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河−28
都市域での出水時における危機管理について(第3報)
-豊平川を例として-
石狩川開発建設部
維持管理課
札幌市消防局防災部
防災課
○高村
章
巖倉
啓子
的場
忠敏
1. は じ め に
都 市 部 を 貫 流 す る 河 川 が ひ と た び 氾 濫 し た 場 合 、そ の 流 域 に 計 り 知 れ な い 損 失 を 与
え る ば か り で な く 社 会 全 体 に 大 き な 打 撃 を 与 え る 。こ の 様 な 壊 滅 的 な 被 害 を 回 避 す る
ために、流域内の防災関係機関等は洪水危機管理体制を整備することが重要である。
今回も豊平川を例にとり、平成12年12月に「豊平川洪水危機管理検討委員会」
(表-1)から提言が出され、平成15年3月に「札幌市(豊平川・新川)洪水危機
管理協議会」が設立されて洪水危機管理計画策定に向けて作業を進めると同時に、
「 札 幌 市 洪 水 ハ ザ ー ド マ ッ プ 検 討 会 議 」で 洪 水 ハ ザ ー ド マ ッ プ の 作 成 を 進 め る 等 、第
2 報 以 降 の 経 過 に 加 え 、こ れ ら の 会 議 で 活 用 さ れ て い る 河 川 の 氾 濫 ・ 地 下 空 間 浸 水 シ
ミュレーションの概要について報告する。
2. 洪 水 危 機 管 理 に 関 す る 経 過
2-1. 豊 平 川 洪 水 危 機 管 理 検 討 委 員 会 の 提 言
「 豊 平 川 洪 水 危 機 管 理 検 討 委 員 会 」を 、豊 平 川 が 貫 流 す る 札 幌 市 を 対 象 に 北 海 道 開
発局が平成10年1月に設立した。第2報1)2)3)以降には、第2回委員会を経て、
平成12年12月の第3回委員会において提言がまとめられた。
名称
設置期間
豊平川洪水危機 平 成 10 年 1 月
管理検討委員会
~ 12 年 12 月
(提 言 12 年 12 月 )
新川洪水氾濫
危機管理検討
委員会
札幌市(豊平
川・新 川 )洪 水
危機管理協議
会
札幌市洪水ハ
ザードマップ
検討会議
平 成 12 年 12 月
~ 14 年 3 月
構成機関
学 識 経 験 者( 委 員 長 北 海 道 大 学 大 学 院 藤 田 睦 博
教 授 )、 陸 上 自 衛 隊 、 札 幌 管 区 気 象 台 、 北 海 道 、 北
海道警察、札幌市、北海道電力㈱、東日本電信電話
㈱、北海道ガス㈱、日本放送協会、北海道開発局
学識経験者、北海道、札幌市
(提 言 14 年 10 月 )
平 成 15 年 3 月
~
平 成 15 年 3 月
~ 16 年 3 月
(予定)
北海道開発局、札幌管区気象台、陸上自衛隊、北海
道 、北 海 道 警 察 、札 幌 市 、東 日 本 電 信 電 話 ㈱ 、㈱ NTT
ドコモ北海道、日本放送協会、北海道電力㈱、北海
道ガス㈱、㈱札幌都市開発公社、札幌駅地下街開発
㈱ 、 (財 )河 川 情 報 セ ン タ ー
学 識 経 験 者 、 住 民 代 表 ( 連 合 町 内 会 )、 社 会 福 祉 協
議会、地下施設管理者、北海道開発局、北海道、札
幌市、札幌管区気象台
表-1 豊平川や札幌市の洪水危機管理に関する委員会・会議等の構成機関
Akira Takamura, Keiko Iwakura and Tadatoshi Matoba
豊 平 川 洪 水 危 機 管 理 検 討 委 員 会 の 提 言 で は 、迅 速 ・ 正 確 な 情 報 収 集 及 び 伝 達 、危 機
に 即 応 で き る 防 災 体 制 、安 全 ・ 確 実 な 避 難 ・ 誘 導 、地 下 空 間 に お け る 浸 水 対 策 な ど に
つ い て の 対 応 の 必 要 性 が 挙 げ ら れ 、こ れ ら の 対 策 を 具 体 化 す る た め の 機 構 と し て 、関
係機関及び団体が参加する協議会を設置
し 、有 効 な 洪 水 危 機 管 理 体 制 を 充 実 さ せ る
こ と が 望 ま れ て い る ( 図 - 1 )。
○ 豊平川が氾濫した場合の特徴
(1) 短時間で洪水流が押し寄せる
(2) 氾濫域に多数の地下空間を有する
2-2 . 札 幌 市 ( 豊 平 川 ・ 新 川 ) 洪 水 危 機 管
理協議会までの経緯
①平成13年の水防法の一部を改正す
る法律
平 成 1 1 年 6 月 の 福 岡 水 害 、平 成 1 2 年
9 月 の 東 海 豪 雨 な ど の 教 訓 か ら 、平 成 1 2
○ 考えられる課題と対応
(1) 迅速・正確な情報収集及び伝達
(2) 危機に即応できる防災体制
(3) 安全,確実な避難・誘導
(4) 地下空間における浸水対策
図-1 豊平川洪水危機管理検討委員会提言
年 1 2 月 河 川 審 議 会 は「 今 後 の 水 災 防 止 の
の骨子
在 り 方 に つ い て 」答 申 が 出 さ れ 、こ れ を 受 け て 平 成 1 3 年 6 月 に 水 防 法 の 一 部 を 改 正
する法律4)5)が公布された。この改正により拡充・創設される制度として、洪水予
報 河 川 の 拡 充 ( 都 道 府 県 知 事 が 行 う 洪 水 予 報 )、 浸 水 想 定 区 域 図 の 指 定 等 、 円 滑 か つ
迅 速 な 避 難 の 確 保 を 図 る た め の 措 置 が あ る 。北 海 道 開 発 局 で は 、こ れ を 受 け て 平 成 1
4 年 7 月 に 、 豊 平 川 に お い て も 浸 水 想 定 区 域 を 指 定 ・ 公 表 し た 6 )。 こ れ に よ り 、 水 災
対 策 と し て 、洪 水 ハ ザ ー ド マ ッ プ 、中 小 河 川 に お け る 洪 水 予 報 の 実 施 、地 下 空 間 に お
ける浸水対策などが推進されると期待されている。
図-2 「豊平川洪水氾濫シミュレーション(左)」と「豊平川浸水想定区域図(右)
」の氾濫域
②平成14年の新川洪水氾濫危機管理検討委員会の提言
平 成 1 2 年 か ら 、北 海 道 札 幌 土 木 現 業 所 で は 、「 新 川 洪 水 氾 濫 危 機 管 理 検 討 委 員 会 」
を 開 催 し 、平 成 1 4 年 1 0 月 に 提 言 が 出 さ れ た 。こ の 提 言 で は 、「 平 常 時 の 防 災 体 制 ・
意 識 啓 発 、洪 水 時 の 情 報 伝 達・避 難 計 画 、さ ら に 、地 下 空 間 対 策 等 に つ い て 」と り ま
とめられた。
③札幌市の洪水危機管理計画策定に向けて
こ れ ら の 経 緯 を 踏 ま え 、水 災 害 に 関 す る 行 政 機 関 や 防 災 担 当 者 で 構 成 す る「 札 幌 市
( 豊 平 川・新 川 )洪 水 危 機 管 理 協 議 会 」を 札 幌 市 が 平 成 1 5 年 3 月 に 設 立 し 、水 災 害
に 関 す る 危 機 管 理 を 目 的 と し て 、関 係 各 機 関 が 定 期 的 に 情 報 交 換 を 行 い 、相 互 連 携 を
図りながら具体的施策を推進していくこととした。
2-3. 札 幌 市 洪 水 ハ ザ ー ド マ ッ プ 検 討 会 議
更 に 、浸 水 想 定 区 域 の 指 定 等 を 受 け 、河 川 の 氾 濫 を 想 定 し た 適 切 な 避 難 場 所 を 設 定
す る こ と に よ り 、必 要 に 応 じ て 地 域 防 災 計 画 の 避 難 情 報 等 を 見 直 し 、そ の 内 容 に 基 づ
い て 、札 幌 市 が 洪 水 ハ ザ ー ド マ ッ プ 原 案 を 作 成 す る た め 、平 成 1 5 年 3 月 に「 札 幌 市
洪水ハザードマップ検討会議」を設立した。
3. シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 概 要 と 結 果
3-1. 洪 水 氾 濫 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
豊 平 川 洪 水 危 機 管 理 検 討 委 員 会 で は 、「 豊 平 川 洪 水 氾 濫 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 」及 び「 地
下 空 間 浸 水 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 」に 沿 っ て 議 論 を 進 め ら れ て き た 。一 方 、札 幌 市 洪 水 ハ
ザ ー ド マ ッ プ 原 案 作 成 に あ た っ て は 、「 浸 水 想 定 区 域 図 」 を 基 礎 情 報 と し て 、 地 域 防
災 計 画 上 の 避 難 場 所 な ど の 避 難 情 報 を 掲 載 し 作 成 を 進 め て い る 。そ れ ぞ れ の 洪 水 氾 濫
計 算 条 件 は 目 的 に 応 じ て 異 な っ て お り 、そ の 特 徴 に つ い て 表 - 2 に ま と め 、氾 濫 域 の
違いについては図-2に示した。
豊平川洪水氾濫シミュレーション
降雨
解析
メッシュ
氾濫域
の表示
破堤点
破堤
の進行
豊平川浸水想定区域図
3 日 間 310mm、 既 往 最 大 1 時 間 50mm
( S56.8.下 旬 型 )
50m メ ッ シ ュ
3 日 間 310mm
( S56.8.下 旬 型 )
250m メ ッ シ ュ
50m メ ッ シ ュ 、 時 系 列 情 報 有 、
内水氾濫考慮
左 岸 KP16.4
(幌平橋左岸)
等水深線図、最大浸水深で表示
瞬時に最大破堤幅
破堤の可能性のある箇所すべてで
破堤氾濫させた場合と同等の浸水
区域となる必要最小限の地点
瞬 時 に 最 大 破 堤 幅 の 1/2 と し 、そ の
1 時間で最大破堤幅
表-2 「豊平川洪水氾濫シミュレーション」と「豊平川浸水想定区域図」の特徴
①豊平川洪水氾濫シミュレーション
豊 平 川 の 左 岸 KP 16.4 を 破 堤 点 と し て 、 3 日 雨 量 310mm( 時 間 最 大 50mm 含 む ) の 場
合 を 想 定 し た 計 算 結 果 で あ る 。 左 岸 KP 16.4 と は 、 幌 平 橋 付 近 の 中 央 区 側 で 、 札 幌 市
に 存 在 す る 地 下 鉄・地 下 街 へ の 被 害 が 予 想 さ れ る 地 点 で あ り 、い わ ゆ る「 最 悪 の 場 合 」
と 言 え よ う 1 )。
ま た 、豊 平 川 の 氾 濫( 外 水 氾 濫 )に 対 し 、そ の 他 の 中 小 河 川 や 下 水 道 か ら の 氾 濫 を
内水氾濫と総称しているが、下水道からの湧出量を修正RRL法1)7)を用いて算出
し 、そ の 湧 出 量 を 外 水 氾 濫 計 算 で 用 い て い る 5 0 m メ ッ シ ュ で 氾 濫 計 算 を 行 っ て い る 。
浸 水 想 定 区 域 図 と 比 較 し た 場 合 の 特 徴 と し て 、5 0 m メ ッ シ ュ で の 時 系 列 結 果 を 示 し
ており、各関係機関の時間的な洪水危機管理の
シナリオを想定可能である。ここでは、最大浸
水 深 で 示 し た 氾 濫 計 算 結 果 を 示 す ( 図 - 2 左 )。
なお、豊平川洪水氾濫シミュレーションに関
する啓蒙活動として、豊平川洪水危機管理検討
委員会監修のビデオ「豊平川洪水氾濫シミュレ
ーション
もし札幌が洪水に見舞われたとした
ら … 」( 図 - 3 )を 、危 機 意 識 の 啓 発 に 役 立 て て
もらおうと、石狩川開発建設部で貸し出しを行
っている。
こ れ に 加 え て 、大 通 公 園 の テ レ ビ 塔 付 近 に「 豊
平川水位表示塔」を設置し、幌平橋及び南大橋
の水位をリアルタイムで表示し、普段から豊平
川の水位を身近に感じてもらえることを期待し
て い る ( 図 - 4 )。
図-3 ビデオ「豊平川洪水氾濫
②浸水想定区域図
シミュレーション」
洪 水 を 発 生 さ せ る 降 雨 を 計 画 降 雨 と し 、現 況 の 河 川( 例 え ば 河 床 掘 削 や ダ ム な ど が
完 成 し て い な い 状 態 )に お い て 計 画 降 雨 が 流 域 に 降 っ た 場 合 に つ い て 、氾 濫 す る 恐 れ
が あ る 全 て の 地 点 で 氾 濫 計 算 を 実 施 し た 場 合 と 同 等 に な る 様 な 、最 小 限 の 地 点 で 氾 濫
計 算 を 行 い 、そ の 結 果 の 最 大 浸 水 深 を 重 ね 合 わ せ た 図 と し て 、示 さ れ る も の が 浸 水 想
定 区 域 図 で あ る 。豊 平 川 に つ い て の 計 算 条 件 は 3 日 雨 量 310mm の 場 合 を 想 定 し 、洪 水
予報河川指定区域(札幌市藻岩下から石狩川
合流点まで)に限定しているため、内水につ
いて考慮をしていないが、洪水ハザードマッ
プ作成に適した等水深線図で示されているこ
と が 特 徴 で あ る ( 図 - 2 右 )。
3-2. 地 下 空 間 浸 水 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
札幌市の地下空間浸水シミュレーションは、
豊平川洪水氾濫シミュレーションの時系列メ
ッシュ浸水深を各地下空間入口の流入水深と
し、地下空間での浸水深を求めている。地下
空間モデルはデンマークのDHI社が開発し
た流域管理ソフトウエアMOUSEを用いて
おり、このソフトウエアは、ノード(点)と
図-4 豊平川水位表示塔
(大通公園テレビ塔付近)
豊水すすきの
大通
元町
栄町
10.0
新道東
15.0
東区役所前
環状通東
20.0
北十三条東
25.0
さっぽろ
地下鉄東豊線:破堤後44時間
WATER LEVEL BRANCHES - 4-1-1994 11:00:00 Allt00.prf
[m]
5.0
0.0
-5.0
-10.0
0.0
1000.0
2000.0
3000.0
4000.0
5000.0
6000.0
7000.0
8000.0
9000.0
10000.0
[m]
図-5 地下鉄東豊線の最大浸水深図(豊平川洪水氾濫シミュレーション結果より)
リンク(線)で構成される。ノードはマンホール・流出口・貯留施設などであり、リ
ン ク は 開 水 路 と 管 路 と し て 設 定 で き る の で 、こ れ ら の 混 在 し た 解 析 が 可 能 で あ る 。名
古屋市の地下空間もこれを利用してモデル化8)9)して、浸水予測を実施している。
地 下 空 間 浸 水 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 と し て 、河 川 の 氾 濫 水 が 地 表 を 流 れ て い る 東 豊 線
( 大 通 ~ 栄 町 ) を 計 算 結 果 の 例 と し て 示 す ( 図 - 5 )。
4. 考 察
4-1. 洪 水 氾 濫 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に つ い て
浸 水 想 定 区 域 は 最 大 と な る 浸 水 域 を 示 し て い る と い う 性 質 上 、浸 水 想 定 区 域 内 に 人
相関係数
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
N
O
P
Q
R
A
0.995
0.998
0.995
0.995
0.957
0.463
0.817
0.784
0.761
0.754
0.817
0.710
0.574
0.402
0.420
0.242
-0.009
設定区間Ⅰ
B
C
D
0.995 0.998 0.995
0.990 0.971
0.990
0.999
0.971 0.999
0.972 0.997 1.000
0.901 0.961 0.998
0.601 0.818 0.985
0.555 0.900 0.992
0.499 0.873 0.995
0.460 0.832 0.998
0.449 0.825 0.994
0.556 0.878 0.981
0.512 0.751 0.817
0.526 0.672 0.742
0.192 0.268 0.138
0.212 0.294 0.162
-0.020 0.036 -0.204
-0.139 -0.187 -0.444
E
0.995
0.972
0.997
1.000
0.998
0.985
0.991
0.994
0.998
0.993
0.980
0.818
0.744
0.142
0.170
-0.190
-0.426
F
0.957
0.901
0.961
0.998
0.998
0.998
0.964
0.943
0.915
0.908
0.940
0.904
0.868
0.414
0.441
0.162
-0.079
G
0.463
0.601
0.818
0.985
0.985
0.998
0.985
0.981
0.955
0.954
0.951
0.975
0.981
0.843
0.851
0.747
0.674
H
0.817
0.555
0.900
0.992
0.991
0.964
0.985
1.000
0.994
0.993
0.996
0.930
0.895
0.517
0.541
0.292
0.071
I
0.784
0.499
0.873
0.995
0.994
0.943
0.981
1.000
0.998
0.997
0.997
0.914
0.874
0.470
0.492
0.223
-0.008
設定区間Ⅱ
J
K
0.761 0.754
0.460 0.449
0.832 0.825
0.998 0.994
0.998 0.993
0.915 0.908
0.955 0.954
0.994 0.993
0.998 0.997
1.000
1.000
0.996 0.998
0.914 0.930
0.875 0.895
0.446 0.460
0.469 0.475
0.186 0.189
-0.054 -0.073
L
0.817
0.556
0.878
0.981
0.980
0.940
0.951
0.996
0.997
0.996
0.998
0.954
0.928
0.581
0.599
0.355
0.083
設定区間Ⅲ
P
Q
0.420 0.242
0.212 -0.020
0.294 0.036
0.162 -0.204
0.170 -0.190
0.441 0.162
0.851 0.747
0.541 0.292
0.492 0.223
0.469 0.186
0.475 0.189
0.599 0.355
0.848 0.725
0.999
0.861 0.739
0.845 0.860
1.000 0.974
0.848 0.861 1.000
0.981
0.725 0.739 0.974 0.981
0.493 0.531 0.890 0.911 0.976
M
0.710
0.512
0.751
0.817
0.818
0.904
0.975
0.930
0.914
0.914
0.930
0.954
N
0.574
0.526
0.672
0.742
0.744
0.868
0.981
0.895
0.874
0.875
0.895
0.928
0.999
O
0.402
0.192
0.268
0.138
0.142
0.414
0.843
0.517
0.470
0.446
0.460
0.581
0.845
0.860
表-3 連関係数データ A,B,‥:破堤点 注)1.000 は、0.9995 以上を四捨五入した値
R
-0.009
-0.139
-0.187
-0.444
-0.426
-0.079
0.674
0.071
-0.008
-0.054
-0.073
0.083
0.493
0.531
0.890
0.911
0.976
口が密集する都市
部や、行政区域内
のほぼ全域が浸水
想定区域内となる
自治体では、水防
法上での避難場所
の確保が困難であ
る。一方で、想定
破堤地点毎に氾濫
結果を示すことで、
地点毎の氾濫域が
判明し、避難場所
の確保が可能にな
る反面、示した想
定破堤地点の危険
図-6 連関係数による氾濫形態の類似区間設定(イメージ)
性 が 高 い と 誤 解 さ れ る 可 能 性 が 高 く 、破 堤 点 毎 に 避 難 場 所 等 を 設 定 す る と 煩 雑 に な り
かえって混乱を招くおそれもあるという考えがある
10)
。
この様な地域(特に氾濫する原野が広大な地域)においては、浸水想定区域図作成
時 の 各 破 堤 地 点 に つ い て 、似 た よ う な 氾 濫 形 態 を 示 す 区 間 を 設 定 し 、そ の 区 間 毎 の 最
大 の 氾 濫 域 を 示 す 方 法 を 提 案 し た い 。氾 濫 形 態 の 類 似 状 態 の 判 定 は 、メ ッ シ ュ で 降 雨
予測結果と実績とを比較するために用いる連関係数
11)
で判定可能と考え、ある流域
で 試 行 し た 結 果 を 示 す ( 表 - 3 )。 こ の 結 果 、 図 - 6 で 示 さ れ る 様 な 区 間 設 定 が 可 能
と な る 。こ の 区 間 毎 の 最 大 浸 水 深 図 を 用 い れ ば 、地 域 防 災 計 画 上 に お い て も 実 際 に 即
した避難場所の設定が可能になるととも
札幌駅北口駐車場
に 、氾 濫 形 態 に よ っ て 使 用 可 能 と 想 定 さ れ
る 避 難 場 所 が 存 在 す る こ と と な り 、な る べ
く 煩 雑 さ を 避 け つ つ も 、よ り 現 実 的 な 避 難
計画が設定可能になると考える。
パセオ
JR タワー
ついて
札幌市洪水ハザードマップ作成にあた
り、氾濫域内に地下空間が存在しており、
アピア
地 下 鉄・地 下 街 へ の 浸 水 情 報 に つ い て も 記
載し周知することが重要であることから、
浸水想定区域の条件における地下空間へ
3-2 モデル
4-2 モデル追加
の浸水状況の把握が必要である。一方で、
JR札幌駅周辺の地下空間構造が豊平川
図-7 札幌駅地下空間モデルの更新
地下鉄東豊線通路
4-2 . 地 下 空 間 浸 水 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に
洪 水 危 機 管 理 検 討 委 員 会 後 に 札 幌 駅 南 口 再 開 発 事 業 に よ り 再 開 発 さ れ て お り 、委 員 会
で 検 討 し た 地 下 空 間 モ デ ル を 現 在 の 情 報 に 更 新( 図 - 7 )す る と と も に 、浸 水 想 定 区
域 の 条 件 に 合 わ せ て 計 算( 図 - 8 )を 実 施 し た 。こ の 結 果 も 基 礎 情 報 と し て 、札 幌 市
洪水ハザードマップに地下空間に関する浸水情報を記載することで防災意識の啓発
に活用していけると考える。
大通
さっぽろ
10 .0
元町
栄町
新道東
15 .0
東区役所前
環状通東
20 .0
北十三条東
25 .0
豊水すすきの
WATER L EVEL BRANCHES - 2 -1 -19 94 20 :0 5:26 H15 sinsui.PR F
地下鉄東豊線:破堤後44時間
5.0
0.0
- 5.0
- 10 .0
0.0
100 0.0
20 00 .0
30 00.0
40 00 .0
50 00 .0
60 00 .0
70 00 .0
80 00 .0
90 00 .0
10 00 0.0
図-8 地下鉄東豊線の最大浸水深図(浸水想定区域結果より)
4-3. 都 市 域 で の 出 水 時 に お け る 危 機 管 理 に つ い て
札 幌 市 洪 水 ハ ザ ー ド マ ッ プ は 、 平 成 1 6 年 3 月 で 原 案 を 作 成 す る 予 定 で あ り 、「 洪
水時の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な事項について住民に周知させ
る よ う に 努 め る( 水 防 法 第 1 0 条 の 5
3
よ り 抜 粋 )」た め の 具 体 的 な 方 法 と し て 、
市民に配布し活用を図る。
ま た 、 札 幌 市 ( 豊 平 川 ・新 川 ) 洪 水 危 機 管 理 協 議 会 に お い て 、 地 下 空 間 や ラ イ フ ラ
インの管理者が洪水時に受け取るべき情報の内容及び伝達体制など具体的な洪水危
機管理体制を、各関係機関で連携して整備するために活用していきたい。
更 に 、実 際 に 即 し た 訓 練 を 実 施 し て い く こ と も 洪 水 危 機 管 理 体 制 の 強 化 に つ な が る 。
例 え ば 、河 川 管 理 者 と 流 域 の 水 防 管 理 者 と が 共 同 で 行 う ロ ー ル プ レ イ ン グ 方 式 の 洪 水
危機管理演習
12)
がある。豊平川洪水氾濫シミュレーション・地下空間浸水シミュレ
ー シ ョ ン は 、豊 平 川 流 域 対 象 の 洪 水 危 機 管 理 演 習 を 実 施 す る た め に 必 要 な 、防 災 訓 練
用 の 被 災 ・ 対 応 シ ナ リ オ の 基 礎 資 料 と し て 活 用 で き る 。本 協 議 会 で は 、地 下 空 間 管 理
者 や ラ イ フ ラ イ ン 等 関 係 機 関 を 含 め た 共 同 訓 練 等 に つ い て 検 討 し て い く と と も に 、更
に有効な危機管理体制の整備について協議を進めていくこととしている。
5. ま と め
本 報 告 で は 都 市 域 で の 出 水 時 に お け る 危 機 管 理 と い う 内 容 で 、第 2 報 か ら 現 在 ま で
の 札 幌 市 を 貫 流 す る 豊 平 川 に 関 す る 検 討 の 経 緯 と 、こ れ ら の 会 議 で 活 用 し た 氾 濫 シ ミ
ュ レ ー シ ョ ン に つ い て 紹 介 し た 。各 氾 濫 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 活 用 し て 、関 係 機 関 の 洪
水 危 機 管 理 体 制 の 強 化 や 市 民 へ の 水 防 に 対 す る 意 識 の 啓 発 を 図 っ て お り 、今 後 に お い
て も 防 災 訓 練 の シ ナ リ オ 作 成 等 へ 活 用 し 、更 な る 洪 水 危 機 体 制 の 強 化 に 活 用 し て い く
べきと考える。
参考文献
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河川部門
河 - 23.