびピンク色の着色ガラスの形成における着色
レーザー照射によるセメント硬化体の着色ガ
可能な温度の範囲が拡大する。Fig.15および
ラス形成の検討を行った。この結果,明らかに
Fig。16より,黄色およびピンク色における着色
なった知見を以下に示す。
温度範囲は,粕薬混入量が25%の場合600℃お
よび700℃であるが,200%では,黄色の場合
1)青色および緑色のような顔料では,Coや
Crのイオンがガラス層の構造の一部と
なって着色する形態のため,セメント硬
化体に容易に着色ガラスを形成すること
600℃∼1400℃となり,ピンク色の場合は,600℃
∼900℃となった。ピンク色の場合は,紬薬混
入量が200%でも1000℃以上になると青緑色が
最表層のガラス層し,ピンク色に着色した層を
覆い隠してしまう。
以上の結果より,黄色およびピンク色の着色
ガラス層の形成は,セメント硬化体に粕薬を混
入し,低融点化した場合において可能となるこ
が可能である。
2)黄色およびピンク色の顔料においては,
着色温度とセメント硬化体のガラス化温
度が一致する範囲が狭い.対策として,
低融点の紬薬をセメント硬化体に混入す
ることにより,ガラス化温度を低下させ,
着色温度と一致させることを考案し,実
験によって着色ガラスの形成が可能であ
ぷ
ることを確認した。
8
賢100
3)炉内焼成に比較し,レーザー照射では着
色温度範囲が広い場合があることが判明
した。これは,レーザー照射では,基材
表面からの深さ方向に温度勾配が生じ,
表面が着色温度より高い温度になり変色
しても,ガラス層の一辺まで,着色温度
に適合する領域が存在し,目的の色に着
色される。
)200
ロ
ち
ピ
8 50
も
℃
<
25
rn ρ7nn
600 700
800 900 iOOO 1塁00 1200 1300 1400
Temperatures(℃)
Fig。15Range of yellow colored glass layer forma−
tion temperature for varying amouhts of
glaze added to hardened cement,
謝辞
本研究にあたり,東海大学理学部物理学科の
藤岡知夫教授ならびに大阪大学溶接工学研究所
琶200
の松縄 朗教授に多大なご指導を頂いた。記し
てここに謝辞を表します。
§
箭100
も
参考文献
ピ
0 50
箸
< 25
1)K Tanaka,W。Sivakumaranand K。Sugimoto:
600 700 800 900 1000 重100 1200 1300 1400
MeetingofIntemational Council for Bui蓋dlng
temperature for varying amounts of glaze
Research Studies and Documentation,Tokyo,
October1994,PP.592−598.
2)K.Nagai,T、Iwamoto and W。Sivakumaran:
MeetingofIntemati6nal CouncilforBuilding
added to hardened cement.
Research Studies and Documentation,Tokyo,
Temperatures(℃)
Fig.16 Range of pink colored glass layer{ormation
一56一
第22巻 第11号
レーザー研究
(925)
October1994PP、1071−1078.
3)ウィグナラージャシバクマラン,杉本賢司,
安伸二,市原英樹,永井香織,藤岡知夫:大成
建設技術研究所所報,24(1991)401.
4)K Sugimoto,S.Wignarajah,K Nagase,S。
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ジャシバクマラン,市原英樹,永井香織:日
『Yasu,K Kimura,M。Kasuya and S,Kureha:
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本建築学会年次大会梗概集(A)1991,pp.463.
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永井香織1日本建築学会年次大会梗概集(A)
Applied Lasers and Electro−Optics(ICALEO)
8)宮川愛太郎:陶磁器紬薬(共立,東京,1991)
(1990)302。
105.
一57一