﹁ 自

農林水産祭中央審査委員会長
千賀 裕太郎
農組合、JAつがる弘前、鬼沢集落はじめ
保全会﹂は、鬼沢楢木土地改良区、鬼楢営
平成二十六年度の農林水産祭のむらづ
くり部門で天皇杯に輝いた﹁自得地区環境
な培地となっていると考えられる。
振興を含む活発なむらづくり活動の豊か
てこれは、この地で子どもの教育や農業の
神〟が地域に今も太く根付いている。そし
さげて、敢えて悔いなし﹂
とする
〝民次郎精
して顕彰され、﹁大衆のためには、一身をさ
の生活に安定がもたらされたのである。義
(青森県弘前市鬼楢地域)
得地区環境保全会 ﹂が活動して
民次郎精神が根付くむらづくり活動
自得地区環境保全会
民・民次郎の地域への功績は地域で連綿と
1
いる鬼楢地域は、本州の北端を
減免などの地域対策を講じ、貧窮した民衆
の若さで処刑されるが、藩は直ちに年貢の
に背負って、一八一三
︵文化十︶
年、二二歳
民次郎は、一揆の首謀者としての罪を一身
ことは、決して偶然とは言えないだろう。
江戸末期の偉人、﹁藤田民次郎﹂が生まれた
こうした文化的バックグラウンドを擁す
る地域に、津軽藩最大の百姓一揆を率いた
い感謝の念が、色濃く見てとれる。
の理解と関心、とりわけ先祖・先人への深
風習のなかに、人々の地域の歴史・文化へ
の節句には菖蒲を軒に挿さない。こうした
節分には鬼の嫌いな﹁豆﹂をまかず、端午
ここでは鬼は﹁良い﹂ものとされるので、
は鬼の好物とされるニンニクが奉納される。
あり、鬼を祀った鬼神社がある。鬼神社に
て一夜で﹃鬼神堰﹄を造ったという伝承が
ここにはかつて、人々が稲作のための水
利の悪さに苦しんでいたところ、鬼が現れ
のリンゴ産地となっている。 つ秀峰岩木山の東裾野の傾斜地は、日本一
となっており、また、津軽富士の異名をも
成した津軽平野にあって、肥沃な水田地帯
北上して十三湖に注ぐ一級河川岩木川が形
﹁自
のむらづくりを訪ねて
天皇杯
津軽ふるさと創成劇「鬼と民次郎」の一場面
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土地改良 296号 2017.1 ●
木土地改良区である。同土地改良区は、さ
事に事務局運営を担っているのが、鬼沢楢
無実化するおそれがある。しかしここで見
け大規模な組織となると、ともすれば有名
る、むらづくりの推進母体である。これだ
子、鬼沢花管理有志会など二二団体からな
PTA、子ども会、老人クラブ、鬼神社氏
四集落の各町会・公民館、消防団、小学校
得水土里保全隊﹂を設立、土地改良区がそ
非農業者四三一名と一九団体からなる﹁自
指定地区とされたのを機に、同年、農業者・
環境保全向上活動支援実験事業﹂のモデル
実は本地域でも、高齢化や担い手不足が
進んだが、平成十八年に﹁農地・水・農村
上げたものである。
め農地集積にも務めている、というから見
と一体となって、耕作放棄を未然に防ぐた
〝平成二十六年度農林水産祭受賞者の業績〟
資料 公益財団法人日本農林漁業振興会編
の事務局を担った。次年度からは農地・水・
環境保全向上対策の本格実施を受けて、共
同 活 動 を 本 格 的 に ス タ ー ト さ せ た。 平 成
二十四年度から、第二期目である農地・水
保全管理支払交付金となったことを契機
に、
〝 農村地域の環境全体を保全する 〟と
いう意味を込めて﹁自得地区環境保全会﹂
へと改名し、今日に至るのである。
鬼楢地域は上に述べた事情に加えて、明
治九年﹁鬼沢小学校﹂の開校以来、途中の
五年間を除いて、一つの小学校区が続き、
現在も﹁弘前市立自得小学校﹂として地域
の 教 育 の 拠 点 と な っ て い る。 こ の こ と か
ら、
〝地域の結束を持続するためには、安
易な学校区の変更は避けることが望まし
い〟
、と い う 大 切 な 教 訓 を 得 る こ と が で き
るだろう。
● 土地改良 296号 2017.1
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小学生によるお米学習田の活動発表会
お米学習田における田植え体験
らに営農組合の設立をも支援して、同組合
鬼楢地域の景観