12 月雇用統計

経済分析レポート
2017 年 1 月 31 日
全5頁
Indicators Update
12 月雇用統計
有効求人倍率は 4 ヶ月連続の上昇、労働需給はタイトな状況が続く
エコノミック・インテリジェンス・チーム
田中 誠人
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

労働力調査によると、2016 年 12 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から横ばいの
3.1%となった。失業者数は前月差+4 万人と 2 ヶ月連続で増加し、就業者数は同+31
万人と 2 ヶ月ぶりに増加した。また、非労働力人口は同▲35 万人と 2 ヶ月ぶりに減少
した。

一般職業紹介状況によると、2016 年 12 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から
0.02pt 上昇し、1.43 倍となった。一方、新規求人倍率(季節調整値)は前月から 0.07pt
上昇し、2.18 倍となった。12 月の求人倍率の内訳について、求職側を見ると、有効求
職者数は前月比+0.2%と 4 ヶ月ぶりに増加した一方、新規求職申込件数は同+1.7%と
2 ヶ月連続で増加した。求人側を見ると、有効求人数は同+1.9%と 2 ヶ月ぶりに増加
し、新規求人数も同+5.4%と 2 ヶ月ぶりに増加した。

先行きの労働需給は、非製造業を中心とする人手不足感の継続を背景に、タイトな状況
が続く見通しである。これは、12 月日銀短観において、雇用人員判断 DI の先行きが非
製造業と中小企業を中心にマイナス幅を拡大させており、企業が人手不足感の強まりを
予想していることからもうかがえる。ただし、ほぼ完全雇用状態に達しているため、就
業者数の頭打ち感が一段と強まり、失業者数の減少ペースが緩やかなものにとどまるこ
とで、完全失業率の低下速度は鈍化するとみている。
図表 1:雇用関連指標の推移
2016年
7月
労働力調査
完全失業率(季節調整値)
%
一般職業紹介状況
有効求人倍率(季節調整値)
倍
新規求人倍率(季節調整値)
倍
毎月勤労統計
現金給与総額
前年比、%
所定内給与
前年比、%
8月
9月
10月
11月
12月
3.0
3.1
3.0
3.0
3.1
3.1
1.37
2.01
1.37
2.02
1.38
2.09
1.40
2.11
1.41
2.11
1.43
2.18
1.2
0.3
0.0
0.3
0.0
0.2
0.1
0.2
0.5
0.4
-
(出所)総務省、厚生労働省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する
ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和
証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。
2/5
2016 年 12 月完全失業率:前月から横ばい
労働力調査によると、2016 年 12 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から横ばいの 3.1%
となった。失業者数は前月差+4 万人と 2 ヶ月連続で増加し、就業者数は同+31 万人と 2 ヶ月
ぶりに増加した。また、非労働力人口は同▲35 万人と 2 ヶ月ぶりに減少した。就業者数の大幅
な増加が完全失業率の低下に寄与した一方、非労働力人口の大幅な減少が完全失業率の上昇に
寄与しており、労働参加が進んでいることが示された結果であった。総じてみれば、ポジティ
ブな内容であったと言えよう。
図表 2:就業者数・完全失業率、失業率の要因分解
失業率の要因分解
就業者数・完全失業率
6,500
就業者数
6,450
(%)
(万人)
6.0
完全失業率
(右軸)
5.5
6,400
5.0
6,350
4.5
6,300
4.0
6,250
3.5
6,200
3.0
(年)
200506 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
-1.2
(前月差、%pt)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 (月)
15
16
(年)
就業者要因
15歳以上人口要因
非労働力人口要因
失業率
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
産業別就業者数:
「サービス業(他に分類されないもの)
」、「医療、福祉」が大幅増
就業者数の動きを産業別に見ると(大和総研による季節調整値)、「サービス業(他に分類さ
れないもの)
」(前月差+24 万人)、「医療、福祉」
(同+22 万人)、「建設業」(同+9 万人)、「製
造業」(同+3 万人)などが増加した。サービス業(他に分類されないもの)は 3 ヶ月ぶりの増
加となった。同産業の就業者数は、均してみれば横ばい圏で推移している。医療、福祉は 3 ヶ
月ぶりの増加となった。高齢化に伴う医療、福祉分野の労働需要の増加に伴い、同産業の就業
者数は趨勢的に増加している。建設業は 2 ヶ月連続の増加となった。同産業の先行きについて
は、政府が策定した大型景気対策の顕在化によって就業者数が増加することが期待される。製
造業は 3 ヶ月ぶりの増加となった。鉱工業生産に持ち直しの動きが見られるなかで、同産業の
就業者数は緩やかな増加基調で推移している。
一方、「運輸業、郵便業」
(前月差▲7 万人)、「学術研究、専門・技術サービス業」
(同▲6 万
人)、「情報通信業」(同▲5 万人)などは減少した。運輸業、郵便業は 2 ヶ月ぶりに減少した。
同産業については、国内物流量が趨勢的に増加し、人手不足感が高まっているとみられるが、
就業者数の増加には繋がっていない。
3/5
男女別就業者数:女性の就業者数は趨勢的に増加
就業者数の動きを男女別に見ると、男性は前月差+12 万人と 2 ヶ月ぶりに増加した。男性の
就業者数はここ数年では横ばい圏で推移している。また、女性も同+18 万人と 5 ヶ月ぶりに増
加した。女性の就業者数はここ数年では増加基調で推移している。男女ともに生産年齢人口は
趨勢的に減少しているものの、高齢者および女性の労働参加率が上昇していることが、就業者
数の増加に寄与しているとみられる。今後、
「働き方改革」の推進で長時間労働の是正など労働
環境の改善が進めば、さらに労働参加率が上昇し、就業者数の増加に繋がる可能性がある。
図表 3:男女別就業者数・完全失業率
【男性】
3,800
(万人)
就業者数
3,750
【女性】
(%)
6.0 2,850
完全失業率
(右軸)
(%)
(万人)
6.0
5.5
2,800
5.0
5.5
完全失業率
(右軸)
就業者数
5.0
3,700
4.5 2,750
4.5
3,650
4.0
4.0
2,700
3.5
3,600
3.0
3,550
200506 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
3.5
2,650
2.5 2,600
200506 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
3.0
2.5
(年)
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
2016 年 12 月有効求人倍率:前月から 0.02pt 上昇
一般職業紹介状況によると、2016 年 12 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から 0.02pt
上昇し、1.43 倍となった。1991 年 7 月(1.44 倍)以来、約 25 年ぶりの高水準である。一方、
新規求人倍率(季節調整値)は前月から 0.07pt 上昇し、2.18 倍となった。有効求人倍率、新規
求人倍率はともに高い水準で推移しており、労働需給はタイトな状況にあると評価できる。
また、正社員の有効求人倍率(季節調整値)は 3 ヶ月連続で上昇して 0.92 倍となった。正社
員の有効求人倍率も改善が続いている。
12 月の求人倍率の内訳について、求職側を見ると、有効求職者数は前月比+0.2%と 4 ヶ月ぶ
りに増加した一方、新規求職申込件数は同+1.7%と 2 ヶ月連続で増加した。失業者数の増加に
よる影響とみられる。求人側を見ると、有効求人数は同+1.9%と 2 ヶ月ぶりに増加し、新規求
人数も同+5.4%と 2 ヶ月ぶりに増加した。有効求人数、新規求人数はともに増加基調が続いて
いる。
4/5
図表 4:有効求人倍率と新規求人倍率、求人倍率の内訳
有効求人倍率と新規求人倍率
2.5
求人倍率の内訳
(万人)
100
(倍)
(万人)
310
290
90
2.0
270
250
80
1.5
230
70
210
1.0
190
60
0.5
170
150
50
130
0.0
40
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(年)
有効求人倍率
110
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
新規求人倍率
新規求人数
新規求職申込件数
有効求人数(右軸)
有効求職者数(右軸)
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
先行きの労働需給はタイトな状況が続く
先行きの労働需給は、非製造業を中心とする人手不足感の継続を背景に、タイトな状況が続
く見通しである。これは、12 月日銀短観において、雇用人員判断 DI の先行きが非製造業と中小
企業を中心にマイナス幅を拡大させており、企業が人手不足感の強まりを予想していることか
らもうかがえる。ただし、ほぼ完全雇用状態に達しているため、就業者数の頭打ち感が一段と
強まり、失業者数の減少ペースが緩やかなものにとどまることで、完全失業率の低下速度は鈍
化するとみている。
また、先行きの賃金に占うにあたり、春季労使交渉の行方にも注目したい。2017 年の春季労
使交渉について、安倍首相は昨年 11 月の働き方改革実現会議で「少なくとも今年(筆者注:2016
年)並みの水準の賃上げを期待しています」と、2016 年並みの賃上げを要請した。これに対し、
経団連は年収ベースでの賃上げには前向きな姿勢を見せているものの、ベースアップには慎重
姿勢を示している。安倍首相の求める 2016 年並みの賃上げを達成できるかが注目点となろう。
5/5
雇用・所得概況
有効求人倍率と雇用人員判断DI
完全失業率と欠員率
(%)
6.0
1.6
5.5
(DI)
(倍)
1.4
-30
-20
5.0
1.2
4.5
4.0
1.0
3.5
0.8
3.0
-10
0
0.6
10
2.5
0.4
2.0
20
0.2
1.5
1.0
0.0
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
失業率
2000
02
04
06
有効求人倍率
欠員率
08
10
12
30
16 (年)
14
雇用判断DI(全規模全産業、右軸)
(注1)欠員率=(有効求人数-就職件数)/(雇用者数+有効求人数-就職件数) (注)白抜きは雇用人員判断DIの「先行き」。
(注2)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)厚生労働省、日本銀行、総務省統計より大和総研作成
(出所)総務省統計、厚生労働省統計より大和総研作成
求職理由別失業者数
年齢階級別完全失業率
(前年差、万人)
(%)
20
12
10
10
0
8
-10
-20
6
-30
4
-40
-50
2
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11
2012
0
200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
15~24歳
25~34歳
35~44歳
45~54歳
55~64歳
65歳~
(注)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
(前年比、%、%pt)
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
-1.2
-1.4
2
1
0
-1
-2
-3
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11
(月)
2012
13
14
15
16
(年)
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
定年・契約満了
学卒未就職
失業者数
15
勤め先事情
収入
16
(月)
(年)
自己都合
その他
所定内給与の要因分解
3
所定外給与
14
(出所)総務省統計より大和総研作成
現金給与総額の要因分解
所定内給与
13
特別給与
現金給与総額
(前年比、%、%pt)
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11
(月)
2012
13
14
15
16
(年)
一般
パート
パート比率
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
所定内