リサーチ TODAY 2017 年 1 月 24 日 「トランプ政権の誕生」、日本はどうすべきか 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 先週20日のトランプ新政権誕生を受け、みずほ総合研究所は「トランプ政権の誕生」と題するリポートを 発表している1。ここでは、サブタイトルを「米国は何をしようとしているのか、日本はどうすべきか」とし、日本 はトランプ新政権とどう向き合うべきかを議論している。1月20日の大統領就任演説を見る限り、昨年の選 挙戦の延長線上の表現が多くみられ、不透明感は強い。一方、既に発表された閣僚人事を見ると、反オバ マ・軍関係者・経済界出身者が多くを占める。下記の図表は、歴代政権と比較したトランプ政権の閣僚人 事の特徴を示す。就任演説でも繰り返された「アメリカ第一主義」は確かに地政学的な不確実性を高めや すい。ただ、筆者は「米国は世界の警察官ではない」と明言したオバマ政権が実は最もアメリカ第一主義で あり、その結果、世界中の地政学的不安を高めたと考えている。それに比べ、今回、安全保障分野は中東 で軍事作戦等、経験豊富な元軍人を指名したのは安心材料だ。また、リーマン・ショック直後に就任し金融 中心に規制強化・反ビジネスであったオバマ政権と比べ、今回はCEO経験者を中心にプロビジネスの実務 家政権になったことは経済にプラスであり、「富国強兵」の政権といえる。 ■図表:歴代政権と比較したトランプ政権の閣僚人事の特徴 (軍経験者) トランプ(17年1月) 40 25 オバマ(09年1月) (CEO経験者) (公職経験者) 25 91 9 ブッシュ(01年1月) 91 32 クリントン(93年1月) 48 81 ブッシュ(89年1月) 48 81 0 0 50 100 0 50 14 5 100 (%) (%) 18 0 50 100 (%) (注)閣僚 22 人の経歴を比較したもの。トランプ政権では、1 月 18 日時点で未決定の農務長官、大統領経済諮問委員会 委員長を除く。 (資料)National Public Radio “How The Donald Trump Cabinet Stacks Up, In 3 Charts”2016 年 12 月 28 日より みずほ総合研究所作成 次ページの図表はトランプ政権の経済効果の試算を示したものだ。インフラ投資・減税のプラス要因と、 通商政策と反移民政策のマイナス要因との綱引きである。日本としては、主要国のなかで日本が米国製造 業の雇用に最も貢献しているという事実を米国と共有することが重要だ。こうした対応によって、日本として 1 リサーチTODAY 2017 年 1 月 24 日 マイナス要因が顕在化するリスクを極力軽減化しつつ、同時にプラス要因である減税、インフラ投資、規制 緩和を活用して新たな投資機会を活用することが重要になる。 ■図表:トランプ政権の政策効果 (ベースラインGDP比、%Pt) 4 インフラ投資 3 2 減税 1 0 ▲1 通商政策(関税引き上げ) ▲2 反移民政策 ▲3 ▲4 2017 2018 2019 2020 (年) 2021 (注)減税は Tax Policy Center 推計値。インフラ投資は年 1,000 億ドル。減税とインフラ投資の乗数は CEA による推 計値を利用。インフラ投資は政府支出の場合と同じ効果と仮定。通商政策は中国からの輸入に 45%、NAFTA か らの輸入に 35%の関税をかけた場合の輸入増加分(GDP の 2.2%)。反移民政策は、犯罪歴を持つ不法移民 250 万人が労働市場から消えたと仮定。 (資料)各種資料より、みずほ総合研究所作成 下記の図表は米国の政治日程を示す。今後、注目される減税を中心とした経済政策の具体的な内容は、 2月に予定される両院議会演説や予算教書等によって徐々に明らかになるだろう。当社は、今後も更なる 検討を加えながらトランプ政権が日本経済に及ぼす影響を含めた議論を進める所存である。 ■図表:米国の今後の米国の政治日程 12月 財政関連 新政権の動向 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 10月 11月 12月 10/1 新会計年度開始 2月(第1週) 「大統領戦略・政策フォーラム」第1回会合開催 1/3 新議会開会 1/11 トランプ氏記者会見 1/20 新大統領就任式(正午~) ★就任日当日にどんな措置(公約)を実施するか注目 次の注目点 8/8 就任200日目 4/30 就任100日目 米国以外の 重要イベント 9月 3/16 債務上限規定再開 4/28 2017年度暫定予算失効 2月 両院議会演説 2月 予算教書? 金融市場関連 8月 イエレンFRB議長議会証言:2月両院で金融政策報告、1月・3月に上院・下院いずれかもしくは両方の予算委員会(財政政策)で証言 4/15 半期為替報告書 10/15 半期為替報告書 7/7・8 G20ハンブルク・サミット(独) 2月 G20財務大臣・中央銀行総裁会議(独) 5月 G7シチリア・サミット(伊) 3月 蘭総選挙 4/23,5/7 仏大統領選 9月 独連邦議会選挙 (注)見込みを含む。 (資料)各種資料より、みずほ総合研究所作成 1 「トランプ政権の誕生」 (『Mizuho Research & Analysis』 2017 年 1 月 23 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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