Economic Indicators_ 定例経済指標レポート

Economic Indicators
定例経済指標レポート
指標名:住宅着工戸数(2016年12月)
発表日2017年2月1日(水)
~貸家の落ち込みが全体の着工数を押し下げ~
第一生命経済研究所 経済調査部
担当 エコノミスト 伊藤 佑隼
TEL:03-5221-4524
○貸家の減少を主因に前月比では▲3.2%
国土交通省より発表された 12 月の新設住宅着工戸数は前年比+3.9%(コンセンサス:同+8.6%、レン
ジ:+5.8%~+11.3%)とコンセンサスを下回る結果となった。季節調整値(年率換算)では、92.3 万戸
(前月比▲3.2%)と貸家の減少を主因に3ヶ月連続の減少となった。四半期でみても、10-12 月期の住宅着
工戸数は前期比▲3.6%と2四半期連続の減少となった。
内訳をみると、貸家(11 月:42.9 万戸→12 月:38.5 万戸)が大きな落ち込みとなり、季節調整値の前月
比では▲10.3%となった。地域別にみると、「首都圏」の減少の寄与度が一番大きく、3ヶ月連続で減少し
ている。貸家は今まで速いペースで増加してきたが、足元では息切れ感がみられる。こうした増勢一服の背
景として、空室率の高まりや長期金利上昇がマインドに水を差した可能性や 16 年前半の高い伸びの一部が、
消費税増税をにらんだ駆け込みだった可能性が考えられる。とは言っても、貸家建築により税制優遇が受け
られるという構造に変化が無いことや人口のボリュームゾーンである団塊世代の高齢化が進んでいく中で、
相続税の節税需要がピークアウトしたとは考えにくい。水準としても、既にマイナス金利導入や駆け込み前
の 15 年末に近いところにあり、調整は相当進んだとみられ、近く貸家は回復基調に復する可能性がある。
持家(28.6 万戸→28.1 万戸)も 11 月から減少となった。持家は、均せば横ばい圏の動きが続いており、消
費増税延期前の駆け込み需要の反動減が影響している可能性がある。分譲(24.1 万戸→24.5 万戸)につい
ては 11 月から増加となった。分譲の内訳(季節調整値は筆者)をみると、戸建(11 月:13.3 万戸→12 月:
13.0 万戸)が減少した一方、マンション(11 月:10.6 万戸→12 月:11.3 万戸)が増加し、分譲を押し上げ
た。分譲は3ヶ月ぶりの上昇となったが、小幅な上昇に留まっており、持ち直し基調に転じたとは言い難い。
○先行きは緩やかな増加基調へ
先行きの住宅着工については、目先、貸家の増加ペースの調整等で、力強さに欠ける推移となる可能性が
あるものの、その後は再び増加基調で推移するとみている。
先述した通り、貸家については相続税に対する根強い節税ニーズを背景に基調としては堅調に推移するだ
ろう。また、低金利や雇用所得環境の改善、堅調な金融市場などが引き続き持家を始めとする全体の着工戸
数の下支えとなることが見込まれる。また、今まで高止まりが続いていた首都圏のマンション販売価格が足
元では落ち着きを見せ始めていることも安心材料だ。以上のことから、住宅着工は先行き緩やかな増加基調
に復する可能性が高い。
住宅着工戸数(季調値年率、万戸)
110
105
100
(万戸)
50
着工戸数計(左軸)
持家(右軸)
貸家(右軸)
分譲(右軸)
住宅着工戸数(貸家、季調値)
50
45
45
40
95
35
90
85
30
80
25
75
40
35
30
20
70
15
65
60
10
11
12
13
(出所)国土交通省「新設住宅着工統計」
10
14
15
16
25
20
10
11
12
13
14
15
16
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
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