竹原市幼児教育・保育のあり方について (報告書) 平成24年3月29日 竹原市幼児教育・保育あり方検討委員会 竹原市幼児教育・保育のあり方について(報告書) 目 はじめに 次 ・・・・・・・・・・1 1 幼児教育・保育の現状 (1)少子化の状況 ・・・・・・・・・・・・2 (2)保育所・幼稚園の位置 ・・・・・・・・・・・・3 (3)児童数と定員 ・・・・・・・・・・・・4 (4)施設の老朽化 ・・・・・・・・・・・・6 (5)保育サービス ・・・・・・・・・・・・7 (6)地域別児童数 ・・・・・・・・・・・・8 2 幼児教育・保育のあり方 (1)地域的な配置 ・・・・・・・・・・・・10 (2)集団の適正人数 ・・・・・・・・・・・・10 (3)教育・保育の質 ・・・・・・・・・・・・10 (4)教育・保育環境 ・・・・・・・・・・・・11 (5)幼保一体化 ・・・・・・・・・・・・11 3 公立幼稚園・保育所の規模と配置のあり方 (1)幼稚園・保育所再編の方向性 ・・・・・・・・・・・・12 (2)幼稚園・保育所再編検討の視点 ・・・・・・・・・・・・12 (3)各地区の幼稚園・保育所の規模と配置のあり方 ・・・・・・・・・13 (4)公立就学前施設の規模と配置に関する計画の策定の際に配慮すべき事項 ・・・・・・・・・14 4 資料 竹原市幼児教育・保育あり方検討についての諮問書 ・・・・・・・15 検討委員会設置要項 ・・・・・・・・・16 検討委員会委員名簿 ・・・・・・・・・17 検討経過 ・・・・・・・・・18 はじめに 竹原市の将来を担う子どもたちが、家庭を離れて初めての集団生活をする保育 所・幼稚園は、子どもたちの生涯にわたる人間形成の基礎となる原体験を積む大切 な場所である。 本市では、就労する母親の増加に伴い、一時期保育所の入所者数は増加したが、 ここ 10 年ほどは少子化の影響が大きく、入所児童数は減少する傾向にあり、保育 所・幼稚園ともに集団規模が小さい施設が増加している。また、建築後 30 年を越え る施設が大半を占め、施設の老朽化や耐震安全性の問題も心配される。そのような 中で、子どもたちの安心と成長を保障する場として、就学前施設の規模と配置の見 直しが必要となっている。 一方、国は、税制と社会保障制度の一体的な見直しの中で、幼児教育と保育サー ビス制度の抜本的な制度改正を含めた「子ども・子育て新システム」の最終案を、 平成 24 年1月 31 日に政府が決定し、平成 27 年度からの本格実施を目指している。 この新システムにおいては、親の働き方に関わらず、3歳以上のすべての幼児に対 して幼児教育と保育サービスを一体的に提供する「総合こども園(仮称)」の創設が 予定されており、保育所に関しては、平成 27 年度からの3年間の間に、すべて 「総合こども園(仮称)」に移行される予定である。 本市においても、平成 22 年1月 29 日に閣議決定された少子化対策基本法第7条 の規定に基づき「大綱」として定められた「子ども・子育てビジョン」の理念や方 針と整合性を図りながら、本市の実情に応じた幼児教育及び保育の推進を図る必要 がある。 そこで、本委員会では市内の幼児教育・保育のあり方について検討し、民間運営 の施設を含めた保育所・幼稚園の現状をさまざまな角度から確認し、今後のあり方 を議論した。そして、公立就学前施設の規模と配置については、慎重に議論を重ね、 より具体的な提案をまとめた。 検討を進めるうちに、竹原市の幼児教育・保育のきめ細やかな内容とサービスが、 多くの熱意ある関係者や地域住民に支えられていることを再認識するとともに、こ の竹原の幼児教育・保育の良い面が、統廃合により損なわれることなく、さらに充 実するように、計画が策定され、実行されなければならないものと考える。 この就学前施設のあり方の見直しを通じて、竹原の子どもたちをどう育てるかの 議論が深まり、地域に広がる機会となり、市民が子育てに夢を持ち、地域で子育て を支える気運が高まる結果となることを願うものである。 1 1 幼児教育・保育の現状 本章では、幼児教育・保育のあり方を検討する上で参考となる情報として、地域別の 児童数やその推移、就学前施設の配置・定員数や老朽化、保育サービスの内容など、竹 原市の幼児教育や保育がおかれている現状について、最新の情報を基に整理して示す。 (1)少子化の状況 竹原市の幼児児童数(0−5歳)の減少傾向は、将来的にも続くと予測される。市全体 では平成 19 年から 23 年までの4年間に、1230 人から 1109 人と 9.8%減少しているが、 5年後の平成 28 年には 938 人(現在から 15.4%減)、10 年後の平成 33 年には 789 人 (現在から 28.8%減)と大幅に減ることが予想される。 また、小学校区別に幼児数の推移をみると、地域によって減少傾向に差があることが 分かる。中でも竹原西、中通、忠海西の3小学校区は、減少が小さく、竹原小学校区は 減少が大きいと予想される。 2 (2)保育所・幼稚園の位置 竹原市内には認可保育所が 10 ヶ所あり、うち6園が公立、4園が私立である。また、 幼稚園は4ヶ所あり、うち2園が公立、2園が私立である。私立幼稚園のうち1園は、 幼稚園型認定こども園である。 地区別に見ると、吉名地区に保育所が1園、竹原地区に保育所が4園と幼稚園が2園、 北部地区に保育所が2園、大乗地区に保育所と幼稚園が1園ずつ、忠海地区に保育所が 2園と幼稚園が1園、となっている。 3 (3)児童数と定員 保育所と幼稚園に通う児童は平成 23 年7月1日現在、市全体で 744 人である。保育 所については、30 人程度の小規模園が3園あり、50 人から 60 人規模の園が多く、最大 でも 90 人を越える規模の園はない。児童数が定員を超える園は4園あり、また、3歳 未満児の割合は保育所全体で 33.9%である。 幼稚園については、市内中心部の2園は 80 人から 130 人の規模であり、残りの2園 は 20 人以下と極めて小規模になっている。 保育所の児童数は平成 15 年をピークに減っており、過去5年はほぼ横ばい状況だが、 賀茂川保育所や大井保育所など、園によっては増加傾向にあるところもある。幼稚園の 児童数は、市全体で平成 9 年の 376 人から平成 23 年の 220 人と過去 14 年で 41.5%減少 しており、平成 15 年からは竹原東幼稚園、平成 16 年からは吉名幼稚園が休園している。 竹原西幼稚園は平成 17 年から3年保育を開始して児童数が増えたが、ここ5年はどの 園も大きな増減はみられない。 表 1. 保育所・幼稚園等の入所児童数・定員 H23.7.1 現在 年齢別児童数 全児 童数 定員 充足率 (%) 13 12 18 13 68 90 75.6 4 9 8 35 30 116.7 3 5 12 16 11 15 62 90 68.9 竹原保育所 2 7 10 4 9 49 80 61.3 中通保育所 3 6 5 15 14 15 58 60 96.7 東野保育所 2 6 4 5 2 22 45 48.9 賀茂川保育所 4 8 8 14 25 27 86 80 107.5 大乗保育園 6 7 7 10 15 7 52 50 104.0 明星保育園 3 8 12 12 13 13 61 50 122.0 忠海東部保育園 3 2 3 5 26 30 86.7 343 (66.1%) 519 605 85.8 ― ― ― 30 18 28 76 140 54.3 ― ― ― ― 11 11 105 10.5 14 33 35 42 127 170 74.7 5 11 90 12.2 17 (7.6%) 208 (92.4%) 225 505 44.6 20.8 193 (25.9%) 551 (74.1%) 744 ― ― 68.6 施設名称 0 才 1 才 2 才 吉名保育所 3 9 大井保育所 2 竹原西保育所 保育所計 竹原西幼稚園 大乗幼稚園 認定こども園 176 (33.9%) 中央幼稚園 ― 聖愛幼稚園 ― ― ― 幼稚園計 保育所・幼稚園合計 3 3 才 4 才 4 8 17 3 8 5 0 3 3 5 才 ※「入所率」は、市全体の 0-5 歳児童数(1,084 人)に対する保育所・幼稚園の入園児童数の割合 4 入所率 (%) ※ ― 47.9 ― 図5.各幼稚園の児童数推移(各年5月1日) 200 150 竹原西幼稚園 竹原東幼稚園 大乗幼稚園 100 中央幼稚園 聖愛幼稚園 3年保育開始 50 休園 0 休園 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 5 吉名幼稚園 (4)施設の老朽化 施設の多くは昭和 40 年から 50 年代に建築され、施設の老朽化は喫緊の課題である。 新耐震基準(昭和 56 年)で建築されている園は、14 園中4園である。耐震診断は、築 年数や建造物の構造などを考慮して、優先順位が高い園から順次行われている。 表 2. 各保育所・幼稚園等の施設(建築物)の現状 施設名称 種 別 事業開始 吉名保育所 公 昭和 38 大井保育所 公 昭和 28 (年) 延床面積 敷地面積 (㎡) (㎡) 鉄筋コン2階建 791 2,411 昭和 60 新耐震基準で建築 木造平屋建 224 595 平成7 新耐震基準で建築 建築物の構造 建築年 耐震診断状況※ 第2次診断結果 園舎:Is 値 0.35 q値 1.18 (倒壊・崩壊の危険性がある) 遊戯室:Is 値 0.20 q値 0.80 (倒壊・崩壊の危険性が高い) 第2次診断結果 園舎:Is 値 0.45 q値 1.14 (倒壊・崩壊の危険性がある) 遊戯室:Is 値 0.61 q値 1.18 (倒壊・崩壊の危険性が低い) 竹原西保育所 公 昭和 49 鉄筋コン2階建 920 2,820 昭和 49 竹原保育所 公 昭和 23 鉄筋コン2階建 825 1,886 昭和 55 中通保育所 公 昭和 28 鉄骨造平屋建 520 1,206 昭和 47 H24 年度以降診断予定 東野保育所 公 昭和 34 鉄筋コン2階建 550 1,393 昭和 54 第2次診断結果 園舎:Is 値 0.96 q値 3.52 (倒壊・崩壊の危険性が低い) 賀茂川保育所 私 昭和 37 鉄骨造2階建 789 1,386 平成 11 新耐震基準で建築 大乗保育園 私 昭和 54 鉄骨造平屋建 450 1,350 昭和 53 明星保育園 私 昭和 23 鉄筋コン2階建 678 1,641 昭和 58 新耐震基準で建築 忠海東部保育園 私 平成 15 鉄骨造平屋建 614 2,907 昭和 44 H24 年度以降診断予定 竹原西幼稚園 公 昭和 25 鉄骨造平屋建 520 2,765 昭和 42 大乗幼稚園 公 昭和 32 鉄骨造平屋建 443 2,316 昭和 46 中央幼稚園 私 昭和 29 鉄骨造2階建 744 1,628 S46 新築 S50 増築 幼児園はS30 聖愛幼稚園 私 明治 43 木造平屋建 403 891 昭和 38 認定こども園 遊戯室は S52 H24 年度以降診断予定 (優先度調査済:優先度3) H24 年度以降診断予定 (優先度調査済:優先度4) ※【耐震診断に関する用語説明】 新耐震基準:昭和 56 年の新耐震基準施行後に建築されたものは、概ね現行の耐震性能を有するとされる。 それ以前に建築されたものについては、耐震性能の確認が必要とされている。 優先度調査:耐震診断を実施する優先度を検討するため、文部科学省が定めた簡易な調査で、 優先度の高いものから順に1〜5までランク付けをする。 第2次診断:柱・壁・コンクリート強度・鉄筋量等から建物の強さと粘りを推定する診断方法。 Is 値: [構造耐震指標]構造物の耐震性能(地震に対する安全性)を数値化したもので、 数値が大きいほど耐震性能が高い。 国土交通省告示第 184 号によれば、第二次診断により算定した値が Is 値 0.6 以上の場合は、地震の震動及び衝撃に対して、倒壊または崩壊する危険性が低いとされ、 Is 値 0.3 以上 0.6 未満は、地震の震動及び衝撃に対して、倒壊または崩壊する危険性があるとされ、 Is 値 0.3 未満は、地震の震動及び衝撃に対して、倒壊または崩壊する危険性が高いとされる。 なお、学校施設については、Is 値 0.7 以上が目標値とされる。 q値: [保有水平耐力に係る指標]地震による水平方向の力に対して、建物が対応する強さを表すもので、 数値が大きいほど良く、1.0 以上が目標値とされる。 6 (5)保育サービス 市内の保育所は公立保育所で生後6ヶ月から、私立保育所で2ヶ月からの児童を受け 入れており、全園で 19 時までの延長保育を土曜日も含めて行っている。市外に通勤す る保護者が全入所者の 29.1%を占めているが、多くの保護者が安心して就労できるのは、 この保育時間の長さに支えられていると考えられる。 幼稚園では、認定こども園である私立の1園は 12 ヶ月から受け入れており、他の2 園は3歳児からの3年保育、残り1園は4歳児からの2年保育を実施している。私立で は 17 時もしくは 18 時までの預かり保育も行っている。 表 3. 各保育所・幼稚園等の保育サービスの現状 施設名称 種 別 受け入れ年齢 受け入れ時間 (平日・土曜共通・延長含む) 吉名保育所 公 6ヶ月〜 7:30〜19:00 大井保育所 公 6ヶ月〜 7:30〜19:00 竹原西保育所 公 6ヶ月〜 7:30〜19:00 ○ 竹原保育所 公 6ヶ月〜 7:30〜19:00 ○ 中通保育所 公 6ヶ月〜 7:30〜19:00 ○ 東野保育所 公 6ヶ月〜 7:30〜19:00 ○ 賀茂川保育所 私 2ヶ月〜 7:30〜19:00 ○ ○ 大乗保育園 私 2ヶ月〜 7:00〜19:00 ○ ○ 明星保育園 私 2ヶ月〜 7:00〜19:00 ○ ○ 忠海東部保育園 私 2ヶ月〜 7:00〜19:00 ○ ○ 施設名称 種 別 受け入れ年齢 受け入れ時間 一時 特別支 (預かり・延長保育含む) 預かり 援教育 竹原西幼稚園 公 3歳児〜 平日 9:00〜14:00 ○ 大乗幼稚園 公 4歳児〜 平日 9:00〜14:00 ○ 私 幼児園 12 ヶ月〜 幼稚園3歳児〜 平日 7:30〜18:00 土曜 8:00〜18:00 ○ ○ 私 3歳児〜 平日 8:00〜17:00 ○ ○ 認定こども園 中央幼稚園 聖愛幼稚園 7 一時 保育 障害児 保育 ○ ○ ○ (6)地域別児童数 各保育所・幼稚園の児童の小学校区別の構成割合を見ると、吉名保育所、大井保育所、 竹原西保育所、聖愛幼稚園はその地域の同じ小学校区の児童がほとんどを占めている。 一方、賀茂川保育所、忠海東部保育園、竹原西幼稚園、中央幼稚園は、さまざまな小学 校区から通園していることが分かる。 また、小学校区別の児童がどこの園に通園しているかの割合を見ると、竹原西小、竹 原小、中通小、仁賀小、忠海西小学校区の児童は、多様な保育所・幼稚園に通園してい ることが分かる。また市外からも全入園児の 5.5%を占める 40 人の児童が通園しており、 特に私立の保育所・幼稚園に多い。 図6.各保育所・幼稚園の地域別児童数(H23.7.1現在) 吉名保育所 67 1 1 大井保育所 32 11 1 竹原西保育所 60 1 1 竹原保育所 8 33 3 4 1 中通保育所 3 7 東野保育所 23 1 賀茂川保育所 45 3 吉名小学校区 竹原西小学校区 16 竹原小学校区 1 11 33 11 45 11 1 大乗保育園 明星保育園 忠海東部保育園 1 22 3 1 42 3 1 11 大乗小学校区 12 忠海東小学校区 10 2 市外 24 大乗幼稚園 仁賀小学校区 忠海西小学校区 2 11 1 竹原西幼稚園 東野小学校区 荘野小学校区 2 43 中通小学校区 32 13 3 3 1 7 3 1 認定こども園 中央幼稚園 6 聖愛幼稚園 42 49 12 4 4 4 5 1 11 0 20 40 60 8 80 100 120 図7.各地域の園別児童数(H23.7.1現在) 11 吉名小学校区 67 竹原西小学校区 32 60 1 竹原小学校区 1 7 3 2 22 33 11 中通小学校区 6 111 3 1 東野小学校区 45 16 8 3 11 3 1 21 32 333 13 1 24 42 1 49 吉名保育所 12 大井保育所 竹原西保育所 11 3 4 竹原保育所 荘野小学校区 45 中通保育所 1 東野保育所 仁賀小学校区 賀茂川保育所 31 1 大乗小学校区 大乗保育園 42 明星保育園 7 4 忠海東部保育園 忠海西小学校区 43 竹原西幼稚園 11 3 4 11 2 忠海東小学校区 大乗幼稚園 認定こども園 中央幼稚園 聖愛幼稚園 10 1 市外 4 3 11 12 5 1 1 2 0 20 40 60 80 9 100 120 140 160 180 2 幼児教育・保育のあり方 本章では、今後の竹原市の幼児教育や保育のあり方全般について、現状や課題を踏ま えた上で、基本的な視点と考え方を総合的に提言する。 (1)地域的な配置 利用者の通園しやすさに配慮して、就学前施設の地域的な配置を考えることは重要で ある。幼稚園児の 36%は自家用車以外の徒歩・自転車・通園バスで通園しており、保育 所の保護者は通勤時の時間的な制約も大きい。 また、同じ小学校に上がる子どもが同じ就学前施設に通うような地域では、子どもた ちも就学後のイメージをしやすく、意欲や展望も持てて、安心感もある。就学前施設と 小学校との連携事業や行事等も実施しやすい利点もある。 さらに、各地域コミュニティーにとっても、就学前施設は重要な存在である。各地域 住民との連携を通じて園での体験活動が充実し、自分の住んでいる地域に愛着と誇りを 持てる子どもに育つと考えられる。交流行事や園外保育で園児たちの姿を見て、地域の 人々が元気になる側面もある。 ただ、特に児童数が減った園を存続するかどうかは、地域の意向よりも、保護者など 当事者の意向や幼児教育のあり方を十分考慮して、統廃合を検討する必要がある。 (2)集団の適正人数 教育・保育の質やサービスを保つには、ある程度の集団規模が必要と考えられ、園全 体で 60 人以上であることが望ましい。少子化で園児数の減少傾向が続くことが予想さ れる中、一定の集団規模を確保するには就学前施設の統廃合の検討は避けられない。保 育所では自家用車で送迎する保護者が全体の8割以上を占める状況であるだけに、車で 通園する場合は多少距離が遠くなっても影響が少ないとも考えられる。 統合に伴い新施設を建てる場合は、ある程度の規模を確保する方が、集約するメリッ トも大きくなると考えられる。将来的な園児数の減少を十分考慮して、長く存続しうる 施設とすることが望まれる。 一方で、大規模になりすぎると、家庭環境も異なる園児たちの個別の状況に対応しき れない等の課題が生じるため、定員は 90 人規模までが望ましい。 また、小規模園は利用者の安心感や満足感を得やすく、地域外から選んで利用されて いる現状もある。すべてを大規模に集約してしまうのではなく、子どもの個性や保護者 の意向に合わせた選択肢を残す意味で、小規模園も残すほうが良い。 しかし、集団の中での成長が期待できないほど小規模になりすぎた園では、統廃合を 検討する必要がある。統廃合の検討を始める基準を明確にする必要があり、この基準を 施設全体で 20 人とする。 10 (3)教育・保育の質 竹原で子育てしたい、竹原の就学前施設に預けたいと考える人を増やすには、竹原の 幼児教育・保育の質が特に重要となる。就学前施設の統廃合に際し、質を確保するだけ でなく、むしろ高める方向に向かうことが望まれる。そのためには、保育所・幼稚園・ 小学校の連携を強化しつつ、市の教育と保育に係わる所管課が緊密な連携を図り、竹原 市の幼児教育・保育で目指すべき子どもの姿を明確にするための協議の場を設置する必 要がある。 また、民間施設も含め各園が長年大切に構築してきた教育・保育内容の多様性を残し、 保護者の意向に応じて選べるような選択肢を確保することも望まれる。公立施設と民間 施設がそれぞれの長所を発揮して、将来の就園ニーズに応える幼児教育・保育を展開し ていくことが求められる。 さらに、一人ひとりの発達段階や特性に応じた教育・保育の充実が重要であるが、特 に、近年増加しつつある3歳未満児に、手厚く家庭的な保育をするため、その充実が求 められる。 (4)教育・保育環境 施設の老朽化が進む園が多い中、1日の大半を園で過ごす児童に安全・安心で快適な 環境を確保するために、各施設の維持・修繕及び改善が必要である。特に、速やかな耐 震診断と改修工事が求められる。 (5)幼保一体化 幼稚園と保育所が一体化すれば、就労の有無にかかわらず施設を利用でき、保育時間 も柔軟に選べるので、保護者にとって利用しやすくなると考えられる。また、今まで幼 稚園が遠かった地域でも、近くの施設で幼児教育を受けることができ、地域の子どもが 同じ園に通所できるようになる。 公立の保育所と幼稚園の一体化により、公立幼稚園の幼児教育と公立保育所の保育を 融合させて、教育と保育を一体的に提供することが可能になる。幼保一体化を具体化す るにあたっては、竹原市の幼児教育や保育のあり方のモデルケースとなるよう、幼稚 園・保育所関係者で互いの良さを十分に活かした施設のあり方を検討した上で設立し、 その後は、他の市内就学前施設にも成果を広げることが期待される。 ※幼保一体化について: 政府は「子ども・子育て新システム」で幼保一体化を推進し、新しい一体型施設を「総合こども園 (仮称)」とし、幼児教育と保育と家庭における養育支援を一体的に提供するとしている。 「総合こども園(仮称)」では、親の就労にかかわらず、満3歳以上児の受け入れを義務づけ、標準 的な教育時間の幼児教育をすべての子どもに保障する。また保育を必要とする子どもには、年齢にか かわらず、保護者の就労時間等に応じて保育を保障する。 11 3 公立幼稚園・保育所の規模と配置のあり方 本章では、出生数や保育需要の動向、施設の老朽化の状況などをもとに、公立就学前 施設の規模と配置について、具体的に提言するとともに、配慮すべき事項について述べ る。 (1)幼稚園・保育所再編の方向性 施設の老朽化と耐震安全性の問題から、公立就学前施設の多くに建て替えまたは大規 模改修の必要性がある。さらに、少子化による児童数減少も一段と進むと予測されるこ とから、適正な集団規模を保つため、公立就学前施設の統廃合は避けられない状況であ ると考える。 また、保護者にとって利便性が高い幼保一体化を進め、公立保育所と公立幼稚園は幼 保一体型施設に順次移行することが適当である。統合による新施設は他の公立施設に先 んじて一体型施設とし、公立幼稚園と公立保育所の両者の良いところを活かした竹原市 の新しい幼児教育・保育のあり方を構築することが必要である。 表 4. 公立保育所・幼稚園の園児数将来推計結果 園児数 H23 年実績 H24 年推計 H25 年推計 H26 年推計 H27 年推計 H28 年推計 H29 年推計 H30 年推計 H31 年推計 H32 年推計 H33 年推計 吉名保 68 人 70 人 65 人 65 人 63 人 59 人 57 人 55 人 54 人 52 人 51 人 大井保 35 人 34 人 35 人 34 人 31 人 31 人 30 人 29 人 29 人 28 人 28 人 竹西保 62 人 62 人 64 人 62 人 57 人 56 人 55 人 53 人 52 人 52 人 52 人 竹原保 49 人 44 人 42 人 41 人 38 人 35 人 35 人 33 人 32 人 31 人 30 人 (各年7月1日、民営化施設含む) 中通保 58 人 55 人 56 人 51 人 53 人 48 人 46 人 45 人 45 人 45 人 44 人 竹西幼 76 人 72 人 71 人 68 人 65 人 61 人 59 人 57 人 56 人 54 人 53 人 東野保 23 人 22 人 23 人 23 人 23 人 20 人 19 人 18 人 17 人 16 人 15 人 忠東保 26 人 22 人 20 人 16 人 14 人 14 人 13 人 13 人 13 人 13 人 13 人 ※小学校区別 0〜5 歳児数の将来推計結果をもとに、現在の各園の小学校区別園児割合が 将来的に変わらないものと仮定して計算 仁賀小学校区は数が少なく推計計算が出来ず、仁賀小学校区の児童数は換算されていない 市外から入所している園児数は換算されていない (2)幼稚園・保育所再編検討の視点 本委員会では、さまざまな視点から竹原市の幼児教育と保育のあり方を議論してきた が、とりわけ公立幼稚園・保育所の再編を検討するにあたっては、「地域的な配置」と 「集団の適正人数」を優先させて検討することとする。 この2つの視点を重視して配置と規模を検討した結果、具体案は以下の通りになった。 12 (3)各地区の幼稚園・保育所の規模と配置のあり方 吉名地区 吉名保育所は将来的に一定規模の児童数が見込まれ、新耐震基準で建築されているた め、現状を維持する。 竹原地区 地区内には老朽化した施設も多く、各園で児童数の減少が進んでいることから、竹原 保育所、竹原西保育所、大井保育所、中通保育所、竹原西幼稚園の公立5園の統廃合の 規模と配置を検討する。 新施設を建設するには、平成 24 年度に計画策定と保護者等への説明、用地選定、平 成 25 年度に設計と用地確保、平成 26 年度に建設、平成 27 年度から供用開始が最短と 考えられる。この供用開始予定の平成 27 年の児童数推計を定員設定の基準とし、竹原 地区の推計就園児童数 336 人を民間施設と公立施設の両方で担う。 大井保育所は、新耐震基準で建築されており、小規模園のため、集団規模の多様性を 確保するために、現状のまま 30 人定員で存続する。 その他4園のうち既存の1園を耐震補強改修して存続する。残り3園を統合して幼保 一体型総合施設を新設する。再編する2園については、集団の適正人数の観点から、60 人から 90 人規模とすることが望ましいが、定員管理については待機児童等が発生しな いよう円滑に再編するための措置が必要である。 北部地区 東野保育所は、今後 10 年以内に入所者が 20 人を切ることが予測されるが、20 人を下 回った時点で、統廃合の検討を開始する。 忠海地区 忠海東部保育園については、児童数が 20 人を下回ることが予測されるが、民間運営 施設のため、統廃合の検討については運営団体と協議する。 ※大乗地区の大乗幼稚園については、現在保護者・地域との協議中である。 13 表 5.市内保育所・幼稚園の再編具体案 地区名 吉名 現在の配置 公 公 公 公 公 公 竹原 民 公 民 民 公 民 民 民 北部 大乗 忠海 吉名保育所 大井保育所 竹原西保育所 竹原保育所 中通保育所 竹原西幼稚園 公立施設再編方針 現状維持 現状維持 再編後の配置 吉名保育所 大井保育所 4園→2園 既存施設1園 (既存1園改修と新設1園) 幼保一体型施設1園 認定こども園 認定こども園 中央幼稚園 東野保育所 賀茂川保育所 大乗保育園 大乗幼稚園 忠海東部保育園 明星保育園 聖愛幼稚園 中央幼稚園 東野保育所 賀茂川保育所 大乗保育園 大乗幼稚園 忠海東部保育園 明星保育園 聖愛幼稚園 20 人以下で統廃合を検討 地域との協議中 統廃合の検討時期を協議 (4)公立就学前施設の規模と配置に関する計画の策定の際に配慮すべき事項 ア) 計画の策定にあたっては、保護者等の理解を十分に得るように配慮し、統合による 新施設が竹原市の就学前施設のモデルとなる魅力ある幼保一体型施設となるように十 分検討すること。 イ) 統廃合を実施するにあたっては、新施設に統合直後は統合前の児童数を勘案した経 過措置(新施設の一時的な定員増員等)を行うことにより、従前施設の児童等の不利 益にならないようにすること。 ウ) 竹原地区で改修により存続させる既存施設については、委員会の中で竹原西保育所 が望ましいとの意見が出されたが、新施設の建設場所等を考慮して検討すること。 エ) 児童の安全を確保するために、各施設の耐震強度や老朽化の状況を正しく把握し、 必要に応じて日常的な営繕対応をしつつ、建て替えや改修を急ぐこと。また、新施設 の建設用地の選定や建物の形状・設備など、災害に関わる対策等を考慮した施設にす ること。 14 4 資料 竹 福 第 504 号 平成23年7月5日 竹原市幼児教育・保育あり方検討委員会委員長 様 竹原市長 小 坂 政 司 直 樹 竹原市教育委員会 教 育 長 前 原 竹原市幼児教育・保育のあり方検討について(諮問) 地方自治法第2条第4項及び次世代育成支援対策推進法第8条に基づき策定された 「竹原市総合計画」及び「竹原市次世代育成支援地域行動計画」により,貴委員会の 意見を求めます。 (諮問理由) 第5次竹原市総合計画の基本計画第1章第1節において,「安全で快適な施設づく り」として保育所等の適正配置の方針を定め,施設の整備・充実を図る事を謳ってい ます。また,竹原市次世代育成支援地域行動計画(後期計画)の基本計画目標1にお いて「保育サービスの充実」として対象児童人口の推移などに対応しながら,幼稚園 や認定子ども園も含めた市内保育施設を総合的に検証し,保育所の適正配置と効率的 な運営について検討委員会などを組織して協議をすすめることになっています。 ついては,本市における子どもを取り巻く状況や社会経済情勢の動向及び出生数や 保育需要の動向,施設の老朽化の状況などをもとに,幼児教育及び保育のあり方につ いて総合的な検討を行うとともに公立就学前施設の規模や配置のあり方に関しての必 要な事項について検討していただくよう諮問いたします。 15 竹原市幼児教育・保育あり方検討委員会設置要綱 (設置) 第1条 本市において,幼児期の子どもの育児をしている人が安心して働くことのできる教育・ 保育環境の整備・充実と様々な子育て支援サービスの充実を図るため,就学前施設のあり方に ついて総合的な検証を行い,公立就学前施設の規模や配置のあり方及び教育・保育のあり方に ついて検討を行うことを目的に,竹原市幼児教育・保育あり方検討委員会(以下「委員会」と いう。)を設置する。 (任務) 第2条 委員会は,本市における子どもを取り巻く状況や社会経済情勢の動向及び出生数や保育 需要の動向,施設の老朽化の状況などをもとに,幼児教育及び保育のあり方について総合的な 検討を行うとともに公立就学前施設の規模や配置のあり方に関しての必要な事項について検討 し,その結果を市長に報告する。 (組織) 第3条 委員会は,委員15人以内で組織する。 2 委員は,次に掲げる者のうちから,市長が委嘱する。 ⑴ 学識経験を有する者 ⑵ 就学前施設の保護者の代表者 ⑶ 住民自治組織の代表者 ⑷ 私立保育園及び私立幼稚園の代表者 ⑸ 公立保育所及び公立幼稚園の代表者 ⑹ 前各号に掲げる者のほか,市長が認める者 (委員の任期) 第4条 委員の任期は,委嘱の日から市長に対して提言する日までの期間とする。ただし,補欠 の委員の任期は,前任者の残任期間とする。 (委員長及び副委員長) 第5条 委員会に,委員長及び副委員長1人を置く。 2 委員長は,委員の互選により選出し,副委員長は,委員のうちから委員長が指名する。 3 委員長は,会務を総理し,委員会を代表する。 4 副委員長は,委員長を補佐し,委員長に事故があるときは,その職務を代理する。 (会議) 第6条 委員会の会議は,委員長が招集し,委員長が議長となる。 (庶務) 第7条 委員会の庶務は,市民生活部福祉課及び教育委員会において処理する。 (その他) 第8条 この要綱に定めるもののほか,委員会の運営に関し必要な事項は,市長が別に定める。 附 則 この要綱は,平成23年6月1日から施行する。 16 竹原市幼児教育・保育あり方検討委員会委員名簿 (敬称略,五十音順) 選出区分 氏 名 各種団体 池 田 文 昭 施設関係者 奥 元 睦 美 施設関係者 鴨 宮 弘 宜 施設関係者 柄 崎 佳 之 施設関係者 國 竹 鈴 子 各種団体 要 職 等 備 考 竹原市民生委員児童委員協議会主任児童委員 竹原市子育て支援ネットワーク委員会委員 竹原市大井保育所長 学校法人 本長寺学園 中央幼稚園理事長 社会福祉法人賀茂川福祉会 賀茂川保育所長 竹原市立大乗幼稚園長 佐々木 泰 治 竹原市立中通小学校校長 保護者代表 城 本 宏 美 聖愛幼稚園保護者代表 各種団体 竹 下 純 子 竹原市女性連絡協議会副会長 各種団体 谷 田 裕 彦 保護者代表 檀 上 雅 紀 施設関係者 長 岡 蕙 樹 学識経験者 七 木 田 敦 保護者代表 長谷川 孔 教 賀茂川保育所保護者代表 保護者代表 松 原 恵 竹原西幼稚園保護者代表 保護者代表 森 木 聡 人 竹原西保育所保護者代表 竹原市自治会連合会長 竹原市青少年育成竹原市民会議会長 吉名保育所保護者代表 社会福祉法人 明星福祉会 明星保育園長 広島大学大学院教育学研究科 付属幼年教育研究施設教授 17 副委員長 委員長 検討経過 開催年月日 会議・調査の概要 【第1回検討委員会】 平成23年 7 月 5 日 委員会設置、進め方の確認 現状把握、課題や検討事項の洗い出し 【関係者ヒアリング調査】 8 月 4 日 適正配置に向けての課題を整理 8 月11日 対象:幼稚園4園、保育所9園、小学校9校、 地域子育て支援センター3ヶ所 8 月29日 9 月28日 9 月30日 10月13日 12月15日 平成24年 2 月 8 日 【第2回検討委員会】 現状把握、課題の点検・協議 【検討委員ワークショップ】 論点の整理と優先順位の検討 【第3回検討委員会】 公立就学前施設の規模と配置について協議 【第4回検討委員会】 報告書素案の検討 【第5回検討委員会】 報告書案の最終検討と承認 18
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