【単発ネタ】もしもエミヤオルタが第五次に召喚されたら【詠唱捏 造】 人工衛星 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ 題名通り。 もしもエミヤオルタが第五次聖杯戦争にアーチャーとして召喚さ れたら ? 目 次 ││││││││││││││││││││││││││││ 1 ︻単発ネタ︼もしもエミヤオルタが第五次に召喚されたら︻詠唱捏造︼ 最期に得たもの │││││││││││││││││││││ 9 ︻単発ネタ︼もしもエミヤオルタが第五次に召喚され たら︻詠唱捏造︼ 第五次聖杯戦争。 冬木において開催された、魔術師と英霊による願望機の争奪戦。 これは、ありえたかもしれない可能性。 一人の男が、理想の果てにどうしようもなく歪んだその果て。 邂逅は、さして変わるものでもなく。 だ﹂ 1 それよりアーチャー、あなたの真名は エミヤ ﹂ ﹁召喚に応じ参上した。アーチャーだ。⋮⋮しかし、ずいぶん手荒だ ねえ﹂ ﹁テメェ、どこの英霊だ。剣を銃に改造する英霊なんざ聞いたことが !? な。自由落下を経験するとは思わなかった﹂ ﹁わ、悪かったわね ﹁││││││エミヤ。俺の真名は " 語れるものなど、これ以外に残ってはいなかった。 " 男は、ほんの少しだけ黙った。そしてこう告げた。 ! ﹂ ﹁⋮⋮関係ないことだ、ランサー。いや⋮⋮ケルトの光の御子﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮ほう。テメェ、何者だ それでも。 に憧れてた﹄ すらも、己の中にはない。 いいやそれだけじゃない。あの男の声も、顔も。共に過ごした日々 ⋮⋮なのに。その内容を今の自分は覚えていない。 これが己の人生を決定づけたのだ。 幼い頃に聞いた、一人の男からの言葉。 ﹃子供の頃、僕は 何よりも大切だった筈のものは、もう何も思い出せないくせに。 滑稽で堪らない。 自然と笑みがこぼれた。⋮⋮こんなものだけは覚えている自分が、 ? ﹂ あの夜に見た月は⋮⋮⋮⋮とても、綺麗だった。 ﹂ ﹁下がってください、シロウ ﹁お、おい、セイバー ! る。アレは確か⋮⋮⋮⋮いや、どうでもいいか。 ⋮⋮ 何 故 だ ろ う か。と て も 懐 か し い。ど こ か で 見 た よ う な 気 が す 目の前には、赤毛の少年と金髪の騎士。 !? 2 ?????????? 記憶の海の中から、こんなものが浮上してきた。 金髪で、鎧をまとった少女。声は思い出せない。顔はもうぼやけて いる。己はアレに何を見た そうだ。アレは、あの輝きは。 ││││││まさしく、星のようだったではないか。 聖杯戦争を駆け抜けた弓兵は、己の死期を悟る。 ああ、ここが俺の死に場所なのだと。 いろんなことがあったと思う。 剣士、騎兵、槍兵、魔術師、暗殺者。 そして弓兵たる己と⋮⋮今、目の前に相対する狂戦士。 流石はギリシャの大英雄。はっきり言って、己では勝てそうにな い。 ならばどうする。決まっている。この命でもってあの狂戦士を足 止めする。 3 ? 今の己に⋮⋮ 他の道はない。 でも。 正義の味方 ﹁⋮⋮な、なんだよ ﹂ ﹁おい、エミヤシロウ﹂ ですらなくなった己に、こうするより 最後に、﹃自分﹄にこれだけは言っておこう。 " 何もかも忘れて私に溺れなさい﹄ たを受け入れます。ここにいる方々と同じ様に。さあ⋮⋮安心して、 ﹃辛い生き方だったのですね⋮⋮⋮⋮。でも、安心なさい。私はあな 欲にまみれた女が言う。 ﹃ああ、ああ。なんて悲しい人なのでしょう﹄ 思い出す。 城の天井を崩す。気休めにもならないだろうが。 ﹁決して、俺のようにはなるな﹂ ほんの少し考えて、そして一言だけ告げた。 ? 女の信者どもは、口々に彼女を讃えた。まるで聖女の様に。 4 " ﹃流石は 様 ﹄ ﹃さあ、あんたもはやくこっちに ﹄ ﹃救済を求めるのならば、我々の仲間だ 目を輝かせてこちらを見る。 ﹁ふぅん。命がけの足止め は勝てないのに﹂ ﹂ だけか。 ﹄ 思い ⋮⋮馬鹿みたい。どうせバーサーカーに 銀の髪と赤い瞳。作り物の少女。 ? その果てにあったのは、どうしようもない﹃矛盾﹄。 げている。 ああ⋮⋮⋮⋮どうしようもなく、吐き気がする。己の心が悲鳴をあ ! ! ! 大 切 だ っ た の か も 知 れ な い。思 い 出 せ な い。い や ⋮⋮⋮⋮ 出さない ﹁ " やる事は一つ。対処できる己の手札はただ一つ。 5 ???????????? " 迫る狂戦士。このままでは死ぬ。ならばどうする。決まっている。 ????????????!! ﹃││││││体は剣で出来ている﹄ この詠唱だけは、スラスラと飛び出してくる。 磨耗した魂に刻まれた、エミヤの存在理由。 ﹃血潮は腐り、心は錆びた﹄ 固有結界。表すのは己の心象風景。 己の心象が歪めば、それに応じて詠唱も歪む。 いっそ笑えてくる。硝子の心を捨てて鉄の心を求めた結果がこれ だ。 確 か に 折 れ る 事 は 無 か っ た。し か し ど う し よ う も な く 錆 び て し まった。 ﹃幾たびの戦場を越えて不敗﹄ 馬 鹿 馬 鹿 し い。何 を 誇 れ る。た だ 一 度 の 勝 利 す ら も 手 に で き な かった男が。 ﹃ただ一度の栄光もなく、ただ一度の救済もなし﹄ 正義の味方。⋮⋮ああ、なんと言う甘美な響き。それに踊らされ、 追い求めた男の成れの果てがこれだ。 ﹃担い手は常に一人、殺戮の果てに正義を見る﹄ 6 あの女に誑かされた事は、エミヤシロウの最大の失敗だった。 生き方も、理想も。全てを肯定され、そして全てを否定された。 ﹃故に、我が生涯は崩れ歪み﹄ 擦り切れ、ボロボロになった自分。 生きる意味を見失い、 ﹃正義の味方﹄と言う言葉しか残らなかった自 分は、ただの亡霊ではないか。 ﹃この体に、残されたモノはただ一つ﹄ Works ???????? 7 正義の味方。 正義の味方。 正義の味方。 これもまた、エミヤシロウの可能性の一つ。 Unlimited Brade Works Unlimited の剣製 無限の剣製 無 ?? ﹃││││││││││││Unlimited Lost Works﹄ 無の剣製 8 最期に得たもの ⋮⋮結局のところ、奇跡など起こらなかった。 当たり前だ。そんなに都合良く奇跡が起きるなら誰も聖杯など求 めない。 追い詰められ、破滅する寸前のところで都合良く駆けつけてくれる ﹃正義の味方﹄など幻想に過ぎないと、他でもない己自身が分かってい た筈なのに。 だからこそ人は、空想の中にしかいない﹃正義の味方﹄に憧れる。不 可能と理解しているからこそ、その在り方を体現する存在が眩しく見 える。 そ れ が 出 来 な い も の は 星 の 数 ほ ど い る。し か し 人 間 と は 面 倒 だ。 不可能と分かっても決して諦められない。この戦争に挑んだ者たち もそうなのだろう。 命を賭してでも叶えたいモノが、願いがあるからこそこの戦場にい るのだろう。聖杯などという万能の願望機を求めるのだろう。 ││││││ああ、ならば。 何の望みも持たない正真正銘の亡霊に、最初から勝ち目など無かっ たのだ。 五体は滅茶苦茶にひしゃげていた。血は絞り出した様に流れ、臓器 と呼べる様な物はもう残っていない。 己の魂が、霊基が崩れていくのがアーチャーには理解できた。 ﹁⋮⋮⋮⋮信じられない。バーサーカーをあそこまで追い詰めるなん 9 て。アナタ、一体何者 ﹂ 言い放つ少女の傍に佇むのは、屈強なる狂戦士。返り血と己の血に まみれながら、それでも立ち続ける勝者。形こそ違えど、あれもまた 己が求めたものだ。 ただ一人を守る為に戦うなど、己には最後まで出来なかった。 弓兵は、ふと思い出す。 かつて己が切り捨てた存在の事を。 エミヤシロウの心が、硝子から鉄へと堕ちた時の事を。 殺した相手の顔も、声も、遺言も。何一つ思い出せない。それでも ﹃この﹄エミヤの魂に刻み込まれている光景を。 ﹁⋮⋮はは﹂ 滑 嘲笑が漏れる。ああ、なんと愚かだったのか。自分は今の今まで、 ﹃己が磨耗した理由﹄すら思い出せずにいたのだ。 決して忘れまいと誓った物を、永遠に己が背負うと決めた物を 稽にも忘れて生きていたのだ ! は気がつかなかった た物さえ、今の今まで忘れていた ﹃忘れていた﹄という事実すら、己 決して忘れたくないと、たとえ地獄に落ちても忘れるものかと誓っ 鉄の心はヒビ割れ、腐り、取り返しのつかないところまで歪んだ。 何よりも遠い場所にいたじゃないか。 なんと無様なことか。何が正義の味方だ。かつての己はそこから ! ! 10 ? 養父から受け継ぎ、叶えようとした理想も。 ! 騎士王と出会い、流星の如く駆け抜けた日々も、 ﹃彼女﹄の輝きも。 思い出した。生まれ育ったこの地で。 人々の命と引き換えに、 士郎が衛宮士郎になったこの街で。 ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮ああ、そうだよなぁ。⋮⋮俺には、こんな終わり方しか出来 ないよなぁ﹂ 彼は、衛宮切嗣はなんと言うだろうか。 彼女は、アルトリアはなんと言うだろうか。 ﹁⋮⋮わけ分かんない。殺しちゃいなさい、バーサーカー 振り上げられた斧剣。狙いは己の頭蓋。 結局己は、正義の味方になどなれない亡霊だ。 ⋮⋮でも。 ! あの赤毛の少年は。衛宮士郎は、きっと自分の様にはならないだろ う。 それだけで、十分だ。 仮初めの命を落とした弓兵には、知る由も無い。 11 ?????? 彼が命を賭して守った少年達が、結果として﹃世界を救う﹄事に。 間接的とは言え、エミヤシロウは世界を救い、本当の﹃正義の味方﹄ になれた事に。 12
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