インフィニット・セイント ID:109627

インフィニット・セイ
ント
ロナード
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小説の作者、
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︻あらすじ︼
か つ て 地 上 で は 女 神 ア テ ナ と そ の 戦 士 で あ る 聖 闘 士 と 刻 の 神 サ タ ー ン と の 戦 い が
有った。その戦いから二十五年ものの年月が経った今の世界では女性にしか扱えない
世界最強のパワードスーツであるインフィニット・ストラトス。通称ISが普及した
為、女尊男卑の女性社会となり男性の立場が無くなったパワーバランスが崩壊した世界
となっていた。
そんな世界で最強のIS操縦者を姉に持つ織斑一夏はある日にISをも凌駕する力
を持った戦士である聖闘士の存在を知る事になる⋮
目 次 プロローグ 聖闘士との出会い │
第1話 一夏、聖闘士になる ││
1
22
44
!
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ
││││││││││││││
!
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ
62
│
セ イ ン ト
しかし、ISを動かせるのは女性だけであり、男性は動かそうにもISが反応すらし
進化させていき、ISは無限大に進化していくと言っても過言ではないのだ。
る事でISが展開される。コアは操縦者と共鳴する事で操縦者毎に違う性能にISを
その上、ISには一つの機体毎に違うコアという物が装着されており、コアが反応す
為か兵器としての能力も高い。
に放たれた時に初代のISを纏った者が放たれたミサイルを一つも残さずに撃墜した
い時にとある国の軍事基地が何者かにハッキングされ、基地のミサイルが無差別に地上
間が上手く操縦すれば空を自由に飛び回れる上に、ISがまだ世界に名が知られていな
通称ISと呼ばれるパワードスーツが世界中に影響を与えていた。ISを装着した人
そして、その戦いから二十五年ものの時が流れた今ではインフィニット・ストラトス、
か、サターンが地上から自らの意志で去った事で終わりを迎えたのだった。
その戦いは聖闘士達の命掛けの奮闘により、サターンは人間に対する考えを改めたの
いが繰り広げられた。
かつて、この地上では女神アテナの戦士である聖闘士と刻の神であるサターンとの戦
プロローグ 聖闘士との出会い
1
ないのだ。おそらく、コアが男性にだけは反応しない為だろう。
以上の点を踏まえて、今の世界ではISを操縦出来る女性の方が優遇され、男性の立
場が危うくなっている。かつての男社会から逆転したかの様に世界は女社会に成り果
てており、女性は男性を酷く扱う事も日常茶飯事になるのも時間の問題かもしれない。
ISが世界に知れ渡って数年が経ち、ISを使っての試合を行う世界大会である第二
回モンド・グロッソの決勝戦が始まる少し前に第一回モンド・グロッソの優勝者である
織斑千冬の弟である織斑一夏は、今回も決勝戦まで勝ち進んだ姉の千冬が勝つだろうと
確信して、買い出しに出ていた時だった。
一夏が人気の無い場所を歩いていた時に前から怪しい黒服の男達が現れると黒服の
男達は一夏に近付き、一夏を拘束し目隠しをして車に乗せて何処かに連れ去ったのだ。
そう、一夏は何者かの指示で動いていた黒服の男達によって誘拐されたのだ。
その瞬間をたまたま遠くから目撃した一人の青年がいた。その青年は金髪の短髪で
ややつり目で、その背中には巨大な黄金の箱を背負っていた。青年は一夏を誘拐した者
達の目的を悟ったのか小さく声に出した。
の手段として弟である織斑一夏を誘拐し、織斑千冬が決勝戦を辞退してまで弟である織
﹁くだらん。あらかた前回のモンド・グロッソの優勝者である織斑千冬を棄権させる為
プロローグ 聖闘士との出会い
2
斑一夏を助ける事を解っての下種い策か。気に入らぬ
何の目的で自分を拐ったのか問い質した。
ゴールドセイント
そんな方法で勝てて喜ぶ様な
﹂
!
﹁お前達、一体何の目的で俺をこんな場所にまで連れ去ったんだ
前回の優勝者である織斑千冬を決勝に出させない為さ
﹂
は一夏にしていた目隠しだけを取ると、目隠しを解かれた一夏は自分を誘拐した者達に
誘拐されて街から離れた場所にある倉庫らしき場所に連れて来られると、黒服の男達
様に⋮
青年はそう呟いた後、直ぐに一夏を乗せた車を追い掛けた。まるで一筋の光の軌跡の
たからには懲らしめてやるべきか⋮﹂
大した誇りも無い輩は少々大げさかもしれぬが、山羊座の黄金聖闘士である俺が目撃し
!
呆れながらも説明し始めた。
一夏は女の言った答えがピンと来ないらしく、少し困惑した表情をしていたので女は
ある事だけは確かだ。
た。倉庫の中が暗い為か一夏は女の顔がよく見えていないが、目付きが鋭い感じの女で
一夏の質問に答えたのは黒服の男達の後ろにいるこの男達の上司と思われる女だっ
﹁そんな事も解らないのか
?
!?
3
﹁まだ解らない様子だから、せめてものの優しさでもう少しだけ教えてやるよ。織斑千
だが、織
冬は最強のIS操縦者である事はISに関する者ならば誰もが知っている。なら、今回
のモンド・グロッソも織斑千冬の総合優勝で間違いないだろう。本来ならな
﹂
斑千冬は弟であるお前が誘拐されたという情報を聞いたら、どう行動するかは弟である
!
千冬姉が俺が誘拐されたと聞いたら、決勝戦を辞退してでも俺の救出
お前が一番理解してしる筈だ、織斑一夏
﹁そういう事か
!
!
てでも自分の救出に向かう事を確信しての犯行だという事を知り、自分のせいで姉であ
一夏はこの女と黒服の男達の目的が自分を誘拐すれば、姉である千冬が決勝を辞退し
じゃないけどな︶﹂
﹁そういう事だ。やっと足りねえ頭でも理解出来た様だな ︵まあ、真の目的はそんな事
た場合、当然その決勝戦は千冬姉の敗退扱いとなり、相手の不戦勝になる訳だ⋮﹂
を優先して動くに違いない⋮もしも、千冬姉が決勝を辞退してまで俺を救出しに向かっ
!
こんな勝ち方して喜べるのかよ
!!
不戦勝で優勝しても何の達成感も無い
る千冬に迷惑を掛けてしまう事に一夏は自分が情けなく思ってしまう。
﹂
!!
!
句を言っても何も意味は無いさ﹂
﹁ふん⋮私に聞くなよ。私もただ言われた内容通りに動いているだけだからな。私に文
だろ
﹁ふざけるな
プロローグ 聖闘士との出会い
4
どうやら、女の方も更に上の者からの指示で動いているだけの様だが、それでも自分
のせいで姉の不戦敗が決まるのが許せない一夏は自分の腕を縛っている綱を何とかほ
どこうとするが、女はそんな行動を見逃す筈も無く、黒服の男達に指示を出した。
﹂
!
ただし、やり過ぎて殺すんじゃねえぞ。あくま
!
だとはな⋮﹂
ファントムタスク
﹁おい、金ぴか野郎のテメエ⋮何で私の名前を知ってやがるんだ⋮﹂
?
の情報網はこれでもマフィアとかよりは優秀だからな。亡国機業のメンバーの情報は
ならば教えてやろう。俺は聖闘士の一人、山羊座の黄金聖闘士ラインハルトだ。聖闘士
カプリコーン
している亡国機業ならば知ってると思っていたのだが、そうでもないらしいな。知らぬ
﹁こちらが知ってるのに、そちらは俺の纏う物を見て気付かないのか
裏の世界で暗躍
﹁ほう、まさか織斑一夏誘拐の首謀者が噂に聞いた亡国機業のメンバーであるオータム
纏う一人の青年の姿が見えた。
始めると、扉の先には頭に黄金の山羊の角を思わせるヘッドギアを装着した黄金の鎧を
にしようと動いた時だった。突如、倉庫の扉がまるで鋭利な刃で切られたかの様に崩れ
黒服の男達は女の指示を聞き、綱をほどこうともがいていた一夏に暴力で動けない様
でも大事な人質だからな
うとする気力が失せる様に痛みつけろ
﹁簡単にはほどけない様にしてるかもしれないが、もしほどけたら面倒だ。綱をほどこ
5
﹂
確かギリシャ神話の女神であるアテナに忠誠を誓った戦士がそんな名前
粗方入手している﹂
﹁聖闘士だと
で呼ばれていたと聞くが⋮ば、バカな⋮本当に実在してたってのか
!
﹂
!
プは鋭利な刃で切られたかの様に真っ二つになり、地面に落ちた。
ラインハルトは男達の振るう鉄パイプに目掛けて手刀を振るうと、男達の持つ鉄パイ
ぎぬ
﹁愚かな⋮聖闘士を相手にそんなもので挑んだところでチャンバラ未満のままごとに過
かったが⋮
黒服の男達がオータムの命令通りにラインハルトに向かっていき、鉄パイプで殴り掛
を出しそうだからな﹂
下手に妨害されたら作戦に支障
オータムは聖闘士が存在した事に驚きつつも、部下の黒服の男達に命令し出す。
が女の正体が亡国機業の幹部であるオータムだと知ってたので只者では無いと感じた。
誓った戦士である聖闘士の一人だと言うので、話にはついてこれないが、ラインハルト
一 夏 は 突 然 現 れ た 黄 金 の 鎧 を 纏 う 青 年 ラ イ ン ハ ル ト は 自 分 が 女 神 ア テ ナ に 忠 誠 を
だな。残念ながら、聖闘士は実在する。その証拠に今こうして貴様の前に立っている﹂
﹁その様子だと聖闘士の名は聞いた事が有っても、都市伝説か何かと勘違いしていた様
!?
!?
﹁お前ら、あの聖闘士を名乗る金ぴか野郎を始末しろ
プロローグ 聖闘士との出会い
6
﹁何だと
﹂
!?
まだ俺達には拳銃が有る。これで奴を殺せば⋮﹂
俺達の鉄パイプがたかが手刀で真っ二つになるだと
!?
付けると命乞いをし始めた。
﹃た、頼む⋮どうか命だけは助けてくれ⋮﹄
﹁安心しろ。俺は無駄な殺傷は好まん。だから、逃げたければさっさと逃げるがいい
﹄
!
!
だ。
﹁チッ、情けねえ男共だ
所詮は金で雇っただけのチンピラか⋮まあいい、役立たずの男
そんな男達を見て呆れながらもオータムは自らラインハルトを始末する事にした様
散に逃げていった。
男達は未だに腰が抜けているのかふらつきながらも慌てて倉庫から出て行くと一目
﹃ヒィィッ
!!?
﹂
振るうと拳銃の銃口が切られてしまい、拳銃まで駄目になった為か腰が抜け尻を地面に
トが自分達に近付いて来たので、慌てて銃を撃とうとしたがラインハルトが手刀を横に
トの後ろの壁に被弾しただけだった。男達は何が起きたのか解らない中でラインハル
銃弾はまるで立体映像に撃っただけの様にラインハルトをすり抜けていき、ラインハル
インハルトを始末する為に懐から拳銃を繰り出し、ラインハルトに向けて発砲したが、
男達は手刀で鉄パイプを真っ二つに切り裂いたラインハルトに恐れを抱きつつも、ラ
﹁び、ビビるな
!
7
来い、アラクネ
﹂
共じゃ殺れないなら仕方無い。このオータム様が自ら金ぴか野郎、テメエを始末してや
るよ
!
﹁どうだ金ぴか野郎
このアラクネを見た感想は
﹂
?
様な輩が使いこなせる代物かどうか見定めてやろう﹂
チーフにしたISか。機体としては手数が多そうで悪くないと思うが、果たして貴様の
﹁ギ リ シ ャ 神 話 に 出 て く る 上 半 身 は 人 間 の 女 だ が、下 半 身 は 蜘 蛛 の 怪 物 ア ラ ク ネ を モ
?
本の長いアームを持つので、一夏から見れば蜘蛛の怪物が現れた様な感じだ。
ンハルトの前に立ち塞がった。アラクネと呼ばれるISはまるで巨大な蜘蛛の如く六
オータムが自身が持つISアラクネを呼び出すと、オータムはアラクネを装着しライ
!
﹂
か見物だな
!
﹁バカな⋮何故、当たらないんだ
これでもこのアラクネは亡国機業の手で改造されて
全てのスピードがマッハ1に到達してるんだぞ⋮﹂
!?
でオータムは焦りを感じていた。
るが、アームによる攻撃は全て避けられてしまい、かすり傷すら与える事が出来ないの
オータムはラインハルトに向けてアラクネの六本有るアームを突き刺そうとしてく
!
見せてやるよ、男であるお前じゃ扱えない最強の兵器であるISの力をな
﹁ケッ、調子にのるなよ。金ぴか野郎、テメエのその余裕ぶっこいた態度がいつまで続く
プロローグ 聖闘士との出会い
8
﹂
ほう、ISとやらでも最低基準の聖闘士のスピードに着いてこられる
ブロンズセイント
マッハ1のスピードが聖闘士の中でも最低基準だと言うのか
﹁マッハ1だと
様だな﹂
﹁何だと
!?
?
﹂
そんなスピードで動けるなら何故、さっさと光速のスピードで私を倒さ
!?
動出来るスピードを持つ﹂
﹂
﹁三十万kmだと⋮地球を軽く七周半出来るスピードじゃねえか
速で移動出来るっていうのか
!?
﹁その通りだ。計算はちゃんと出来る様で何よりだ﹂
ねえんだ
﹁ふざけるな
!?
﹂
!!
のか、アラクネのアームで天井を貫くと天井が崩れ、瓦礫がラインハルトに降り注ぐが
オータムはラインハルトが自分を本気で倒すにも価しないと言った事に腹を立てた
﹁ナメるな
﹁簡単な話だ。貴様の様な輩は本気を出すにも価しない相手だからだ﹂
?
つまり、テメエは光
闘士の頂点が俺を含める黄金聖闘士だ。黄金聖闘士は一秒間におよそ三十万kmを移
と言っても、青銅も白銀も実力次第ではそれ以上のスピードで動けるがな。そして、聖
ける。続いて真ん中に位置する白銀聖闘士はマッハ2以上5以下のスピードで動ける。
シルバーセイント
﹁そうだ。聖闘士にはランクが有り、まず下の青銅聖闘士でもマッハ1のスピードで動
!?
9
ラインハルトは微動だにせず片腕を挙げると瓦礫は木端微塵に粉々になり、風に飛ばさ
れていった。おそらく、ラインハルトはマッハのスピードで瓦礫を攻撃し、粉々にした
のだろう。そのスピードが速すぎて常人には見切れない為に片腕を挙げただけに見え
たのだろう。
人に向けて指を指すなって教わらなかったのか
﹂
﹂
テメ
ラインハルトは腕を降ろすと直ぐにオータムに向けて、右手の人差し指を向けた。
﹁何の真似だテメエ
﹂
﹁一本だ﹂
﹁はあっ
﹁貴様の様な輩を相手に片腕では勿体無い。この指一本で十分だ
私は亡国機業のオータム様だぞ
?
﹂
アラクネの全リミッターを解除
を微塵も無くぶっ壊してやらぁ
!!
﹂
正真正銘アラクネのフルパワーでテメエ
!
向けて振るわれる。だが、その攻撃はラインハルトに当たる前に指一本と言えどライン
アラクネの六本のアームから高密度のエネルギーが溢れ、光の刃となりラインハルトに
オータムはアラクネのリミッターを全て解除し、アラクネがフルパワーを解放すると
!
!!
してやる
エみてえな金ぴか野郎とは違う、絶対的な強者だぞ テメエだけは本気の本気でぶっ壊
!!
?
﹁テメエ⋮いい加減にふざけるのは止めやがれ
!?
!
?
!!
﹁そうか。なら、俺も指一本で光速の技を見せてやろう⋮いくぞ
プロローグ 聖闘士との出会い
10
ハルトの放つ光速のスピードで出される技の前では無力に過ぎなかった。
﹂
﹂
!
ね﹂
﹁あら、流石は黄金聖闘士と言ったところかしら。隠れていた私の気配に気付くなんて
コイツの身柄を返してやる。居るのだろ、亡国機業の幹部スコール
﹁悪党と言えど、大した根性だった。ソコだけは評価してやる。だからこそ今回だけは
言した。
失った事を確認すると、今の戦いの一部始終を陰から隠れて見ていたある者に向けて発
者 に 向 け て 謝 罪 の 言 葉 を 発 し た 後 に 倒 れ 気 絶 し た。ラ イ ン ハ ル ト は ス コ ー ル が 気 を
クネはコアを残して崩れさり、オータムはダメージで気を失う直前に自分の上司である
ラインハルトの放ったシャイニングインパルスによってオータムのISであるアラ
負けるとは⋮すまねぇ、スコール⋮﹂
﹁バカな⋮このオータム様が⋮ISを持たない奴に⋮しかもISを纏えない男ごときに
たかの様にしか見えなかった。
あるのだが、光速のスピードを見切れない一夏とオータムには巨大な光の光線が放たれ
光の光線が放たれたのだ。正しくはラインハルトが光速で人差し指による連続突きで
一夏はラインハルトの出した技を見て驚いた。ラインハルトの人差し指から巨大な
﹁シャイニングインパルス
!
11
一夏はラインハルトが視線を向けた先にスコールとは違う女性の姿が有ったのに気
付いた。その女性の見た目は美しいが何処か危険な雰囲気も感じるので、スコールより
格上の存在だと直ぐに解った。その女性は気絶したスコールに近付くとISを展開し
て、ISでスコールを抱え、スコールのISのコアも回収すると一夏とラインハルトに
向けて発言した。
﹁織斑一夏、あなたの姉である織斑千冬は残念だけどモンド・グロッソの決勝を辞退して
あなたの救出に出たと聞いたわ。本当なら、今回の作戦はあなたの姉のISの実戦デー
タを取る為の手段だった訳なんだけど、黄金聖闘士がいる以上は難しそうだし、モンド・
グロッソの試合でのデータだけで我慢するわ﹂
﹂
千冬姉のデータが欲しいなら、わざわざ俺を誘拐せずとも自ら試合を申
し込めば済む話だろ
!
﹁ああ。本当に二度と貴様らが織斑姉弟に手を出さないと言うのならば、見逃してやる。
コールの事は見逃してくれるのよね、黄金聖闘士のラインハルトさん﹂
ら は 金 輪 際 織 斑 千 冬 と 織 斑 一 夏 に は 手 を 出 さ な い と 約 束 す る わ よ。そ の 代 わ り に ス
たの。でも、それは無理そうだから織斑千冬の戦闘データについては諦めるし、これか
試合じゃ意味無いのよ。本気の本気で相手を倒しにくる織斑千冬のデータが欲しかっ
﹁違うのよ、私達が欲しいのは本当に実戦的な織斑千冬とそのISのデータな訳。只の
!
﹁ふざけるな
プロローグ 聖闘士との出会い
12
この約束は守れるのだろうな
﹂
?
﹂
?
﹂
?
コ
ス
モ
﹁小宇宙は誰もが持っているが、その力を使うには厳しい修行を積み重ねて己の中に眠
﹁小宇宙
と呼ばれる人間の身体に眠る宇宙的エネルギーを燃やして戦う﹂
﹁まあ、見せてしまった以上は隠すのが無理と言うものか。俺を含めた聖闘士は小宇宙
すか
す。ラインハルトさんが所属する聖闘士はどの様な力であんなスピードで動けるんで
﹁ラインハルトさん、助けてくれてありがとうございます。それと聞きたい事が有りま
くれた事へのお礼をすると同時に尋ねた。
れた。一夏はラインハルトがオータムとの戦いで見た実力は本物だと思い彼に助けて
スコールがオータムを連れて去っていた後、一夏はラインハルトによって拘束を解か
約束するとオータムを連れて何処かへ飛び去っていた。
スコールは自分と自分の配下が織斑姉弟に二度と手を出さない事をラインハルトに
機業の面子が何かしてくる可能性は有るから警戒してなさい﹂
ムを含めた私の部下は二度と織斑姉弟には手を出さないと約束するわ。でも他の亡国
﹁ええ、守るわ。流石に私は聖闘士を敵に回す様な事だけは避けたいしね。私とオータ
13
る小宇宙を解放させる事で初めて扱える力だ。それ故にその力に気付かずにいる者が
多 い の も 事 実。そ れ に 小 宇 宙 に 目 覚 め て も 上 手 く 扱 え な け れ ば 只 の 宝 の 持 ち 腐 れ だ。
だが、上手く扱えれば先程オータムに言った通りにマッハのスピードで動く事が可能と
なる﹂
﹂
クロス
がします。もう一つ気になった事が有るんですけれど、その鎧みたいなのは一体何で
﹁ええと、正直まだちんぷんかんぷんな感じですけど⋮何となく小宇宙の事は解った気
しょうか
ただし小宇宙を全く使えない状態で纏えば重たいだけのプロテクターになるがな﹂
ると同時に身を守るプロテクターでも有り、更には小宇宙を高める効果も持っている。
﹁俺が今纏っているのは聖闘士の証である聖衣だ。聖衣は簡単に言えば聖闘士の証であ
?
の姿を捉えると、ラインハルトに向けて突っ込んでいく。ラインハルトは千冬に敵意が
理もない、それは間違いなく自分の姉である織斑千冬なのだから⋮千冬はラインハルト
るとISを装着した黒髪の女性の姿が見えた。その女性に一夏は見覚えが有った。無
いスピードで何かが迫っている事に気付いた一夏とラインハルトは同時に上を見上げ
一夏の質問に答えた後、ラインハルトはこの場から去ろうとしたのだが、とんでもな
﹁では俺はここで失礼させて⋮﹂
﹁そうですか。わざわざ俺の質問に答えてくれて感謝します﹂
プロローグ 聖闘士との出会い
14
無い事を伝える為か回避だけを行い、千冬が落ち着くのを待つ事にした様だ。
﹁一夏、助けに来るのが少し遅れてしまったが今直ぐにその男から救ってやるぞ
そろそろ俺は聖域に戻りたいと思う。これにて失礼する﹂
﹂
の瞬間を見て任務を放り出して助けに向かったかどうかは定かではないからな⋮では、
聖 域に戻ろうとしていた頃だったのも有るからな。もし任務中だった場合、一夏誘拐
サンクチュアリ
﹁礼 な ど い い。俺 が 一 夏 の 救 出 に 向 か え た の は 任 務 が 終 わ り、聖 闘 士 の 本 拠 地 で あ る
のところで助けに向かったのだろ﹂
当に感謝する。それにしても聖闘士か⋮そんな者達がいたのだな。しかも任務終わり
﹁偶然と言えど、一夏が連れ去られた瞬間を見たから救出しに向かってくれた事には本
話を聞いた千冬はラインハルトに感謝の言葉を送った。
夏とラインハルトから詳しい話を聞いたのだった。
千冬は一夏の言葉でラインハルトが敵では無いと知り、ISを待機状態にした後に一
﹁気にする必要は無い。人間ならば、誰しもそういう時が有るものだ﹂
﹁そうか⋮すまない、私とした事が⋮頭に血が昇っていたようだ﹂
てくれた人なんだ。誘拐した犯人はとっくにその人が懲らしめたよ⋮﹂
﹁千冬姉⋮落ち着いてよく聞いてくれ。その人は俺を誘拐した犯人じゃなくて俺を助け
!
15
ラインハルトは聖闘士の本拠地である聖域に戻ろうとする中、一夏はもし自分が強け
れば今回の様な事件は起きなかったのではないかと思っていた。ラインハルトが助け
てくれたとは言えど、結局は千冬は強くなりたい、もう姉である千冬の手を煩わせる様
な事だけは二度としたくない⋮
そんな弟の考えを読み取ったのか千冬は去ろうとするラインハルトを呼び止めた。
﹁待って貰おうか、ラインハルト殿﹂
﹂
千冬に呼び止められたラインハルトは千冬の話を聞く為に止まった。
﹁どうした、まだ何か有るのか
?
千冬姉⋮﹂
﹁ラインハルト殿、お忙しい中で一つだけ頼みが有る。コイツを連れて行ってくれない
か﹂
!?
﹂
﹁そうだ
?
コイツを立派な聖闘士になれる様に育て上げてもらいたい﹂
の意志を聞かなければ俺は連れて行こうとは思えない。﹂
わないが、それは一夏自身が自分の意志で聖闘士になりたいと思ってたらの話だ。一夏
﹁了解した。一夏は見た限りでは聖闘士としての素養は十分に有る。連れて行っても構
!
か
﹁一夏を連れて行けか⋮それはつまり、一夏に聖闘士としての道を進ませたいという事
﹁えっ
プロローグ 聖闘士との出会い
16
一夏は千冬がラインハルトに自分の事を連れて行く様に頼んだので、まさか自分の考
えてる事を読み取っての行動なのかと思い驚く中で千冬は一夏の肩に手を乗せると、一
夏に静かに耳打ちする。
忠誠を誓って聖闘士になった者など、そんなに多くはないのだ。伝説となった聖闘士達
と思うのは自分勝手な事だと思っているのだろう。だが安心しろ。最初からアテナに
﹁織斑一夏よ、おそらくお前は姉である織斑千冬を守れる力を得る為に聖闘士になろう
そんな一夏を見たラインハルトは一夏に発言した。
うのは自分勝手なのではないかと思ってしまった。
を守る為に戦う存在だ。なのに、姉を守る為の力を手に入れる為に聖闘士になろうと思
分勝手な気もすると一夏は思っていた。聖闘士は女神アテナに忠誠を誓い地上の平和
着いていき聖闘士になれれば、姉を守れる力は手に入れられるだろう。でも、それは自
一夏は姉である千冬を守れる様な力をずっと欲しがっていた。もしラインハルトに
のとラインハルト殿に着いていき、聖闘士になる道を選ぶかお前が選択しろ﹂
なっても構わない。どうする一夏、お前はここに残って私に守られながら平凡に生きる
なって私の手を借りずとも生きられる様になるのなら、私はお前が私から離れる事に
守ってばかりいるのは必ずしもお前の為になるという訳では無いしな⋮お前が強く
﹁お 前 の 思 っ た 事 な ど 姉 で あ る 私 に は 直 ぐ に 解 る 事 だ。寂 し く 感 じ る が、私 が お 前 を
17
ですら、最初は半ば強制的に自分の意志とは無関係に聖闘士としての修行を強い出され
て聖闘士になった者達なのだ。その者達の中には流氷が溢れる海の底に沈んだ沈没船
に眠る母に会う為に聖闘士になった者もいれば、聖闘士になったが復讐の為にその力を
利用した者までいる。だが、そんな彼らも後にアテナに忠誠を誓って地上の平和を守る
為に戦う立派な聖闘士になった。つまり、俺が言いたい事は聖闘士になろうと思ったの
がどんな些細な理由で有ろうとも構わないという事だ。お前が誰かを守る為に戦える
﹂
のなら構わん。話は以上だ。後は聖闘士になりたいのかなりたくないのかを自分の意
志で決めろ
ハルトに自分の意志を伝えた。
力を手に入れる為に聖闘士になってもいいのなら、自分の意見は一つだ。一夏はライン
一夏はラインハルトの話を聞き、どんな些細な理由でもいい。誰かを守る為に戦える
!
﹂
!
﹂
!
一夏の意志を聞いたラインハルトは一夏を連れて行く事にし、一夏は姉の千冬に自分
にな
﹁それがお前の意志か。いいだろう、連れて行ってやろう。聖闘士の総本山である聖域
の力を使いたい。例え、それが自分勝手な理由で有ろうとも
を助けられる様になりたいとも思っていた。もし、聖闘士になれたら誰かを守る為にそ
﹁俺は千冬姉を守れる様になりたいと前から思っていた。それと同時に困っている誰か
プロローグ 聖闘士との出会い
18
に聖闘士になる道を薦めてくれた事に感謝すると同時に一時の別れの言葉も送った。
﹂
?
る様になりたいんです
﹂
!
!
﹁自分勝手な理由か⋮フフ、面白い弟だな
こう見えて私も血気盛んで人の骨が折れる
んです。千冬姉だけじゃない、俺が知ってる人達、これから出会うで有ろう人達を守れ
﹁そうです。本当に自分勝手な理由かもしれませんが⋮それでも俺は聖闘士になりたい
たいという訳か
﹁話は解った。織斑一夏、つまりはお前は姉を守れる力を手に入れる為に聖闘士になり
に案内され、ラインハルトが一夏の事を教皇に紹介した後に教皇は口を開いた。
聖域に着くと、直ぐにラインハルトの案内で聖域のトップである教皇がいる教皇の間
のだった。
ライベートジェット機に乗って聖闘士の総本山である聖域が有るギリシャに向かった
一夏は千冬としばらく会話した後、ラインハルトの後を着いていき、彼が所有するプ
になる訳にはいかんからな。期待せずに待っていてやろう﹂
﹁生意気な事を言うな。聖闘士になろうが、お前は私の弟だ。簡単にお前に守られる様
を守れる様になった時にまた会おうな⋮﹂
﹁千冬姉、ありがとう。聖闘士になる道を薦めてくれて⋮本当にありがとう、俺が千冬姉
19
音を聞く為に聖闘士になった様な奴でしてな。私こそ真に自分勝手な理由で聖闘士に
なった者だ。お前の様に誰かの為という訳では無かったのだ。まあ、そんな私も今では
﹂
﹂
いいだろう、聖闘士になれる様に
聖闘士を束ねる教皇になってしまった。本当に不思議なモノだな。教皇になってから
元々はお前が連れて来た訳だしな
は私も少しばかり礼儀が良くなってしまったからな
鍛えあげてやれ、ラインハルト
!
!
ラインハルト、お前は織斑千冬に弟の事を任されたのだろ
なら、お前が責任
?
!
﹁ですが、聖闘士の候補生を鍛えるパライストラが有る以上はソコで鍛えるべきでは
﹁黙れ
持って鍛えてやるべきだろ﹂
!
?
一夏が眠りに着いた後、ラインハルトは再び教皇の間に行き、任務の報告を行った。
着いた。
ラインハルトに寝床を用意されて夜遅くになったから寝る様に催促されたので眠りに
教皇に挨拶を済ませた後、一夏はラインハルトの守護する宮である磨羯宮に招かれ、
を了承した。
ラインハルトは溜め息を吐きながらも、一夏の修行は自分が責任持って面倒を見る事
茶苦茶な方だ⋮﹂
﹁分かりました⋮俺が織斑一夏に聖闘士になれる様に修行させます⋮はあっ、本当に滅
プロローグ 聖闘士との出会い
20
スペクター
﹁教皇、任務の報告ですが⋮日本にて、かつて倒された筈のハーデス率いる冥王軍の戦士
である冥闘士の一人であるガルーダの冥闘士と戦い撃破しましたが、撃破したガルーダ
ピスケス
は死体が残らずにまるで水面に写った影だったかの様に液体となり姿を消しました﹂
確信するのであった。
スが率いていた冥闘士だったと言うのでハーデス同様の力を持った邪悪が存在すると
有る気がした教皇はラインハルトを派遣した訳だが、相手が最早存在しない筈のハーデ
教皇はこの地上に新たな邪悪な意志が動いている事に気が付き、日本に不穏な何かが
いるか、死体を操る力を持った邪悪な意志かもしれないな⋮﹂
消えたと言うからな⋮おそらく、今回の敵はハーデス同様に死者を蘇らせる力を持って
ダガーを武器とすると聞いた当たりハティと思われる者と戦い、倒した後に液体になり
﹁やっぱりか⋮この間は魚座の報告では私が現役の頃に倒された筈のパラサイトである
21
サンクチュアリ
第1話 一夏、聖闘士になる
セ イ ン ト
一夏が聖 域に来て早くも二年が経ち、今なお聖闘士になる為の修行を続けていた。
今、一夏は聖域の近くの裏山にてラインハルトと模擬戦を行っていた。
﹁ラインハルトさん、今日こそはあなたのボディに一発でも拳を当ててみせますよ﹂
コ
ス
モ
﹁そ の 台 詞 は 今 の を 入 れ て 6 7 9 回 目 だ。何 度 同 じ 台 詞 を 聞 か ね ば な ら な い の だ 俺 は
⋮﹂
﹁じゃあ一発だけは喰らって下さいよ﹂
ラインハルトは告げた。
しかし、一刻経っても当たる素振りは無く模擬戦は終了し、今日の修行は終わりだと
後先が心配になってきたので、尚更一夏は必死に拳を当てようと頑張った。
きを読み一発一発を軽々と避けていく。ラインハルトが言う様にこのままだと本当に
一夏は何とかラインハルトに拳を当てようとするが、ラインハルトは簡単に一夏の動
小宇宙に目覚めて俺に一撃を与える位の事をしてくれないと後先が心配なんだがな⋮﹂
一撃を与える為の修行の一つなのだからな。お前は素質は確かに有るのだ。そろそろ
﹁いや、わざと当たったら意味が無いだろ。これは一夏、お前が小宇宙に目覚めて相手に
第1話 一夏、聖闘士になる
22
俺はまだやれます
﹁本日の修行はここまでだ。﹂
﹁待って下さい
﹂
!
いいな﹂
!
﹁何を言うか。俺が先に聖闘士になったと言えど、お前も俺に負けない程の素質が有る
フォックスの聖闘士って事だけは有るな﹂
﹁聖闘士の訓練所に使われている裏山でスケッチをしようと思うなんて⋮さすがは狐座
だけの様だ。
祐介は腕にイーゼルとキャンバスを抱えており、祐介本人は言う通り、絵を描きに来た
一 夏 が 声 を 掛 け た 少 年 の 名 前 は 祐 介。一 夏 が 聖 域 に 来 て 出 来 た 友 人 の 一 人 で あ る。
うと思ってな﹂
﹁一夏か。何、ちょっと時間が有るからな。この裏山から見る景色をキャンバスに描こ
﹁おーい、わざわざこんな所に何しに来たんだ祐介﹂
るのが見えたので、その人物に一夏は声を掛けた。
一夏の前から白いシャツを着た一夏と同年齢と思われる紺色の髪の少年が登ってく
守護宮である磨羯宮に戻っていたので一夏も聖域に戻ろうと山を下っていた時だった。
ラインハルトは一夏に休んで気持ちを落ち着かせる事も大切だと告げた後に自分の
持ちを落ち着かせる事も大切だろう。分かったなら、休め
﹁いや、今日はもう休むといい。適度に身体を休める事も重要だ。特にお前の場合は気
!
23
ゴールドセイント
筈だからな。早く聖闘士になって、お前も心に少しの余裕を得られる様に頑張ればいい
話だ。お前の師は俺の師である蟹座キャンサーのカブキと同じ黄金聖闘士のラインハ
ルト殿なのだからな。ちゃんと言われた通りの修行をこなせさえすれば、自然に小宇宙
に目覚める筈だ﹂
られずに終わっているけどな⋮﹂
﹁俺は言われた通りに修行しても、今日までラインハルトさんとの模擬戦で拳一発当て
﹁そうか⋮とりあえずは少し休んで気持ちを落ち着かせてみると良いかもしれん。気持
ちが落ち着いてリラックスした状態の方が力を発揮出来るかもしれないからな﹂
﹁ラインハルトさんも気持ちを落ち着かせる事も重要だって言っていたし、祐介もそう
言うなら少し休んで気持ちを落ち着かせてみる事にするか﹂
すか﹂
﹁はあっ、休もうとしても体力が有り余っているから寝れないな⋮ちょっと、身体を動か
域に戻り身体を休めようと就寝所で眠りにつこうとするが⋮
ると絵を描き始めたので一夏は祐介の邪魔にならない様に静かに裏山を降りていき、聖
祐介は一夏に聖域に戻って休む様に言った後、イーゼルを立たせキャンバスを設置す
戻って休むといい﹂
﹁そうした方がいい。さてと、俺は絵を描くのに専念したいから一夏、お前は早く聖域に
第1話 一夏、聖闘士になる
24
休もうにも気分が乗らない一夏は就寝所を出ると、聖域の近くに有る森の中に入ると
拳や蹴りを森の木に向かって放ち、ラインハルトとの模擬戦に備えてのイメージトレー
ニングを合わせた自主トレを行うが、小宇宙に目覚めていない自分では一本の木を倒す
のにも時間が掛かってしまうので、本当に自分に聖闘士としての素質が有るのか不安に
思えてきた。
そんな一夏の様子を森の奥から見ていた者が一夏の後ろから彼に近寄ると一夏に声
を掛けた。
﹂
!?
﹂
!
に友でもあるのだ。
まに顔合わせする程度だが一夏と紅蓮は互いに認め合っているライバルであると同時
行をしている聖闘士の候補生であり、彼の師が聖域に行く時に一緒に来ているので、た
夏や祐介とは違い聖域に住み込んでいる訳ではなく、絶海の孤島と言える様な場所で修
ンした黒髪でルックスの良い誰が見てもイケメンと思える容姿をしている。紅蓮は一
一夏に声を掛けたのは紅蓮という赤いコートを着た少年だった。紅蓮は少しツンツ
﹁やっぱりお前か、紅蓮
﹁よう、久しぶりだな一夏﹂
﹁その声は、まさか
﹁相変わらずぶきっちょな奴だな⋮お前は﹂
25
そんな彼がここにいるという事は彼の師である人物も聖域に来ていると思い、一夏は
紅蓮に尋ねた。
だよな
﹂
何か様子が変だぞ⋮﹂
﹁紅蓮、お前がいるという事はお前の師である鳳凰座フェニックスの一輝も来ているん
﹁えっ⋮﹂
﹁どうしたんだよ紅蓮
話し出す。
輝に何か合ったのではないかと思ってしまう。紅蓮はそんな一夏の考えを理解してか
かと尋ねたのだが、紅蓮の反応からして何か様子が変だと思った一夏はもしかすると一
一夏は紅蓮に彼の師であるフェニックスの聖闘士である一輝も来ているのではない
?
?
﹂
伝説の聖闘士である不死身と呼ばれるフェニックス一輝を再起不能にまで
追い詰める様な奴がいたっていうのか
!?
島の奥深くにまで一人で向かっていたんだ。それで様子が変だと思った俺はこっそり
たんだが⋮その日は一輝がいきなり修行を一時中止すると俺に言った後、デスクィーン
﹁ああ⋮事の八反は四日前、デスクィーン島で何時も通りに一輝の指導の下修行してい
!?
﹁何だって
てしまい、聖闘士として再起不能の怪我を負ってしまった⋮﹂
﹁一夏、俺の師であるフェニックス一輝は⋮ある奴との戦いで致命的なダメージを受け
第1話 一夏、聖闘士になる
26
と一輝の後を追ったんだ。一輝の姿が見えた時、既に奴と対峙していた⋮一輝は奴と対
峙し、互角の戦いを繰り広げていたんだが⋮奴は何処からか拐っていたまだ幼い子供を
盾にして、一輝が攻撃出来ない様にしたんだ。一輝は自分が技を放てば無関係な子供を
巻き込んでしまうから下手な攻撃は行えなくなったところを奴は躊躇なく人質にして
いた子供を引き裂き殺すと、引き裂いた子供の亡骸を自身が持っていた大砲の様な物の
中に突っ込むと、小宇宙を蓄積させた弾丸として一輝に放ったんだ⋮﹂
勝て
!
す
何故なら勝った方が正義なのですから
﹂
﹄と高々に言った後に姿を消したんだ⋮﹂
﹁そうだったのか⋮ところで紅蓮、少し悪いけどそのお前が言う奴って何者なんだ
!
!
大きな単眼のマスクを被って素顔を隠し、聖衣に似た鎧を纏い、その上にローブを羽
﹁すまないが一夏、奴の名前だけは解らない⋮だが、姿形はハッキリと覚えている。奴は
る。
一夏は紅蓮が奴と呼ぶ存在が気になり、どんな人物なのか尋ねたが紅蓮は首を横に振
?
!
ば正義、負ければ悪 それだけの簡単な理屈です。どんな事をしてでも勝てばいいので
子供を巻き込む様な真似は出来ない様ですね。戦いに綺麗事は無用なのですよ
再起不能の大怪我にまで追い込んだんだ。その後、奴は﹃愛を守る聖闘士はやはり幼い
﹁そして、弾丸となった子供の亡骸は強力な一撃を持っていて一輝の片腕を吹き飛ばし、
﹁子供を盾にした上に子供を殺して亡骸を弾丸として扱ったっていうのか、ソイツは⋮﹂
27
織った大男だ
﹂
奴だけは絶対に俺の手で倒さないと気が済まない
フェニックスの聖衣と共に奴を倒してみせる
一輝から託された
!
すと一夏に見せた。
﹂
?
﹂
!
せる
﹂
もし一輝さんを追い詰めた奴と戦う事になった時には俺も一緒に戦ってお前を
﹁そうか。お前が一輝さんの後を継いで戦うって決めたなら、俺もお前の力になってみ
に恥じない聖闘士になってみせる
スの聖衣石を俺に託したんだ。この聖衣石を託されたからには俺はフェニックスの名
﹁そうだ。一輝がグラード財団の経営する治療所に連れて行かれる前にこのフェニック
﹁それはフェニックスの聖衣石か
クロストーン
紅蓮はそう発言すると、コートのポケットから赤い結晶が付いたペンダントを取り出
!
!
手助けするって約束するぜ
!
!
なれる筈だ。さて、そろそろ俺は教皇に会ってフェニックスの聖闘士になった事を伝え
何処かで慌てている感じだから気持ちを落ち着かせさえすれば、きっとお前も聖闘士に
﹁まあ、お前はぶきっちょだからな。小宇宙に目覚める前段階にまで来ているのに、心の
﹁ははっ⋮確かにまだ小宇宙にも目覚めてない俺が言える台詞じゃなかったな⋮﹂
持ってから言おうな﹂
﹁そうか、お前が協力してくれるのなら有り難いな。でも、それはお前も自分の聖衣を
第1話 一夏、聖闘士になる
28
に行く。じゃあな
﹂
クスの聖闘士になった事を伝えに向かった。
紅蓮は一夏に気分を落ち着かせる様に告げた後に教皇に一輝の後を継いでフェニッ
!
﹁相変わらず厳しいな⋮お前はさ⋮﹂
話し出した。
同年齢の少女だった。その少女の発言を聞いた一夏は少し苦笑いをしながらも彼女と
そう一夏に少々厳しい言葉を送ったのは、少し青みが掛かった長い黒髪を持つ一夏と
への道は遠いかな。それにそんな荒い動きじゃ、体術の訓練にもならないと思うかな﹂
﹁確かにね。それじゃ只の環境破壊だし、木一本を倒すのに時間が掛かる様じゃ聖闘士
付くと彼に向けて発言した。
自分の今やっている自主トレじゃ力不足に思えた一夏を見かけたある人物が彼に近
も無い⋮﹂
﹁ダメだ⋮一本の木を倒すのにこんなに時間が掛かる様じゃ聖闘士なんて到底なれる筈
出している内に一本の木が倒れるが一夏は険しい表情をしていた。
一夏は再び自主トレを再開し、木に向かって拳や蹴りを繰り出していき、何度も繰り
らないんだよな⋮とりあえず、自主トレを再開するか﹂
﹁気分を落ち着かせるって言ってもな⋮どうすれば気分が落ち着くんだかがさっぱり解
29
﹁まあね。実際、私はあなたが聖域に来る前から聖闘士になっていたし、同じ歳と言って
も私の方が聖闘士としては先輩になるからアドバイスをしてあげてるんだよ。それに
﹂
しても本当に変なところで不器用だよね、一夏は。聖闘士としての素質は確かに有るの
に未だに小宇宙が目覚める事が無いなんて⋮﹂
﹁うるさいな。嫌味を言いに来ただけなら帰ってくれないか
ら考えてあげても構わないかな﹂
目覚めるコツを教えてあげてもいいかな
る
ね
まあ、君が頭を地べたにつけて必死に頼むな
﹁そんなつもりは無かったんだけど⋮ええと、とりあえずは聖闘士である私が小宇宙に
!
﹂
!
に入らないらしく機嫌が悪くなった様だ。
もういいもん
!
一夏の
思い、彼女に教えられるのはごめんだと告げるが、龍音は自分が一夏の発言の一部が気
で教皇の圧力でもみ消したらしい。 彼女が一夏に嫌味っぽく話すので一夏は不快に
現在の教皇がそんな古臭い上に性別で差別する様な掟など消してもいい筈だという事
る紫龍の孫だ。かつては女性の聖闘士は仮面を付けて素顔を隠す掟が有ったが、今では
今、一夏の目の前にいる少女の名前は龍音。龍座の聖闘士であり、伝説の聖闘士であ
士である紫龍さんの息子である龍峰さんの娘であろうとな
﹁ゼッテェお前だけには頼まねえからな⋮龍座ドラゴンの龍音、お前が例え伝説の聖闘
?
﹁別に私は父様とお祖父様の名前を利用するつもりは無いから
!
第1話 一夏、聖闘士になる
30
様な朴念仁に教えてあげる事なんて何も無いもん
じ ゃ あ、私 は 行 く か ら ね
別に言わねえから大丈夫だ
﹂
本当に大丈夫
﹂
﹂
後で
!
﹃やっぱりコツを教えてくれませんか﹄って言われても絶対に教えてあげないからね
!
﹁仕方無いか⋮龍音、俺に小宇宙に目覚めるコツを教えてくれないか
﹂
ほ、本当に地べたに頭をつけて頼むなんて⋮それは冗談で言ったつもりなん
!?
結局は俺がやって損してるだけじゃねえか
!
!
を見ると私退いちゃうし⋮﹂
﹁おい
﹂
だけどな⋮とりあえず、頭を上げてくれないかな。さすがに頭を地べたにつけているの
﹁ええっ
?
を教えてもらう事にした様で頭を地べたにつけて頼み込んだ。
そんな一夏だが、さすがに今回はしびれを切らしたので彼女に小宇宙に目覚めるコツ
る奴としか思っていないので、彼女の本意を見抜けずにいた。
ているが一夏がそれに気付かないので一夏は龍音が自分の事をわざわざからかいに来
態度を出すのも好きな子はいじめたくなるというモノであり、龍音は一夏に好意を懐い
りしないので困惑しているが、一夏が鈍いだけで知らないだけだが龍音が一夏にキツイ
一夏は龍音が自分に小宇宙に目覚めるコツを教えたいのか教えたくないのかはっき
?
!
ここは普通は必死に頼むところじゃない
?
﹁ああ
あ、あれ
?
﹁お前、俺に教えたいのか教えたくないのかどっちなんだよ⋮﹂
﹁えっ
!? !
!
31
﹁ごめんなさい⋮本当に簡単なコツを教えてあげるからさ﹂
さすがは龍座の聖闘士だけあるな龍音。よっ、男前
﹂
!
私は女の子なんだからね
﹂
!
﹁本当か龍音
ソコは女子力が高いって言ってよ
!
!
たくて来たのについ、からかいたくなっちゃてさ⋮﹂
﹁それはそうだけど⋮ええと、確かに私の方が悪かったかな。本当は一夏の手助けをし
﹁まあ、先に失礼な事を言ったのはお前なんだけどな﹂
﹁本当だよ。失礼にも程が有るんじゃない﹂
﹁わりぃ、すまねえな⋮女の子に向かって男前は無かったよな⋮﹂
女に謝罪する事にした。
を言ったつもりだが彼女を不快に思わせる言葉を言ってしまった事に気付いたので彼
龍音が一夏に小宇宙に目覚めるコツを教えてくれる様なので、一夏は彼女に誉め言葉
﹁ちょっと
!?
﹁そうだね。よく思い返せば、一夏が聖域に来たばかりの時から私とあなたはすれ違う
に俺とお前は会う度にこんな感じになっちゃうよな﹂
﹁まあ、俺も売り言葉に買い言葉を返してしまったから人の事を言えないけどさ⋮本当
﹁そうだね⋮教えてあげたいなら素直に教えてあげればよかったのにね⋮﹂
嘩してたよな⋮﹂
﹁何か今になって急に冷静になれたんだけどよ、俺とお前って結構下らない理由で口喧
第1話 一夏、聖闘士になる
32
度 に 口 喧 嘩 ば か り し て は 父 様 に﹃喧 嘩 す る な ら 聖 域 か ら 出 て か ら に し て く れ な い か
﹄って怒られたよね﹂
!
﹄って言われて、俺とお前はやらされたよな⋮﹂
!
だから俺はここまで焦っていたのか﹂
!
何の事なのか解らないけど、力になれたのなら良かったかな﹂
!
﹁えっ
さてと、今日はもう休む事にするか
!
?
﹁ああ。本当にお前のお陰だよ
って事で俺は失
﹁龍音、ありがとな。お陰で今の俺に足りないモノが何なのか解った気がする﹂
焦っていた理由に辿り着くと、龍音に向かって発言する。
れていたなという話をしていく内に一夏は自分が何故、聖闘士に早くならないとと思い
一夏は龍音との口喧嘩を終えると、互いにこうして会う度に口喧嘩ばかりしては怒ら
いと思ったんだ⋮そうか
解っているから、俺はラインハルトさんの期待に答えられる様にも早く聖闘士になりた
﹁本 当 に ラ イ ン ハ ル ト さ ん が 一 番 厳 し い よ な ⋮ で も、そ れ は 俺 達 を 思 っ て の 事 だ っ て
たしね⋮﹂
聖域中の床磨きをされたり、難しい問題が書かれた用紙を持ってきては勉強を強いられ
ンハルトが一番厳しいよね⋮まるで鬼神が宿ったかの様に凄い形相で説教された後に
﹁本当にそれが一番大きなペナルティだったよね⋮父様は厳しいには厳しいけど、ライ
なら聖域中の床磨きをしろ
﹁その後、お前と口喧嘩した件を聞いたラインハルトさんからは﹃口喧嘩する元気が有る
33
ちょっと、私に小宇宙に目覚めるコツを教えてもらうつもりじゃなかったの
礼するぜ﹂
﹁えっ
﹂
!?
﹂
!
音って結構可愛い顔してたんだな﹂
﹁そ れ に つ い て は 本 当 に 悪 く 思 っ て い る よ。そ れ に し て も、今 気 付 い た ん だ け ど ⋮ 龍
﹁そんな事言われたって⋮私はとっくに教える気満々でいたのに⋮﹂
は明日以降に小宇宙に目覚める事が出来なかった場合って事で
﹁すまねえな。さっきまではその気だったんだけど、事情が変わったわ。悪いけど、それ
!?
﹁私が可愛い ﹃今気付いた﹄って部分が少し気になるけど、可愛いって言われて悪い気
第1話 一夏、聖闘士になる
34
備運動を終えると、ラインハルトと模擬戦を行う為に何時も通りに裏山に移動をしよう
ていた。今日こそはラインハルトに一撃を与える事が出来る筈だと確信した一夏は準
次の日、一夏はリラックスした状態でラインハルトとの模擬戦に備えて準備運動をし
動して眠りに着いていた訳だが、それは全く別の話。
はないかと考えてしまうが、龍音が我に帰った時には既に一夏は聖域の就寝所の中に移
一夏は純粋に思った事を口に出したのだが、龍音は一夏が自分の事を好いているので
はしないかな﹂
!?
とした一夏を見かねた茶髪のロングヘアーをした女顔の少年が彼に声を掛けてきた。
発当ててみせるぜ
﹂
シルバーセイント
﹁フィリスがそう言うなら、絶対に今日で小宇宙を目覚めさせてラインハルトさんに一
クスした状態の方が小宇宙に目覚める可能性が高いからね﹂
宙に目覚める事が出来るかもしれないね。心の中で焦っている状態と比べればリラッ
﹁今日のイッチーは何時もとは違って、リラックスした状態だから⋮もしかすると、小宇
青銅聖闘士でありながら白銀聖闘士と互角に渡り合える程の実力を持つ侮れない男だ。
ブロンズセイント
一夏声を掛けたのは仔馬座エクレウスの聖闘士であるフィリス。一応、こう見えても
すればいいや⋮﹂
﹁解ったよ⋮お前がそう思っているなら無理に呼び方を変えるのも悪いから、俺が我慢
﹁まあまあ、そう言わないでさ。僕は友達を親しみ込めて呼びたいだけなんだから﹂
きそうだから止めてくれない⋮﹂
スのフィリス。俺とお前は同じ歳で男同士だし、さすがにその呼び方は色々と誤解を招
んだ。それよりも⋮その﹃イッチー﹄って呼び方は止めてくれないか⋮仔馬座エクレウ
﹁まあな。今日はラインハルトさんにきっと拳を一発当てる事が出来るって確信してる
違ってリラックスした様子だね﹂
﹁イッチー、今日もラインハルト様との模擬戦に向かうみたいだけど、今日は何時もと
35
!
﹁その調子でいなよ、イッチー。イッチーは何時もどこか焦ってた感じに思えていたん
だけど、今日のイッチーからはそんな感じはしないし、きっと大丈夫だよ﹂
一 夏 は フ ィ リ ス の 言 葉 を 聞 き、尚 更 確 信 を 得 た 一 夏 は 裏 山 に 向 か っ て 走 っ て い た。
フィリスはそんな一夏の姿が見えなくなるまで見送った。
裏山の頂上に着くと、何時もの様にラインハルトが待ち構えていた。
﹁一夏よ、今日は昨日までと違い落ち着いてリラックスした状態でいるな。ふっ、どうや
俺はラインハルトさんや他の聖域の人からの期待に答えようと一刻も早く聖闘
ら昨日の内に何かを掴んだみたいだな﹂
﹁はい
﹂
人と口喧嘩もしましたけど⋮その何気無い一時で俺は思い出せたんです。聖闘士にな
か忘れていたんです。ですが、昨日の模擬戦の後に俺は友と出会い話をし、その中の一
有って聖闘士になろうと決めたのに⋮俺はそれを聖域で修行している内にいつの間に
けではなくて理不尽な理由で傷付く様な人達を一人でも多く守りたいという思いが
きっかけは⋮守られるばかりだった俺が今度は千冬姉を守れる様になりたい、千冬姉だ
思いが薄まっていたのも有ったからだと思ったんです。俺が聖闘士になろうと思った
士になろうと心の何処かで焦っていました。それは俺が聖闘士になろうと決めた時の
!
ろうと思ったきっかけを
!
第1話 一夏、聖闘士になる
36
一夏は自分が見失い欠けていたモノを見付け出し、その答えにたどり着いた事をライ
ンハルトに語った。ラインハルトはそんな一夏の目を見て、まるで懐かしく感じたの
か、思わず笑みを浮かべた。
﹂
﹂
﹁はい、今日はその期待に今度こそ答えられる様にします
いくぞ一夏
!
一夏はラインハルトの動きを心の目で観察すると、一瞬だが彼の動きが鈍る瞬間が有
︵落ち着いてラインハルトさんの動きをよく見るんだ。肉眼ではなくて心の目で⋮︶
ち着いてリラックスした状態で慎重にラインハルトの動きを捉える事に専念した。
で一夏はこのスピードに反応出来ずに闇雲に攻撃するばかりだったが、今日の一夏は落
違う木の上へと飛び越えたり、地面に着地したり等で一夏を試す様に動き回る。これま
ラインハルトは一夏を翻弄するかの様に常人では見切れない速さで木の上に移動し、
マッハ1のスピードで動くラインハルトに拳を当てる事が可能だ。
値のスピードであるマッハ1で動いている。もし、一夏が小宇宙に目覚めさえすれば
めて上手く扱えるかどうかを確かめるモノである為、ラインハルトは青銅聖闘士の基準
ラインハルトが合図を出すと模擬戦を開始する。この模擬戦は一夏が小宇宙に目覚
﹁その言葉が本当か確かめさせてもらうぞ
!
!
日までとは違って少しは期待出来そうだな﹂
﹁ふっ、お前のそんな目を見たのは初めて会った時以来だな。どうやら今日のお前は昨
37
るのを感じ取った。おそらくラインハルトがわざと鈍る瞬間を作っているんだろうが、
その動きを見極められない様では聖闘士になれないという意味も兼ねているのだと一
夏は考えた。
動きは捉える事が出来たが、自分の攻撃を当てられない様では動きを捉えても意味は
無い。ラインハルトに拳を当てるには小宇宙に目覚め、ラインハルトの動きと同等の速
さで攻撃を放つ必要が有る。だからこそ、一夏はここで小宇宙を目覚めさせようとして
いた。
俺は千冬姉を守れる
当てるには俺が小宇宙に目覚める必要が有る。小宇宙は身体の奥に眠る宇宙的エネル
︵ラインハルトさんの動きは捉える事が出来た。だけど、ラインハルトさんに拳一発を
その為にも今こそ目覚めろ、俺の小宇宙よ
︶
千冬姉だけじゃない、この世界で理不尽に傷付く人達が出ない為にも俺
ギー⋮それを目覚めさせ、扱うには俺自身の心に語り掛けるんだ
は聖闘士になるんだ
様になりたい
!
!!
小宇宙を使った一撃を
﹂
﹁その通りだ一夏。お前は今、遂に小宇宙に目覚めたのだ。さあ、今こそ見せろ。お前の
?
分の身体の奥から大きな力が溢れてくるのを感じた。
﹂
一夏が自身に思いを語り、自分の中の大きな何かにその思いが届いたのか、一夏は自
!
!
﹁俺の中から溢れてくるこの力⋮これが小宇宙なのか
第1話 一夏、聖闘士になる
38
!
ラインハルトは一夏が小宇宙に目覚めた事を感じ取ると一夏に小宇宙を使った一撃
を自分に放つ様に告げる。それを聞いた一夏はラインハルトに向けて小宇宙を込めた
俺に語り掛けるこの声は⋮いや、声じゃない。まるで何か映像みたいに俺の頭
一撃を放とうと構えを取ると、一夏は自分の心に何かが語り掛けてきた。
︵何だ
︶
!
ま
?
﹁一夏、その構えは⋮その構えを何処で見た
その構えは今の射手座の聖闘士がかつて
﹂
!?
と思っての構えです﹂
﹁今、俺の頭の中に映像が流れ込んできたんです。その映像で見えた技を今から放とう
偶然とは到底思えん。何故、その構えを知ってるのだ
使っていた技を放つ時と同じ構えだ。その技を使う瞬間を見れる機会は無かった筈⋮
?
て使っていた技と同じ構えだったからだ。
が放とうとする技に心当たりが有った。それは間違いなく今の射手座の聖闘士がかつ
きは天馬座の星の並びを連想させる動きだった。その構えを見たラインハルトは一夏
一夏は今の映像で見えた技を放つ為に、映像で見えた動きと同じ構えを取る。その動
あ、とにかくやってみるか
んが小宇宙を使った一撃を放てって言ったし、これも一応は一撃って事でいいのか
た技を使えって言ってるのか⋮上手く出来るかどうか自信は無いけど、ラインハルトさ
に誰かの記憶が流れ込んでくる⋮誰の記憶か解らないけど、何となく俺に今の映像で見
?
39
﹂
﹁頭の中に映像が流れ込んできただと⋮まさか、一夏の守護星座は⋮だとすれば納得だ
﹂
な。面白い、そのお前が見たという映像の技を俺に向けて放ってみせろ
遠慮せずに放たせてもらいます
!
!
﹂
数の拳がラインハルトに向けて放たれた。
﹁ペガサス流星拳
たが⋮
トは両腕両足を使い、一夏の流星拳をまるで銃弾を剣で切り落とすかの様に防いでみせ
一夏が放つペガサス流星拳を全て受ける程、ラインハルトは甘くは無い。ラインハル
!
!!
﹁やはりか⋮だが、俺は流星拳を全部受けてやる程甘くは無いぞ
﹂
ラインハルトに向けて一夏は映像で見えた技を放つ。その技はまるで流星の様に多
﹁はい
!
﹂
?
﹁はい。そうさせてもらいます﹂
の守護宮である磨羯宮で休んでもらおうか﹂
教皇に申請してこよう。今日はもう休むといい。今日は初めて聖域に来た時の様に俺
てる事が出来たのだ。本日をもって一夏、お前を正式に聖闘士の一人として迎える様に
﹁ああ、見事だ。確かにお前はかすり傷程度とは言え見事だ。俺に拳一発をようやく当
かにかすった程度と言えど俺の拳一発は当たりましたよね
﹁さすがに全て受ける程、甘くは無いというのは分かっていましたよ。ですけど、頬に僅
第1話 一夏、聖闘士になる
40
一夏は小宇宙に目覚め、ラインハルトに拳一発を当てる事が出来たので聖闘士になる
資格を得る事が出来た。一夏はラインハルトに言われた通りに今日は休む事にして、初
めて聖域に来た時以来に磨羯宮で休息をする事にした。正直、遠い磨羯宮に行って休む
なら聖域に入って直ぐ有る就寝所の方が良かったと思ったのだが、ラインハルトに磨羯
宮で休む様に言われた以上は仕方無いので、磨羯宮に有る寝床で眠りについたのだっ
た。
次の日、一夏が目覚めると磨羯宮に聖域のトップである教皇が来ていたので驚いた一
夏は慌てた様子で教皇に挨拶をした。
さすがに寝過ぎだ﹂
!
そう言えば、ラインハルトさんの姿が見えないんですけど⋮﹂
?
﹂
?
﹁全くもってその通りだ。お前が起きるのをわざわざラインハルトを見送った後に待っ
も
﹁そうなんですか。ところで教皇は一体何をしにこの磨羯宮に⋮まさか俺に何か用事で
なくとも一週間は戻ってこないな﹂
﹁ラインハルトなら、昨日私が命じた任務を遂行する為に朝早くに出発したからな。少
﹁すみません⋮あれ
﹁おはようと言うには既に遅いな。もう昼間だぞ一夏
﹁おはようございます教皇⋮まさか、磨羯宮に来るとは思いもしませんでした⋮﹂
41
ていたら、まさか昼間になるとはな⋮昨日はようやく小宇宙に目覚めたのだと聞いたか
らな。小宇宙に目覚めたばかりだから仕方無いと割り切る事にした﹂
﹁わざわざすみませんでした⋮﹂
﹁まあ、構わん。お前が起きた事だし、さっさと用件を済ませるとしよう。一夏よ、お前
にこれを渡す﹂
一夏は本当に朝早くから自分が起きるのを待っていた教皇に申し訳ないと思う中で、
聖闘士に成り立て
教皇は一夏への用件を済ませる事にしたのか、教皇は自分のローブの中から透明な水晶
﹂
が付いたペンダントを取り出すと一夏に手渡した。
﹁教皇、これって聖衣石ですか
﹂
の新米が運びやすい様にわざわざ聖衣石にしたのだからな。くれぐれも無くしたりす
!
?
﹁そうだ。それがお前の守護星座である天馬座ペガサスの聖衣石だ
るのではないぞ
!
﹁それほどお前にペガサスの聖衣も期待してるという事だろうな。せいぜいペガサスの
﹁昨日の俺の頭の中で流れた映像はこのペガサスの聖衣の仕業だったのか⋮﹂
辺り、お前はペガサスの聖闘士としての素質が高かったのかもしれん﹂
﹁そうか。そのペガサスの聖衣は昨日お前の頭に前の所有者の記憶を映像として見せた
﹁勿論です。絶対に無くす様なへまはしません﹂
第1話 一夏、聖闘士になる
42
聖衣に愛想を尽かされない程度には頑張るのだな﹂
そう言って教皇は磨羯宮から出ていき、教皇の間に戻っていた。
ペガサスの聖闘士として
﹂
千冬姉や仲間達に、そして理不尽に傷付けられる人達を⋮俺は絶
一夏は自分に渡された聖衣石を見て、改めて決心した。
対に守り抜く
!
﹁俺は守ってみせる
サスの聖闘士の物語が今動き出す
!
こうして本格的に始まったのだ。一夏の聖闘士としての戦いの日々が⋮新たなペガ
!
!
43
セ イ ン ト
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ
けて発言した。
介と龍音にフィリスの三人がいるので一夏は三人の横に着くと、教皇が一夏達四人に向
教皇の間に着くと、教皇の間には当たり前だが教皇が玉座に座っており、その前に祐
夏は急いで教皇の間に向かった。
た。そんな一夏の元に伝達係の者から教皇が教皇の間に来る様にと伝えられたので、一
一ヶ月経っても聖域に戻ってこないので、一夏はラインハルトの安否が気になってい
も慣れてきた頃なのだが⋮一夏が聖闘士になった日に任務に向かったラインハルトが
夏は聖闘士になったからと言っても修行を疎かにはせずに続けており、小宇宙の扱いに
一夏がペガサスの聖闘士になって早くも一ヶ月の月日が流れた。この一ヶ月の間、一
!
﹁ラインハルトさんがどうしたんですか
﹂
してラインハルトの捜索をした結果、残念な事が判明した⋮﹂
⋮アイツにしては帰りが遅いと思った私が先週に白銀聖闘士で構成した捜索班を派遣
シルバーセイント
一夏がペガサスの聖闘士になった日に私が命じた任務を受けたラインハルトなのだが
﹁お前達四人を急に召集したのはお前達四人に頼みが有るからだ。一ヶ月前、ちょうど
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
44
!?
﹁一夏、彼の弟子であるお前には一番辛い報告かもしれんな⋮捜索班がエーゲ海の沖合
いに浮かぶ人影を見つけ出し、その人影の正体はラインハルトの遺体だった⋮そう、何
者かとの戦闘で倒れラインハルトは戦死したのだ⋮﹂
今は教皇から話を聞くのが先決だ﹂
!
﹁バカ者
﹂
怒りで我を忘れるな
怒りをちゃんと力にして戦えるのなら構わないが、実
!
!
戦経験の無いお前が怒りに満ちた状態で戦ったところで勝てる相手である筈が無い
!
!
倒してやる
﹁雷か炎を操る奴がラインハルトさんを殺したのか⋮ソイツを見付けたら、俺が絶対に
黄金聖闘士と互角かそれ以上の実力を持った雷か炎を操る強敵だったと思われる﹂
ゴールドセイント
ルトの遺体には黒く焦げていた箇所も有った⋮おそらく、ラインハルトが戦った相手は
連れて戻っていた為、その遺体を確認した結果、確かにラインハルトだった⋮ラインハ
﹁ラインハルトが戦死したとは信じられないの私も同じだ⋮だが、捜索班が彼の遺体を
たので、一夏は大人しく教皇の話を聞く事にした。
したので、そんな一夏を祐介が宥めた。今は教皇の話を聞くのが先決だと祐介に言われ
弟子である自分だからこそ一番知ってるのでとても信じられない話だった為に取り乱
一夏は教皇から捜索班の報告からラインハルトが戦死した事を告げられ、彼の強さを
﹁落ち着け一夏
﹁嘘だ⋮ラインハルトさんは簡単に倒されて死ぬ様な人じゃない⋮﹂
45
何せ、ラインハルトを倒す程の強敵なのだからな
インハルトさんの敵を討つと言うんですか
﹂
﹂
﹁だけど、俺はラインハルトさんの敵を⋮弟子である俺が師の敵討ちをしなきゃ、誰がラ
!
冷静になって
相手の実力を考えずに敵討ちという名目で怒りで自分をコントロール出来
そうじゃないでしょ
ラインハルトがあなたに教えてきたのは怒
怒りに満ちた状態で戦って、仮に敵討ちが成功したところでラインハル
ない状態で戦って一夏、あなたは自分が生きて帰れるって思っているの
﹁バカなの
満ちていた一夏の頭は真っ白になる。
しか考えられなくなった様で、そんな彼の頬に龍音が強力な平手打ちを与えると怒りに
怒りが混み上がってきた一夏はラインハルトを殺した相手を倒して敵討ちをする事
!!
!
考えてみてよ
?
?
トが浮かばれるの
?
!
りで我を忘れて戦う様な事じゃなくて、誰かの為に戦って守り抜く事じゃなかったの
﹂
!
はそういう信念で動いているんだとラインハルトさんから聞かされたんだ⋮なのに、俺
分が傷付き倒れても、残った者達がその思いを受け継いでくれさえすればいいと⋮自分
闘士としての力を決して自分の私利私欲には使わず、他の人を守るためだけに使い、自
けじゃなくて⋮ラインハルトさんが抱く理想も教わったんだ。ラインハルトさんは聖
﹁そうだったな⋮ラインハルトさんが俺に教えてくれたのは、聖闘士としての心構えだ
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
46
は怒りで我を忘れて、ラインハルトさんの思いを踏みにじるところだった⋮﹂
一夏は龍音の言葉を聞き、ラインハルトの教えを思い出した。ラインハルトは自分の
力を私利私欲の為には使わず、他人を守る為に使う信念を。例え、その信念を貫いた結
果、自分が傷付き倒れる事になっても残った誰かが継いでいきさえすればいいと聞かさ
れた。そんなラインハルトの信念を自分は怒りで忘れるところだった。
それを思い出させてくれたのは龍音だった。彼女が自分に大切な事を思い出させて
くれたのはこれで二度目だ。だからこそ、一夏は彼女に感謝の言葉を送った。
が二本折れたぞ⋮﹂
!?
一夏は自分を冷静にしてくれた龍音には感謝こそしてるが、龍音が放った平手打ちが
い⋮﹂
﹁そんなに強かったの
ごめんなさい⋮思わず力加減を考えずに手を出しちゃったみた
﹁相変わらず素直じゃない奴だな⋮でも、一つ文句言わせてくれ。冗談抜きで俺の奥歯
あなたを落ち着かせる為にやった訳じゃないんだからね﹂
﹁そんな事無いよ。私は怒りで我を忘れた一夏が放っておけなかっただけだから、別に
面倒ばかり掛けてすまねえな﹂
前がビンタしてくれたお陰で怒りに満ちた頭が真っ白になって冷静になれた。本当に
﹁ありがとな龍音。俺はラインハルトさんから教わった信念を忘れるところだった。お
47
思った以上に強かった様で一夏の奥歯が二本折れたので龍音は素直に謝罪した。そん
な一夏と龍音のやり取りを見ていた教皇と祐介にフィリスの三人はこの空気に対して
それぞれ思った事を口に出す。
﹁教皇である私の前でどうして⋮こんな空気に出来るモノだな⋮どうやって話を戻せば
いいんだ⋮﹂
﹁全く、この二人は⋮気付かない一夏も一夏だが、素直に思いを言えない龍音も龍音だ⋮
さっさと、告白すればいいものを⋮﹂
﹁全くだ。私が話をしているのに、一夏は怒りに捕らわれるわ、龍音はそんな一夏を平手
﹁話を遮ってしまって申し訳なく思います⋮本当にごめんなさい⋮﹂
﹁すみません、教皇⋮俺が怒りで我を忘れるばかりに⋮﹂
しまったのを謝罪した。
一夏と龍音が三人の視線に気付くと、二人は教皇の話が終わってないのに話を遮って
認識しており、そんな二人を見て楽しんでいる様子だ。
一夏と素直になりきれない龍音に呆れ果て、フィリスは敢えてそういう距離感なのだと
教皇は自分の前で独特な空気にした二人に呆れ半分で少し困惑し、祐介は鈍感過ぎる
ろうけどね⋮本当にイッチーとルーちゃんの二人は見ていて飽きないよ﹂
﹁イッチーとルーちゃんも相変わらずだな⋮まあ、それが二人にとっていい距離なんだ
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
48
打ちで引き留めるわで話が大分拗れたな。そもそもラインハルトをやった相手が誰か
すら解らない状態でよく怒り任せに突っ走ろうと思うところが一番理解しづらいな﹂
一夏は教皇から敵討ちする相手すら知らない状態で突っ走ろうと思えたのが理解し
づらいと言われ、本当に怒りで冷静な判断が出来なくなっていた事を恥ずかしく思っ
た。
い状況だ﹂
加護を受けた聖域の中でしかアテナの力を借りる事は出来ないと言っても過言ではな
後の筈だからな⋮それ故に今の聖域はアテナの化身である城戸早織がいなくなる前に
だった城戸沙織は既にいない。新たなアテナの化身が誕生するのは少なくとも二百年
﹁ア テ ナ の 瞳 を 捜 索 さ せ た の は ち ゃ ん と し た 理 由 が 有 る。今 の 聖 域 に は ア テ ナ の 化 身
き通った水色の綺麗な宝珠であり、その宝珠からは不思議な力を感じる。
教皇は手に握っていたアテナの瞳と呼ばれる宝珠を四人に見せた。アテナの瞳は透
ていた﹂
トはアテナの瞳を見事に見つけ出し、このアテナの瞳を死んでも離さずに手に握りしめ
た任務はアテナの祈りが込められた宝珠である〝アテナの瞳〟の捜索だ。ラインハル
が、ラインハルトは死亡する前に任務自体は終えていた。私がラインハルトに命じてい
﹁さて、話を戻すとしよう。ラインハルトが何者かの手で戦死してしまったのは残念だ
49
﹁確かに今の聖域は何とかアテナがいなくなる前に受けた加護だけで凌いでいるに近い
﹂
状況なのは薄々と解りきっていたが⋮教皇が言うとなると、下手すれば一大事な事にな
りえると考えていると見て、いいのでしょうか
ハルトが命を掛けて守ったアテナの瞳を使えば、聖域に残ったアテナの加護が届く範囲
ればならない。だからこそ、敵に先手を打たれる前に先手を打つ事にしたのだ。ライン
アテナの加護が届かない領域で戦うとなると⋮下手すれば、全滅する可能性も考えなけ
域の中とその近くでは残ったアテナの加護によって、聖闘士の能力は高まるが⋮それは
﹁確かに祐介、お前の言う通りだ。聖闘士の勝利にはアテナの加護も有ってこそだ。聖
?
を数十年程度だが地上全体に届かせられるかもしれない﹂
﹂
!?
ナの加護が地上全体に及ぶまでに拡大する。しかし、加護の力が弱まるかもしれぬが⋮
神聖なる場でも有るからな。その火口にアテナの瞳を放り込む事で聖域に残ったアテ
瞳を放り込んできてもらいたい。カノン島の火山の火口は聖闘士が傷を癒す為に使う
﹁お前達四人にはこのアテナの瞳をカノン島の火山にまで運んでいき、火口にアテナの
音が少し驚いた様だが、教皇は話を続ける。
るアテナの加護を地上全体にまで効果が及ぶ様にする策が有るらしく、それを聞いた龍
教皇が聖闘士の勝利にはアテナの加護も有ってこそだと言うと、今の聖域に残ってい
﹁それは本当なのですか、教皇
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
50
これは聖闘士が出来る限り力を発揮出来る様にする為にも必要な事なのだ。そんな重
大な役目をお前達四人に任せるとしよう。もしかすると、ラインハルトを殺った者はこ
の作戦を知ってる可能性も否定は出来ない。その為、何者かの妨害も有るかもしれない
﹂
が⋮お前達四人はこの重大な役目を担う覚悟が有るというのなら、この任務を受けてく
れないか
た。
もしれない重要な任務を受けてくれる様に頼むと四人は迷い無く任務を受ける事にし
教皇が一夏と祐介に龍音、フィリスの四人にアテナの加護が届く範囲を拡大出来るか
?
﹂
!
﹂
!
﹁誰がお稲荷だ
俺は狐座フォックスの祐介だ
﹂
﹂
行かないの
﹂
?
﹁しかも今、何気に自分が一番強い発言してたよね
行くの
?
!
﹁本当の事じゃない。それでイッチー、君はどうするの
?
?
!?
で一番強いであろう僕がいないと困るだろうから、僕も引き受ける事にするよ﹂
﹁お稲荷とルーちゃんが受けるって言うんだし、僕も行くよ。もしもの時の為にこの中
残された私達が彼の代わりに引き受けなきゃ、ラインハルトが浮かばれないよ
﹁私も引き受けるよ。ラインハルトが命を掛けてまで守ったアテナの瞳だもん。絶対に
よう
﹁俺はとっくに任務を受ける気でいました。このフォックスの祐介、その任務引き受け
51
なら、そのチャンスを無駄にし
﹁勿論、行くに決まってるんだろ 龍音に言いたい事は言われたけどよ、ラインハルトさ
﹂
んが命を掛けて作ってくれた最大のチャンスなんだろ
ない為にも俺はこの任務を受ける
だけはするな
例え、その任務が失敗しようともお前達四人が無事に戻って、任務の結
四人にこのアテナの瞳を託そう。出来れば成功して戻ってほしいが⋮くれぐれも無茶
﹁どうやら全員がこの任務を引き受けるって事で構わないみたいだな。ならば、お前達
?
!
!
﹂
!
﹁誰の声だ
﹂
﹂
早くジャンプして
!
!
立ち止まった一夏に龍音がジャンプする様に指示したので、一夏は素早くジャンプす
!
?
﹁止まらないで一夏
﹂
い、もうすぐで火口に着くと思われた時に何者かが技を放ったのか掛け声が聞こえた。
一夏達がカノン島に着くと念のために聖衣を纏い、真っ直ぐにカノン島の火山に向か
達四人は聖域に有るモーターボートでカノン島に向かったのだった。
教皇が一夏達四人に無事に任務を終えて結果報告しに戻ってくる様に告げた後、一夏
様に気を付けて行くのだ
果を報告しに戻ってくれさえすればいいのだ⋮絶対にラインハルトの二の舞にならぬ
!
﹁ネイチャー・ユーニティ
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
52
ると、一夏が立っていた場所から巨大な植物の根の様な物が突き出てきたので一夏は助
言してくれた龍音に感謝した。
﹂
﹁誰がお稲荷だ
!
隠れてないで出てきなさい
﹂
!
﹂
この私の技を話を聞いただけで避ける様に指示を出せるとは⋮流石はあの紫龍
ど⋮どういう事かな
の孫だけあるな
?
﹁誰だお前は
聖闘士じゃないよな
?
﹂
ており、水晶髑髏をイメージした様な聖衣に似たプロテクターを纏っていた。
龍音に言われて今の技を放った張本人である男が姿を見せた。男は臼桃色の髪をし
!
﹁ほう
?
回避出来る様に助言出来た訳だけど⋮今の技を放てる奴はとっくにいない筈なんだけ
﹁今の技は私がお祖父様から聞いて知っていたから、どんな技か知っていたから一夏が
?
それよりも龍音、お前はこの技を知ってるみたいだが⋮どういう訳だ
聖闘士が好かないと思うよ﹂
﹁お稲荷、魚座の黄金聖闘士が使うのは薔薇だけだよ。今の様な趣味の悪い技は魚座の
﹁植物を操る技か⋮まるで魚座の黄金聖闘士みたいだな⋮﹂
﹁礼には及ばないかな﹂
﹁ありがとな龍音、お陰で助かった﹂
53
?
﹂
﹁ふん。先程と言い、この時代のペガサスも単細胞の阿呆の様だな。知らぬのなら教え
ゴッドウォーリアー
てやろう。私はデルタ星メグレスの神 闘 士 アルベリッヒだ
﹂
確か極寒の地アズガルドを守護する神であるオーディンに仕える闘士の
筈だ⋮そんな奴が何故、俺達をいきなり襲う
﹁神闘士だと
!
くれないかな
﹂
敗れて死んだ筈だからね
何故、死んだ筈のお前が生きて私達の前にいるのか聞かせて
﹁ええ、
﹃だった﹄筈だよね。だって、アルベリッヒ。お前はかつてお祖父様との戦いに
だ。私はその神闘士の一人だった⋮﹂
﹁狐座の聖闘士よ、お前の言う通り神闘士はアズガルドでオーディンに仕える闘士の事
?
!?
?
!
﹂
!
私はその神に忠
!
最早、私はオーディンに
!
私を甦らせてくれた大いなる神に忠誠を誓った戦士なのだか
!
変貌を遂げたのだ。それはまるで水晶の身体を持った悪魔の様であった。
う神闘士の証である神闘衣が姿形を変えていき、禍々しさと神々しさを漂わせる鎧へと
ゴッドローブ
かつて紫龍との戦いで死んだ自分がある神の手で甦ったと言うと、アルベリッヒの纏
らな
仕える神闘士では無い
誠を誓い、新たな肉体を得て新たな命を与えられ甦ったのだ
んな私に自分に忠誠を誓えば新たな命を与えてくれる神がいたのだ
﹁ククク⋮紫龍の孫娘よ、お前の言う通りだ。私は紫龍との戦いに敗れ死んだ⋮だが、そ
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
54
﹂
!
ファンタジスタ
﹂
!?
ハイドルア様は千五百年ものの時を得て復活しつつあるのだ
﹂
!
れつつある事を知り、改めて聖闘士としての自覚をした。
﹁その通りだ
﹁その口振りだと、まだハイドルアは完全には復活してないみたいね
!
早、時間の問題だ
今の地上にアテナがいない以上、聖闘士の力は弱まっている筈だ。
﹁確かにハイドルア様はまだ完全に目覚めてはいない。だが、ハイドルア様の復活は最
!
﹂
ドルアに仕える戦士である幻闘士になったという事になるので、この地上に脅威が生ま
た神ハイドルアが目覚めた事でハイドルアによって、新たな肉体と命を与えられ、ハイ
フィリスの話を聞いた一夏はアルベリッヒは千五百年前の戦いでアテナに封印され
目覚めてしまい、アルベリッヒを甦らせたってのか
﹁フィリスの話が本当ならつまり、千五百年も封印されていたハイドルアっていう神が
張って何とか千五百年の間は何も出来なくなる様にしたと記述されていた⋮﹂
いたのが幻闘士だったという記録が残っていた⋮ハイドルアはアテナが強力な結界を
れ果てていた時に現れた水と知識、幻影、そして命の四つを司る神ハイドルアに仕えて
五百年も前のアテナがアレス、ポセイドン、ハーデス、女神パラスとの戦いの連鎖で疲
﹁幻闘士⋮僕はかつての聖戦での記録を見た時にその名前を見た事が有るよ。それは千
クのアルベリッヒだ
﹁今の私は新たな命を与えてくれた神に仕える幻 闘 士の一人、一つ星幻闘士ウォーロッ
55
!
貴
だからこそ、お前達はこのカ
﹂
残念だが、その目論見は潰させてもらうぞ
それは聖闘士であるお前達こそが一番理解している筈だ
ノン島で何かしようとしているのだろ
﹂
様らの首を手土産にして、一つ星より上の二つ星に昇格してやるわ
﹁一つ星やら二つ星って何の話だよ
!
!
シルバー
ゴールド
﹂
ディメンジョンホール
﹂
!? !
﹂
!
を開いた。
奴らを散り散りに分散せよ
きゃああぁぁっ
空に黒くて大きな穴の様な物が⋮うわぁぁっ
﹁異次元に住む精霊達よ
﹁何だ
﹁これって、まさか
!?
!?
!
た様だが、そうはいかない事情が有るらしく、渋った顔をしながらもアルベリッヒは口
アルベリッヒは一夏達を倒して、自分が幻闘士の上へと上り詰める事を目論んではい
事情が有るのでな⋮﹂
はお前達を倒して二つ星に昇格してみせようと言いたいところだが⋮そうはいかない
ろの青銅、二つ星で白銀、三つ星で黄金のレベルと言ったところか⋮今は一つ星だが、私
ブロンズ
ず星を持たない雑兵はアンノウンと呼ばれ、一つ星の幻闘士はお前達聖闘士で言うとこ
ンクが高い程、ハイドルア様の戦士の証明でもある幻衣も協力な物を渡されるのだ。ま
ホロウ
土産に教えてやろう。幻闘士にはランクが存在し、星が多い程にランクが高いのだ。ラ
﹁ペガサスはやはり阿呆なのか⋮少し考えれば解る話だろうが、まあ良かろう。冥土の
?
!
?
!!
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
56
﹁成る程ね⋮僕達を一人一人違う所へ飛ばして分断させるつもりみたいだね。とりあえ
何度も言わせるな
いや⋮そんな事を言ってる場合じゃないな⋮﹂
ず、お稲荷。アルベリッヒの相手は君に任せる事にするよ﹂
﹁誰がお稲荷だ
!
﹂
!
狐座フォックスの祐介、いざ参らん
戦う気が無いのかお前は
?
全く、相変わらず侮れない男だな﹂
﹁何をごちゃごちゃ言ってる
﹁安心しろ。ちゃんと戦う気は有るさ
﹂
!
?
ばされた一夏はカノン島の火山の近くに有る洞窟の中で目を覚ました。
祐介とアルベリッヒの戦いが開始した頃、アルベリッヒのディメンジョンホールで飛
!
﹂
向いているのかもしれんな。それを考えてフィリスめ、わざと飛ばされる様な真似を⋮
﹁先程の台詞を聞く限り、貴様は精霊使いか⋮成る程、確かに俺の方がコイツの相手には
前を倒して私の手柄にしてくれよう
﹁さて、私の取り分がお前だけになってしまうが⋮まあ、良かろう。狐座の聖闘士よ、お
場合にそれぞれ飛ばした様だ。
すディメンジョンホールと呼ばれる技を使い、一夏と龍音にフィリスをカノン島の違う
アルベリッヒは異次元の精霊達に空間に大きな穴を開かせて相手を違う場所に飛ば
!
57
﹁いつつっ⋮まさか、いきなりこんな洞窟の中まで飛ばされるとは思ってなかったぜ⋮
後で覚えていろよ、アルベリッヒの野郎⋮皆とはぐれてしまったけど、今は合流より先
にこのアテナの瞳をカノン島の火口に放り込む事を優先すべきだな。俺が持っている
以上は俺が向かった方がいいだろうし、どのみち皆が火口に向かうんだから自ずと合流
出来るよな﹂
一夏は洞窟を抜けてカノン島の火口へ向かおうと洞窟の出口を探し始めた。一夏は
洞窟に流れる風を頼りに進んで行くと出口が見えてきたので、洞窟から出ようと駆け出
した瞬間だった。
何者かが自分に闇討ちしようとしてきたのに気付いた一夏はその相手の攻撃を咄嗟
に両腕を盾にして防ぐが、一夏の腕に装着されていた聖衣のパアームが鋭い刃で斬られ
たかの様な亀裂が入り、その聖衣の亀裂した箇所から一夏の血液が吹き出したので、今
の攻撃をまともに受けていたら自分の身体は真っ二つにされていたと思うと一夏は度
肝が冷えた気がした。
一夏に闇討ちを仕掛けてきた者は山羊座の聖衣を漆黒に染めたかの様な鎧を纏った
男だった。
んが使う技に有ったエクスカリバーみたいだ⋮﹂
﹁イテェな⋮下手すれば俺の身体が真っ二つに斬られていたな⋮まるでラインハルトさ
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
58
﹁そうだろ
纏っているプロテクターはラインハルトさん
それにしても、よく俺のブラックカリバーを受けたにも関わら
俺の腕は貴様が言う通り、山羊座の聖闘士のエクスカリバーと同じく研ぎ
すさまれた刃なのだ
お前は何者だ
ず、両腕が切断されていないとはな⋮﹂
ゴールドクロス
﹁ブラックカリバーだと
?
!
?
﹂
﹂
﹁いや、聖闘士だ
﹁暗黒聖闘士だと
ブラックセイント
ただし、聖闘士と言ってもアテナや聖域に従わない暗黒聖闘士だがな
確か⋮聖闘士としての力を正義の為じゃなくて、己の欲を満たす為
黒聖闘士の一人だと言うのか
﹂
﹂
俺は聖闘士の力を俺の為にだけ使う暗黒聖闘士だ
!
!!
闘士、差し詰めブラックカプリコーンという訳だ
﹁その通りだ
!
だった。
ン ハ ル ト と 同 じ 山 羊 座 の 暗黒聖衣 を 纏 っ た 暗 黒 聖 闘 士 で あ る ブ ラ ッ ク カ プ リ コ ー ン
ブラッククロス
ばれる者達の一人だった。しかも、一夏の前に現れたのは皮肉にも自分の師であるライ
一夏を襲った男の正体は聖闘士の力を己の欲を満たす為だけに使う暗黒聖闘士と呼
!
俺は山羊座の暗黒聖
だけに使う聖闘士の面汚しだとラインハルトさんから聞いた事が有る⋮お前がその暗
!?
?
!
!
の山羊座の黄金聖衣に似た感じはするけどよ、どう考えてもお前は聖闘士じゃないよな
?
59
﹁ブラックカプリコーンだと⋮ふざけるな
語るんじゃねえ
お前みたいな聖闘士の力を己の欲を満たす
それにだ、さっき俺は幻闘士として甦ったアルベリッヒって奴にこの
為だけに使う様な奴が紛い物と言えど、山羊座の聖衣を纏うっては山羊座の聖闘士だと
!!
﹂
!
その計画の一端として今は敢えてハイドルアに従
!
差し出させてもらうぞ
ついでに、そのペガサスの聖衣も俺が貰ってやる
﹂
うふりをしなければならん。その為にもペガサス、お前を倒してその首をハイドルアに
を倒して地上の支配者になるのだ
この紛い物の聖衣ではない、本物の聖衣を手に入れた後、俺達暗黒聖闘士がハイドルア
士が聖域にいる聖闘士を滅ぼした後、俺達暗黒聖闘士が聖域に残ったお前が言う通りの
い。俺を含めた暗黒聖闘士達はハイドルアに従うふりをして、ハイドルアが率いる幻闘
お前を待ち構えていた。だが、それは決してハイドルアの手下だからという訳ではな
﹁ふん。確かに俺はハイドルアという神に言われた通りにアルベリッヒが飛ばしてきた
ハイドルアって神の手下の筈だ
洞窟に飛ばされたんだ。ソコでお前がこの洞窟で待ち構えていた事を考えれば、お前も
!!
!
﹁ブラックカプリコーン
テメェが例え、山羊座の聖闘士の格好をしていても所詮は紛
紛い物と言えど山羊座の聖闘士の姿をしてるのが許せなかった。
が、その真意がやっぱり只の私利私欲だったので一夏は尚更、ブラックカプリコーンが
ブラックカプリコーンを含めた暗黒聖闘士達はハイドルアに従うふりをしてる様だ
!
!!
第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ!
60
い物
実力も黄金聖闘士には程遠い筈だ
!
﹂
!
ろう
光速のスピードはさすがに無理だが、それでも白銀聖闘士より
知った時には既にあの世に行ってるかもしれぬがな
﹂
所詮は青銅であるお前ごときが俺に勝てないという事を教えてや
!
to be next
勝てるのだろうか⋮
﹂
た。果たして、一夏は紛い物と言えど山羊座の聖衣を纏うこのブラックカプリコーンに
こうして、一夏と山羊座の暗黒聖闘士であるブラックカプリコーンとの戦いが始まっ
ブラックカプリコーン
!! !
!
﹁あの世に行くのはテメェの方だ
!
!
早く動けるからな
食われるぞペガサスよ
本物の山羊座の聖闘士には程遠い。だが、紛い物だからと言って油断してると足下を巣
﹁確かにこの山羊座の暗黒聖衣は所詮は山羊座の黄金聖衣を模造しただけの紛い物よ。
61
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ
ブラックセイント
コ
ス
モ
例え、紛い物と言えど山羊座の聖闘士を名乗る以上は様子見してる余裕は無いだろうと
セ イ ン ト
山羊座の暗黒聖闘士であるブラックカプリコーンとの戦う事になった一夏は相手が
!
判断し、最初から己の全力を出す事にした一夏はブラックカプリコーンに向けて小宇宙
﹂
を高めてペガサスの聖闘士の代名詞である技を放つ。
ペガサス流星拳
!
へ打ち上げた。
夏の懐に潜り込み、一夏の両脇を己の両足で引っ掛けるとそのまま一夏を勢いよく空中
星拳の一発一発をブラックカプリコーンは一夏を嘲笑うかの様に軽やかに避けると一
一夏が放つペガサス流星拳がブラックカプリコーンに向けて放たれるが、ペガサス流
﹁一気に決めてやる
!
﹂
﹂
教えてやろう、ペガサスよ。決定的な攻撃とはこういうものを言うのだ
!
!
ブラックレッグスロー
﹁なっ
!?
!
にしか見えぬ
に見えるのだろう。だが、俺にはこの一発一発全てがスローモーションで動いている様
﹁今のが流星拳か⋮確かにマッハ1で放つ拳の連撃は素人には拳から流星が放たれる様
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
62
一夏はブラックカプリコーンが放った技であるブラックレッグスローによって、空中
へ打ち上げられた事で洞窟の天井に背中を強打すると、そのまま地面へと落ちると腹部
に落下の衝撃が伝わり、そのダメージによってか一夏は口から吐血し、少し苦しみなが
らも何とか立ち上がり、ブラックカプリコーンを睨み付ける。
から出ねえといけないんだよ
﹂
?
﹂
﹂
!
先程、お前の放った流星拳は全て俺に見切られたのだぞ。それに闇雲に
?
斬り刻んでやるまでだ
﹂
だ。例え、お前が何を仕掛けようとも俺のブラックカリバーがお前の五体をバラバラに
突っ込んできても、ブラックレッグスローで再度投げ飛ばして天井にぶつけてやるだけ
﹁忘れたのか
事は承知の上さ。だから、俺はお前を倒してこの洞窟から脱出してやる
﹁思ってねえよ。ブラックカプリコーン、お前を倒さないとこの洞窟から出れないって
思っているのか
る事を俺に教えたのだぞ。それを知った以上、俺がここから無事にお前を出すとでも
?
!
﹁ふん⋮お前は今、俺に何を言ったか解っているのか
お前は自ら重要な物を持ってい
いしな。それに今回の任務で必要な物は俺が持っている以上は何が何でもこんな洞窟
﹁ああ。それが取り柄みてえなものでね⋮俺がここで諦めたら、他の皆に合わす顔が無
﹁ほう。今のを受けて立ち上がるとは⋮根性だけは有る様だな﹂
63
!
せ
ブラックカプリコーンは立ち上がった一夏に引導を渡す為に一夏が捉えきれないス
ピードで一気に一夏の後方へ回り込むと、右腕を一夏の首へ目掛けて振るった。
﹂
ブラックカリバーを避けた上に俺の背中を取るだと⋮﹂
﹁言っただろ。俺はお前を倒してこの洞窟から出てやるってな
!?
﹂
﹁これで終わらせてみせる
﹁ぐうぉぉぉっ
ペガサスローリングクラッシュ
﹂
!!
一夏は先程、ブラックカプリコーンのブラックレッグスローを受けた時、かつてのペ
!!?
!
ろでブラックカプリコーンを離すとブラックカプリコーンを地面へと叩き付けた。
るとそのまま空中に回転しながら飛び上がり、回転をし続けた状態で落下し始めたとこ
ブラックカプリコーンの背中を取った一夏はブラックカプリコーンを羽交い締めす
!
﹁何っ
ブラックカプリコーンの後方へ回り込んだ。
われた瞬間、一夏は紙一重でしゃがんでブラックカリバーを避けると今度は逆に自分が
ブラックカプリコーンの放つブラックカリバーが一夏の首に振るわれ当たるかと思
ブ
めてものの情けで苦しまずに死ねる様にこの右腕の一振りで終わらせてくれよう
!!
﹁ふざけるなよ、まだ終わってやる訳にはいかないんだ
﹂
﹁いくらしぶとくても、首を切り落とされたら何も出来ずに死ぬ。これで終わりだ
﹂
!
!!
ラックカリバー
!
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
64
ガサスの聖闘士だった者の記憶が突然流れ出してきてペガサスローリングクラッシュ
の存在を知り、この技を放つ為にブラックカプリコーンの背中を取り、この技を放った
のだ。
一夏が放ったペガサスローリングクラッシュの威力は地面に大きなクレーターが出
来る程、強力な威力だったので技を放った一夏自身が何より驚きを隠せない中、一夏は
俺は今のを喰らった程度でくたばる様な相手では無いぞ
さすがに今のを喰らえばブラックカプリコーンは倒れた筈と思い、洞窟の出口へ向かお
うとしたのだが⋮
今の一撃をまともに受けて、ぴんぴんしてやがるのか⋮﹂
﹁何 処 へ 行 く 気 だ ペ ガ サ ス
﹂
﹁なっ
した事は無い技だ
所詮はお前など、俺の敵では無かったという事だ
﹂
見せてやろう、
ブラックカリバーは小宇宙を少しでも高めて放て
ば、離れたところの相手も真っ二つに出来る。この様にな
小宇宙を上手く扱っての攻撃をな
!
大したダメージが入っていないのか、平然と立ち上がると一夏に向けてブラックによる
ブラックカプリコーンは一夏が放ったペガサスローリングクラッシュを受けたのに
!
!
!
強力だが、小宇宙が大した事無い以上は俺が高い小宇宙を使ってダメージを減らせば大
﹁残念ながら、お前より俺の小宇宙の方が遥かに上なのでな。お前の放った技は確かに
!?
!!
?
65
出口が⋮瓦礫で塞がっちまった
﹂
衝撃波を放ち、一夏はその衝撃波を何とか回避したが⋮
﹁しまった
!?
﹂
!
ブロンズセイント
ゴールドセイント
所 詮、青銅聖闘士 で あ る お 前 で は 俺 に 勝 て る 見 込 み は 無
﹂
俺は先程、自分の事を黄金聖闘士に劣る実力だと言ったが⋮あれはお前を
油断させる為の嘘だ。本当は俺のスピードは黄金聖闘士と同じく光速の速さなのだ
﹂
!
﹁だろうな⋮認めたくないけど、確かにお前の小宇宙は山羊座の黄金聖闘士だった俺の
﹁それにだ、俺は小宇宙も黄金聖闘士に劣らない程だ
に見えるので光速で動けるのは信じざるを得なかった。
窟を光速の速さで移動し、一夏から見るとブラックカプリコーンが光って移動してる様
ブラックカプリコーンは一夏に自分の言葉が嘘偽りではない事を伝えるかの様に洞
!
かったのだ
!
手じゃなかったっていうのか⋮﹂
コーンの強さは俺より数段⋮いや、桁違いの強さを持っている⋮最初から俺が勝てる相
﹁クッ⋮所詮は山羊座の聖闘士の紛い物に過ぎないと思っていた。けどブラックカプリ
窟を出られぬ運命だ⋮最も俺を倒すのは確実に無理だと思うがな
に逃げる事も出来なくなった。最早、お前は俺に倒されるか俺を倒すまで永遠とこの洞
﹁今のブラックカリバーを避けた事でこの洞窟の出口を塞いでしまった以上、お前は遂
洞窟の出口が衝撃波の余波で天井が崩れ、その瓦礫で塞がってしまったのだ。
!?
!
﹁今 更 気 付 い た か。そ う だ
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
66
師と同じに思える程の小宇宙を持っている様だな⋮同じに思える程の小宇宙
が⋮﹂
小宇宙
は潜在的なモノで全く同じ様な小宇宙は双子とかじゃない限りは無いと確か聞いた気
?
﹂
した
!
﹁さっきと比べれば、小宇宙が高まった様だな。だが、俺に決定的なダメージを与えるに
た。
押し出されるが、ブラックカプリコーンにダメージは無いに等しく一夏は唇を噛み締め
い切り小宇宙を込めた拳の一撃を与えると、ブラックカプリコーンはその衝撃で後ろに
誓った事を思い出すと、一夏は再び小宇宙を高めるとブラックカプリコーンの腹部に思
諦めかけていた一夏だったが、ラインハルトの意志を継いでこの任務をやり遂げると
!!
俺はラインハルトさんの意志を継いで、この任務をやり遂げないといけないんだ
てあり得ないしな。それにだ、今ので俺はまだ諦める訳にはいかないんだって再度認識
な。ってか、暗黒聖闘士であるお前がラインハルトさんと同じ小宇宙を持っているなん
確かにさっき思い切り身体を打ち付けられたんだし、俺の感覚が変になっただけかも
﹁いや、別に俺はそんなに弱ってはいないし⋮むしろ、まだまだやれるんだけど。まあ、
弱ってきている様だな﹂
﹁む っ ⋮ ど う や ら、ペ ガ サ ス。お 前 は 自 分 の 知 り 合 い と 俺 の 小 宇 宙 を 見 間 違 え る 程 に
67
までは相変わらず達していないがな
﹂
﹂
!
り、お前に無いモノとはセブンセンシズに目覚めていないという事なのだ
﹂
る訳だ。俺もそのセブンセンシズに目覚めているからこそ、光速で動けるのだ
!
つま
このセブンセンシズに目覚めているからこそ、高い小宇宙を扱い光速のスピードで戦え
﹁セブンセンシズは今言った様に小宇宙を司る第七の感覚の事だ。黄金聖闘士は全員が
﹁第七感セブンセンシズだって⋮﹂
司る第七感であるセブンセンシズに目覚めていないからだ
﹁俺に有ってお前に無いモノか⋮確かに存在するな。それはペガサス、お前が小宇宙を
て、俺に無いモノが有るっていうのかよ⋮﹂
﹁ちっきしょー⋮これでもまだ小宇宙が足りないのかよ⋮ブラックカプリコーンに有っ
!
!
﹂
!
﹂
﹁倒せるかもしれんな。最も、それはお前がセブンセンシズに目覚めた場合の話だがな
て事だよな
﹁セブンセンシズ⋮要するにだ、そのセブンセンシズに俺も目覚めればお前を倒せるっ
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
68
場合の話なので、どうすればセブンセンシズに目覚めるのかも解らない上に、そもそも
ないと考えたが⋮それはブラックカプリコーンの言う通り、セブンセンシズに目覚めた
一夏はセブンセンシズに目覚めさえすれば、ブラックカプリコーンに勝てるかもしれ
!
こんな土壇場でセブンセンシズに目覚める事が出来るのかさえも定かではないので、一
夏はセブンセンシズに目覚めなくてもブラックカプリコーンを倒せる方法を考えるが
思い付かず、闇雲に戦い続けるしかないのかと思った時、一夏は瓦礫で塞がった洞窟の
アイツに何をし
出口付近に誰かが倒れていた事に気付き、その倒れていた者の顔を見た一夏はブラック
何であそこに龍音が倒れているんだ
カプリコーンに向けて鋭い威圧感を放つ眼差しで睨みながら尋ねた。
﹂
﹁おい、ブラックカプリコーン
たんだ
?
﹂
あの女は俺と戦い、お前と同じ様に洞窟の外に出ようとしていたが俺に
﹁龍音が死ぬだと⋮﹂
敗れ、あの様だ。まだ生きてはいるが、あの様子だともうすぐで死ぬかもな
!
死んだ後は徐々に死体が腐敗しては腐肉を食らいに虫やら烏が寄ってくるかも
!
えただけで哀れ過ぎて思わず笑ってしまうな
何が愛と正義の為に戦う聖闘士だ
所
!
殺されるお前がな
﹂
詮、自分の力は自分の為にだけに使うべきだったと思い知る筈だ、あの女と今から俺に
!
ものよ。地上の愛と正義の為に戦う聖闘士の末路が畜生に生きる虫やら烏の餌よ。考
しれぬな。腐肉を食い尽くされた後は骨だけが残るのだろうな。そうなったら、惨めな
﹁ああ
!
敗れた雑魚だ
﹁あのドラゴンの聖闘士である女の事か⋮あの女はペガサス、お前が来る前に俺と戦い
!!
!!
69
!
一夏はブラックカプリコーンが龍音を追い詰めた上に、龍音と自分を含めた聖闘士の
生き様をバカにした事が許せなかった。一夏は怒りが込み上がってくるが、その怒りは
聖域で見せた師であるラインハルトの戦死の報せを聞いた時の様に我を失う様なモノ
では無く、自分の力を自分の為にだけに使うブラックカプリコーンに対して哀れむ様な
感じも含めた怒りだ。
その怒りは一夏を逆に冷静にし、一夏の中に眠る何かを目覚めさせるモノであった。
﹂
﹁ブラックカプリコーン⋮真に惨めなのはお前だぜ﹂
﹁どういう事だ
!
俺が惨めだと⋮俺の力を俺の為にだけに使う事の何処が惨めだと言うのだ
!?
俺達
!
間達と合わせる力、他者を守る為に戦う力こそが真の意味での力なんだ
それを知らな
聖闘士は地上の愛と正義の為に戦う為に自分達の力を使うんだ。同じ意志を持った仲
からな。自分の力を自分の為にだけに使う奴の力なんて真の意味の力じゃない
﹁知らねえなら教えてやるよ。耳の穴をかっぽじてよく聞いとけよ、一回しか言わねえ
?
﹂
もしれねえけど、俺は真に惨めなバカは自分の力を自分の為にだけにしか使う事が出来
﹁お前は俺と龍音を含めた聖闘士の生き様をバカにしたよな。確かにお前の言う通りか
?
ないお前の方だと思うぜ
﹂
﹁何 だ と
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
70
!
いお前なんかに俺は負ける訳にはいかないんだよ
思わせる動きをし、技を放つ為の構えを取る。
﹂
自分の小宇宙がどんどん高まっている事に気が付いた一夏はペガサスの星座の並びを
一夏は自分が信じる真の力というモノを語ると、一夏は自分の中で何かが目覚めると
!!
カプリコーン
お前なら、これが何なのか解るんじゃねえか
﹂
?
﹂
これでお前に引導を渡せるな、ブラックカプリコーン
ペガサス彗星拳
比べて軽くなった気がするぜ
これで決めてみせる
!!
!
た事を嬉しく思う様に笑みを浮かべると、自分の右拳に小宇宙を集中させ始めた。
ブラックカプリコーンは一夏がセブンセンシズに目覚め、強力な一撃を放つ様になっ
り、ブラックカプリコーンに向かっていた。
一撃を持つ拳だ。その拳は名前の通りに彗星の如く小宇宙を込めた拳が大きな塊とな
拳はバラバラの箇所に打たれていたペガサス流星拳を一ヶ所に集中させて放つ強力な
一夏はセブンセンシズに目覚め高まった小宇宙を全て込めて放った技、ペガサス彗星
!
!!
﹁これがセブンセンシズなのか⋮これが目覚めたからなのか、俺の身体もさっきまでと
えにたどり着いた事でセブンセンシズが目覚めた様だな⋮﹂
﹁これは間違いなくセブンセンシズ⋮ペガサス、お前が怒りを力に代え、お前が信じる答
!
﹁俺の中で何かが目覚め、俺の小宇宙がどんどん膨れ上がっていくのが解るかブラック
71
ま、まさか⋮あなたは本当に⋮﹂
﹁見事だ一夏よ⋮よくぞ、ここまで短期間で強くなったな﹂
﹁えっ
ルス
﹂
シャイニングインパ
︶が放ったのは山羊
砂煙が消えると、一夏はブラックカプリコーン︵ ︶に駆け寄ると彼の顔を確認しよ
煙が舞った。
シャイニングインパルスがペガサス彗星拳とぶつかり合うと威力が相殺し、洞窟内に砂
座 の ラ イ ン ハ ル ト の 使 う 技 で 最 も 強 力 な 技 で あ る シ ャ イ ニ ン グ イ ン パ ル ス だ っ た。
一夏が放つペガサス彗星拳に向けて、ブラックカプリコーン︵
!
?
全力の一撃に応え、俺も見せよう。本当のカプリコーンの力をな
﹁すまないな一夏⋮詳しい話は後でしてやる。お前がセブンセンシズに目覚め、放った
!?
!!
うとしたので、ブラックカプリコーン︵ ︶はマスクを取ると素顔を見せた。彼の素顔
?
と聞かされた山羊座の黄金聖闘士ラインハルトだったのだから。
﹁生きていたんですね、ラインハルトさん⋮﹂
﹂
を見た一夏は嬉しさの余りに震えが止まらなかった。何故なら、彼は間違いなく死んだ
?
確か
俺はラインハルトさんが戦死したって報せを聞いてもいまいち信じられなく
﹁ああ。そうだ、俺は生きている。俺がそんな簡単に死ぬ様な奴だと思っていたか
!
て⋮でも、遺体を確認したので信じざるを得なかったんですよ⋮それなのに何故
﹁いいえ
?
?
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
72
﹂
に遺体は聖域で見たんですけど⋮何か色々と複雑で解りませんけど、生きていたら何
故、聖域に戻って来なかったんですか
?
﹂
!
﹂
﹁そういう事だったのか⋮ラインハルトさん、本当にどういう事か説明してくださいよ
にやらせたんだと思う﹂
技をし続けたってところかな。多分、今の戦いの中でセブンセンシズを目覚めさせる為
なり倒れた演技をする様に頼み込んできたの。それで理由が解らない状態で倒れた演
ラインハルトが生きていると知った時は驚いたよ。驚いてる私にラインハルトがいき
﹁まあね。一夏が来る前に私がラインハルトと合流したんだ。私も死んだと思っていた
﹁龍音、無事だったんだな
がら立ち上がったので一夏は龍音が無事である事にホッとした。
ラインハルトが倒れていた龍音にそう呼び掛けると、倒れていた筈の龍音が屈伸しな
構わんぞ﹂
﹁それについては今から説明しようと思う。その前に龍音、倒れた演技はもうしなくて
73
て、セブンセンシズを目覚めさせる為とは言え一夏と戦う様な真似をしたのか、その理
ラインハルトは一夏と龍音に何故、自分が戦死した事になって暗黒聖闘士の格好をし
﹁ああ、そのつもりだ。龍音も一緒に聞いてくれ﹂
!
由となる話をし出した。
﹁事の始まりは1ヶ月前、お前がペガサスの聖闘士になった日に俺は教皇に命じられた
任務を受けアテナの瞳を捜索しに向かい、1週間が経った時にシベリアの奥に有る秘境
ファンタジスタ
にてアテナの瞳を発見し、任務を終えた俺が帰還しようとした時だった。俺に襲い掛
かってきた者が現れたのだ﹂
﹁その襲い掛かってきた奴って一体⋮﹂
﹁いきなり襲い掛かってきた者はハイドルアという神の戦士を語る幻 闘 士の一人、三つ
星幻闘士スルトのドゥークと名乗っていた男だ﹂
ラインハルトは任務を終えた時に幻闘士の一人であるドゥークという者と戦ってい
た事を語った。
なったのだと思わせる事に成功し、ドゥークはその場から姿を消した後、陸に上がった
落ちたのだが⋮俺はこれを利用し、海中に沈み姿を隠す事でドゥークに俺が海の藻屑に
ドゥークが追撃として放った炎を受けてしまった。俺はその衝撃で吹っ飛ばされ海に
け た が ⋮ 脚 が 火 傷 し て し ま い、俺 の 動 き が 鈍 っ た の を ド ゥ ー ク は 見 逃 す 筈 も 無 く、
その炎の壁から放射された炎に当たってしまい、小宇宙を使って致命的なダメージは避
クが放つ炎の壁によって防がれてしまい、ダメージを与える事は出来なかった上に俺は
﹁俺はドゥークを撃退する為にエクスカリバーによる衝撃波を飛ばしたのだが⋮ドゥー
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
74
俺はドゥークとの戦いで聞いた情報により、幻闘士と協力関係を結んだと知った俺は暗
黒聖闘士から情報を聞き出す為に、本物のブラックカプリコーンを倒して剥ぎ取った暗
黒聖衣を纏って暗黒聖闘士の中に内部潜入して情報を得る為に動く事にした﹂
ラインハルトはドゥークとの戦いの後、幻闘士の情報得るべく協力関係になったとい
う暗黒聖闘士に成り済ました事を語ると、次は自分が戦死したという偽りの報告を流す
事にした理由を語りだした。
の思惑通りにドゥークは俺が死んだと思わせる事に成功した。後は勝手に人形が海の
無くす事はないから出来た策な訳だ。人形が海に浮かんだ様子をドゥークが目撃し、俺
様にな。それに俺が念じさえすれば、黄金聖衣は直ぐに俺の前に戻ってくるから聖衣を
だ。小宇宙を溜め込んだ黄金聖衣を纏わせる事でよりリアルに俺の遺体と見間違える
加工も施した。その人間に俺は小宇宙を溜め込んだ黄金聖衣を纏わせて、海に放り込ん
ゴールドクロス
俺は俺そっくりに作り上げた人形に自分の血液を流し込み、血が固まらない様に特殊な
のチャンスを無にしてしまうと考え、俺は自分の死を偽造する事にした。その為にまず
きていて暗黒聖闘士の中に紛れ込んでいるのを感付かれたら、幻闘士の情報を得る唯一
当に死んだか確かめる為にドゥークは俺の遺体を探している事を知った。もし、俺が生
き出していると、ドゥークが俺が海に落ちた程度で死ぬのを不自然に思った様で俺が本
﹁俺は暗黒聖闘士の中に紛れ込んで十日が経った時に暗黒聖闘士から幻闘士の情報を聞
75
底に沈んでくれる事を祈っていたのだが⋮﹂
﹁白銀聖闘士︽シルバーセイント︾達がその人形が沈む前に見付けた事でラインハルトさ
んの遺体と思って回収してしまったってところですか⋮﹂
﹁ああ。味方にまで俺が死んだと思わせる必要は無かったからな⋮その人形を俺の遺体
と思って回収した白銀聖闘士達には本当に悪い事をしてしまったな⋮それに聖域の中
まで俺が死んだと思って混乱させてしまったに違いない⋮﹂
ラインハルトはどうやら偽りの死を偽造したのはドゥークの目を欺く為にやったの
だが、それが味方にまで伝わるとは思いもしなかった様でラインハルトは己の詰めが甘
かったのを悔いていた。
黄金聖闘士の名が泣くよ⋮﹂
?
﹁本当にそうですよ
あなたが戦死したと聞いた時は本当に怒りで頭の中がいっぱいで
怒りでいっぱいだったと龍音から聞いたからな⋮﹂
いう報告を聞いて一番辛かったのはお前だろう⋮俺が死んだと聞いた時には頭の中が
なってしまったのは申し訳無い。特に一夏には悪かったと思っている。俺が死んだと
﹁正 論 だ か ら グ ゥ の 音 も 出 な い な ⋮ 本 当 に 味 方 で あ る お 前 達 ま で を も 混 乱 さ せ る 事 に
﹁本当に何やってんの
ね⋮意外に詰めが甘いんですねラインハルトさんは⋮﹂
﹁じゃあ⋮ラインハルトさんは聖域にまで自分の偽りの死を広める気は無かったんです
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
76
!!
したよ
﹂
あなたが俺に詰めが甘いと言ってたクセにラインハルトさんも詰めが甘かっ
たんですから、俺の事を言えないじゃないですか
!
!
﹁だ か ら と 言 っ て、い く ら 何 で も 無 茶 苦 茶 で す よ
かったんじゃないですか⋮﹂
少しは連絡ぐらいしてくれてもよ
も利用するとんだ切れ者だと認識せざるを得なかった。
一夏と龍音はこの任務自体がラインハルトの仕組んだものだと思うと、自分の失敗を
されたみたいだね⋮﹂
﹁そういう事になるね⋮どうやら私達は最初から教皇とラインハルトの思惑通りに動か
﹁おい、もしかして教皇はラインハルトさんが生きていると知ってたって事か⋮﹂
音は互いに目を合わせて話す。
一夏と龍音はラインハルトが教皇に伝書鳩で作戦は伝えていた事を知ると、一夏と龍
にアテナの瞳も伝書鳩に運ばせてな﹂
と思っている状態をキープした状態でお前達にこの任務を受けさせる為に手紙と一緒
﹁連絡は一応、教皇に伝書鳩で俺の作戦を伝えておいた。敢えて、聖域にまで俺が死んだ
!
有ったのだ﹂
ら感じていた。その正体を探るべく俺はどうしても敵に俺を死んだと思わせる必要が
﹁本当にすまなかった。俺は聖闘士として地上に新たな脅威が現れつつ合った事は前か
77
﹂
ハイドルアの居場所を突き止める
﹁話を続けるぞ。俺は暗黒聖闘士に紛れ込み続けた結果、幻闘士を束ねる神ハイドルア
の居場所を突き止める事に成功した﹂
なんてさすがですよ、ラインハルトさん
﹂
﹁それは敵にとっても一番知られたくない情報の筈
﹁それでラインハルト。ハイドルアの居場所って
!?
ルの中に隠された異大陸ムー大陸の中に有る魔城アトランタの奥に有る王室だ﹂
﹁ああ。ハイドルアの居る場所は魔の三角地帯と呼ばれた海域バミューダトライアング
?
!
沈んだりしたって言う海域だったよな
﹂
﹁バミューダトライアングルって確か⋮ソコに入った飛行機や船が謎の現象でいきなり
?
いけないって難題続きね⋮﹂
﹁でも、さすがにそこまで行く方法も当然知っていますよね
?
﹁もしかして、その行く方法が問題なんですか
﹂
来た様だが、その顔は何処か気苦しそうに見えたので一夏はラインハルトに尋ねた。
ラインハルトはハイドルアがいる場所を知る事が出来た上に行く方法も知る事が出
﹁ああ⋮何とか行く方法だけは掴めた⋮﹂
﹂
た異大陸ムー大陸を見付け出した上にムー大陸に有る魔城アトランタも見付けないと
﹁そのバミューダトライアングルの中に入るのさえ難しいと思うのに、その中に隠され
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
78
?
﹁その通りだ。まずバミューダトライアングルが問題なのだ。バミューダトライアング
ルはその海域に入った飛行機や船が謎の現象の影響で沈む原因はバミューダトライア
ングルの中はハイドルアの力に満ちた危険地帯なのだ。ハイドルアが封印されて眠っ
ていた間でも、その力は強く残っていた為に何も知らずに入り込んだ飛行機や船をハイ
ドルアが自分の縄張りを荒らした存在と認識し沈めたのだろう⋮﹂
﹂
﹁このアテナの瞳を使ってアテナの加護を受けられる範囲を地上全体にする事がですか
る為にも今回のお前達の任務の成功が必須だ﹂
で動くに等しいのだ。まずはバミューダトライアングルの中で少しでも動ける様にな
とっては最悪の環境だ。分かりやすく言えば、常に俺達だけに有害な毒ガスが満ちた中
﹁そうだ。言わばバミューダトライアングルの中はハイドルアに敵対する俺達聖闘士に
もって事ですか⋮﹂
﹁つ ま り、俺 達 が 迂 闊 に バ ミ ュ ー ダ ト ラ イ ア ン グ ル に 飛 び 込 む と そ の 二 の 舞 と な る か
79
⋮﹂
ない今の状態では、最早アテナの瞳で常に加護を受けられる状態にするのが精一杯だ
ならアテナの血を受けた聖衣や宝具が有れば、完全な状態で動けるのだが⋮アテナがい
﹁アテナの加護を受けられる状態なら少しはまともに動けるかもしれないからな⋮本当
?
今の話を聞いて、バミューダトライアングルの中で少しでも動ける様になる為にも今
回の任務は絶対に成功させなければと一夏と龍音は強く決心した。
呼ばれる宝石を手に入れさえすればいい。ミラージュピースを一個でも持ってさえす
﹁続いて、ムー大陸に行く方法は一つ星幻闘士以上の幻闘士が持つミラージュピースと
れば、ムー大陸に続く道を知る事が出来る様だ。ただし、ミラージュピースは幻闘士が
何処に隠し持っているか解らないから、手に入れる為にはミラージュピースを壊さない
様に戦う必要が有る。それにだ、ムー大陸に有る魔城アトランタに入る条件はミラー
ジュピースを十五個所有した状態でないと入口である門が開かないらしい。その為に
幻闘士達も魔城アトランタに入れるのは幻闘士が集った時のみだ﹂
ラ イ ン ハ ル ト は ミ ラ ー ジ ュ ピ ー ス が 無 い と バ ミ ュ ー ダ ト ラ イ ア ン グ ル に 入 っ て も
ムー大陸は見付からない上、ムー大陸に着いてもハイドルアの居場所である魔城アトラ
ンタに入るには十五個もののミラージュピースが必要だというので、ハイドルアは一筋
縄ではいかない相手だと一夏と龍音は認識した。
﹁確かにハイドルアは一筋縄ではいかない。だからこそ、俺は自分の死を偽造して敵の
﹁本当に一筋縄ではいかない相手ね⋮さすがは神ってところかな﹂
か⋮しかもそれが十五個も必要なのか⋮﹂
﹁つまり、ミラージュピースを手にしないとまずハイドルアの居場所にさえ行けないの
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
80
目を欺き、それが味方も混乱させてしまったのは俺の失敗では合ったが、その失敗を逆
に利用してお前達をこのカノン島に呼び出した。幻闘士の一人であるアルベリッヒが
お前を俺の前に飛ばす様にしたのは敵側の作戦だったが、俺はそれを逆に利用した。そ
﹂
の上で俺は暗黒聖闘士の一人として一夏の前に立ちはだかり戦った。その甲斐有って、
一夏は俺との戦いでセブンセンシズに目覚める事が出来た﹂
﹁その戦いで万が一、一夏が死んでたら⋮どうしていたのか聞きたいかな
する為だけな訳ではない。アルベリッヒともう一人の幻闘士が持つミラージュピース
﹁俺はお前達を呼んだのはアテナの瞳を無事にカノン島の火山の火口に放り込める様に
る。
ハルトの思い通りの結果だが、まだやらねばならない事が有るのを一夏と龍音に告げ
い一夏と戦い、一夏をセブンセンシズに目覚めさせる事に成功した。ここまではライン
ラインハルトは敵側の作戦を逆に利用して一夏の前に現れ、暗黒聖闘士として振る舞
しい誤算だった﹂
の力の七割で放ったシャイニングインパルスを相殺させた程だったからな。これは嬉
﹁とにかく俺の期待以上に一夏は強くなった。セブンセンシズに目覚め放った一撃は俺
﹁笑えない冗談は止めてください⋮ラインハルトさん⋮﹂
﹁その時は⋮所詮はその程度の者だったと開き直って話を進めていたな⋮﹂
?
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﹂
を確実に奪い取る為にも俺はお前達を呼んだのだが、祐介とフィリスの二人もいるのだ
な
!!
た女のクローンだからなのか、聖闘士としての能力の高さは圧倒的かつ最強故に本気を
というよりは⋮ほぼそのままと言った方がいいのか⋮フィリスはその﹃天災﹄と呼ばれ
ゆるクローンだな。その生まれ故か、あの﹃天災﹄と呼ばれた女の血を濃く受け継いだ
達は知らぬだろうが、フィリスはある人物が自分のDNAを元に作り出した存在⋮いわ
は、聖闘士同士による模擬戦では本来の実力を敢えて出してないだけにすぎない⋮お前
﹁フ ィ リ ス は 白 銀 聖 闘 士 と 実 力 は 互 角 ⋮ そ れ は 大 き な 誤 解 だ。フ ィ リ ス は 聖 域 の 中 で
﹁何でだよラインハルトさん
龍音の言う通り、いくら何でも数が多かったら⋮﹂
て十人ものの暗黒聖闘士が相手じゃさすがに部が悪い筈だから助けに向かわないと⋮﹂
﹁じゃあ、フィリスを助けに行かないと⋮いくら白銀聖闘士と互角に渡り合えるからっ
くだが、フィリスは十人の暗黒聖闘士と戦っているな﹂
﹁多分、違うだろう。二人の幻闘士の他にも暗黒聖闘士が十人来ているからな⋮おそら
﹁まさかフィリスはそのもう一人の幻闘士と戦っているんじゃ⋮﹂
か解らない⋮﹂
﹁ええ。おそらく祐介は今もアルベリッヒと戦っていて、フィリスは何処に飛ばされた
?
﹁おそらく、大丈夫だろう﹂
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
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ま、まさかね⋮あの人がフィリスの産みの親な訳無いよね⋮﹂
出せば、暗黒聖闘士では役不足だ⋮﹂
﹁﹃天災﹄
﹁うるさい
﹂
まだ我ら二人が残っているのだぞ
ブラックギャロップ
喰らえ、ブラックユニコーンの一撃を
﹂
仕方無いや、イッチーとお揃いの技で決
!!
!
ブラックハンギング
君達程度じゃ僕には敵わないよ
﹁受けよ、ブラックベアーの剛力を
﹁失せなよ
!
!!
めるのも悪くないけど⋮敢えて、見よう見まねの技で決めようかな﹂
!
!
!
!
の集まりだった訳か⋮﹂
﹁噂に聞いた暗黒聖闘士⋮大した事無いね。所詮は力を己の為だけにしか使えない雑草
強さに驚愕しながらも同時に攻撃を仕掛けた。
聖闘士の内、八人が息絶えて倒れていた。残った二人の暗黒聖闘士はフィリスの圧倒的
一夏と龍音がラインハルトから話を聞いていた頃、フィリスの目の前では十人の暗黒
れた女に心当たりが有ったからだ。
出した存在だと聞いて驚いた。何故かというと、フィリスを作り出した﹃天災﹄と呼ば
一夏とはラインハルトからフィリスが﹃天災﹄と呼ばれた女が自分のDNAから作り
!?
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﹂
フィリスは二人の暗黒聖闘士の最後の抵抗となる技を避けると、小宇宙を高めて星々
ギャラクシアンエクスプロージョン
それは僕が天才の中の﹃天災﹄だからさ
﹂
しかも、他の黄金聖闘士の技す
!!
をも砕く最強の技を放つ。
﹁星々が砕ける様を見届けて散るといいよ
らも⋮﹂
﹁何故かって
﹂
﹁意味が全く解らぬぞ⋮グォォッーー
﹁この化け物がぁぁっ
﹂
!?
!!
﹁なのに何故、たかが青銅のお前がこの技を使えるのだ
﹁バカな⋮それは双子座ジェミニの聖闘士の最強技の筈⋮﹂
!!
かってアル何とかを潰す事にしようっと
イッチーは大丈夫かなぁ
ルーちゃんも心
?
!
ね。僕の居場所になったイッチー達のいる聖域に来れたのはあの女に置いてきぼりに
潰す様な行為だからやらないけどね⋮まあ、あの女には感謝してるところも有るけど
は憎くてぶっ殺してやりたいぐらいに大嫌いだけど、それは私怨だから聖闘士の信念を
配だしね⋮聖闘士の敵は僕の敵さ。僕を産み出しといては勝手にいなくなったあの女
!
その後にお稲荷の元に向
滅した。フィリスは暗黒聖闘士を倒し終えるとその場を後にした。
二人の暗黒聖闘士はフィリスの放った星をも砕く最強の技を受け、塵すら残さずに消
!!?
!!?
?
﹁さ て と、イ ッ チ ー と ル ー ち ゃ ん の 二 人 と 合 流 し よ う っ と
第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!
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されたところを教皇に引き取られたからだしね
みされながら⋮
それでも、あの女は見たら殴ってやり
を産み出した女と暮らした時の楽しかった記憶と突然、いなくなった女への怒りに板挟
そう言いながら、フィリスは一夏と龍音を探しに向かったのだった。その内面に自分
所詮はあの女の気まぐれなんだろうね⋮﹂
たいぐらいに大嫌いだけどね⋮あの頃の楽しかった記憶の出来事も僕が作られたのも
!