第1章 設計マニュアル 本 編 - 神戸市

第3章
施
工
3-1
管
理
編
3・1.管きょ更生の施工管理
1. 適
用
本マニュアル(案)は、下水道施設のうち、汚水管路施設を反転工法または形成工
法により、自立管または二層構造管で改築・修繕する際の施工管理に適用する。
2. 総
説
管きょ更生の施工管理については、一般の下水道工事に関する施工管理に加え、
管きょ更生で特に必要となる標準的な考え方が「管きょ更生工法における設計・施
工管理の手引き(案)、平成 20 年 9 月、(社)日本下水道協会」に示されており、本市
においてもこれに準じて行うことを原則とする。
また、管きょ更生の各工法にのみ適用される特殊性を反映した施工管理手法につ
いては、それぞれの工法の「施工管理マニュアル」を引用する。
管きょ更生の一般的な施工管理を分類すると以下のように整理される。
品質管理
施工管理
管きょ更生の施工管理
出来形管理
安全管理
および環境対策
図3-1.管更生の施工管理フロー
なお、本市ではこれらの施工管理に加え、事前の試験施工により品質等の確認を
行うことを原則とする。
3-2
3・2.品質管理
1.更生材の品質確認
更生材の品質確認は、製造証明書および品質証明書により行う。
更生材は、使用される補強繊維積層の規定や含浸する樹脂量が、管径および仕
上がり厚等の仕様に対して硬化形成後に所定の条件を満たすように計算して作
成されており、樹脂含浸の半製品状態で工場から出荷され、現場に搬入される。
更生材の品質管理は、搬入された材料が適正な品質管理のもとで製造され、メ
ーカーが品質を保証する材料であることを確認することで行う。
(1).製造証明書
① 適正な管理のもとで製造され、搬入前に規格検査がなされた製品であることを
証明する製造証明書の提出を義務付け、これにより搬入される更生材の品質を
確認する。
② 製造証明書は、搬入するスパン毎に提出するものとし、規格品であることが確
認できるデータ項目の記入を原則とする。
a). 納入製品のラベル表示例
・品
名
・製品番号、梱包番号
・製造年月日
・製品寸法(①口径、②厚み、③長さ)
・メーカー名
b). 製造証明書の項目例
○製品事項
・品名、規格、数量
・製造番号、材料毎のロット番号等
・製造年月日
・検査年月日
・メーカー名
○検査項目
・シート(クロス) 厚さ、幅、外観、規格など
・補強織物
厚さ、幅、外観、規格など
・フィルム
厚さ、幅、外観、規格など
・更生材としての検査
曲げ強さ、曲げ弾性率、管剛性等の審査値。
製品重量、ガラス繊維の含有率等。
3-3
【製造証明書の例】
例-1
例-3
(パルテムSZ工法)
例-2
(SDライナー工法)
3-4
(シームレス工法)
(2).更生材の品質証明書(要求性能評価書)
更生材の物理特性や耐久性の試験データ等(設計強度、耐久性、水理性能、そ
の他品質を保証する資料)をまとめ品質証明書とし、更生材が要求性能を満たす
ことを確認する。
①耐荷能力
1)更生管の設計厚の根拠となる構造計算
2)設計強度(設計曲げ強度および設計曲げ弾性係数の保証値(設計値)の根拠と
なる次の試験結果および資料
※耐震設計を行う場合には、設計強度(引張強度・引張弾性係数および圧縮
強度・圧縮弾性係数の保証値(設計値)の根拠となる次の試験結果および資料
・短期曲げ強度試験
〔ガラス繊維補強
〔上記以外の材料
・短期曲げ弾性係数試験
〔ガラス繊維補強
〔上記以外の材料
・長期曲げ強度試験
〔ガラス繊維補強
〔上記以外の材料
・長期曲げ弾性係数試験
〔ガラス繊維補強
〔上記以外の材料
・引張強度・引張弾性係数試験〔耐震設計の場合
・圧縮強度・圧縮弾性係数試験〔耐震設計の場合
JIS
JIS
JIS
JIS
JIS
JIS
JIS
JIS
JIS
JIS
K7038・JIS
K7171 ※-1 〕
K7032・JIS
K7171 ※-1 〕
K7039・JIS
K7171 ※-2 〕
K7035・JIS
K7116〕
K7161〕
K7181〕
K7171 ※-1 〕
K7171 ※-1 〕
K7020〕
K7020〕
※-1
JIS K7171 による短期試験値に、現場状況に応じた各更生工法の安全
率(現場硬化による品質のバラツキ等)を考慮した保証値を短期保証値
とする。
全線ライニング、取付け管ライニングの施工における品質検査は、施
工後または試験施工時の短期試験値が短期保証値を上回ることを確認
する。(P3-7 3.更生管の品質検査 参照)
※-2
JIS K7171 による短期試験値に、現場状況に応じた各更生工法の安全
率(現場硬化による品質のバラツキ等)を考慮した保証値を短期保証
値とし、規格品の安全率(日本下水道規格を参照)で除して 50 年後の
曲げ強度を算出する。
ただし、ガラス繊維を使用する場合で長期曲げ試験が完了していない場合
は、短期及び長期の曲げ試験はガラス繊維補強以外の材料に示す試験により
保証値を求めるものとする。
3)自立管では、新管と同等以上の外圧強度を確認した試験結果および資料
・既設管径φ600 ㎜以下 JSWAS K-1 による偏平試験
試験片の長さを1mに換算して算出された線荷重が JSWAS K-1 に示す線
荷重以上であることを確認する。
・既設管径φ700 ㎜以上 JSWAS K-2 による外圧試験
試験片が破壊したときの荷重が JSWAS K-2 に示す 2 種管の破壊外圧値以
3-5
上であることを確認する。
②更生管の耐久性および水理性能を保証する次の試験結果および資料
・耐薬品性試験
PVC〔JSWAS K-1〕または PVC 以外〔JSWAS K-2〕
・耐摩耗性試験
〔JIS K7204〕または〔JIS A1452〕
・耐ストレインコロージョン試験〔ガラス繊維補強材 JIS K7034・JIS K7020〕
・耐劣化試験(ガラス繊維補強無し材料)
〔 JISK7116〕または 〔 JISK7115〕を準用した試験
・水密性の保証 (JSWASK-2 に準拠した試験)
・水理性能(粗度係数 n=0.010 以下を確認)
③その他の要求性能項目等
・サポート向上係数測定試験〔二層構造管〕の試験結果および資料
・耐高圧洗浄性(洗浄圧 20MPa)の保証
①~②の試験結果については、審査証明等で証明されることを原則とする。
3-6
2.更生材の保管および搬入
更生材の保管および搬入は、適正な環境状況のもとで行う。
施工前の更生材は、環境条件や保管条件によって性能が低下および劣化する恐
れのあるものであり、施工前の品質管理の良し悪しが施工後の更生管の品質に多
大な影響を与える。そのため、施工前に損傷および変形等を点検し、硬化の原因
となる高温および光等の環境下で保管、搬入しないなどの措置を講じる。
3.更生管の品質検査
更生管の品質検査は、施工後に実施する下記の物性試験結果と、施工前に品質証
明書の中で確認した短期保証値の比較および耐薬品性能により行う。
試験項目:(ⅰ) 曲げ強度試験(自立管のみ)
(ⅱ) 曲げ弾性係数試験
(ⅲ) JSWAS K-1 または JSWAS K-2 による耐薬品性能試験
施工した更生管の品質は、現場で採取したテストピースを用いた物性試験によ
り確認する。
更生管の品質検査は、以下の要領で行う。
①試験片の採取
当該現場の硬化作業完了後に試験片を以下の要領で採取する。
・熱硬化性樹脂:マンホール管口に突き出た部分の更生管きょ両端管口の管
底部付近から切断片を採取させる。
・熱可塑性樹脂:マンホール管口に突き出た部分の更生管きょ両端から切り
取り採取させる。
ただし、上記による採取ができない場合は、請負者から施工承認申請書の
提出を受け了解したうえで、当該現場内において別な方法で試験片を採取さ
せる。
②採取頻度
・施工前試験では本施工を行う班ごとに、管径ごと、材料仕様に変更がある
ごととする。
・本施工では、施工日、施工班が異なるごととする。
試験片の採取にあたっては、監理技術者または主任技術者等に立会わせ、
試験片に検印する。
③現場で監督員の指示により採取したテストピースを使用し、公的試験機関等
または監督員の立ち会いのもとで試験を行うことを原則とする。
④試験結果と硬化の確認
3-7
施工完了日と試験日を把握した上で、下記の項目を確認する。
ⅰ)曲げ強度値が設計曲げ強度(申告値)を上回る
ⅱ)曲げ弾性係数(短期)の試験結果にクリープ係数(申告値)を乗じた値
が長期曲げ弾性係数(申告値)を上回る
表3-1.更生後の曲げ強度および曲げ弾性係数の試験方法
試験規格
試験方法
確認方法
JIS K 7171
現場で採取した更生材を使用して
3点曲げ試験により曲げ強度およ
び曲げ弾性係数を測定する。
更生後の短期試験値が品質証明書
に示される短期保証値を上回るこ
とを確認する。
ⅲ)耐薬品性能試験
・熱硬化性樹脂では、JSWAS K-2 の試験方法で、質量変化率±0.3%以内
・熱可塑性樹脂では、JSWAS K-1 の 試験方法で、質量変化量±0.2mg/㎝ 2 以
内
表3-2.
試験規格
耐薬品性試験の区分
試験方法
確認方法
JSWAS K-1
各種の水溶液(60±2℃)に 5 質 量 変 化 度 の 範 囲 が 各 試 験
時間浸せきし、質量変化度 液ともに、±0.2mg/cm 2 以内
(mg/cm 2 /5hr)を測定する。 でなければならない。
JSWAS K-2
各種の水溶液(60±2℃)に 5 質 量 変 化 率 の 範 囲 が 各 試 験
時間浸せきし、質量変化率 液ともに、±0.3%以内でな
ければならない。
(%)を測定する。
表3-3.試験液の純度および濃度
試験液の種類
JSWAS
K-1 K-2
試験液の純度および濃度
水
○
○
蒸留水またはイオン交換水
塩化ナトリウム溶液
○
○
JISK8150[塩化ナトリウム(試薬)]の塩化ナトリウムの 10%水溶液
硫
酸
○
○
JISK8951[硫酸(試薬)]の硫酸の 30%水溶液
硝
酸
―
○
JISK8541[硝酸(試薬)]の硝酸の 40%水溶液
○
○
JISK8576[水酸化ナトリウム(試薬)]の水酸化ナトリウムの 40%水溶液
水酸化ナトリウム水溶液
出典:下水道用硬質塩化ビニル管(JSWAS K-1)、2002 年、(社)日本下水道協会
下水道用強化プラスチック複合管(JSWAS K-2)、(2000 年、(社)日本下水道協会
なお、取付け管については上記の試験項目は試験施工(施工前試験)時に確認し、
施工後の品質検査は、取付け管口を含めた位置で圧気試験により止水性の確認を
行う。
3-8
3・3.施工管理
1.専門技術者の配置
施工現場には、施工班ごとに管更生の専門技術者が常駐する。
管きょ更生工法の施工にあたっては、施工管理手法が従来の管布設工事と異な
るため、施工する工法を熟知した専門技術者が常駐し、適切な施工管理を行うこ
とが必要となる。よって、各更生工法協会等による技術者育成の施工技術習得研
修会等に参加し、技術を習得したことを証明する専門技術者証を保持する者の常
駐と、証明書の提示を施工班ごとに義務付ける。
2.事前調査および前処理工等
更生材の要求性能を十分発揮し、適正な更生管を構築するため、事前調査および
前処理工を管きょ更生前に実施する。
(1).事前調査
① 本工事の施工に際し、地下埋設物の状況、交通事情、地域住民の生活環境につ
いて現地調査を行い、その結果をもとに施工計画を立案する。
② 施工区間の現況地盤高、既設管きょ高および断面、マンホール種別・形状、既
設汚水ます・取付け管、前処理の箇所、既設雨水排水施設等を十分に調査し、設
計図書と照合の上、施工計画書を作成する。
③ 工事に支障となる流入管路や取付け管からの流入汚水について調査を行い、現
況排水に支障とならない範囲で水替が実施できるように、水替施工計画を立案す
る。
④ 取付け管の全数調査を実施し、既設汚水ますの位置・深さ、取付け管延長・曲
がりの有無および取付け管更生工事施工の可否等をテレビカメラ調査および圧
気試験等により確認する。
(2).前 処 理 工
① 施 工 に 先 立 ち 、管 き ょ 内 を 高 圧 洗 浄 車 等 で 洗 浄 し 、本 管 更 生 の 施 工 が 円 滑 に
行 え る よ う に す る 。 な お 、 洗 浄 水 の 圧 力 は 、既 設 管 の 劣 化 状 態( 腐 食 等 )に 応
じて慎重に選定する。
② 事前調査により確認された異常箇所の前処理工について、前処理工実施
計 画 書 を 作 成 す る 。 特 に 「浸入水A、B」に つ い て は 、 更 生 管 の 硬化不良と
なり硬 化 後 の 凹 凸 の 原 因 と な る た め 止水を行う。
3-9
(3).水 替 工
① 施 工 に あ た っ て は 現 場 に 適 し た 設 備 や 方 法 を 採 用 す る も の と し 、水 替 工 施 工
計画書を作成する。
② 不明水により流量が大幅に増加することが考えられることから雨天時の流量
についても考慮し、施工計画を立案する。特に、◎400㎜以上については、極
少量の雨によって水替えポンプによる対応が不可能になる場合も考えられるの
で施工区間の流域等の確認を行い、上流区域の気象状況についても常に注意する。
3.施工前試験
硬化形成後の更生管の品質が施工班ごとにバラツキなく適正に管理されるかを確
認するため、本施工の前に施工前試験を実施する。
熱硬化および光硬化タイプの更生材では、使用される繊維層の規定や含浸する
樹脂量が、管径、仕上り厚等の仕様に対して硬化形成後に所定の条件を満たすよ
うに計算して構成されており、樹脂含浸の半製品状態で工場から出荷され、現場
に搬入される。
したがって、半製品状態の更生材料を施工現場で製品にするため、施工管理は
作業員の力量に左右されるところが大きい。これは、現場ごとに気温、スパン長、
既設管の劣化状況(特に浸水水)、作業時間などの状況が違うため、各更生工法の
施工マニュアルに従って施工を行ったとしても、作業員の経験や技術力により品
質の確保が難しいといえる。
また、各更生工法協会で実施する技術者育成の施工技術習得研修会等に参加し、
技術を習得した専門技術者においては、各協会ごとに講習内容が違い、一律に高
い技術力が習得されているとはいえない。
このようなことから、本施工を実施する施工班を構成する作業員の技術力によ
る製品品質を確認するため施工前試験を実施することとする。なお、施工前試験
を実施する場所は、機材などが整った各工法協会の工場で実施するのではなく、
本施工現場に近い場所で実施することが望ましい。
本管ライニングの試験の内容は、次のとおりである。
①原則として、監督員の立会いのもとで試験施工および物性試験を行う。
②試験項目は、JIS K7171による曲げ強度(自立管のみ)と曲げ弾性係数の試験、
サポ-ト向上係数測定試験(二層構造管のみ)、JSWAS K-1またはJSWAS K-2
による耐薬品性能試験およびその他必要と認めるものとする。
③硬化形成中の温度および圧力等の管理デ-タを、チャ-ト紙に記録し、提
出する。
④更生管は、管内清掃により更生管内面の損傷や剥離等が発生しないこと
を確認するため洗浄圧20.0Mpaで耐高圧洗浄性試験を行う。
取付け管ライニングの試験の内容は、次のとおりである。
①原則として、監督員の立会いのもとで試験施工および物性試験を行う。
3-10
②試験項目は、JIS K7171による曲げ弾性係数の試験、JSWAS K-1またはJSWA
S K-2による耐薬品性能試験およびその他必要と認めるものとする。
③硬化形成中の温度、圧力、光の照射時間等の管理データをチャート紙
に記録し、提出すること。
4.施工管理
管きょ更生の施工管理は、各種工法の特性を反映し、適切に行う。損傷、シワお
よび剥離等の発生を防ぐこと、ならびに管きょ更生後の耐荷能力および耐久性の確
保等を目的とし、施工計画書に示す挿入速度、硬化圧力、拡径、硬化温度、硬化時
間等を現場で確認し、状況等を記録することにより行う。
(1).硬化施工の管理
① 硬化温度や圧力等について、各工法の硬化施工管理方法を施工計画書に明記し、
これに基づいて、更生管が規格通り形成されるように継続的に管理する。
② 硬化施工の温度測定は、更生管の形成が適切に管理できる箇所で測定すること
とし、温度・圧力・スチレン濃度等の管理を確実に実施する。
③ 加熱温度や加熱時間、保持圧力、ガス濃度等は、チャート紙により記録(チャ
ート紙に記録できない項目は、記録を行うとともにゲージ等を写真撮影)し提出
する。
(2).チャート紙の記録内容
加熱温度、加熱時間、保持圧力等の管理のために、チャート紙の記録を提出す
ることを原則とする。記録は、全てのスパンとし、記録内容は以下の項目程度を
必要項目とする。
【表示項目】
①施工年月日
②路線名
区間
③計測点
④時間
⑤加熱温度
⑥保持圧力
マンホール№
温度、圧力等の記録が同一チャート紙で記録出来ない場合は、別途の記録用紙
でもよいが、時間の経過が識別できるチャートであることを原則とする。また、
チャート紙に記録できない場合は、記録とともにゲージ等の写真撮影を行う。
チャート記録の機器は、各工法により管理方法が異なるため、統一的なチャー
トの提出は困難である。このため、各工法で採用している記録方法について施工
計画書に明記する。
(3).マンホール管口の止水処理
① マンホール管口の止水処理は、エポキシ系樹脂によるパテ仕上げとし、更生
管の収縮等による剥離要因に注意する必要があることから翌日の施工とする。
3-11
季節により硬化時間の差が大きいので、夏用・冬用の材料の使用分けに注意
する。概ね 20 ゚ C 前後で標準硬化時間が規定されているため、現場の気温によ
り想定硬化時間を考慮する。また、更生管の硬化完了後すぐのパテ仕上げは、
将来剥離するケースが多い。硬化直後の更生管は、収縮が収まっておらず最低
1日置いた後に、管口処理を行うのが望ましい。
本市では、単スパンの場合などで、施工完了時の初期収縮が大きいためマン
ホール内に 5 ㎝程度更生管を出して施工(品質確認試験で最大 11 ㎜程度の収
縮が確認された工法がある)し、翌日以降に管口処理を行うこととする。
なお、この管口処理については、耐震上、マンホールと管きょの接続部の抜け
出しにも有効であると考えられるが、維持管理を考慮して最大 10 ㎝までとする。
② 更生管と既設管の隙間からの浸入水を止水するため、その他の止水対策とし
て水膨張性シールの併用等を考慮する。
より確実に管口の止水を行うため、既設管と更生管の隙間に水膨張性ゴムパ
ッキンを使用する等の止水対策を施すのが望ましい。
工法によっては、管口の止水対策として、はじめから実施している工法もあ
るが、その一方で既設管と更生管の剥離を促進するため使用は好ましくないと
する工法もあるので、採用に当たっては注意を要する。
なお、止水パッキンとしては水膨張性シールの使用が多いが、採用する場合
は、以下の点に注意する事が必要である。
・下水管路での使用に耐えうる品質(耐久性、耐薬品性等)が試験データに基
づき保証されること。
・止水パッキンは必ず管口の既設管内面の全周囲にセットすること。
・パッキンの厚さは、硬化後の更生管の形成に影響を与えるような厚さは使用
しないこと。
(流下の阻害に注意。膨張を考慮すると製品厚としては、最大2㎜以下とする。)
///////////
///////////
パテ仕上げ
水膨張シール
5cm程度
既設管
///
///
更生管
///
インバート
゚・。・゚・。・゚・。・゚・。 ・゚・。・゚・。 ゚・。・゚・。
。
。
。
。
。
。
0000
000
図3-2.管口処理の施工例
3-12
///
既設管
(参
考)
1.硬化タイプ別施工管理事項の例
【蒸気加熱タイプの工法】
①上下流管口、テストピース採取位置での温度管理
②蒸気導入側、排出側の圧力管理
③温度管理と圧力管理の時間
④有毒ガス・可燃ガス等およびCO濃度
【温水加熱タイプの工法】
①上下流管口、テストピース採取位置での温度管理
②ボイラー部での圧力管理
③温度管理と圧力管理の時間
④有毒ガス・可燃ガス等およびCO濃度
【光硬化タイプの工法】
①UVトレーンでの温度管理(2箇所)
②圧力管理
③送気温度および送気量
④有毒ガス・可燃ガス等およびCO濃度
2.硬化タイプ別の温度管理箇所の例
【蒸気加熱タイプの工法】
管路の施工の場合に、更生材を挿入する側を発進マンホール、抜ける側を到達
マンホールとすると、加熱硬化施工時の温度確認が可能な箇所としては、以下の
図のように考えられる。
ボイラー車
蒸気放 出
蒸気加熱
①
発進マンホール
管更生施工スパン
底部はドレン発生に注意
図3-3.蒸気加熱温度管理概要図
3-13
②
③
到達マンホール
表3-4.蒸気加熱温度管理位置
記号
測定位置
①
発進マンホールの管口
②
到達マンホールの管口
③
供試体作成位置
備
考
(管理に必要な場合)
温度の変化は、まず発進マンホール部から温度上昇し、時間差があるが到達
マンホール側へと温度上昇循環して行く。そして、時間経過とともにこの温度
差はほとんど無くなってくる。①、②の温度誤差がほとんど無ければ管内の硬
化物の管理温度として確認が可能となり、この温度をもって管理温度とする。
また、供試体を現場作成する場合は、③の供試体の温度管理も行うこと。
メモ:ドレンの発生
ドレンとは蒸気が管壁で冷却されて結露するものであり、温度ムラを招
く。温度ムラは硬化形成に影響を与える恐れがある。このため蒸気加熱の
工法はドレンを排水して適正な管理を行う必要がある。
【温水加熱タイプの工法】
温水加熱のため温度の変化は、循環ホース等により温水を送り循環させて温
度を上昇させる。温水は先頭側(到達部)から管内に出され、発進側へ循環させ
て戻す。循環により時間経過とともに温度差はほとんど無くなる。温水加熱の
ため、場所による温度誤差は余り発生しにくいメリットがある。①、②の温度
をもって管理温度とする。
温水槽
温水槽へ循環
①
管更生施工スパン
②
③
温水循環加熱
発進マンホール
到達マンホール
図3-4.温水加熱温度管理概要図
試供体を現場作成する場合は、③の試供体部の温度記録も当然必要となる。
また、温水加熱の場合は、管内温水を循環させて徐々に高温にして行くため外
部の温水槽の温度管理も必要であり、これも管理する必要がある。
3-14
表3-5.温水加熱温度管理位置
記号
測定位置
備
①
発進マンホール管口
②
到達マンホール管口
③
試供体作成位置
考
(管理に必要な場合)
【光硬化タイプの工法】
この工法は、光硬化のためUV照射により反応硬化となり、循環加熱工法の
ように管口部での温度管理はあてはまらない。
温度管理は、管内用照射装置(UVトレーン)に組み込まれた温度センサーに
より管内表面温度を2箇所管理し、全線にわたる温度管理を行っている。工法
により、この表面温度により照射時間(照射移動速度)を決定し自動または手動
牽引している(硬化は照射時間により決定されるため、温度管理は硬化反応温
度を確認することとなり、循環加熱工法の温度管理とは若干意味合いが違うと
考えられる)。光照射部分での内部温度管理となるため、温度差は生じない。
図3-5.光硬化イメージ図(例:シームレスシステム)
メモ:光UV硬化工法の注意事項
光硬化では遮光密閉空間での施工を余儀なくされるため、樹脂溶剤であ
るスチレン等の揮発性物質に対して細心の管理が必要である。
管きょ更生の硬化施工管理は、更生管の加熱温度および時間等の状況を、どのよう
にして測定管理し、硬化施工を実施しているか把握し、確認することである。
また、硬化温度の管理は、各工法ごとに標準工程を決定しており、その規準を基に
現場での外気温などとの調整を考えて施工しているのが実状である。基本的な硬化ス
ケジュール等については施工計画書に明記させる必要がある。
3-15
3・4.出来形管理
1.更生管厚の測定
全線ライニングの更生管厚の測定は、1スパンの上下流マンホール管口付近で管
きょ更生後に行う。
(1).測定位置
更生管厚の測定は、上下流マンホール管口付近とし、1スパン毎に実施する。
測定位置は更生材の縫製部を除き、図3-6に示す6箇所での計測を原則とする。
30°
330°
D2
更生管
D1
270°
既設管
90°
D3
210°
150°
図3-6.更生管厚および仕上がり内径を測定する位置の一例
出典:「管きょ更生工法における設計・施工管理の手引き(暫定版)
」(平成 19 年 6 月)
、(社)日本下水道協会
(2).更生管厚
出来形管理に用いる更生管厚は、インナーやアウターフィルムを除く更生材本
体の硬化後の仕上がり厚とする。
出来形管理としては、6箇所の平均管厚が呼び厚さ以上で、かつ上限は+20%
以内とし、測定値の最小値は設計更生管厚以上とする。
【設計厚と更生管厚(仕上がり厚)の管理】
設計厚は、構造計算により必要最低厚を求め、それ以上の性能を有する製品
厚をもって設計厚としている。
設計上の更生管厚とは、本体の必要厚さをもって決定しているが、更生工法
によっては、アウターフィルムやインナーフィルムを併用する工法もある。
この場合、フィルム厚は小口径管の場合は、せいぜい 0.3mm 程度と考えられ
るが、仕上がり厚としては、これらのフィルム厚を含まない厚さでなければ危
険側の仕上がりとなるケースもありうるので注意を要する。
また、施工厚が設計厚に比して余りにも過大な場合も問題であり、最大施工
厚としては、設計時の現況流下能力を下回る断面にならないことを原則とする。
(P2-18 更生管の許容管厚 参照)
3-16
2.出来形管理
管きょ更生の出来形確認は、目視およびTVカメラ撮影により行い、欠陥や異常
のないことを確認する。
出来形確認は、施工等の不良が原因で発生する更生材のシワ、たるみ、剥離、漏
水等の欠陥や異常箇所がないことを目視およびTVカメラ等で行う。なお、撮影し
たフィルム類は、出来形管理報告書等に添付する。
3-17
3・5.安全管理および環境対策
管きょ更生の安全管理および環境対策は、管きょ更生特有の施工方法を考慮し、
適切な対策を講じる。
管きょ更生工法は既成市街地での施工となるため、施工に伴う周辺への安全管理
が必要である。また、作業環境がマンホールあるいは管きょ内という特殊な条件下
であることから、環境対策が必要となる。
安全管理としては、管口処理の際に発生する粉塵対策、防火・防爆および排出熱
対策等がある。
環境対策としては、更生材の硬化作業に伴う蒸気熱および蒸気排出に伴う騒音へ
の対策、温水の処理対策、スチレンガス等が原因となる臭気への対策等が考えられ
る。
また、余長処理や管口処理に伴う更生管の廃材は産業廃棄物として処分する必要
があることから、施工業者や工法協会あるいはメーカーの責任のもと、適切な処分
が要求される。
(1).脱臭設備の配置
更生材が硬化する際の臭気は、含浸させている硬化樹脂の可塑剤であるスチレ
ンがガスとして発生するのが原因であり、どの工法についても問題となる。臭気
対策は、管更生の施工の際に発生する下水および樹脂等の臭気に細心の注意を払
い、必要に応じて脱臭設備等の防臭対策を講じる。
(2).防火、防爆及び排出熱対策
火災および爆発の原因となる着火源を既設管およびマンホール内に持ち込まな
いこととする。なお、施工現場内には消火器等の設置を義務づけ、また蒸気およ
び温水で圧着する工法を使用する場合は、排出熱の対策を講じる。
また、蒸気加熱タイプは、蒸気を排出する際の蒸気熱の処理に加えて、排出に
伴う騒音の問題がある。
環境対策として、現在のFFT-S工法が行っている対策を例に挙げれば、エ
グゾーストを設けることにより、蒸気排出量および騒音を抑制している。また、
エグゾーストを設けることで同内部に水滴が発生し、結果として蒸気排出温度の
低減にも貢献している。
蒸気加熱タイプを採用している工法については、蒸気の排出熱および排出騒音
の軽減についての対策を講じる。
(3).有毒ガス対策
スチレンガス等による臭気に対しては、十分な周辺対策を行い安全基準値以内
の濃度であることを確認する。
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更生管は、既設管およびマンホールの密閉した場所で施工されるため、酸素濃
度および硫化水素濃度の測定、換気等の酸素欠乏症等防止措置を行うとともに、
施工に伴い発生するスチレンガス等についても、必要に応じて換気装置の設置等
の対策を講じる。
(4).粉塵対策
更生材の硬化後、余長および管口の処理を行う際に粉塵が発生し、マンホール
内に充満する。
一般的には、作業員に防塵マスクおよび防塵メガネを着用させるのが基本であ
り、各工法協会が実施するオペレーターの認定講習等の際にも、着用するよう指
導されている。実際の現場作業においても着用の徹底を図る必要がある。
粉塵の処理方法を例に挙げれば、ファンで孔外に排出(バキュームで吸引)する
方法がある。
(5).温水対策
管きょ更生において温水を排出する場合は、水温、水質について法令で規定す
る基準値以下であることを確認した後、所定の場所に排出する。
(6).その他
更生管の廃材は、反転工法あるいは形成工法による余長の違い、あるいは更生
管径等により発生する量は異なってくるが、施工に伴って必ず発生するものであ
り、産業廃棄物(廃プラスチック類)に該当する。
施工業者や工法協会あるいはメーカーの責任のもと、産業廃棄物として適切に
処分されることが重要である。
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3・6.施工管理基準
管きょ更生の施工管理は工事の特記仕様書および「土木工事請負必携(平成 17 年
2 月 神戸市)」の他、関連する各種仕様書、諸法令、法規を遵守し行う。このうち、
特に品質管理および出来形管理の基準について、以下に整理する。
1.品質管理基準
品質証明書に記載すべき物性試験項目は表3-6を原則とする。
品質管理基準は表3-7を原則とする。
2.出来形管理基準
出来形管理基準は表3-8を原則とする。
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