海外安全対策情報(平成28年度第3四半期)

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海外安全対策情報
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治安・社会情勢
(1)殺人件数は,昨年5月以降20ヶ月連続で,前年同月数を上回る傾向が続いている。また,
2011年より年間国内殺人件数は減少傾向を続けていたが,2015年総件数(17,03
4件)が前年総数(15,653件)から転じて8.8%の増加となり,2016年総件数(2
0,789件)は前年数から22%の増加となった。
連邦政府による治安対策は,犯罪組織主要人物の相次ぐ逮捕・殺害等,一定の成果をあげて
いる一方,依然として犯罪組織間での対立や縄張り争い等により,白昼路上での銃撃事件や治
安当局への襲撃事件が発生している。
犯罪組織は,治安当局の対応を遅延させるため,バスやトラック等大型車両等で路上にバリ
ケードを作ることがあり,一時的に路上で身動きできなくなった市民が銃撃戦の場に巻き込ま
れることがある。
(2)強盗,窃盗等の一般犯罪被害は,首都メキシコ市を含め昼夜を問わず引き続き発生している。
公共輸送機関である地下鉄,ミクロブス(ペセロ等の扉のついていない乗り合いバス)内でも
犯罪が多発しており,流しのタクシー(リブレ)の運転手や,運転手と結託した共犯者らによ
る強盗事件も発生していることから,それらの公共交通機関の利用は避けるべきである。
また,携帯電話アプリを使用して手配したタクシー乗務員による強盗事件等も報道されてい
ることから,その使用には十分に注意をし,運転手の氏名・車両番号を確認する必要がある。
市街地において交通渋滞が著しい箇所や赤信号停車時の車両を狙った強盗事件も頻発してい
ることから,車両の運転時には渋滞を避けるなどの対処が必要となる。
(3)ゲレロ州では,引き続き殺人が昨年を上回るペースで発生しており,2016年の殺人発生
総件数は2,213件と,国内2番目の発生件数のメキシコ州の2,053件を上回った。1
0万人あたりの殺人発生件数についても,国内で最も発生件数の高いコリマ州(81.55件)
に次ぎ,ゲレロ州(61.67件)は2番目に高い結果となった。
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一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)全国一般犯罪
内務省(SEGOB)が発表した第3四半期(10~12月)の犯罪発生件数報告によれば,
総犯罪発生件数は421,979件と前期(本年7~9月)と比較し4.3%増加した。犯罪
種別の内訳は以下のとおり。
ア
窃盗
105,938件(前期比
2.5%増)
イ
殺人
5,577件(前期比
3.5%減)
ウ
強盗
34,256件(前期比
16.3%減)
エ
強姦
3,159件(前期比
7.0%減)
オ
誘拐
331件(前期比
20.3%増)
(2)メキシコ市一般犯罪
メキシコ市においては,第3四半期(10~12月)の総犯罪発生件数は46,567件と,
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前期(本年7~9月)と比較して1.7%増加した。犯罪種別の内訳は以下のとおり。
ア
窃盗
16,330件(前期比
1.8%減)
イ
殺人
266件(前期比
11.2%増)
ウ
強盗
6,368件(前期比
37.3%増)
エ
強姦
108件(前期比
42.5%減)
オ
誘拐
10件(前期比
23.0%減)
(3)邦人被害事案
邦人被害一覧(2016年)参照
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テロ・爆弾事件等発生状況
(1)邦人被害事案
なし。
(2)邦 人 以 外の 被 害事 案
ア
襲撃
10月13日,ゲレロ州ウルアパン市にある連邦検察庁の事務所とパトロールカーが,市民
団体により襲撃された。これは現地の自警団の幹部2名が,当局により身柄を確保されている
ためだとされる。襲撃した市民団体は事務所の窓ガラスを割り,駐車されていたパトロールカ
ー数台を破壊した。
イ
襲撃
10月12日,メキシコ市南部で,覆面グループがメトロブス(公共交通バス)に放火した。
無政府主義者を名のるこの覆面グループは,身柄を拘束されている仲間の釈放を求め,放火の
後に周囲にメッセージの記載された垂れ幕が掲げた。
ウ
襲撃
11月23日,チワワ州マデラ市郊外で,市警察施設が武装グループによる襲撃を受けた。
当局の発表によれば,通報を受けた治安当局が現場に駆けつけたところ,血痕が発見されたほ
か,警察官 6 名と警察車両 1 台が不明となっているのが発見された。
エ
爆弾
12月12日,オアハカ州オアハカ市の主要道路沿いにある銀行のATMが,何者かにより
爆破された。目撃者の証言によれば爆発物は,走行中の車両から投げ込まれたとされる。同市
内では前日にもATMが同様の手口で爆破される被害に遭っている。
オ
爆弾
12月20日,メキシコ市クアウテモック区セントロ地域にある女性支援団体の入り口で,
爆発物による爆発が起き,施設が損傷した。
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誘拐・脅迫・恐喝事件発生状況
内務省が発表した犯罪発生件数報告によると,誘拐届出件数は2013年に過去最高であり,
その後減少傾向にあったが,2015年の総件数1,067件から,2016年は総件数1,1
28件と,5.7%増加した。また,依然として職場や自宅のみならず,ホテル客室への電話に
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よる脅迫事件が発生している。
(1)邦人被害事案
なし。
(2 ) 邦 人 以 外の 被 害事 案
ア
誘拐
10月27日,裁判所の裁判官がメキシコ市とケレタロ州をつなぐ幹線道路を車両で走行中,
武装グループから停止を求められ誘拐された。その後,被害者は自宅近くで解放された。
イ
誘拐
11月30日,プエブラ州チョルーラ市郊外で,同市在住の実業家が車両を運転中,待ち伏
せしていた武装グループに銃器を突きつけられ誘拐された。その後,実業家の車両が炎上して
いるのが発見され事件が発覚されるも,事件の詳細は公表されていない。
ウ
誘拐
12月6日,シナロア州クリアカン市で,武装グループが民家を襲撃し,屋内に居た家人3
名を誘拐した。現場には武装グループの使用した弾痕が多数残されていた。
エ
誘拐
12月14日,オアハカ州サン・フアン・クアツォスパン市の市長は,同人の娘2名が誘拐
されたことを明らかにした。被害者2名は高校への登校中,自宅近くで待機していた警察官の
服装をした3名の男に無理やり車両に乗せられ誘拐された。
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日本企業の安全に関わる諸問題
2016年の邦人被害報告件数は132件と前年件数85件から大幅な増加した。中でも,グ
アナファト州における報告件数が前年件数19件から53件へと増加した。また,2016年に
起きた邦人を被害とする強盗事件は合計20件(20件中,7件が強盗傷害。20件中,けん銃
使用は8件,刃物使用が7件。20件中日没後の発生が9件,日中の発生が11件)となってお
り,2015年発生の16件から増加した。過去に強盗傷害に至ったケースとして,強盗犯の手
を振り払ったところ,刃物で頭部を切りつけられて重傷を負ったケースの他,大声をあげる等し
て抵抗したため,暴行を受け負傷したもの,他には奪われた被害品を取り返そうと抵抗したため
暴行を受けたケースがある。また,強盗に遭い刃物を向けられた際に,相手の要求するところが
分からない状態で戸惑っていたところ,相手から顔面殴打されて怪我を負ったケースの他,乗車
したタクシーで出された飲料を飲んだところ,おそらく睡眠剤入りであったためか急に昏睡状態
となり,所持品を奪われた上に遠方の路上に放置されたというケースもある。
強盗事件等に遭った場合は,抵抗する・大声をあげる・逃げる等,犯人を刺激するような行動
はくれぐれも避ける必要がある。また,これらの強盗被害は,時間帯を問わずに発生しており,
昼夜を問わず,屋外における行動については,細心の注意を要する。
一方で,犯罪組織による殺人事件等凶悪犯罪の被害者は,大半が敵対する組織や治安当局であ
り,日本企業や在留邦人が直接の攻撃対象として被害が発生しているわけではない。しかし,犯
罪組織の対立抗争が激化した地域では,それに伴い治安が著しく悪化する場合もあり,犯罪組織
間の抗争がレストラン等の公共の場で行われ,邦人が巻き込まれるといった被害に遭う可能性も
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ある。
その他,メキシコ国内では依然として富裕層を対象とした誘拐事件が発生している。出勤・退
勤の時間やルート,飲食や買い物等の立ち寄り先を含めた外出時の行動のパターン化を避ける他,
個人情報の厳重な管理を行い,滞在先ホテルや住居の選定についてはセキュリティーレベルを充
分に考慮し,夜間の一人での外出を避ける等の対策が求められる。
以上