液滴室温リバーサルマイクロコンタクトインプリントによる DLC エミッタの作製 川七 智貴(7570) 指導教員:清原 修二 准教授 1. はじめに これまでに本研究で開発したポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane: PDMS )モールドを用いた室温硬化ナノインプリントリソグラフィ (Room-temperature Curing Nanoimprint Lithography: RTC-NIL)ではダイヤモンド ライクカーボン(Diamond-like Carbon: DLC)膜の超微細パターンを形成できるこ とがわかっている 1).しかし,従来の加工プロセスでは,残膜層が数百 nm あると いう問題が生じる.そこで昨年度,室温リバーサルマイクロコンタクトインプリン トリソグラフィ(Room-temperature Reversal Micro Contactimprint Lithography: (a) 10 min RTRM-CL)を提案した.しかし RTRM-CL でも転写パターンに約 500 nm の残膜 (b) 15 min (c) 20 min (i)インプリント時間:t 層があった.残膜層が厚いと,イオンシャワー加工後のDLC 膜のパターンの精度 が悪くなってしまう.そこで,本研究では PDMS の離型性,ポリシロキサン (Polysiloxane) の粘性を応用した液滴室温リバーサルマイクロコンタクトインプリ ントリソグラフィ(Droplet Room-temperature Reversal Micro Contactimprint Lithography: DRTRM-CL)を提案した.この DRTRM-CL の最適なインプリント 条件を検討し,DLC エミッタの作製を行った.この手法を用いて次世代フラット パネルディスプレイ用ナノエミッタの作製を目指す. 2. 実験方法および装置 (a) 0.45 MPa (b) 0.50 MPa (c) 0.55 MPa 本研究で開発したポリシロキサン[HSG-R7-13,日立化成 ㈱]を転写材料に (ii)インプリント圧力:P 用いたDRTRM-CLによる先鋭化したDLCエミッタの作製プロセスを図1 に示す. 図2 DRTRM-CL の最適な条件の検討結果のSPM 像とその断面プロファイル まず,直径5 µm のドットを79,296[個/cm2]有するガラス状炭素(Glass-like Carbon: GLC)マスターモールドより,凹形状 PDMS モールドを作製(a)し,その上に ポリシロキサンを滴下し,マスクを形成する(b) .そこに,DLC 膜[ta-C,10 mm 角,約500 nm,表面粗さRa = 2.0 nm,豊橋技術科学大学高専連携教育プロジェク ト]を成膜したシリコンウェハを上から加圧(c) ,保持(d) ,離型(e)を行う. その後,ポリシロキサンの転写パターンを形成し,その転写パターンに ECR イオ ンシャワー加工装置[EIS-200ER,㈱ エリオニクス]でCHF3 イオンシャワーによ り残膜層を除去後(f) ,O2 イオンシャワー加工(g)を施し,先鋭化した DLC (a) GLC マスターモールド (b) PDMS モールド (c) 転写パターン (d) DLC エミッタ エミッタを作製する(h) . 図3 DRTRM-CL により作製したDLC エミッタのSPM 像 4. おわりに 本研究で作製した PDMS モールドを用いた DRTRM-CL により,円錐状のポリ シロキサンの転写パターンを得ることができた.これをECR O2 イオンシャワー加 工することで先端半径200 nm, 直径5 µm, 高さ500 nm の高精度な先鋭化したDLC エミッタを作製できた. 5. 新規性・特許性 図1 DRTRM-CL によるDLC エミッタの作製プロセス 液滴室温リバーサルマイクロコンタクトインプリントリソグラフィにより DLC エミッタを作製することに新規性があり, 液滴室温リバーサルマイクロコンタクト 3. 実験結果および考察 インプリントリソグラフィによるDLC 膜の超微細加工プロセスに特許性がある. 本研究では DRTRM-CL の最適な条件について検討した.インプリント時間:t, 謝辞 インプリント圧力:P を変化させたときの検討結果の走査型プローブ顕微鏡 (Scanning Probe Microscope: SPM) [NanoNaviReal s,㈱ 日立ハイテクサイエンス] 像とその断面プロファイルを図2 に示す.図から最適なインプリント条件は t = 15 本研究の一部は,豊橋技術科学大学高専連携教育研究プロジェクトの研究助成に より行われたことを付記する. min,P = 0.5 MPa であることがわかった.本研究で使用した直径5 µm のドット 79,296[個/cm2]を有する GLC マスターモールドの SPM 像を図 3(a) ,作製した 参考文献 PDMS モールドの SPM 像を図 3(b) ,最適なインプリント条件によるポリシロキ 1) S. Kiyohara, S. Yoshida, I. Ishikawa, T. Harigai, H. Takikawa, M. Watanabe, Y. Sugiyama,Y. Omata and Y. Kurashima: Fabrication of Diamond-Like Carbon Emitter Patterns by Room-Temperature Curing Nanoimprint Lithography with PDMS Molds Using Polysilokisan, MRS Advances, Vol.1, Issue16, pp.1075-1080 (2016), doi:10.1557/adv.2016.49 サンの転写パターンを図3(c)に示す。残膜層が薄かったためCHF3 イオンシャワ ーによる残膜層除去プロセスを省くことができた.O2 イオンシャワー加工(9.5 min, 400 eV)を施し,先鋭化したDLC エミッタを図3(d)に示す.
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