横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申第1378号について

横 浜 市 記 者 発 表 資 料
平成29年1月24日
市民局市民情報 課
横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申第1378号について
横浜市情報公開・個人情報保護審査会(会長
藤原 靜雄)は、本日、次の答申を行い、
横浜市教育委員会が行った非開示決定は妥当であると判断しています。
1
答申の件名
「横浜市立中山中学校で実施された定期テスト模範解答 (1) 平成22年度(2010年度)社会
科1学年~3学年全て (2) 平成23年度(2011年度)社会科1学年~3学年全て (3) 平成24
年度(2012年度)社会科1学年 (4) 平成25年度(2013年度)社会科2学年 (5) 平成26年度
(2014年度)社会科3学年 (6) 平成27年度(2015年度)社会科1学年で7月31日以前に行わ
れたもの」の非開示決定に対する異議申立てについての答申
【答申第1378号】
2
諮問までの経過等
答申
番号
請求日
決定通知日
異議申立日
諮問日
1378 平成27年8月7日 平成27年8月26日 平成27年10月21日 平成27年11月20日
3
請求者 実施機関
個人
教育委員会
対象行政文書、原処分の決定内容、審査会の結論
答申
番号
対象行政文書
原処分の決定内容・主な理由(概要)
審査会
の結論
非開示
「横浜市立中山中学校で実施された定 不存在
期テスト模範解答 (1) 平成 22 年 (当該開示請求に係る請求対象文書
度(2010 年度)社会科1学年~3学 は、組織共用文書としていないこと
年全て (2) 平成 23 年度(2011 年 から、当該開示請求に係る行政文書
度)社会科1学年~3学年全て (3) は保有していないため。)
平成 24 年度(2012 年度)社会科1
※対象行政文書の行政文書性を争う趣
学年 (4) 平成 25 年度(2013 年度)
旨で異議申立てがされたもの
社会 科 2学 年 (5) 平 成 26 年 度
(2014 年度)社会科3学年 (6) 平
1378
成 27 年度(2015 年度)社会科1学
年で7月 31 日以前に行われたもの」
のうち「(5) 平成 26 年度(2014 年
度)社会科3学年」(以下「文書1」
という。)及び「(6) 平成 27 年度
(2015 年度)社会科1学年で7月 31
日以前に行われたもの」(以下「文
書2」という。文書1及び文書2を
総称して、以下「本件申立文書」と
いう。)
- 1 -
実施機関に
おける行政
文書性の判
断は妥当で
はないが、廃
棄済で不存
在であるた
め、文書1を
非開示とし
た決定は結
論において
妥当
4
審査会の判断の要旨
答申
番号
判断の要旨
《定期テストに係る事務について》
横浜市立中学校(以下「中学校」という。)における定期テストは、生徒の教科目標への
到達度を測る目的や、生徒に自身の学習状況を振り返る機会を与える目的のほか、中学校教
員(以下「教員」という。)の指導方法の改善に資するなどの目的で実施している。定期テ
ストの実施後に、生徒に対し採点済みの解答用紙を返却する際には、試験問題の正答を示す
ことが通常の事務と考えられる。正答の示し方は、各中学校の指導方針、あるいは教員の指
導方針にゆだねられている。正答の示し方の一つとして、模範解答を配付するなどして正答
を示す方法がある。また、模範解答を配付せず、授業時間中に一つ一つの問題の解き方や正
答を解説していく方法もある。正答の示し方については、中学校や教員の指導方針に基づき、
限られた授業時間数や生徒の理解状況などを勘案しながら決められるものである。
横浜市教育委員会(以下「実施機関」という。)は定期テストに関し、平成24年7月13日
付教指企第1560号により「定期試験問題のチェック体制作りの確認について(通知)」(以
下「本件通知」という。)を発している。本件通知では、定期テストの問題及び模範解答は
教科主任等及び管理職が点検するとともに、点検された定期テストの問題及び模範解答を1
年間保存することが求められている。
なお、実施機関は、正答とは試験問題に対する正しい答えであり、模範解答とは正答が複
数ある中で一つの模範となる答え又は生徒に配付することを目的に作成した答え(以下、実
施機関のいう模範解答を「配付を目的とした模範解答」という。)であるとし、模範解答の
作成を義務づける規定は存在しないとしている。
定期テストに関する文書は、横浜市立学校行政文書管理規則(平成12年6月横浜市教育委
員会規則第12号。以下「規則」という。)第10条第4項に基づき横浜市教育委員会教育長が
1378 定める学校保存文書分類リストの「定期試験関係書類」に分類され、1年の保存期間が定め
られている。
《本件申立文書について》
ア 文書1は、横浜市立中山中学校(以下「本件中学校」という。)において平成26年度に
実施された第3学年の社会科定期テストに係る模範解答であり、文書2は、本件中学校に
おいて平成27年度7月31日までに実施された第1学年の社会科定期テストに係る模範解
答である。
イ 当審査会において実施機関に確認したところ、本件中学校の平成26年度第3学年及び平
成27年度第1学年では、各2名の教員(以下「本件教員」という。)が社会科を担当して
おり、そのうち各1名の教員(以下「解答作成教員」という。)が本件申立文書を作成し
たとのことであった。また、本件申立文書は、生徒が解答を記入する答案用紙各欄の上部
に模範解答が印字されるように作成されており、本件に係る社会科定期テストでは、各生
徒が解答を記入した解答用紙全てに本件申立文書を差し込み印刷し、本件教員が採点を
行った上で各生徒に返却されたとのことであった。
《行政文書の該当性について》
ア 実施機関の説明によれば、本件に係る開示請求(以下「本件請求」という。)を受けた
際、本件申立文書は生徒への配付を目的として作成しておらず、本件教員が答案を採点す
る際の補助として作成した正答であり、行政文書として認識していなかったとのことで
あった。しかし、本件異議申立てを受けて、横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申第
532号を参考に、改めて組織共用性を検討し、行政文書と認識したため、本答申を受けた
後、実施機関が保有している文書2については開示すると説明している。
組織共用性の考え方について、実施機関は、本件申立文書が差し込み印刷された解答用
紙を生徒に返却したことは、実施機関以外のものへ提供したこととなり、実施機関におい
て業務上必要なものとして利用された状態になったと解することが相当であるため、組織
共用性が認められるのは生徒に返却し、配付した時点であると主張する。
一方、異議申立人(以下「申立人」という。)は、複数の教科担当者が同じ模範解答を
用いて行う採点業務は、共通の採点基準について事前に打ち合わせを行うなどの組織的対
- 2 -
答申
番号
判断の要旨
応が欠かせない業務であり、組織共用性が認められるのは配付以前の模範解答の作成のプ
ロセスであると主張する。
このように、実施機関及び申立人の組織共用性に係る主張が異なるため、組織共用性が
認められるとされる時点について、当審査会として、なお検討することとした。そこで、
当審査会で平成28年9月27日に実施機関から事情聴取を行ったところ、次のとおり説明が
あった。
(ア) 中学校における定期テストの正答の示し方や模範解答の作成を義務づける規定や文
書は存在しないため、口頭や板書を用いて正答を示す場合もあるほか、模範解答を配付
する場合もある。
(イ) 通常、定期テストに係る問題及び模範解答を作成する作業は、生徒の人数や教科に
よって異なるが、教員1名で行うことが多く、本件中学校の社会科では、定期テストに
係る問題及び模範解答の作成を分担し、別の教員が行っている。本件教員のうち、解答
作成教員は、問題の作成を担当した教員(以下「問題作成教員」という。)が作成した
問題を受けて、本件申立文書を作成した。
(ウ) 解答作成教員は、問題作成教員と共に本件申立文書を確認した後、平成26年度の解答
作成教員は校務用USBメモリに、平成27年度の解答作成教員は校内LANで結ばれている大
容量のハードディスクに保存し管理していた。答案の採点に当たり、解答作成教員は、
生徒が解答を記入した解答用紙に本件申立文書を差し込み印刷した。差し込み印刷の作
業は、解答作成教員が行ったので、問題作成教員は本件申立文書を保有していない。
(エ) 採点作業については、差し込み印刷された本件申立文書を利用して、本件教員がそれ
ぞれ担当するクラス分のみを行い、各生徒に返却した。
(オ) 本件通知により、配付を目的とした模範解答を作成した場合は、教科主任等及び管理
1378
職の点検を行った上、学校保存文書分類リストに基づき定められた保存期間である1年
間、紙媒体で保存している。
しかし、本件申立文書が配付を目的とした模範解答という認識ではなかったので、本
件通知に基づいた点検ではなく、平成26年度の本件教員が文書1について、平成27年度
の本件教員が文書2について、誤りがないか等の確認を行った。ただし、本件異議申立
てを受けて、本件申立文書は行政文書であるという認識に改めたので、文書2について
は、教科主任等及び管理職の点検を行い、問題用紙と共に紙媒体で保存し管理する方法
に改めた。
(カ) 本件通知を受けて、配付を目的とした模範解答を作成した場合には、教科主任等及び
管理職の点検を行うこととしていたが、通常、正答についても、教科主任等により確認
している。
イ 実施機関が説明する本件中学校における定期テストに係る文書取扱いの実態を踏まえ、
行政文書性について次のように判断する。
(ア) 横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条
例」という。)第2条第2項において規定されている「職務上作成し、又は取得した」
とは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内において作成し、又は取得したことをいう。
また、「組織的に用いる」とは、その作成又は取得に関与した職員個人の段階のもので
はなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織に
おいて、業務上必要なものとして、利用され、又は保存されている状態のものを意味す
ると解するのが相当である。そして、作成され、又は取得された文書が、どのような状
態にあれば組織的に用いるものであるかについては、当該文書の作成又は取得の状況、
利用の状況、保存又は廃棄の状況などを総合的に考慮して実質的な判断を行うのが相当
である。
(イ) 本件申立文書は、解答作成教員が採点業務の助けとして作成したものであるから、職
務上作成された文書であることは明らかであり、職務上作成された文書が行政文書に該
当するか否かは、その文書が当該実施機関の組織において業務上必要なものとして利用
され、保存されている状態(組織共用文書)にあるかどうかによる。
(ウ) 上記のとおり、実施機関の説明によれば、本件申立文書の作成及び保存は解答作成教
員が行っているが、本件教員が採点の用に供するため、作成の段階において本件教員が
相互に本件申立文書の確認を行ったとのことであった。本件に係る問題及び模範解答が
- 3 -
答申
番号
判断の要旨
それぞれ別の教員によって作成されている以上、出題範囲や評価基準は共通の認識に基
づいて決定されるべきものであるため、本件申立文書は作成者以外の者によって確認さ
れることを前提としているものと理解せざるを得ない。
(エ) 実施機関は、生徒に配付することを目的として作成したものが模範解答であり、配付
された時点で行政文書に当たると主張するが、配付の事実がなければ組織共用文書にな
らないということではない。文書の作成段階において、複数の職員で内容を確認するも
のであれば、模範解答や正答といった用語のいかんにかかわらず、その時点で実施機関
の組織において業務上必要なものとして利用され、又は保存されている状態にある。
したがって、本件申立文書は、作成の段階において本件教員で内容を確認し、保存さ
れた時点で条例第2条第2項に規定する行政文書に該当すると解すべきである。
《文書1の不存在について》
ア 実施機関は、文書1については、文書1を作成した平成26年度の解答作成教員が本件中
学校を退職した際に廃棄したため存在しないと説明する。当審査会は、文書1の存在の有
無及び文書1を廃棄したことを示す文書等の有無を実施機関に確認したところ、事情聴取
において次のとおり説明があった。
(ア) 本件中学校では、各教員に対し校務用USBメモリを貸与している。平成26年度の解答
作成教員は、文書1を校務用USBメモリに保存していたが、平成26年度末の退職時に校
務用USBメモリを本件中学校に返却するに当たり、校務用USBメモリに保存されている
データを消去し、返却した。データの消去については、平成23年5月13日付教指企第552
号による「市立学校における情報(個人情報を除く)の取扱いについて(通知)」にお
いて、教職員として対応することとして「データの必要性を失った時点で、速やかに完
全に消去する。」ことが定められていることから、当該教員は文書1を削除したと考え
られる。
(イ) 本件請求を受けて、本件中学校校長の指示により、本件中学校副校長が文書1の存在
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の有無を確認した。本件中学校副校長は、平成26年度の解答作成教員から返却された校
務用USBメモリ内のデータに加えて、定期テストに係る問題用紙を保管しているファイ
ルに綴られている紙文書並びにファイル検索機能を用いて校内LANで結ばれている大容
量のハードディスク内のデータ及び平成26年度の解答作成教員が使用していたフォル
ダの探索を行ったが、文書1の存在を確認できなかった。
(ウ) 本件中学校副校長による文書1の不存在が確認された後、本件中学校副校長から実施
機関の職員である指導主事に対し、本件申立文書が存在しなかった旨を口頭で伝えたの
みであることから、本件中学校副校長が確認を行ったということを証明する文書は存在
しない。
イ 上記のとおり、作成の段階において複数の職員で内容を確認し保存される文書は組織共
用性が認められ、行政文書に該当すると考えられるものであるから、文書1についても、
本来ならば行政文書として適切な管理がなされるべきものである。しかしながら、文書取
扱いの適否はともかく、その存在を推認させる事情を認めることができなかったため、文
書1は存在しないという実施機関の説明は、特段不自然とは言えない。
ウ 申立人は、廃棄された文書1を復元し開示することを求めているが、条例第5条に規定
する開示請求権は、実施機関の保有している行政文書について、あるがままの形で開示す
ることを求めることができる権利であって、すでに消去等されているものを復元して開示
することを求めることまで認めるものではない。
《本件通知に基づく文書管理の妥当性について》
ア 実施機関は、当初、本件申立文書は配付を目的として作成されておらず、正答であると
認識していたため、行政文書に該当せず、本件通知に基づく点検及び保存の対象でないと
考えていたと主張する。
そこで、当審査会において本件通知を確認したところ、教科主任等(問題の内容につい
て判断できる者)及び管理職が定期試験の問題及び模範解答を点検し、点検された定期試
験の問題及び模範解答については、チェック票添付のまま、1年間の保存をすることが記
載されていた。また、本件通知の趣旨として、「試験問題は教育課程に沿った目的及び内
容となっていること」、「試験問題の内容が、特定の個人、団体、思想・信条等を誹謗中
傷するなど、人権侵害にあたらないこと」及び「試験問題の内容が著作権を侵していない
- 4 -
答申
番号
判断の要旨
こと」の3つの留意事項を基に点検する旨であることを確認した。
実施機関は、本件通知が配付を目的とした模範解答のみを点検及び保存の対象としてい
るものであり、本件申立文書を、配付を目的とした模範解答と認識していなかったことか
ら、本件通知に基づく点検及び保存の対象としていなかったと考えられる。確かに、本件
通知には「模範解答」との記載が認められるが、実施機関が主張する、模範解答は配付を
目的として作成されたものとし、正答を模範解答と異なるものとする明文化された根拠は
当審査会としては確認できなかった。本件通知の趣旨に鑑みると、配付を目的とした模範
解答のみが点検及び保存の対象となるとは考えづらく、正答に関しても本件通知に基づく
点検及び保存の対象として取り扱われる可能性があるものと考えられる。
イ 仮に、正答が本件通知に基づく対象として取り扱われないとしても、上記のとおり、作
成の段階において複数の職員で内容を確認し保存される正答は行政文書に該当するもの
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である。そして、規則第10条第1項では、行政文書は保存期間別に分類することと規定し
ている。
当審査会において実施機関における平成26年度及び平成27年度の行政文書分類リスト
を確認したところ、本件申立文書は定期試験関係書類に分類されるものと解される。そう
すると、定期試験関係書類に分類される文書に関しては、1年間は保存するべき行政文書
である。
ウ したがって、平成26年度に作成された保存期間1年の行政文書が平成26年度中に廃棄さ
れていることから、本件請求がなされた平成27年度時点において、実施機関が文書1を保
有していないという状態は、不適切であったと言わざるを得ない。また、文書1が保存期
間である1年間保存されていなかったのみならず、文書1を作成した教員個人が当該文書
を保存していた状態についても、文書管理が適正であったとは言えない。実施機関におか
れては、配付を目的とした模範解答だけでなく点検を前提として作成された正答について
も、今後、適切に管理すべきである。
5
審査会の答申(別添のとおり)
資料:答申第1378号
6
条例(抜粋)
横浜市の保有する情報の公開に関する条例
(定義)
第2条(第1項省略)
2 この条例において「行政文書」とは、実施機関の職員(市が設立した地方独立行政法人の役
員を含む。以下同じ。)が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁
的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作
られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、
当該実施機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
(1) 官報、公報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として
発行されるもの
(2) 規則で定める市の機関等において、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料と
して特別の管理がされているもの
(開示請求に対する決定等)
第10条 (第1項省略)
2 実施機関は、開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき(第5条第3項又は前条の規
定により開示請求を拒否するとき、及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含む。
以下同じ。)は、開示しない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなけ
ればならない。
お問合せ先
市民局市民情報課担当課長
渡邉
- 5 -
淳
Tel 045-671-2319
.
資
横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申
(答申第1378号)
平成29年1月24日
料
横 情 審 答 申 第 1378号
平 成 29年 1 月 24日
横浜市教育委員会
様
横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会 長
藤 原
靜 雄
横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく
諮問について(答申)
平成27年11月20日教北指第342号による次の諮問について、別紙のとおり答申しま
す。
「横浜市立中山中学校で実施された定期テスト模範解答
度(2010年度)社会科1学年~3学年全て
社会科1学年~3学年全て
(2) 平成23年度(2011年度)
(3) 平成24年度(2012年度)社会科1学年
(4) 平成25年度(2013年度)社会科2学年
社会科3学年
(1) 平成22年
(5) 平成26年度(2014年度)
(6) 平成27年度(2015年度)社会科1学年で7月31日以前
に行われたもの」の非開示決定に対する異議申立てについての諮問
別
答
1
紙
申
審査会の結論
横浜市教育委員会が、「横浜市立中山中学校で実施された定期テスト模範解答
(1) 平成22年度(2010年度)社会科1学年~3学年全て
度)社会科1学年~3学年全て
(2) 平成23年度(2011年
(3) 平成24年度(2012年度)社会科1学年
平成25年度(2013年度)社会科2学年
(4)
(5) 平成26年度(2014年度)社会科3学年
(6) 平成27年度(2015年度)社会科1学年で7月31日以前に行われたもの」を非開
示とした決定について、横浜市教育委員会がなお非開示とするとしている文書を非
開示とした決定は妥当である。
2
異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「横浜市立中山中学校で実施された定期テスト・問題用
紙・模範解答
学年全て
学年
・2010年度社会科1学年~3学年全て
・2012年度社会科1学年
・2011年度社会科1学年~3
・2013年度社会科2学年
・2014年度社会科3
・2015年度社会科1学年で7月31日以前に行われたもの」の開示請求(以下
「本件請求」という。)に対し、横浜市教育委員会(以下「実施機関」という。)が
平成27年8月26日付で行った「横浜市立中山中学校で実施された定期テスト模範解答
(1) 平成22年度(2010年度)社会科1学年~3学年全て
度)社会科1学年~3学年全て
(2) 平成23年度(2011年
(3) 平成24年度(2012年度)社会科1学年
成25年度(2013年度)社会科2学年
(4) 平
(5) 平成26年度(2014年度)社会科3学年
(6) 平成27年度(2015年度)社会科1学年で7月31日以前に行われたもの」を非開示
とした決定(以下「本件処分」という。)のうち「(5) 平成26年度(2014年度)社会
科3学年」(以下「文書1」という。)及び「(6) 平成27年度(2015年度)社会科1
学年で7月31日以前に行われたもの」(以下「文書2」という。文書1及び文書2を
総称して、以下「本件申立文書」という。)を非開示とした決定の取消しを求めると
いうものである。
3
実施機関の非開示理由説明要旨
本件申立文書については、横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2
月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第2条第2項に規定する行政文書が存
在しないため非開示としたものであって、その理由は、次のように要約される。
-1-
(1)
横浜市立中山中学校(以下「本件中学校」という。)の社会科担当教員は、正答
の示し方として模範解答の配付は行っておらず、生徒の答案用紙に、当該教員の作
成した正答である本件申立文書を差し込み印刷し、返却している。本件申立文書は、
あくまでも当該教員の手持ち資料として保有しており、当該教員が答案を採点する
際の補助として作成されたものである。
「行政文書」とは、条例第2条第2項において、「実施機関の職員・・・が職務
上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録・・・であっ
て、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有してい
るものをいう」と規定されている。本件申立文書は、学校組織として利用するため
に作成されたものではなく、教員個人の職務遂行の便宜のためにのみ作成し、利用
したものである。当該実施機関の組織において業務上必要なものとして保存されて
いない状態であることから、本件申立文書は、組織共用文書として保有しておらず、
条例第2条第2項に規定する行政文書には該当しないと判断したため、非開示とし
た。
(2)
しかしながら、本件異議申立てを受けて、改めて本件申立文書の組織共用性を検
討した結果、正答である本件申立文書が差し込み印刷された答案用紙を生徒に返却
したことは、実施機関以外のものへ提供したことによって実施機関組織において業
務上必要なものとして利用された状態になったと解することが相当であるため、組
織共用性が認められ、行政文書に該当するものと判断した。したがって、答申を受
けた後、文書2は、開示する。
文書1は、文書2と同様に、組織共用性が認められるが、当時は、本件申立文書
を組織共用文書として認識していなかった。よって、平成26年度の社会科担当教員
が既に廃棄しており、文書1は存在しないため、非開示とする。
(3)
なお、本件申立文書の名称について、本件処分時は、「(5) 平成25年度(2014年
度)社会科3学年
(6) 平成26年度(2015年度)社会科1学年で7月31日以前に行
われたもの」と記載したが、正しくは、「(5) 平成26年度(2014年度)社会科3学
年
(6) 平成27年度(2015年度)社会科1学年で7月31日以前に行われたもの」で
あったため訂正する。
4
異議申立人の本件処分に対する意見
異議申立人(以下「申立人」という。)が、異議申立書、意見書及び意見陳述にお
いて主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。
-2-
(1)
本件処分の一部を取り消し、本件申立文書の開示を求める。
(2)
学校の定期テスト問題と模範解答は相互に依存するものであり、模範解答は採点
基準の決定で組織的に共用されていると考えられる。
(3)
定期テストの採点業務は、複数の教科担当者が同じ模範解答を用いて、共通の採
点基準のもとに遂行されるので、綿密な打ち合わせなど組織的対応が欠かせない業
務である。複数名で定期テスト及び模範解答を用いるということは、職員個人の便
宜のためにのみ作成し、利用したことにならず、組織的に用いていることから、模
範解答は行政文書と規定できる。また、実施機関は、非開示理由説明書において、
「正答が差し込み印刷された答案用紙を生徒に返却したことは、実施機関以外のも
のへ提供したことにより組織共用性が認められた」としているが、配付以前の模範
解答の作成のプロセスで、すでに組織共用性が認められ行政文書と規定できる。
(4)
平成24年度以降、適正な定期テスト問題を作成するために、定期テスト問題及び
模範解答は管理職の点検を行うこととした通知が出されており、模範解答の作成及
び保存がされていないとは考えづらい。なぜなら、定期テスト問題と模範解答は一
体不可分のものであり、問題文だけでなく解答、問題から解答を導くまでの過程を
抜かして点検しても、適正な定期テスト問題とは言えないからである。
(5)
本件中学校において、定期テスト問題のみを組織共用文書とし、模範解答が組織
共用文書として認識されていないという横浜市立学校行政文書管理規則(平成12年
6月横浜市教育委員会規則第12号。以下「規則」という。)に反した状態が継続し、
文書1が保存されていないことは、文書の管理として不備である。平成26年度社会
科定期テスト問題の解答方法は4者択一式、もしくは問題文により限定された一答
記述式であり、解答として導かれるものは1つである。問題が存在すれば模範解答
の復元は理論的に可能であるから、実施機関は平成26年度社会科定期テスト問題を
基に、当時の模範解答に準じるものを速やかに作成・保管し、市民の開示請求に対
して応じるべきである。
(6)
文書1について、実施機関は既に廃棄したと説明しているが、廃棄した日時や廃
棄の方法、廃棄までの保存の仕方が示されないことは、実施機関の説明や文書管理
の信頼性及び信憑性に欠ける。
5
(1)
審査会の判断
定期テストに係る事務について
横浜市立中学校(以下「中学校」という。)における定期テストは、生徒の教科
-3-
目標への到達度を測る目的や、生徒に自身の学習状況を振り返る機会を与える目的
のほか、中学校教員(以下「教員」という。)の指導方法の改善に資するなどの目
的で実施している。定期テストの実施後に、生徒に対し採点済みの解答用紙を返却
する際には、試験問題の正答を示すことが通常の事務と考えられる。正答の示し方
は、各中学校の指導方針、あるいは教員の指導方針にゆだねられている。正答の示
し方の一つとして、模範解答を配付するなどして正答を示す方法がある。また、模
範解答を配付せず、授業時間中に一つ一つの問題の解き方や正答を解説していく方
法もある。正答の示し方については、中学校や教員の指導方針に基づき、限られた
授業時間数や生徒の理解状況などを勘案しながら決められるものである。
実施機関は定期テストに関し、平成24年7月13日付教指企第1560号により「定期
試験問題のチェック体制作りの確認について(通知)」(以下「本件通知」とい
う。)を発している。本件通知では、定期テストの問題及び模範解答は教科主任等
及び管理職が点検するとともに、点検された定期テストの問題及び模範解答を1年
間保存することが求められている。
なお、実施機関は、正答とは試験問題に対する正しい答えであり、模範解答とは
正答が複数ある中で一つの模範となる答え又は生徒に配付することを目的に作成し
た答え(以下、実施機関のいう模範解答を「配付を目的とした模範解答」という。)
であるとし、模範解答の作成を義務づける規定は存在しないとしている。
定期テストに関する文書は、規則第10条第4項に基づき横浜市教育委員会教育長
が定める学校保存文書分類リストの「定期試験関係書類」に分類され、1年の保存
期間が定められている。
(2)
本件申立文書について
ア
文書1は、本件中学校において平成26年度に実施された第3学年の社会科定期
テストに係る模範解答であり、文書2は、本件中学校において平成27年度7月31
日までに実施された第1学年の社会科定期テストに係る模範解答である。
イ
当審査会において実施機関に確認したところ、本件中学校の平成26年度第3学
年及び平成27年度第1学年では、各2名の教員(以下「本件教員」という。)が
社会科を担当しており、そのうち各1名の教員(以下「解答作成教員」という。)
が本件申立文書を作成したとのことであった。また、本件申立文書は、生徒が解
答を記入する答案用紙各欄の上部に模範解答が印字されるように作成されており、
本件に係る社会科定期テストでは、各生徒が解答を記入した解答用紙全てに本件
-4-
申立文書を差し込み印刷し、本件教員が採点を行った上で各生徒に返却されたと
のことであった。
(3)
行政文書の該当性について
ア
実施機関の説明によれば、本件請求を受けた際、本件申立文書は生徒への配付
を目的として作成しておらず、本件教員が答案を採点する際の補助として作成し
た正答であり、行政文書として認識していなかったとのことであった。しかし、
本件異議申立てを受けて、横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申第532号を
参考に、改めて組織共用性を検討し、行政文書と認識したため、本答申を受けた
後、実施機関が保有している文書2については開示すると説明している。
組織共用性の考え方について、実施機関は、本件申立文書が差し込み印刷され
た解答用紙を生徒に返却したことは、実施機関以外のものへ提供したこととなり、
実施機関において業務上必要なものとして利用された状態になったと解すること
が相当であるため、組織共用性が認められるのは生徒に返却し、配付した時点で
あると主張する。
一方、申立人は、複数の教科担当者が同じ模範解答を用いて行う採点業務は、
共通の採点基準について事前に打ち合わせを行うなどの組織的対応が欠かせない
業務であり、組織共用性が認められるのは配付以前の模範解答の作成のプロセス
であると主張する。
このように、実施機関及び申立人の組織共用性に係る主張が異なるため、組織
共用性が認められるとされる時点について、当審査会として、なお検討すること
とした。そこで、当審査会で平成28年9月27日に実施機関から事情聴取を行った
ところ、次のとおり説明があった。
(ア)
中学校における定期テストの正答の示し方や模範解答の作成を義務づける規
定や文書は存在しないため、口頭や板書を用いて正答を示す場合もあるほか、
模範解答を配付する場合もある。
(イ)
通常、定期テストに係る問題及び模範解答を作成する作業は、生徒の人数や
教科によって異なるが、教員1名で行うことが多く、本件中学校の社会科では、
定期テストに係る問題及び模範解答の作成を分担し、別の教員が行っている。
本件教員のうち、解答作成教員は、問題の作成を担当した教員(以下「問題作
成教員」という。)が作成した問題を受けて、本件申立文書を作成した。
(ウ)
解答作成教員は、問題作成教員と共に本件申立文書を確認した後、平成26年
-5-
度の解答作成教員は校務用USBメモリに、平成27年度の解答作成教員は校内LAN
で結ばれている大容量のハードディスクに保存し管理していた。答案の採点に
当たり、解答作成教員は、生徒が解答を記入した解答用紙に本件申立文書を差
し込み印刷した。差し込み印刷の作業は、解答作成教員が行ったので、問題作
成教員は本件申立文書を保有していない。
(エ)
採点作業については、差し込み印刷された本件申立文書を利用して、本件教
員がそれぞれ担当するクラス分のみを行い、各生徒に返却した。
(オ)
本件通知により、配付を目的とした模範解答を作成した場合は、教科主任等
及び管理職の点検を行った上、学校保存文書分類リストに基づき定められた保
存期間である1年間、紙媒体で保存している。
しかし、本件申立文書が配付を目的とした模範解答という認識ではなかった
ので、本件通知に基づいた点検ではなく、平成26年度の本件教員が文書1につ
いて、平成27年度の本件教員が文書2について、誤りがないか等の確認を行っ
た。ただし、本件異議申立てを受けて、本件申立文書は行政文書であるという
認識に改めたので、文書2については、教科主任等及び管理職の点検を行い、
問題用紙と共に紙媒体で保存し管理する方法に改めた。
(カ)
本件通知を受けて、配付を目的とした模範解答を作成した場合には、教科主
任等及び管理職の点検を行うこととしていたが、通常、正答についても、教科
主任等により確認している。
イ
実施機関が説明する本件中学校における定期テストに係る文書取扱いの実態を
踏まえ、行政文書性について次のように判断する。
(ア)
条例第2条第2項において規定されている「職務上作成し、又は取得した」
とは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内において作成し、又は取得したこ
とをいう。また、「組織的に用いる」とは、その作成又は取得に関与した職員
個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すな
わち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして、利用され、又
は保存されている状態のものを意味すると解するのが相当である。そして、作
成され、又は取得された文書が、どのような状態にあれば組織的に用いるもの
であるかについては、当該文書の作成又は取得の状況、利用の状況、保存又は
廃棄の状況などを総合的に考慮して実質的な判断を行うのが相当である。
(イ)
本件申立文書は、解答作成教員が採点業務の助けとして作成したものである
-6-
から、職務上作成された文書であることは明らかであり、職務上作成された文
書が行政文書に該当するか否かは、その文書が当該実施機関の組織において業
務上必要なものとして利用され、保存されている状態(組織共用文書)にある
かどうかによる。
(ウ)
上記アのとおり、実施機関の説明によれば、本件申立文書の作成及び保存は
解答作成教員が行っているが、本件教員が採点の用に供するため、作成の段階
において本件教員が相互に本件申立文書の確認を行ったとのことであった。本
件に係る問題及び模範解答がそれぞれ別の教員によって作成されている以上、
出題範囲や評価基準は共通の認識に基づいて決定されるべきものであるため、
本件申立文書は作成者以外の者によって確認されることを前提としているもの
と理解せざるを得ない。
(エ)
実施機関は、生徒に配付することを目的として作成したものが模範解答であ
り、配付された時点で行政文書に当たると主張するが、配付の事実がなければ
組織共用文書にならないということではない。文書の作成段階において、複数
の職員で内容を確認するものであれば、模範解答や正答といった用語のいかん
にかかわらず、その時点で実施機関の組織において業務上必要なものとして利
用され、又は保存されている状態にある。
したがって、本件申立文書は、作成の段階において本件教員で内容を確認し、
保存された時点で条例第2条第2項に規定する行政文書に該当すると解すべき
である。
(4)
文書1の不存在について
ア
実施機関は、文書1については、文書1を作成した平成26年度の解答作成教員
が本件中学校を退職した際に廃棄したため存在しないと説明する。当審査会は、
文書1の存在の有無及び文書1を廃棄したことを示す文書等の有無を実施機関に
確認したところ、事情聴取において次のとおり説明があった。
(ア)
本件中学校では、各教員に対し校務用USBメモリを貸与している。平成26年
度の解答作成教員は、文書1を校務用USBメモリに保存していたが、平成26年
度末の退職時に校務用USBメモリを本件中学校に返却するに当たり、校務用USB
メモリに保存されているデータを消去し、返却した。データの消去については、
平成23年5月13日付教指企第552号による「市立学校における情報(個人情報
を除く)の取扱いについて(通知)」において、教職員として対応することと
-7-
して「データの必要性を失った時点で、速やかに完全に消去する。」ことが定
められていることから、当該教員は文書1を削除したと考えられる。
(イ)
本件請求を受けて、本件中学校校長の指示により、本件中学校副校長が文書
1の存在の有無を確認した。本件中学校副校長は、平成26年度の解答作成教員
から返却された校務用USBメモリ内のデータに加えて、定期テストに係る問題
用紙を保管しているファイルに綴られている紙文書並びにファイル検索機能を
用いて校内LANで結ばれている大容量のハードディスク内のデータ及び平成26
年度の解答作成教員が使用していたフォルダの探索を行ったが、文書1の存在
を確認できなかった。
(ウ)
本件中学校副校長による文書1の不存在が確認された後、本件中学校副校長
から実施機関の職員である指導主事に対し、本件申立文書が存在しなかった旨
を口頭で伝えたのみであることから、本件中学校副校長が確認を行ったという
ことを証明する文書は存在しない。
イ
上記(3)のとおり、作成の段階において複数の職員で内容を確認し保存される
文書は組織共用性が認められ、行政文書に該当すると考えられるものであるから、
文書1についても、本来ならば行政文書として適切な管理がなされるべきもので
ある。しかしながら、文書取扱いの適否はともかく、その存在を推認させる事情
を認めることができなかったため、文書1は存在しないという実施機関の説明は、
特段不自然とは言えない。
ウ
申立人は、廃棄された文書1を復元し開示することを求めているが、条例第5
条に規定する開示請求権は、実施機関の保有している行政文書について、あるが
ままの形で開示することを求めることができる権利であって、すでに消去等され
ているものを復元して開示することを求めることまで認めるものではない。
(5)
本件通知に基づく文書管理の妥当性について
ア
実施機関は、当初、本件申立文書は配付を目的として作成されておらず、正答
であると認識していたため、行政文書に該当せず、本件通知に基づく点検及び保
存の対象でないと考えていたと主張する。
そこで、当審査会において本件通知を確認したところ、教科主任等(問題の内
容について判断できる者)及び管理職が定期試験の問題及び模範解答を点検し、
点検された定期試験の問題及び模範解答については、チェック票添付のまま、1
年間の保存をすることが記載されていた。また、本件通知の趣旨として、「試験
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問題は教育課程に沿った目的及び内容となっていること」、「試験問題の内容が、
特定の個人、団体、思想・信条等を誹謗中傷するなど、人権侵害にあたらないこ
と」及び「試験問題の内容が著作権を侵していないこと」の3つの留意事項を基
に点検する旨であることを確認した。
実施機関は、本件通知が配付を目的とした模範解答のみを点検及び保存の対象
としているものであり、本件申立文書を、配付を目的とした模範解答と認識して
いなかったことから、本件通知に基づく点検及び保存の対象としていなかったと
考えられる。確かに、本件通知には「模範解答」との記載が認められるが、実施
機関が主張する、模範解答は配付を目的として作成されたものとし、正答を模範
解答と異なるものとする明文化された根拠は当審査会としては確認できなかった。
本件通知の趣旨に鑑みると、配付を目的とした模範解答のみが点検及び保存の対
象となるとは考えづらく、正答に関しても本件通知に基づく点検及び保存の対象
として取り扱われる可能性があるものと考えられる。
イ
仮に、正答が本件通知に基づく対象として取り扱われないとしても、上記(3)
のとおり、作成の段階において複数の職員で内容を確認し保存される正答は行政
文書に該当するものである。そして、規則第10条第1項では、行政文書は保存期
間別に分類することと規定している。
当審査会において実施機関における平成26年度及び平成27年度の行政文書分類
リストを確認したところ、本件申立文書は定期試験関係書類に分類されるものと
解される。そうすると、定期試験関係書類に分類される文書に関しては、1年間
は保存するべき行政文書である。
ウ
したがって、平成26年度に作成された保存期間1年の行政文書が平成26年度中
に廃棄されていることから、本件請求がなされた平成27年度時点において、実施
機関が文書1を保有していないという状態は、不適切であったと言わざるを得な
い。また、文書1が保存期間である1年間保存されていなかったのみならず、文
書1を作成した教員個人が当該文書を保存していた状態についても、文書管理が
適正であったとは言えない。実施機関におかれては、配付を目的とした模範解答
だけでなく点検を前提として作成された正答についても、今後、適切に管理すべ
きである。
(6)
結論
以上のとおり、実施機関が本件申立文書は存在しないとして非開示とした決定に
-9-
ついて、実施機関が文書1を非開示とした決定については、結論において妥当であ
る。
(第一部会)
委員
《
松村雅生、委員
参
考
小林雅信、委員
》
審
年
月
山本未来
査
会
日
の
審
査
経
の
過
経
過
平 成 2 7 年 1 1 月 2 0 日 ・実施機関から諮問書及び非開示理由説明書を受理
平成27年12月14日
(第191回第三部会)
・諮問の報告
平成27年12月25日
(第283回第二部会)
平 成 2 8 年 1 月 4 日 ・異議申立人から意見書を受理
平成28年1月14日
(第281回第一部会)
平成28年7月15日
(第293回第一部会)
平成28年8月23日
(第294回第一部会)
・諮問の報告
・審議
・異議申立人の意見陳述
・審議
平 成 2 8 年 9 月 2 7 日 ・実施機関から事情聴取
(第295回第一部会) ・審議
平成28年11月15日
・審議
(第297回第一部会)
平成28年12月20日
・審議
(第298回第一部会)
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