ストレスと病気 (3) ストレスと高血圧 ストレスを受けると血圧が上がることは、既に述べました。血圧が高い状態、即ち高血圧が続くと動脈 硬化、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞といった健康に大きな影響を与える病気を引き起こすことが知られて おります。高血圧の自覚症状としては、頭痛、ふらつきなどがありますが、ほとんど気にせず普通に生 活を送ることが多いのではないかと思います。高血圧は、飽食時代と呼ばれる現代の食生活の乱れなど に因ることなどが挙げられ、日本の成人男性3人に1人、女性4人に1人が高血圧状態にあると言われ ており、この割合は世界的な傾向でもあります。 ここでは、血圧に関わる心臓の働きについて簡単に概説し、高血圧になる原因因子、合併症、予防・血 圧低下に良いとされる、サプリなどについてまとめたいと思います。 血圧とは、血管を通して心臓から全身に血液を送り出す時の圧力(強さ)のことを指しております。心 臓が収縮して動脈を通して血液を送り出すとき血圧は最も高くなり(収縮期血圧)、心臓が拡張すると全身 を巡ってきた血液は心臓に戻り、血圧は最も低くなります(拡張期血圧)。高血圧とは、病院や健診施設な どで測定した血圧値が、収縮期血圧 140mmHg 以上または拡張期血圧 90mmHg 以上(140/90mmHg 以 上)の状態をいいます。自宅で測定する家庭血圧では、それより低い 135mmHg 以上または 85mmHg 以上(135/85mmHg 以上)が高血圧とされます(日本高血圧治療ガイドライン)。 血液(赤血球)が体の必要な部位に酸素を運搬し、体全体の全血量はおよそ体重の 13 分の 1、例えば 60kg の体重の人なら、およそ 4.5 リットルと言われております。全血量の 3 分の 1 を出血などで失うと、生 命が危険にさらされると言われております。心臓は、この血液を全身に循環させるために、1 分間に約 70 回 (50~100 回/安静時) 拍動します。子供、赤ん坊は心臓が小さいので、心拍数は高く、小学生で は約 80~90 回、赤ん坊は 1 分間に 120 回程度と言われております。成人の場合、心拍数1回につき、 約 70 ㏄の血液が送り出され、1 分間で約 5 リットル程度送りだされ、平均体重の成人では、ほぼ1分で 全血液が1循環すると言われております。 心臓は左・右心房、左・右心室の4つの部屋から構成されており、肺静脈から酸素を取り込んだ血液は 左心房を通り左心室から全身の細胞・臓器に血液が送り込まれ(体循環)、全身を巡った血液は上下静脈 を通ってまず右心房に貯められ、右心室に送り込まれ、肺動脈を通って肺に送り込まれ(肺循環)、酸素 を取り込んだ新鮮血液が再び左心房に貯められ、左心室から全身に送り出されます。心臓は不随意筋(自 分の意志で動かせない)筋肉(心筋)で、自律神経の支配を受け、交感神経は血管が収縮しその結果血 圧が上昇し、副交感神経は血管を拡張し血圧を下げる働きがあります。したがって、ストレスなど外的 心臓から血液が送り出されることから、血管の状態、および流れる血液の状態が大きく関与しているこ GlobeScience webnote 5 stress & illness 1 刺激が心臓の働きに重要な役割を果たしていることが理解できると思います。 とが知られております。太い血管(心臓で血液の送り出し・受け取りに関与する大動脈や大静脈で約 2.5 ~3 ㎝)、普通の動・静脈で約 0.5 ㎝の太さを有する血管は、神経支配を受けて太くなったり細くなった りして血流の流れを調節しております。そのため、血管の柔軟性、つまり柔らかさが重要です。血管の 柔らかさは、年齢とともに低下し、硬くなってきます(硬化)。 硬化の程度を普段の健全な食生活・適度なエクササイズなどで抑えることができますが、脂肪の摂りす ぎなどにより血中のコレステロール濃度が高い状態が続き、動脈が硬化し高血圧状態が続くことになり、 心臓疾患(心筋梗塞、狭心症など)や脳血管疾患(脳梗塞など)といった重大な疾患を誘発することに なります。血中のコレステロールの目安は、中性脂肪(150 mg/dl 以上)、悪玉コレステロール(LDL) (140 mg/dl 以上)、善玉コレステロール(HDL)(40 mg/dl 未満)、総コレステロール(220 mg/dl 以上)とされてお ります。 LDL は悪玉コレステロールと言われておりますが、全身にコレステロールを供給するという重要な役割 を持っております。この量が増えすぎると血管壁に付着し血管を細くし、血管の柔軟性が失われ、動脈 硬化が起こります。血圧が動脈血の圧力を反映していることは既に述べました。動脈内皮は血圧の上が り下がりで障害を受けますが、血小板などの働きで修復されております。したがって、脂質の摂りすぎ などで修復できない部分ができると血栓と呼ばれる塊が形成され、血液の流れが悪くなります。 一方静脈は血流の勢いも圧力も低く、血流による障害も低く静脈硬化が起こりにくいと言われておりま す。また、善玉コレステロールが血管内のコレステロールを除去する作用があるので、最近 LDL と HDL の比が重要な目安として注目されております。一般的には、その比が 1.5(健康)、2.0 以上(コレステロ ールの蓄積が進行し動脈硬化が疑われる)、2.5 以上(血栓形成が疑われ心筋梗塞発症の危険性あり)。し たがって、それぞれの値が正常範囲にあっても、その比に着目して、早めの予防策を取ることが重要か と思われます。また、糖尿病になると、心筋梗塞など血管関連疾患のリスクが上がることも知られてお ります。 このように、高血圧を防ぐには、血管の柔軟性と血液の状態、即ち“サラサラ”状態を保つ必要があり ます。加齢とともに、いずれも低下してきますが、血管の柔軟性や“サラサラ度”は、食生活改善・サ プリなどで抑えることが出来ることが知られております。最近注目されている成分に、フィトケミカル と呼ばれる成分があります。これは“フィト”(植物)由来の“ケミカル”(化学成分)の意味で、野菜 や果物由来の成分の意味です。血管が筋肉から構成されていることからわかるように、エクササイズな どで抑えることも出来ます。トマトに含まれるリコピン、ニンジンに含まれるリコピンなどが属するカ ロチノイドの一種であるβ-カロチン、玉ねぎに含まれるフラボノイドであるケルセチン、赤ワインの成 分であるポリフェノールであるレスベラトロールなど抗酸化作用の強い成分が血液を“サラサラ”にし たり、血管を柔らかくする作用のあることが知られております。コレステロール低下には、魚油などに 含まれている、DPA や EPA がコレステロール低下に有効であることも知られております。 高血圧、と一言で称される状態が多くの重大な疾患(特に生活習慣病)の原因になることが理解できた 多くに抗酸化作用を有する成分があることも理解できたと思います。 GlobeScience webnote 5 stress & illness 2 と思います。また、その状態の改善に野菜・果物由来の成分が大きな役割をはたしており、その成分の
© Copyright 2024 ExpyDoc