まだ止められる武器輸出

第 1156 号(1963 年 2 月 15 日第三種郵便物認可)
2017 年
1 月 31 日
女性会議
発行所:
◆官邸主導で潜水艦売り込み
﹁ 機 密 の 塊 の 潜 水 艦 輸 出 は、 ハ ー ド ル
が高すぎる﹂。
武器輸出解禁から1カ月後の2014
年5月、日本の﹁そうりゅう﹂型潜水艦
のオーストラリア輸出の可能性を質問し
た際、防衛装備庁の堀地徹装備政策課長
︵当時︶は、こう答えました。
しかし、官邸の﹁準同盟国のオースト
ラリアへの潜水艦輸出を進め、日豪の安
全保障体制を強化せよ﹂との指示で状況
は一変。2015年7月、防衛省と三菱
重工、川崎重工の官民合同チームが結成
されます。チームはオーストラリアで造
船 業 の 盛 ん な 各 都 市 を 巡 り﹁ 豪 技 術 者
300人の訓練施設を造って、4万人の
雇用創出を﹂と訴えました。
同年9月、日本の潜水艦を欲していた
共同訓練し、最後のアピールをしました
がある﹂とこぼします。
て資料を出すが、商習慣が違いリスク
も全部機密の世界。艦内のパイプのつ
出となったが、潜水艦はハンドルも弁
川崎重工幹部は﹁いきなり潜水艦輸
が、フランスが選定され、日本は最下位
年ぶりの大転換
で脱落しました。
◆
なぎ手の鋳物技術は普通の鋳物ではで
爆雷への衝撃耐力を決める。音の出な
き な い。 鋳 物 技 術 が 全 て の 潜 行 深 度、
策の大転換でした。武器輸出を禁じた武
いポンプ類は、特許を取った瞬間に仕
日本の武器輸出解禁は、 年ぶりの政
器輸出三原則は1967年に佐藤栄作総
組みが分かるから特許も取れない。そ
下請け企業も同様です。レーダーを
理が国会答弁で表明。①共産圏諸国への
り武器等の輸出が禁止されている国への
造る男性は﹁武器輸出は、慎重に慎重
れも出していいのか﹂と話します。
武器輸出は認められない③国際紛争の当
を重ねなければ、踏み出したくない﹂。
武器輸出は認められない②国連決議によ
事国または、その恐れのある国への武器
の は 怖 い。﹃ 儲 か れ ば い い ﹄ の 世 界 に
別の下請け企業男性は﹁軍需に携わる
以 降、 例 外 規 定 が 設 け ら れ ま し た が、
走ると、自分がつくったものでやられ
輸出は認められない、とします。
政府は武器輸出に慎重な態度を取ってき
かねない﹂と話します。
などに違反する国や紛争当事国には輸出
決定され、①国連安全保障理事会の決議
備移転三原則が、第2次安倍政権で閣議
中には﹁戦争には関わりたくない﹂と
してきた結果、多くの日本人の意識の
げ、武器を他国に売らない国づくりを
戦後、憲法9条の下で戦争放棄を掲
◆消費者の私たちにできること
ま し た。 一 方、 自 民 党 防 衛 族 や 経 団 連
は、輸出解禁を強く要望し、三原則見直
しが議論の俎上に載ってきました。そし
しない②輸出を認める場合を限定し、厳
いう強い思いがあると感じます。しか
て2014年4月、輸出を認める防衛装
格審査する③輸出は目的外使用や第三国
し安倍政権は集団的自衛権行使を容
企業幹部は﹁日本の武器輸出解禁の動き
企業は戸惑いを隠しません。大手防衛
粘り強く、こつこつ訴え続けることが
メールで﹁死の商人にならないで﹂と
そ、消費者の私たちが、企業に電話や
*購入ご希望の方はお名前と送付先をファックス
またはメールで下記までお送りください。
アボット前豪首相が退陣。ターンブル新
移転での適正管理が確保される場合に限
遣し、欧米列強に肩を並べる政治を推
認、武器輸出解禁、海外に自衛隊を派
ここで﹁国際紛争の助長回避﹂の基本
し進めています。こんな時代に私たち
る、とします。
理念は明記されず﹁紛争当事国になる恐
はどうすればいいのでしょうか。
コットやブランド力の低下は痛い﹂と
はあまりに早く、米のような枠組みや支
大切です。それこそが、平和な日本を
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首相は親中派で、中国重視の体制にシフ
ト し、 国 内 の 雇 用 増 を 最 優 先 と し ま す。
日 本 へ の 風 向 き は 一 変、 潜 水 艦 受 注 は、
事実上の﹁白紙﹂状態になりました。
そこで危機感を強めた日本はアピール
を強化。2016年2月に三菱重工の宮
永 俊 一 社 長 が 初 訪 豪 し、 地 元 有 力 紙 に
﹁豪州の安全のため技術を共有します﹂
と全面広告を掲載。同月、若宮健嗣防衛
れのある国﹂の表記も外れました。禁輸
で、 政 府 の 認 定 で は 紛 争 当 事 国 は ゼ ロ。
いう声を聞くようになりました。日本
昨 夏 以 降、 企 業 か ら﹁ 商 品 の ボ イ
中東輸出にも制限はかからず、日本が紛
の防衛企業の防需依存率は、平均5%
対象国は北朝鮮、イラクなど カ国のみ
争に加担する可能性が高まりました。
程 度。 民 需 で 稼 ぐ 企 業 が ほ と ん ど で、
8割を超える欧米の軍事企業とは軍事
援体制を作る時間がない。防衛・経産省
形作っていく唯一の手段ではないで
◆
﹁売れ、
売れ﹂
に戸惑う企業
は、企業に﹃売れ、売れ﹄とくる。政府
しょうか。共に頑張りましょう。
への意識はかなり違います。だからこ
には反対できないから、一生懸命﹃こう
※2面に関連記事
たたかう女性学の歩み
47
いう資料つくれ﹄と言われたことに応え
山川菊栄記念会記録集 2000-2015
47
11
副大臣も﹁ステルス技術を含む機密を豪
∼戦争ビジネスに舵を切らせるな∼
望月 衣塑子(もちづき・いそこ)
と共有する﹂と発言、4月には海上自衛
隊が潜水艦2隻を派遣して豪の海空軍と
まだ止められる武器輸出
東京新聞記者
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