Economic Indicators 定例経済指標レポート 指標名:住宅着工戸数(2017年1月) 発表日2017年3月1日(水) ~特殊要因により前月比+8.4%と高い伸びとなる~ 第一生命経済研究所 経済調査部 担当 エコノミスト 伊藤 佑隼 TEL:03-5221-4524 ○特殊要因による分譲と貸家の増加を背景に前月比では+8.4% 国土交通省より発表された1月の新設住宅着工戸数は前年比+12.8%(コンセンサス:同+3.3%、レン ジ:+0.1%~+5.6%)とコンセンサスを大きく上回る結果となった。季節調整値(年率換算)では、 100.1 万戸(前月比+8.4%)と4ヶ月ぶりに前月比プラスとなった。但し、国土交通省によると 2020 年に 開かれる東京五輪・パラリンピックの選手用宿泊施設に関連した特殊要因が大きく増加に寄与したとのこと だ。コメントを基に試算すると、オリンピックによる押し上げ分を除けば季節調整値(年率換算)は、94.5 万戸(前月比+2.4%)程度になると見られる。1月分は特殊要因を除いても前月比プラスになると見られ るが、12 月の落ち込み幅を取り戻すには至らず、16 年後半以降住宅着工戸数は力強さを欠いた動きを続け ている。また、選手村として使われる施設の大部分が1月に着工されたとみられ、押し上げ効果は2月には 剥落すると見ている。 内訳をみると、オリンピック効果のでた分譲、貸家が増加した。分譲住宅(12 月:24.5 万戸→1月: 28.9 万戸)は前月比+18.0%と、貸家(12 月:38.5 万戸→1月:42.3 万戸)についても同+9.8%と大幅 な増加となった。貸家は、オリンピックによる押し上げ効果に加えて、12 月に前月比▲10.2%と大きく落ち 込んだ反動が出た可能性がある。貸家は、月によって振れがあるものの、16 年後半以降均してみれば調整の 動きが続いている。一方、持家(12 月:28.1 万戸→1月 27.9 万戸)は減少となった。持家は、3ヶ月連続 で前月比減少となり、2016 年後半以降軟調な動きを続けている。このような動きの背景として、消費増税延 期前の駆け込み需要の反動減やマイナス金利効果が一巡した可能性がある。 ○目先は力強さを欠いた動きが続くも、その後緩やかな増加基調へ このように、1月分については特殊要因が増加に大きく寄与しており、特殊要因を除けば貸家の着工ペー スの調整やマンションの低調な推移が続く中で、目先力強さに欠ける推移が続く可能性がある。しかし、そ の後は再び増加基調で推移していくとみている。 マンションについては、販売価格が高止まりする中で、販売の低迷が着工の重石となることで、軟調に推 移する可能性がある。一方で、貸家については、貸家建築により税優遇が受けられるという構造に変化がな い中で、相続税に対する根強い節税ニーズを背景に足元の調整局面を越えた後は再び上昇基調に復すると見 られる。また、低金利や雇用所得環境の改善、堅調な金融市場などが引き続き持家を始めとする全体の着工 戸数の下支えとなることが見込まれる。以上のことから、住宅着工は先行き緩やかな増加基調に復する可能 性が高いとみている。 住宅着工戸数(季調値年率、万戸) 110 105 100 50 着工戸数計(左軸) 持家(右軸) 貸家(右軸) 分譲(右軸) (万戸) 住宅着工戸数(貸家、季調値) 50 45 40 45 95 35 90 85 30 80 40 35 25 30 75 20 70 15 65 60 10 11 12 13 (出所)国土交通省「新設住宅着工統計」 10 14 15 16 25 20 10 11 12 13 14 15 16 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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