茨城県産梅の需要喚起について ~ブランド構築に向けた官民の取組み~ 経済調査 レポート ◆ ◆ 関東財務局 水戸財務事務所 梅の名所で知られる偕楽園があるなど、茨城県産梅は観賞用としては有名であるものの、食用としての需要は少ない。 官民は、食用化に向けた取組みを行っており、生産量の安定的な確保と、今後のブランド化が期待される。 1. 茨城県産梅の由来と、需要喚起に向けた取組み事例 (1)茨城県と梅の関係性 ○ 茨城県は日本三名園の一つ偕楽園があり、梅の名所として知られており、 例年開催される「水戸の梅まつり」は、弘道館と合わせ、約50万人の観光客 が訪れる。 ○ 偕楽園は元々、水戸徳川家九代藩主・徳川斉昭公が整備した庭園。 偕楽園の梅は、観賞用として人々の心を和ますことに加え、 梅干しが食用として有用であることから植樹された。 ○ ただし、現状では食用としての流通量が少なく、 「大々的に茨城県産梅が売り出されるケースは少ない。」 偕楽園 (㈱吉田屋 大山 氏) 偕楽園Memo (2)梅作りと茨城県 ◆千波湖を含めた都市公園面積は、世界第2位 ◆水戸財務事務所は、偕楽園(国有地)を茨城県へ無償貸付 ○ 梅の栽培面積は、和歌山県、群馬県、福井県に次いで茨城県は全国4位。 一方、梅の収穫量では全国11位に留まっており、観賞用という位置付けが強い。 (農林水産省:平成27年耕地及び作付面積統計、平成26年産果樹生産出荷統計) ○ また東日本大震災以降、茨城県産の食品には風評被害が発生。梅の生産・加工に 携わる者にとって、大きな打撃となった。 ○ 各企業は質の高い商品を生み出し、茨城県産梅の需要喚起に向け、様々な取組み を行っている。 <㈲五條製菓> ○ 水戸市農業技術センターと連携し、水戸産梅を用い銘菓をつくる取組み 「水戸梅お菓子プロジェクト」に参加。 水戸梅小町 ➢「水戸産梅を用いた商品は『美味しい』と好評だが、梅の安定供給が課題。」(㈲五條製菓) (㈲五條製菓 宮脇 氏) 茨城県産梅は他県産に劣らない品質であるが、安定供給が課題 2.茨城県産梅の生産拡大に向けた行政の支援 生産量の拡大支援 <水戸市農業技術センター> ○ 生産量拡大と品質向上を目的に、ジョイント栽培の採用を呼びかけ。初期費用の一 部を補助することにより、ジョイント栽培を行う農家が増加。 ➢「平成24年度からジョイント栽培を開始し、水戸産梅の生産量は増加傾向にある。28 年度は1トンに対し、29年度は2.5トン、30年度は12トンの生産量を見込んでいる。」 (水戸市農業技術センター 山室 氏) 企業からの反応 ○ 「梅の生産量は増加傾向にあることから、今後10年以内に『百年梅酒』に用いる梅 を、全て茨城県産の梅に切り替えていきたい。」(明利酒類㈱ 加藤 氏) ジョイント栽培とは ◆神奈川県農業技術センターが開発した栽培方法。 ◆苗の枝を水平方向に折り曲げ、隣の梅の木と繋ぎ栽培することにより、 ・従来10年近く要する梅の育成期間を5年ほどに短縮可能 ・従来の栽培方法と比べ少ない作業時間、農薬で栽培可能 という利点がある。 山海嘉之社長 主な受賞履歴 (3)需要喚起に向けた取組み事例 ◆大阪天満宮梅酒大会 優勝 ◆水戸の梅まつり梅酒大会 優勝 <明利酒類㈱> ○ 国産青梅を用いた梅酒「百年梅酒」を製造、販売。 ◆茨城おみやげコンテスト 優秀賞 ◆全国梅酒品評会 金賞 「百年梅酒」は、大阪天満宮梅酒大会で優勝して いるほか、数々の賞を受賞する名酒。しかし、 原料の梅に占める茨城県産梅の使用割合は、3割程度に留まっている。 ➢「他県産と比べ品質は劣ってないことから、茨城県産梅だけを用いて 梅酒を作りたいが、梅の生産量が足りていないことから実現できず。」 (明利酒類㈱ 加藤 氏) <㈱吉田屋> ○ 「茨城の梅を観る梅から食す梅に!」というコンセプトで、茨城県の 旧国名である「常陸」の名を冠したブランド「常陸乃梅」を構築。 茨城の地に日本一の梅文化を構築できるよう、商品開発を行っている。 ➢「茨城県産の梅は、他県産に劣らない品質。加工業者が増えれば、 より多くの梅商品を供給できる。」(㈱吉田屋 大山 氏) 百年梅酒 (明利酒類㈱) UMEFULL (㈱吉田屋) ジョイント栽培 (神奈川県農業技術センター) 生産拡大に向け、行政が支援 3.今後の課題とまとめ ≪今後の課題≫ 生産量の安定的な確保と、茨城県産梅のブランド構築 ○ 「茨城県産梅を積極的に売り出し、ブランド構築を行うことが重要。これにより 農家の収入が安定し、梅の生産拡大に繋がる。」(JA土浦千代田支店 君﨑 氏) ○ 「商品価値を高めるにはブランド化が必須。そのため、『水戸に福を結び付け る』願いを込め、また、親しみやすい平仮名を用いた『ふくゆい』ブランドを構築。 贈答品として取り扱われるようになれば、認知度が高まりブランド化に繋がる。」 ➢「水戸産にこだわる希少価値の高い梅ブランドを構築し、農家の所得向上と、 生産量増加に繋げていきたい。」(水戸市農業技術センター 山室 氏) 生産量の安定的な確保と、茨城県産梅のブランド化が期待される。
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