II-29 院内で発生した肺塞栓症の臨床的特徴と予後に関する検討 貝塚 奈穂 1)、田尻 隆 和子 2)、木村 泰三 2)、酒井 俊 2)、本田 洵也 2)、本間 覚 2)、青沼 和 2) 1) 筑波大学医学群 医学類 5 年、2)筑波大学 医学医療系 循環器内科 目的:院内で発症した肺塞栓症の背景と予後を検討する。方法:過去 8 年間の DPC 入院後発症病名に PTE があ る 78 例を後向きに調査した。結果:平均年齢 63 歳、女性 64%、術後 32%、担癌 64%、有症候性 46%であった。 Cox 比例ハザードモデルを用いた多変量解析では、有症候性 PTE は年齢・性別・癌などで補正しても有意にそ の後の生存期間短縮に寄与していた(HR 6.0, p<0.0001)。発症前に下肢静脈エコーを行っていた 32 例のうち 16 例は DVT を認めなかった。エコーを行っていた症例では DVT の有無に関わらず、有症候性 PTE が有意に少 なく(p=0.03)、致死的 PTE は無かった。考察:有症候性 PTE は無症候性に比べて著しく予後不良であった。エ コーを行った症例は、DVT が無くともその後も静脈血栓予防を行った結果、有症候性/致死性 PTE を予防でき た可能性が示唆される。 II-30 腹部大動脈瘤破裂に対し、術中に遺伝子組換え活性型血液凝固第 VII 因子製剤投与を行って 救命し得た 3 例 武島 直子 1)、井上 2) 、末松 1) 義弘 堯文 2)、高木 理央 2)、西 智史 2)、吉本 明浩 2)、藤崎 正之 2)、森住 誠 2) 筑波大学医学群 医学類 5 年、2)筑波記念病院 心臓血管外科 外科手術において大量出血時に凝固因子低下が疑われる症例において、術中に遺伝子組換え活性型血液凝固第 VII 因子製剤(rFVII 製剤)投与を行って止血を図ることがある。当科で緊急手術が施行され、かつ rFVII 製剤 投与が行われた腹部大動脈瘤破裂の連続 3 症例について報告する。症例は 94 歳男性, 74 歳男性, 65 歳女性の 3 例でいずれも人工血管置換術を施行。2 例は術前ショック状態であり、その術前 Hb 値は 4.1mg/dL, 4.4mg/dL で、残り 1 例は 10.3mg/dL であった。3 例平均の手術時間は 248±47 分、出血量は 6718±3942mL、rFVII 製剤 投与前出血量 5609±3592mL、rFVII 製剤投与後出血量 1201±962mL であった。それぞれ術後 17、33、16 日目 に生存退院した。 II-31 Na チャネル調節因子 Nedd4-2 の心臓電気生理学的表現型に与える影響の解析 川村 飛翔、峯岸 孝之、Rajesh 公立大学法人 慎太郎、中島 Plajapati、石上 横浜市立大学 理恵、土肥 宏志、陳 琳、木野 旅人、石川 義弘、藤田 友章 医学部 4年 【目的】本態性高血圧の原因遺伝子の一つである Nedd4-2 が、心筋梗塞・心房細動下での、電気生理学的表現 型に与える影響を解析し、心腎連関の分子機序を明らかにする。【方法】雄性野生型(WT:C57Bl6/J)および Nedd4-2 C2 KO に対し、冠動脈結紮モデルを作成し、心電図変化と心エコー所見を調べた。さらに経食道内バ ーストペーシングで心房細動を誘発し、心房細動持続時間を解析した。【結果】WT と比べ、KO では有意な徐 脈・QT 延長・QT dispersion 増大を認めたが、心エコー所見では差がなかった。KO では心房細動持続時間の 延長が見られたが、有意差はなかった。【結論】本研究より、Nedd4-2 C2 isoform 欠損によるイオンチャネ ルの制御異常が、致死的不整脈の発症に関与する可能性が示唆された。 II-32 ATP 可視化マウスによる心臓の病態生理学の解析 武蔵 尭志 1)、小板橋 1) 群馬大学医学部 医学系研究科 紀通 2)、山本 医学科 正道 3)、磯 5 年、2)群馬大学 達也 2)、倉林 医学部附属病院 正彦 2) 循環器内科、3)京都大学大学院 腎臓内科学 収縮・弛緩を続ける心臓では、ATP 制御は非常に重要である。しかし、拍動を続ける心臓の細胞内でエネルギ ー源である ATP がどのように制御されているかは、推測の域をでなかった。我々は ATP と特異的に結合し構造 変化を起こすタンパク質に二種類の蛍光色素蛋白を結合させた FRET プローブ: ATeam を、遺伝子改変動物に 組み入れることに成功した。この動物の個体および細胞に励起光をあてると、蛍光の波長で ATP を定量化でき る。我々はこのマウスを用いて生体内での ATP の可視化を世界で初めて可能にした。開胸して直接心臓に励起 光を当てることで、拍動している心臓の ATP の時間的空間的解析が可能になった。このモデルは、心臓病の病 態解明および薬効評価に応用可能と考えられる。
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