業種別マニュアル 非鉄金属鋳物工業 平 成 1 4 年 3 月改版 平 成 1 3 年 1月 作成 −465− (社)日本非鉄金属鋳物工業会 目 次 1.非鉄金属鋳物製造業におけるPRTR・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 467 1.1 非鉄金属鋳物業界におけるPRTR対象事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 467 1.2 非鉄金属鋳物製造工程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 467 1.3 非鉄金属鋳物製造工程における対象物質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 468 1.4 PRTR法制定に伴う作業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 469 2.原材料別検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 470 2.1 鋳物材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 470 2.1.1 PRTRの対象となる鋳物材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 470 2.1.2 年間取扱量の算出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 471 2.1.3 排出・移動ポイント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 471 2.1.4 排出量・移動量の算出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 472 2.2 フラックス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 474 2.2.1 PRTRの対象となるフラックス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 474 2.2.2 年間取扱量の算出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 474 2.2.3 排出量・移動量の算出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 474 2.3 自硬性鋳型の粘結剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 475 2.3.1 PRTRの対象となる自硬性鋳型粘結剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 475 2.3.2 年間取扱量の算出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 475 2.3.3 排出量・移動量の算出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 475 −466− 1.非鉄金属鋳物製造業におけるPRTR 1.1 非鉄金属鋳物業界におけるPRTR対象事業者 非鉄金属鋳物製造業は大きく銅合金鋳物製造業とアルミニウム合金鋳物製造業に大別 されます。平成10年の工業統計によりますと非鉄金属鋳物製造業の事業所数は905 で、従業者数20人以上は169(うち銅合金51)事業所、300人以上は3事業所 で、最も従業者数の多いところでも500人強と、全体に企業規模の小さな業界です。 銅合金鋳物製造業では主要材料に対象物質を含むものがあるため、21人以上の事業 者の多くは対象事業所となるものと思われます。副資材にも対象物質を含むものがあり ますが、使用量や含有率を考えると、副資材が届出対象となるケースはほとんどないも のと思われます。 PRTR対象事業所の要件とは、少し区切り方が違いますが、銅合金鋳物製造業の従 業者数20人以上の事業所が51あることから、非鉄金属鋳物製造業のPRTR対象事 業者数はおおよそ50と推定されます。 1.2 非鉄金属鋳物製造工程 非鉄金属鋳物製造工程と主な原材料等の排出移動の概略を図1に示します。 鋳物砂、粘結剤 調 鋳物材料、フラックス 溶 解 大気、廃棄物 燃料 造 注 砂 型 湯 返り材 再生砂 型ばらし 砂再生処理 鋳仕上げ 図1 検 査 出 荷 非鉄金属鋳物製造工程と排出・移動 −467− 廃棄物 廃棄物 1.3 非鉄金属鋳物製造工程における対象物質 非鉄金属鋳物製造工程で使用する原材料等に含まれる対象物質を表1に示します。 表1 非鉄金属鋳物製造工程で取り扱う対象物質 対象事業所判定基準 *4) 政令番号 含有率 取扱量 68 178 230 1%以上 224 質 鉛及びその化合物 対象物質を含 む原材料等 鋳物材料 ニッケル 0.1%以上 0.5 トン以上 ベリリウム及びその化合物 ) マンガン及びその化合物 1%以上 ほう素及びその化合物 1 トン以上 1-3-5 トリメチルベンゼン 266 注 *4) 注 *5) 物 セレン及びその化合物 1 トン以上 311 304 象 クロム及び3価クロム化合物 231 ※294 対 *5) フェノール フラックス 粘結剤 ※印を付した物は特別第一種指定化学物質(発ガン物質) 当初2年間は5トン以上 青銅鋳物等の溶解ダストに含まれる亜鉛華(酸化亜鉛)は対象物質になるのかどうか という問い合わせがありますが、亜鉛についてはその水溶性化合物に限定されており、 酸化亜鉛は水溶性ではないので対象物質とはなりません。同様に銅についても銅水溶性 塩(錯塩を除く)に限定されており酸化銅は対象物質になりません。参考までにPRT R対象となる銅及び亜鉛の化合物例を表2に示します。 表2 政令番号 PRTR対象となる銅及び亜鉛の化合物例 対 象 質 *6) 物 1 亜鉛の水溶性化合物 化 学 物 質 例 塩化亜鉛 塩化銅(Ⅱ)(無水物) 塩化銅(Ⅱ)(2水和物) 207 銅水溶性塩(錯塩を除く) ほうふっ化銅(Ⅱ) 硫酸銅(無水物) 硫酸銅(5水和物) 注 *6)「水溶性」とは、常温中で中性の水に対し1質量%以上溶解することをいう。 −468− 1.4 PRTR法制定に伴う作業 PRTR法制定に伴い、各事業者はまず自社がPRTR対象事業者になるのかどうか 判定し、対象事業者となる場合には、適切に対象物質の排出量・移動量を把握する方法 を確立しておく必要があります。また、対象事業者とならない場合も、自社で使用して いる原材料等にどんな対象物質がどれくらい含まれているのか把握しておくことが望ま れます。ここでは非鉄金属鋳物製造業に関して記述しますが、多角化して事業を営んで いる場合は、兼業している他業種の製造工程についても同様の作業が必要です。 ① PRTR対象事業者になるかどうかの判定 PRTRの対象事業者になるかどうかの判定手順を以下に示します1)∼5)の全 ての要件に当てはまると対象事業者となります。 1)対象業種にあてはまるか? 全ての製造業が指定されているので当然非鉄金属鋳物製造業も対象業種となりま す。 2)常用雇用者数は21人以上か? 平成13年度については、平成13年4月1日現在の常用雇用者数で判定します。 20人以下であれば対象事業者にはなりませんが、以下の 5)までの作業を行うこと をお奨めします。 3)対象物質を含んでいる原材料等を使用しているか? 自社工場の製造工程で使用する原材料等をリストアップします。含有成分が不明 の場合はMSDSを取り寄せて確認します。非鉄金属鋳物製造工程では次のような 原材料等を使用しています。 鋳物材料、フラックス、鋳型粘結剤、塗型材、型補修用樹脂 4)対象物質を1%(発がん物質は0.1%)以上含んでいるか? 対象物質を指定量以上含んでいるものについて、対象物質と原材料名をリストア ップします。 5)対象物質の年間使用量は5トン(2年の経過措置の後は1トン、発がん物質につ いては0.5トン)以上か? 対象物質ごとに年間使用量を集計します。複数の原材料等が同一の対象物質を含 む場合は、それらを合計します。 ② 対象物質の排出量・移動量の把握と届出 第1回目の届出として、対象事業者は、平成13年4月から平成14年3月31日 までの対象物質の排出量・移動量を把握し、平成14年6月30日までに、都道府県 経由で事業所管大臣に様式に従った届出書を提出します。 −469− 2.原材料別検討 非鉄金属鋳物製造工程で使用する原材料等で、対象物質を含むものとして鋳物材料、 フラックス、自硬性鋳型粘結剤、塗型剤、型補修用樹脂等が考えられます。PRTRの 対象となる鋳物材料を使用している場合は、対象物質の取扱量が指定量(5トン、2年 の経過措置の後は1トン)以上となる可能性が高いですが、それ以外の原材料等は使用 量がずっと少なくなり、対象物質の含有量を考えると指定量以上になることは少ないと 思われます。 ここでは鋳物材料と、比較的使用量の多いフラックスと自硬性鋳型粘結剤について検 討します。 2.1 鋳物材料 2.1.1 PRTRの対象となる鋳物材料 JIS規格にある銅合金鋳物のうち、PRTRの対象物質を1%以上含む合金種類と 対象物質の含有量を表3に示します。JIS規格のアルミニウム合金鋳物には対象物質 を1%以上含有するものはありません。 生産量はわずかですが、JIS規格以外にクロム、セレン又ベリリウムを含む合金鋳 物があります。 表3 PRTRの対象となる鋳物材料 対象物質(政令番号) 鉛 合金種類及び記号 (230) 黄銅鋳物2種 CAC202 0.5-3.0 * 7 ) 黄銅鋳物3種 CAC203 0.5-3.0 * 7 ) ニッケル (231) 単位% マンガン (311) 高力黄銅鋳物1種 高力黄銅鋳物2種 CAC301 CAC302 0.1-1.5 *7) 0.1-3.5 * 7 ) 高力黄銅鋳物3種 高力黄銅鋳物4種 CAC303 CAC304 2.5-5.0 2.5-5.0 青銅鋳物1種 青銅鋳物6種 CAC401 CAC406 3.0-7.0 4.0-6.0 青銅鋳物7種 CAC407 5.0-7.0 鉛青銅鋳物2種 CAC602 4.0-6.0 鉛青銅鋳物3種 CAC603 9.0-11.0 鉛青銅鋳物4種 CAC604 14.0-16.0 鉛青銅鋳物5種 CAC605 16.0-22.0 アルミニウム青銅鋳物2種 CAC702 1.0-3.0 0.1-1.5 * 7 ) アルミニウム青銅鋳物3種 CAC703 3.0-6.0 0.1-1.5 * 7 ) アルミニウム青銅鋳物4種 CAC704 1.0-4.0 7.0-15.0 注 *7) ロットにより含有率が1%以上のものと未満のものがあり得る。 −470− 2.1.2 年間取扱量の算出 対象物質ごとに年間取扱量を算出します。複数の合金種類に同一の対象物質が含まれ ている場合はそれらを合計します。後述の移動量の算出のためには、合金種類ごとに含 有率を明らかにしておく必要があります。 ① [鋳物材料の年間取扱量]=[期首在庫量 ]+[年間購入量]−[期末在庫量] ② [含有率] 含有率の求め方の例を表4に示します。この例では全 Pb 量を計算し平均含有率を 求めていますが、最大含有率が分かっていて、平均含有率と大差がないと考えられる 場合には、最大含有率を代用しても構いません。(PRTRでは、リスクを少なく見積 もらないようにするのが原則で、中間値ではなく最大値を用います) 表4 仕入日 H13.5.20 H13.9.30 H13.11.5 H14.1.16 H14.3.21 H13 年度 青銅鋳物に含まれる鉛含有率の算出例 材質 CAC406 CAC406 CAC406 CAC406 CAC406 合計 重量(kg) 10,751 11,002 10,850 11,100 10,802 54,505(A) Pb 含有率 5.44% 5.23% 4.83% 4.92% 5.30% Pb 量(kg) 585 575 524 546 573 2,803(B) 材質 CAC406 の Pb 囲 4.0−6.0% 平均 Pb 率=(B)/(A)*100= 5.14% 成分範囲上限の Pb 含有率= 6% [対象物質の年間取扱量 ]=[原材料の年間取扱量]×[対象物質の含有率] ③ 計算例 青銅鋳物6種 (CAC406)の年間取扱量が 20,000kg で鉛含有率を6%とした 場合 [鉛の年間取扱量]=[青銅鋳物6種の年間取扱量]20,000kg×6%=1,200kg 2.1.3 排出・移動ポイント 鋳物材料に含まれる対象物質は、図2に示すように、溶解工程、注湯工程及び仕上げ 工程において排出・移動の可能性があります。溶解及び注湯工程は、対象物質の排出・ 移動に関しては一つと 考えてよいので、ここでは溶解注湯工程としました。 溶解注湯工程では、溶解スラグ及び溶解ダストが発生し一部は大気への排出も考えら れます。水域及び土壌への排出はありません。鋳仕上げ工程では、切り屑・削り屑が発 生します。その成分は基本的には合金成分と同じですが、その他の粉じんなどが混入し ます。 溶解工程の大気への排出については、銅合金の溶解温度は最高 1250 ℃程度で、鉛、ニ −471− ッケル、マンガンの沸点はそれぞれ 1750 ℃、2731℃、2152℃と 500 ℃以上高く集じん 機等を経るので大気への排出はごく微量であり0としてよいと考えます。 工程中で発生する溶解スラグ、溶解ダスト及び切り屑・削り屑は、リサイクルしてい る場合は搬出として、廃棄物として処分している場合は移動として扱います。 大気へ排出 仕掛品に含まれて鋳仕上げ工程へ 鋳物材料 溶解注湯工程 溶解スラグに含まれての搬出又は移動 溶解ダストに含まれての搬出又は移動 返り材として溶解工程へ 鋳物仕掛品 鋳仕上げ工程 鋳物製品としての搬出 切り屑・削り屑としての搬出又は移動 図2 2.1.4 鋳物材料に含まれる対象物質の排出・移動ポイント 排出量・移動量の算出 (1)製品(鋳物)に含まれての搬出量の算出 鋳物材料に含まれる対象物質は、大半が製品に含まれて搬出されます。排出量・移 動量の算出方法によっては、搬出量の把握が必要となることがありますが、鋳物材料 の場合は必要ありません。 (2)リサイクル物に含まれての搬出量の算出 溶解スラグ、溶解ダスト及び切り屑・削り屑は、通常はリサイクルされていますが、 その場合は、製品と同じような扱いとなり算出の必要はありません。 (3)廃棄物に含まれての移動量の算出 溶解スラグ、溶解ダスト及び切り屑・削り屑をリサイクルせずに廃棄物として外に 出している場合は、移動量として扱います。算出方法は実測値を用いる方法によりま すが、サンプリングによるばらつきが出た場合、信頼できる値を得るには、状況に応 じて分析数を増やす必要が生じ、費用負担が大きくなることが考えられます。そこで、 青銅、アルミニウム青銅及び高力黄銅の溶解スラグ及びダストについて、それぞれ標 準的な工場を選定してサンプルを採取し、分析結果のばらつきに留意しながら分析数 −472− 及び試料の作成方法を検討して分析を実施しました。その結果と使用した合金の対象 物質含有率から表5のような係数を定めました。 自社の実測値がない場合、この係数を次式のように用いて廃棄物の対象物質含有率 を求め、実測値の代わりに用いることができます。 [廃棄物の対象物質含有率]=[使用した合金の対象物質含有率]×[係数] 表5 対象物質含有率算出係数 合金種類及び対象物質 廃棄物の 係数 状態 青銅鋳物等に含まれる鉛 アルミニウム青銅鋳物等に含まれるニッケル アルミニウム青銅鋳物等に含まれるマンガン 高力黄銅鋳物等に含まれるマンガン 対象物質含有率(単位%) 廃 棄 物 使用した合金 溶解スラグ 0.3 1.59 5.37 溶解ダスト 0.6 3.11 5.1 溶解スラグ 0.8 3.18 4.03 溶解ダスト 0.4 1.61 4.03 溶解スラグ 0.9 0.68 0.79 溶解ダスト 0.7 0.54 0.79 溶解スラグ 1.0 0.85 0.88 溶解ダスト 0.2 0.14 0.88 ①溶解スラグに含まれての移動量の算出 [移動量]=[溶解スラグの取引量]×[含有率] 計算例 青銅鋳物の溶解スラグの発生量が 400kg 、元の合金の鉛含有率が6%で、 溶解スラグの鉛含有率は表の係数を用いて算出する場合 [溶解スラグの鉛含有率]=6%×[係数]0.3=1.8% [移動量]=[溶解スラグの廃棄量]400kg ×1.8% =7.2kg ②溶解ダストに含まれての移動量の算出 [移動量]=[溶解ダストの取引量]×[含有率] 計算例 青銅鋳物の溶解ダストの年間廃棄量が 50kg、元の合金の鉛含有率が6%で、 溶解ダストの鉛含有率は表の係数を用いて算出する場合 [溶解ダストの鉛含有率]=6%×[係数]0.6=3.6% [移動量]=[溶解ダストの廃棄量]50kg ×3.6%=1.8kg ③切り屑・切削屑に含まれての移動量の算出 [移動量]=[切り屑・削り屑の取引量]×[含有率] −473− (4)最大潜在排出量 鋳物材料に含まれる対象物質は、大気、水域及び土壌への排出はなく、最大潜在排 出量はゼロです。 2.2 フラックス 2.2.1 PRTRの対象となるフラックス 溶解工程で脱ガスや酸化物除去のために使用するフラックスのうち、PRTRの対象 となるものを表6に示します。青銅溶解時の酸化物除去を容易にするために対象物質で ある無水硼砂を使用することがあります。無水硼砂は金属化合物であり、金属化合物は それに含まれる金属元素量に換算します。表6では、あらかじめ換算するための係数を、 各元素の原子量から換算係数として求めてあります。 表6 政令番号 対 象 PRTRの対象となるフラックス 物 質 304 ほう素及びその化合物 2.2.2 物 質 名 化 学 式 無水硼砂 換算係数 金属元素 Na2 B 4O 7 0.21 B 年間取扱量の算出(無水硼砂) フラックスとして使用する無水硼砂は金属化合物であり、金属元素量に換算します。 計算例 無水硼砂(Na2 B4 O7 )を99%含むフラックスの年間取扱量が 5000kg の場合 [無水硼砂の年間取扱量]=[フラックスの年間取扱量]5,000kg ×99% =4950kg [ほう素の年間取扱量]=[無水硼砂の年間取扱量]4,950kg ×[換算係数]0.21≒1,040kg 2.2.3 排出量・移動量の算出 図3にフラックス(無水硼砂)の排出・移動ポイントを示します。フラックスは溶解 工程において溶湯の中に投入され、酸化物と一緒に溶解スラグとして取り出されます。 一部は大気に排出される可能性がありますが、微量であり0としてよいと考えられます。 従って、ほう素は溶解スラグがリサイクルされている場合は[移動量]=0 となり、廃棄物 として外に出されている場合は[移動量]=[取扱量]となります。 大気 フラックス 溶解工程 溶解スラグに含まれての搬出又は移動 (無水硼砂) 図3 フラックスに含まれる対象物質の排出・移動ポイント −474− 2.3 自硬性鋳型の粘結剤 2.3.1 PRTRの対象となる自硬性鋳型粘結剤 PRTRの対象となる自硬性鋳型の粘結剤を表7に示します。メーカー及び商品によ り含有率が異なり、同種の粘結剤であっても対象となるものとならないものがあります。 これまでの調査では、フラン樹脂及びアルカリフェノール樹脂で対象物質を1%以上含むものはあ りませんでした。 表7 PRTRの対象となる自硬性鋳型粘結剤 樹脂の分類(造型法) 政令番号 対象物質 フェノール樹脂 (シェルモールド法) ウレタン樹脂 (コールドボックス法) 含有率% 266 フェノール ∼5 224 1-3-5 トリメチルベンゼン ∼5 266 フェノール ∼5 シェルモールド法のフェノー ル樹脂は届出対象となり得る物質ですが、通常コーテッ ドサンド(粘結剤をコーティングした鋳物砂)又はその成型品として購入して使用して おり、この場合、対象物質の含有率が明らかに1%以下となりますので対象となりませ ん。 2.3.2 年間取扱量の算出 ① 粘結剤の年間取扱量=期首在庫量+年間購入量−期末在庫量 ② 対象物質の年間取扱量=原材料の年間取扱量×対象物質の含有率 計算例 フェノール樹脂(シェルモールド法)の年間取扱量 20,000kg [フェノールの年間取扱量]=[年間取扱量]20,000kg×5%=1,000kg 2.3.3 排出量・移動量の算出 自硬性鋳型の粘結剤に含まれる対象物質は、鋳造(調砂・造型・注湯・型ばらし・砂 処理)工程において、大気及び廃棄物として排出移動する可能性があります(図4)。排 出量・移動量の算出方法は排出係数を用いる方法によります。表8に実測等に基づき定 めた排出係数の例を示します。 大気へ排出 対象物質 鋳造工程 図4 廃棄物に含まれて移動 粘結剤に含まれる対象物質の排出・移動ポイント −475− 表8 政令番号 対 粘結剤に含まれる対象物質の排出係数 象 物 排 質 製 品 出 大 係 気 数 廃棄物 224 1-3-5 トリメチルベンゼン 0 100 0 266 フェノール 0 0 0 注)この表の排出係数は、日本鋳物工業会、日本強靱鋳鉄協会及び日本可鍛鋳鉄工業 会が作成した「銑鉄鋳物製造業におけるPRTRマニュアル」より転記させてい ただきました。 −476−
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