11 月雇用統計

経済分析レポート
2016 年 12 月 27 日
全4頁
Indicators Update
11 月雇用統計
有効求人倍率はバブル期並みの高水準
エコノミック・インテリジェンス・チーム
田中 誠人
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

労働力調査によると、2016 年 11 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から 0.1%pt
上昇し、3.1%となった。失業者数は前月差+8 万人と 3 ヶ月ぶりに増加し、就業者数
は同▲11 万人と 2 ヶ月ぶりに減少した。また、非労働力人口は同+4 万人と 2 ヶ月ぶり
に増加した。

一般職業紹介状況によると、2016 年 11 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から
0.01pt 上昇し、1.41 倍となった。一方、新規求人倍率は前月から横ばいの 2.11 倍とな
った。11 月の求人倍率の内訳について、求職側を見ると、有効求職者数は前月比▲0.3%
と 3 ヶ月連続で減少した一方、
新規求職申込件数は同+0.1%と 4 ヶ月ぶりに増加した。
求人側を見ると、有効求人数は同▲0.1%と 3 ヶ月ぶりに減少し、新規求人数も同▲
0.3%と 3 ヶ月ぶりに減少した。

先行きの労働需給は、非製造業を中心とする人手不足感の継続を背景に、タイトな状況
が続く見通しである。これは、12 月日銀短観において、雇用人員判断 DI の先行きが非
製造業と中小企業を中心にマイナス幅を拡大させており、企業の人手不足感が継続する
と予想されることからもうかがえる。ただし、ほぼ完全雇用状態に達しているため、就
業者数の頭打ち感が一段と強まり、失業者数の減少ペースが緩やかなものにとどまるこ
とで、完全失業率の低下速度は鈍化するとみている。
図表 1:雇用関連指標の推移
2016年
6月
労働力調査
完全失業率(季節調整値)
%
一般職業紹介状況
有効求人倍率(季節調整値)
倍
新規求人倍率(季節調整値)
倍
毎月勤労統計
現金給与総額
前年比、%
所定内給与
前年比、%
7月
8月
9月
10月
11月
3.1
3.0
3.1
3.0
3.0
3.1
1.37
2.01
1.37
2.01
1.37
2.02
1.38
2.09
1.40
2.11
1.41
2.11
1.4
0.0
1.2
0.3
0.0
0.3
0.0
0.2
0.1
0.2
-
(出所)総務省、厚生労働省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する
ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和
証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。
2/4
2016 年 11 月完全失業率:前月から 0.1%pt 上昇
労働力調査によると、2016 年 11 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から 0.1%pt 上昇し、
3.1%となった。失業者数は前月差+8 万人と 3 ヶ月ぶりに増加し、就業者数は同▲11 万人と 2
ヶ月ぶりに減少した。また、非労働力人口は同+4 万人と 2 ヶ月ぶりに増加した。今月は冴えな
い結果であったが、完全失業率は依然として低い水準にあり、労働需給はタイトな状況にある
と評価できる。
図表 2:就業者数・完全失業率、失業率の要因分解
失業率の要因分解
就業者数・完全失業率
6,500
就業者数
6,450
(%)
(万人)
6.0
完全失業率
(右軸)
5.5
6,400
5.0
6,350
4.5
6,300
4.0
6,250
3.5
6,200
3.0
(年)
200506 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
-1.2
(前月差、%pt)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 (月)
15
16
(年)
就業者要因
15歳以上人口要因
非労働力人口要因
失業率
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
産業別就業者数:
「医療、福祉」の大幅減が全体を押し下げ
就業者数の動きを産業別に見ると(大和総研による季節調整値)、
「医療、福祉」
(前月差▲30
万人)、
「製造業」
(同▲17 万人)、
「金融業、保険業」
(同▲11 万人)、
「サービス業(他に分類さ
れないもの)
」
(同▲9 万人)などが減少した。医療、福祉は 2 ヶ月連続の減少となり、減少幅も
大きい。ただし、高齢化に伴う医療、福祉分野の需要の増加に伴い、同産業の就業者数は趨勢
的に増加しており、足下の減少は短期的なものとみられる。製造業は 4 ヶ月ぶりの減少となっ
た。ただし、鉱工業生産に持ち直しの兆しが見られるなかで、同産業の就業者数は緩やかな増
加基調で推移している。金融業、保険業は 4 ヶ月ぶりの減少となった。
一方、
「卸売業、小売業」
(前月差+22 万人)、
「運輸業、郵便業」
(同+16 万人)、
「建設業」
(同
+13 万人)、
「情報通信業」
(同+6 万人)は増加した。卸売業、小売業は 4 ヶ月ぶりの増加とな
ったが、9 月に大きく減少(同▲17 万人)した影響とみられる。均してみれば、同産業の就業
者数は横ばい圏で推移している。運輸業、郵便業は 3 ヶ月ぶりに増加した。国内物流量が趨勢
的に増加し、人手不足感が高まっていることが背景にあるとみられる。建設業は 4 ヶ月ぶりの
増加となった。同産業の先行きについては、政府が策定した大型景気対策の顕在化によって就
業者数が増加することが期待される。
3/4
2016 年 11 月有効求人倍率:前月から 0.01pt 上昇
一般職業紹介状況によると、2016 年 11 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から 0.01pt
上昇し、1.41 倍となった。1991 年 7 月(1.44 倍)以来、約 25 年ぶりの高水準である。一方、
新規求人倍率は前月から横ばいの 2.11 倍となった。有効求人倍率、新規求人倍率はともに高い
水準で推移しており、労働需給はタイトな状況であると評価できる。
11 月の求人倍率の内訳について、求職側を見ると、有効求職者数は前月比▲0.3%と 3 ヶ月連
続で減少した一方、新規求職申込件数は同+0.1%と 4 ヶ月ぶりに増加した。失業者数の増加に
よる影響とみられる。求人側を見ると、有効求人数は同▲0.1%と 3 ヶ月ぶりに減少し、新規求
人数も同▲0.3%と 3 ヶ月ぶりに減少した。有効求人数、新規求人数はともに増加基調が続いて
きたが、足下で増勢鈍化の兆しが見られる。
先行きの労働需給はタイトな状況が続く
先行きの労働需給は、非製造業を中心とする人手不足感の継続を背景に、タイトな状況が続
く見通しである。これは、12 月日銀短観において、雇用人員判断 DI の先行きが非製造業と中小
企業を中心にマイナス幅を拡大させており、企業の人手不足感が継続すると予想されることか
らもうかがえる。ただし、ほぼ完全雇用状態に達しているため、就業者数の頭打ち感が一段と
強まり、失業者数の減少ペースが緩やかなものにとどまることで、完全失業率の低下速度は鈍
化するとみている。
図表 3:有効求人倍率と新規求人倍率、求人倍率の内訳
有効求人倍率と新規求人倍率
2.5
求人倍率の内訳
(万人)
100
(倍)
(万人)
310
290
90
2.0
270
250
80
1.5
230
210
70
1.0
190
60
0.5
170
150
50
130
0.0
40
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(年)
有効求人倍率
110
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
新規求人倍率
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
新規求人数
新規求職申込件数
有効求人数(右軸)
有効求職者数(右軸)
4/4
雇用・所得概況
有効求人倍率と雇用人員判断DI
完全失業率と欠員率
(%)
6.0
1.6
5.5
(DI)
(倍)
1.4
-30
-20
5.0
1.2
4.5
4.0
1.0
3.5
0.8
3.0
-10
0
0.6
10
2.5
0.4
2.0
20
0.2
1.5
1.0
0.0
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
失業率
2000
02
04
06
有効求人倍率
欠員率
08
10
12
30
16 (年)
14
雇用判断DI(全規模全産業、右軸)
(注1)欠員率=(有効求人数-就職件数)/(雇用者数+有効求人数-就職件数) (注)左図の白抜きは雇用人員判断DIの「先行き」。
(注2)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)厚生労働省、日本銀行、総務省統計より大和総研作成
(出所)総務省統計、厚生労働省統計より大和総研作成
求職理由別失業者数
年齢階級別完全失業率
(前年差、万人)
(%)
20
12
10
10
0
8
-10
-20
6
-30
4
-40
-50
2
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11
2012
0
200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
15~24歳
25~34歳
35~44歳
45~54歳
55~64歳
65歳~
(注)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
(前年比、%、%pt)
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
-1.2
-1.4
2
1
0
-1
-2
-3
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9
所定内給与
定年・契約満了
学卒未就職
失業者数
15
勤め先事情
収入
16
(月)
(年)
自己都合
その他
所定内給与の要因分解
3
13
14
(出所)総務省統計より大和総研作成
現金給与総額の要因分解
2012
13
14
所定外給与
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
15
特別給与
16
(前年比、%、%pt)
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9
(月)
(年)
現金給与総額
2012
13
一般
14
パート
15
パート比率
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
16
所定内
(月)
(年)