内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要(PDF:242KB) - 農林水産省

平成20年度内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要
農産部門
新技術導入や機械の利活用の創意工夫により大規模家族経営を実現
○氏名又は名称
宮川
美智夫
○所
在
地
石川県金沢市
○出
品
財
経営(水稲・麦・大豆)
○受 賞 理 由
・地域の概要
金沢市は石川県のほぼ中央に位置し、その中で蚊爪町周辺の水田は水稲の単作栽
培が中心である。また、畑作営農の拠点である河北潟干拓地では現在約200戸の農
家が営農しており、大規模な麦・大豆作をはじめ、酪農、れんこん、露地野菜、施
設野菜等の畑作営農が展開されている。
・受賞者の取組の経過と経営の現況
昭和33年に就農した宮川氏は、河北潟干拓地の農地造成を契機に本格的に営農を
開始し、現在では、延べ作付面積175haと県内トップレベルの大規模経営を実現し
ている。
また、単収については、河北潟、金沢市及び石川県の単収を概ね上回っており、
労働時間については県標準を下回っており 、生産性の高い労働体系を確立している 。
・受賞者の特色
(1)作物の収量・品質を高めるための創意工夫
干拓地の酸性土壌については、土壌改良資材の施用により改良を行ってきた。ま
た、大豆については、中耕除草・培土による除草や密播で主茎長を伸ばすことによ
る刈取り損失の低減を図っている。
大麦については、カモ等の食害を軽減するため、大豆立毛間播種を行うことによ
って大麦の生育量を確保するとともに、茎葉の硬化によって被害の軽減を図ってい
る。
(2)労働力節減のための創意工夫
大豆の播種に高性能の外国製播種機を導入し、播種と同時に側条施肥を行うこと
で高い作業性を実現している。
また防除については、無人ヘリコプターを使用することで労働力の節減とともに
農薬費の削減にも努めている。
(3)的確な労働配分のための創意工夫
大麦・大豆の1年2作体系、園芸部門の導入等により、労働力の周年利用に努め
ている。また、家族間で定期的に経営方針の確認等について話し合い、計画的な休
日の取得、報酬の給与制、家事との役割分担等が徹底されている。
(4)機械の利活用のための創意工夫
農業機械はできるだけ高性能の中古品を購入し、自らが使いやすいように改良す
ることによって、機械に掛かる経費を徹底的に削減している。さらに、機械の保守
点検等も自らが行うことにより稼動年数を延長させ、経費の削減に努めている。
・普及性と今後の発展方向
カモの食害被害対策として大豆立毛間大麦播種技術などの革新技術を自らが導入
・実証することで地区内で普及が進むなど、干拓地営農の技術改善に向けて先導的
な役割を果たしている。今後も引き続き革新技術の導入を進めるとともに、多収米
等の導入、法人化等による更なる経営の発展を目指している。
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平成20年度内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要
園芸部門
気候風土を生かした機械化大規模栽培の確立
○氏名又は名称
有限会社
鶴沼ワイナリー(代表
○所
在
地
北海道樺戸郡浦臼町
○出
品
財
経営(醸造用ぶどう)
今村
直)
○受 賞 理 由
・地域の概要
当ワイナリーが所在する浦臼町は 、北海道の中西部に位置する純農村地帯である 。
耕地面積の約7割を占める平坦地帯では、水稲及び施設野菜が中心である。気候は
欧州ワインぶどう地帯に似ており、醸造用専用品種の栽培に適している。
・受賞者の取組の経過と経営の現況
昭和49年に3名の組合員により鶴沼台果樹生産組合を設立。52年に有限会社鶴沼
ワイナリーに改組・設立。平成7年から大規模省力化栽培に着手し、ヨーロッパ製
摘芯機、誘引機、専用防除機を導入し、その後も順次自動苗木植付機、収穫機、剪
定機を導入することで、平成17年に機械化作業体系を確立している。現在の植栽面
積は101.5haである。
・受賞者の特色
(1)低コスト高品質生産
機械の稼働率を高め、雇用労働力に多くを頼らない経営を実践しており、収穫機
の導入により労働時間を大幅に短縮し、徹底した低コスト化を進めている。また、
土壌分析によるミネラルの適正施用により高品質生産を実現している。
(2)計画的な園地更新
生産性を考慮し、優良品種を導入した計画的な園地更新とともに、機械作業に適
した園地整備を行っている。
(3)作業・労務管理と後継者の育成
週始めに全体会議を行い、各主任がぶどうの生育状態や作業の進捗状況を作業日
報により整理し、図や映像で社員に説明、全員が目標を理解した上で適期適正作業
に当たるようにするなど、会議や研修会を通じた専門知識と技術を持つことで作業
・労務管理ができる社員を育成している。
(4)環境に優しい農業の実践
病害虫予察に基づく防除により化学合成農薬の使用量を地域慣行の1/3に削減し
ている。有機物を原料とした生分解性の結束テープやマルチ資材を利用するなど、
できるだけ環境負荷を低減した農業に取り組んでいる。
・普及性と今後の発展方向
当ワイナリーは、水稲主体の浦臼町に「果樹(ワイン )」という新たな品目を創
出・定着させた。町を代表するイベントにおいて、積極的に協力して地域活性化に
貢献しており、ぶどうを核とした産業が地域に根づき、裾野の広がりを見せつつあ
る 。技術面においては 、
「 北海道型醸造用ぶどう大規模栽培技術 」をほぼ確立した 。
今後、更に作業能率を高めるための樹づくりと園地整備を進めるとともに、近隣
栽培農家の収穫・せん定作業の受託、新商品や観光農園など付加価値を高めた生産
・販売を目指している。
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平成20年度内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要
畜産部門
系列組織の連携による効率的な大規模経営、エコフィード活用も促進
○氏名又は名称
農事組合法人
松永牧場(代表
○所
在
地
島根県益田市
○出
品
財
経営(肉用牛一貫)
松永
和平)
○受 賞 理 由
・地域の概要
益田市は、島根県の最西端に位置し、気候も四季を通し温和である。積雪量が少
なく、日照時間が長い立地条件を生かし、平野部では、施設園芸が盛んに行われ、
山間部においては、地形・風土を生かした営農が取り組まれている。
・受賞者の取組の経過と経営の現況
農事組合法人松永牧場は、昭和48年に184頭の乳用種肥育経営で法人化された。
現代表理事の松永和平氏は、昭和59年に経営を継承し、弟の直行氏(理事)ととも
に兄弟で経営を続け 、現在では黒毛和種及びF1( ホルスタイン種♀×黒毛和種♂の交雑種 )
を主体とした飼育頭数5,000頭を超える、構成員3戸5名(兄夫婦、弟夫婦、母親 )、
従業員24名の大型の繁殖肥育一貫経営となっている。
・受賞者の特色
(1)大規模経営を生かした系列組織の設立、それらと連携した経営
経営内の和牛繁殖部門で子牛を生産するほか、系列酪農経営で生産したF1も導入
し、子牛の安定確保を図り、肉用牛の一貫経営を実現している。また、牛の健康管
理のため、大動物診療所を設立したほか、野草等の飼料を調達する会社、堆肥攪拌
装置製造会社の設立に際して出資し、さらに経営内でエコフィード製造工場を立ち
上げた。これらの組織が松永牧場を中心として良好な連携のもとに統合して効率的
に機能し、生産コストを低く抑えている。
(2)未利用資源の活用と資源循環
食品副産物(ケール粕、とうふ粕等)のほか、河川敷野草を調達し、TMR(注)サ
イレージを製造することで、全飼料のうち、エコフィードが35%強を占める。堆肥
は主にホームセンターで販売し、また、飼料原料のケール粕等との交換により農地
へ直接還元している。これら①未利用資源の活用、②堆肥の地域循環に加え、③ご
み分別システムを実行し、国際環境基準ISO14001を取得している。
(注)TMR(完全混合飼料 )・・濃厚飼料と粗飼料を適切な割合で混合した飼料
(3)消費者のニーズにこたえる生産情報公表牛肉JAS認証牛の出荷
平成16年に生産情報公表牛肉JASを取得し、出荷を開始した。今後JAS認証牛の出
荷は増えていく見込みで、消費者の安全・安心志向にこたえている。
・普及性と今後の発展方向
日本でも有数の大規模な肉用牛繁殖肥育一貫経営牧場。積極的に系列会社や組織
を立ち上げ、それらと密接な関係を保つことで大規模経営の利点を生かした「統合
経営(integration )」を実現しており、大規模農場のモデルケースであるが、①
エコフィードの利用( 地域未利用資源の活用 )、②ISO14001の取得( 環境への配慮 )、
③JAS認定(生産情報の公表 )、④牛の健康に配慮した飼育技術等、個人経営農家
が参考にできる内容も多い。
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平成20年度内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要
蚕糸・地域特産部門
全国初のてん茶の有機認証取得など国内外のニーズに対応した有機茶栽培
○氏名又は名称
石川
哲雄
○所
在
地
愛知県豊田市
○出
品
財
産物(茶)
○受 賞 理 由
・地域の概要
豊田市は、愛知県のほぼ中心部に位置し、農業、工業ともに盛んで、米を始め果
樹、観葉植物、茶などの農産物が生産されている。平成18年度の豊田市の茶栽培面
積は77haで荒茶生産量は67tであり、てん茶を中心に(7割以上 )、かぶせ茶、煎
茶が栽培されている。
・受賞者の取組の経過と経営の現況
石川氏は、昭和42年に就農し、昭和49年には県営農地開発事業に参加し、農地を
取得するなどして規模拡大を図った。現在の茶の経営規模は、4.6haで、てん茶栽
培を中心に、煎茶、かぶせ茶及び玉露を生産している。
・受賞者の特色
(1)有機栽培茶の生産
石川氏は、経営規模の拡大を図りつつ、昭和48年に農薬を使用しない栽培を開始
した。平成6年には有機栽培を開始し、平成9年には石川氏が中核となり有機栽培
グループを結成し、取引業者と協力して、てん茶生産部門で日本で初めて有機認証
を取得した。平成13年にはJAS規格に基づく有機認証(有機認定生産工程管理者、
有機認定製造業者)を取得し、また、平成14年には取引業者と協力し、海外ニーズ
に対応するため、スイスのIMO有機認証を取得した。現在、3.1haで有機栽培を行っ
ている。
(2)環境保全型農業の実践
石川氏は、樹冠下点滴施肥システムを1.4haで導入し、施肥量の削減と品質の向
上を両立させた環境保全型農業に積極的に取り組んでいる。
(3)取引業者を通じての海外輸出
石川氏の生産する有機栽培茶は、取引業者を通じて平成16年頃から海外へ輸出さ
れている。抹茶の主な輸出先はアメリカ、ドイツ、オーストリアで、現在の取引業
者の輸出量は年間約18tであるが、石川氏の有機栽培茶はそのうち8∼10%を占め
ている。
・普及性と今後の発展方向
石川氏は、豊田市和合町での有機栽培の安定化を実現するために、数多くの栽培
改善試験に取り組み、栽培・製造カルテの作成やデータ分析に基づく栽培・製造技
術の改良によって独自の技術を築き上げた。この技術が和合町の他の生産者へ普及
した結果、平成17年には豊田市下山地区の茶園すべてが有機栽培となった。
氏は、日本の食文化が海外へ浸透しつつあることから、有機食品のニーズが益々
高まると考えており、地域農業の発展のため、これまで培ってきた栽培・製造の技
術を地域の茶業の後継者へ伝授することに力を注ぎたいと考えている。
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平成20年度内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要
林産部門
栽培苗の適切な管理と高い作業効率を実現。先進技術を積極的に導入
○氏名又は名称
大原
繁
○所
在
地
宮城県東松島市
○出
品
財
技術・ほ場(苗ほ)
○受 賞 理 由
・地域の概要
東松島市は、宮城県の中部海岸地域に位置し、東は石巻市、西は松島町、南部は
仙台湾にそれぞれ接し、南西部は「日本三景松島」の一部となっている。市の中央
部を鳴瀬川が南下して仙台湾に注ぎ、市の東部方面にかけて扇状に平野部が広がっ
ている。また、西北部には丘陵地が連なっている。気候は、東北地方としては比較
的温暖で、市の森林率は31%と県平均(57%)と比較すると少ない。
・受賞者の取組の経過と経営の現況
氏は、高校卒業と同時に家業の農林業に従事し、51年にわたり苗木生産に取り組
んできた。1.1haの苗畑において主にスギ、ヒノキ等の林業用苗木を年間4∼5万
本程度生産しており、米、自家用野菜などの生産も行っている。経営は本人夫婦及
び二女の3名で行っており、自家労働力を主にしており、出荷や堀取等の労務が集
中する時期には臨時雇用による労働力の確保を行っている。
・受賞者の特色
(1)栽培苗の適切な管理
スギ種子は宮城県林業技術総合センターで生産された種子を購入し養苗している
ため、品種系統は明確であり、苗畑の標識も必要事項を明記し設置するなど適正に
管理されている。また、出荷苗木に添付する生産者表示表には、苗木の梱包年月日
(午前・午後に区分)を記載しており、生産履歴の明確化に努め、造林者への信頼
度を高めている。
(2)機械、器具等の改良と創意工夫
自ら考案した補助具を取り付け自走式床替機の直進性を増すといった機械の改良
・工夫を行うなど、更なる作業の効率化を図っている。
また動力式噴霧器をトラックに乗せ、100mホースを用い苗畑地一円を効率的に散
布するなど、作業の省力化を図っている。
(3)先進的な技術の導入
花粉症対策苗木の増産へ向けた取組として、マイクロカッティング法(通常より
も小さいさし穂から大量に苗木を生産する技術)による少花粉スギの生産や、植林
の低コスト化へ向けた取組として、全国で初めてとなるマルチキャビティコンテナ
(細長い栽培容器を結合させたトレイ。根が絡み合わない等の特徴がある 。)を用
いたスギ苗木の生産を行うなど先進的な技術を導入し、将来を見据えた苗畑経営を
行っている。
・普及性と今後の発展方向
氏の経営哲学は生産コストを極力抑え、かつ造林者が望む丈夫で活着率の良い苗
木を生産することで、再造林が進むような苗木の供給を目指している。このため、
コンテナ苗の生産講習会やマイクロカッティング法による生産技術講習会を積極的
に開催し、宮城県農林種苗農業協同組合のリーダーとして新しい技術の導入に意欲
的に取り組んでいる。
これらの講習会には、東北各県の生産者に加え、遠くは兵庫県からの参加者もお
り、森林組合、国・県行政機関など関係機関への先進的な生産技術の波及が期待さ
れる。
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平成20年度内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要
水産部門
安心・安全な養殖魚づくりをめざした養殖技術で経営を改善
○氏名又は名称
北浦養殖マサバ協業体(代表
○所
在
地
宮崎県延岡市
○出
品
財
経営(漁業経営改善)
中西
茂広)
○受 賞 理 由
・地域の概要
北浦町は 、宮崎県の最北東部に位置し 、北は大分県と接し 、東は太平洋( 日向灘 )
に面している。海岸部は変化に富んだリアス式海岸で、沖合いを流れる豊後水道か
らの沿岸水と黒潮は豊かな水産資源を育んでいる。このため、古くから水産業が盛
んに営まれ、特に、養殖業は、冬季の高水温と平穏な水域の確保が容易であること
から発達し、この地区の重要な産業となっている。
・受賞者の取組の経過と経営の現況
この地区の養殖業者は、カンパチを主体とする魚類養殖業を営んできたが、その
経営は厳しく、経営体数も減少した。このような養殖業の先行きに不安を覚えた養
殖業者が集まり、平成14年に北浦養殖マサバ協業体を設立(現在6経営体・16名)
し 、当時 、全国的に取組事例の少なかったマサバの養殖に挑戦した 。マサバ養殖は 、
カンパチ養殖に比べて、餌代が少ない等支出が抑えられることから、販売額は少な
いものの安定した収益を確保できるようになった。
・受賞者の特色
(1)安心・安全な養殖魚の生産技術を確立
消費者に信頼される製品作りに取組むため、薬を一切使用しない養殖技術の確立
を目指し、餌の種類や与え方等に工夫を凝らした飼育管理技術を確立した。
(2)流通過程における品質管理の改善
鮮度低下を遅延させるための活け締め方法の試験を大学や県の協力を得て実施
し、また、流通過程での温度管理調査等を行い、その結果に基づく適切な品質管理
を行っている。
(3)取引先の信頼に応える出荷体制の整備
個々の経営体では出荷量に限界があるが、各経営体が協力して出荷作業を行うた
め、大口出荷先に対しても対応が可能となった。逆に、小口取引先にも信頼される
出荷体制を整備する等、取引先との信頼確保に努めている。
(4)消費者ニーズにあった製品を生産
消費者は 、地域や季節によりマサバの大きさや脂の乗りに対する嗜好が異なるが 、
その情報を的確につかみ、餌の与え方を工夫することで消費者の嗜好にあった商品
としている。
・普及性と今後の発展方向
受賞者の技術及び経営に見られる成果は、全国の養殖経営体への普及効果の高い
経営モデル事例となることが期待されている。また、仲買業者依存の流通を系統・
生産者による直接流通に切替えるなど、多くの生産者が目指している新たな流通体
系を築こうとしている。今後は、生産量の拡大と更なる品質の向上を図り、販売を
重視した経営を更に展開することが期待されている。
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平成20年度内閣総理大臣受賞者受賞理由概要
むらづくり部門
2つの連携を調和良く取り入れた持続的なむらづくり
○集団等の名称
田沢湖牛銘柄確立推進組合( モートピア神代 )
( 代表
○所
秋田県仙北市
在
地
藤村
正喜 )
○受 賞 理 由
・地域の沿革と概要
神代地区は田沢湖の西南に位置し、耕地面積1,471ha、人口4,952人の水田地帯で
ある。和牛生産地帯でもあり、副産物の堆肥を使った「じゃんご米」の産地として
知られる。しかし、一時は和牛飼養頭数の減少で堆肥の確保が困難になり、また堆
肥撒布作業も重労働であるため 、「じゃんご米」の存続に対する危機感が募ってい
た。そこで平成7年、有機米でつながりのあった消費地の米小売店主が資金を出し
合い、マニュアスプレッダーを導入した。そして、平成9年、生産者14名と消費地
の米小売店主10名で 、和牛と堆肥の生産を自ら行う「 モートピア神代 」を設立した 。
・むらづくり組織の概要
生産者14名と米小売店の店主10名で構成されている。活動資金は、組合への加入
金(1口40万円)と牛や堆肥の販売収入により賄われている。組合は任意組織で、
飼育管理職員を雇用し、和牛の生産、堆肥の生産と供給、ヘルパーによる畜産農家
への支援、消費者との交流などの活動を行っている。また 、「モートピア神代」の
応援団として、県内外に550名の会員を擁する「じゃんご倶楽部」がある。
・むらづくりの取組概要
(1)農業生産面
畜産振興により堆肥を確保し、堆肥投入による高品質で安全安心な農産物の生産
を推進している。また、哺乳及び搾乳の機械化、後継者育成のための研修を受け入
れるなど、畜産経営のモデルケースとなっている。農作業体験や和牛オーナー制度
の導入で、米小売店や消費者が生産地を応援する仕組みも構築している。
(2)生活面
じゃんご米の振興には生産者間の交流団結が重要と考え 、田植え後の「 さなぶり 」
と稲刈り後の「やさら」という、農作業の労をねぎらい豊作を願い感謝する行事を
復活した。また、消費者との交流を契機に、地域内の女性が、次世代に郷土料理を
引き継ぐための情報交換や料理講習会を行うようになった。
(3)環境整備面
本団体の組合員は、活動拠点である院内集落の非農家にも呼びかけ 、「農地・水
・環境保全向上対策 」、「道路愛護会」による草刈りや花の植え付け 、「院内川河川
愛護会」による草刈りや昔ながらの土水路の維持保全、荒れていた里山を整備して
の交流広場づくりなど、各種活動に地域全体で取り組んでいる。
・他地域への普及性と今後の発展方向
自らが和牛飼育・堆肥生産の主体となっての耕畜連携、生産者と米小売店が主体
となっての生消連携 、そして地域ぐるみ活動により 、特徴的な活動を展開している 。
和牛のみならず、堆肥を利用して消費者ニーズの高い安全・安心な農産物を供給す
ることで地域ブランドを確立し、農家の経営安定を実現しており、マーケティング
主導型産地のモデル的存在である。米小売店、地区の農家ともに第二世代が活動に
加わり、活動は新たな展開を見せつつある。
「 耕畜連携 」「 産消連携 」 及び 「 地域連携 」 など様々なネットワークを構築させた多様
な活動は、新たな組織づくりのモデルとなり得る事例である。
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