⼒学 第7回 剛体の⼒学(1) 担当: 明愛国,杉正夫 1 剛体とは ⼤きさと質量を持ち,形が不変な物体のこ とを剛体という 剛体は多質点系の一種として扱える ただし一般の多質点系では,質点同⼠の距離は 一定とは限らない(例:バネ結合系) 剛体の場合,任意の質点間の距離は不変 質点間距離が不変という拘束のため,数学的な 扱いが容易になる 2 剛体の⾃由度 ⾃由度 物体の位置・姿勢を記述するのに必要となる 変数の個数のこと 例:2次元平面内を運動する1個の質点の ⾃由度は2 ( の2つ.⼤きさがないので姿勢 は考えなくてよい) 例: 2次元平面内を運動する3個の質点の⾃由 度は 2×3=6 ( ) では,2次元平面内を運動する, 互いの距離が不変な3質点の⾃由度は? 3 2次元平面内を運動する 互いの距離が不変な 3点の⾃由度は 3 位置が2⾃由度と 回転が1⾃由度,右図) 「互いに距離不変」という拘束があるため, 前ページの「距離が可変な3質点」(6⾃由度) よりも⾃由度が⼩さくなる 一般に, 2次元平面内を運動する 「互いに距離不変な 点」(=剛体) の⾃由度は3 4 3次元空間を運動する質点の⾃由度 個の質点の⾃由度は 個の質点の⾃由度は 剛体(=互いに距離が不変な の⾃由度は 6 個の質点) 2次元平面内を運動する場合(前ページ)と同様に 「位置の⾃由度+回転の⾃由度」で表せる 位置の⾃由度:3 ( , , ) 回転の⾃由度(姿勢の⾃由度):3 3+3=6 2次元平面( 平面)内の運動の場合,回転軸の向き は必ず 軸と平⾏になるため,回転の⾃由度は1しか ないが,3次元空間の運動の場合,回転軸の向きは 3次元のベクトルになるため,回転の⾃由度は3 5 剛体のつり合い 1個の剛体に 個の外⼒が 働いて静止しているとする ⼒を ,その作用点を とする まず剛体は静止していて並進運動しないので, 全運動量 (第5回授業資料9ページ参照)は常に その時間微分 も常に = ∑ = , となり ←外⼒の総和はゼロ また剛体は回転もしていないので,全角運動量 (第5回資料12ページ参照)は常に ,その時間微分 (= ) も常に となり = ∑ ( × )= ←外⼒のモーメントの総和もゼロ 6 以上をまとめると,剛体が静止するため の外⼒のつり合いの条件は (1) (2) となる (1)式は位置に関する⼒のつり合いの式 (2)式は回転(=姿勢)に関する ⼒のモーメントのつり合いの式 (2)式は原点をどこに取っても必ず成り⽴つ 7 例題 P G 壁に⽴てかけた均一な細い棒 ⻑さ ,質量 壁は摩擦なし,床には摩擦あり ⼒のつり合い 上式を と 成分と Q を求める 成分に分ける. , 成分: 成分: O より, (3) よって (4) 8 ⼒のモーメントのつり合い どの点まわりに計算しても同じことだが, 点, 点, 点まわりに計算すると ベクトルを一つ無視できるので 計算が楽になる 例えば 点まわりだと の項は無視できて P G O (5) となる # # Q # , , , より(5)式は (6) となる 9 P 前ページ(6)式から G (7) O となる.(7)式と(3)式から Q (8) (4)式,(7)式,(8)式をまとめると $ となる. 10 ⼒のモーメントのつり合い (G点まわり) P 先ほどの(5)式では,⼒のモーメントを 点まわりで計算したが,どの点まわりでも 同じになる.例えば 点まわりで計算すると の項が無視できて O (5)’ # # また(4)式より # # , # , , ,よって (5)’式は # Q , # となる.ここで(3)式から G (6)’ を上式に代入すると となり,これは (7) 式と一致. 11 連続体の剛体 前回授業や今回の授業の7ページ目までで扱ってき たのは,いずれも質点から成る 質点:質量はあるが,⼤きさはゼロであるような物体 現実の物体はゼロではない⼤きさを持ち,質量は 連続的に分布している 先ほどの例題の「均一な棒」の場合,⻑さが 線密度(単位⻑さあたりの質量)が で, 上記の「均一な棒」のように⼤きさを持つ物体の ことを,連続体という 以下では,連続体の剛体 を扱う 連続体なので,質量があり⼤きさもある 剛体なので,変形(伸縮やたわみ)は発生しない 12 連続体の重心 多質点系の重心の定義 →第5回講義資料参照 各質点の質量 ,位置 重心の座標 ∑% ∑% % % % に対して ∑% % % & 連続体の重心も同様に求められる 質量 の連続体を多数の微⼩な質量要素 に分解し,多質点系の定義式を適用する 重心の座標 ∑% % ' % ∑% ' % ∑% % ' % & ここから先は具体的な例で説明する (9) 13 1次元の細⻑い棒の場合 (密度は均一に限定しない) Δ+ 棒に沿って座標を取る 密度 とすると, 0 Δ 微⼩要素の質量 は と書ける. 上式より棒全体の質量 ( は ( =, ⋅Δ ' となる.上式を の極限値を取ると, これは積分の定義そのもので, となる. ( 14 よって13ページ(9)式において,分⺟の Δ+ = , は に 置き換えられる. 0 (9)式の分子 は, Δ 棒に沿って座標を取っているので ⋅Δ となる.後は先ほどと同様に考えると, は に置換えられる. ( 以上により,13ページ(9)式の連続体の重心位 置 は,1次元の細⻑い棒の場合 ∫ ⋅/ ∫/ ∫ ⋅/ &01 となる. 15 連続体が細⻑い棒(1次元)ではなく 薄い板(2次元)の場合 密度 とすると, 微⼩要素の質量 は となり,板全体の質量 ( は ( ' ' となる. 赤い文字の部分が14ページとの相違点 最終的に重心の座標 は ∬ /( , ) ∬ /( , ) &31 &31 となる. 16 連続体が3次元物体の場合 密度 とすると,微⼩要素の質 量 は となり, 全体の質量 ( は ( '4 ' ' となる. 4 赤い文字の部分が16ページとの相違 重心の座標 4 は ∭ /( , ,4) 4 ∭ /( , ,4) 4 ∭ 4/( , ,4) &61 &61 &61 となる. 4 17 例題 A 底辺 ,高さ ,質量 で 密度が均一な⼆等辺三角形の O 重心座標を求める. 密度を とすると, 16ページの結果から,重心の座標は ∬ /( , ) & ∬ /( , ) & ∬ B ∬ 78 78 となるはず. ここで積分範囲が問題となる. 18 線分 線分 線分 と線分 の式は 8 7 $8 7 : : =< = = ; 7 ; A O この と が の 積分範囲の両端となる. 従って積分範囲は以下の通り. 7 > < ? B −> < ? @ 8 7 $8 7 8 7 $8 7 19 A から計算していく. O 7 ; 7 ; 7 ; 8 7 B $8 7 A8 7 $8 7 7 ; 20 A 次に を計算. 7 ; 7 ; 重心 ↓ O 8 7 B $8 7 A8 7 7 $8 7 ; 以上により,⼆等辺三角形の重心の座標 は 7 となる. 21 =< = 備考 > < ? 先ほどの解法では, O 微⼩質量要素を 右図の台形領域で表し, この台形を⻑⽅形に近似して @ 解を求めている. この近似には誤差があるが,台形の高さ が充分に⼩さければ誤差は無視できる = A B −> < ? 8 7 で, ⻑⽅形近似による面積の誤差は 微⼩量 の2乗の⼤きさとなる.一般に微⼩量 の 乗の形の誤差は無視できる. 22 =< 例題の別解 = 剛体の形状に対称性がある 場合,対称性を利用して より簡単に重心位置を 計算できる. > < ? A O B = −> < ? @ まず上下の対称性から, は⾃明. 次に の計算は,「右に⾏くほど密度の高くなっ ている1次元の棒」と⾒なせばよい.つまり15 ページの結果 を代入して, 7 & ; ∫ ⋅/C & & 73 8 7 に, & 73 7 73 ; 23 別解の備考 一般に軸対称性を持つ図形の重心座標は, 対称軸と垂直な面での断面を考えると, 比較的容易に解を求めることができる. 軸対称性を持つ図形: 半球,球,円錐,正n角錐, 円柱,正n角柱など 24 例題 トラス構造 直線材をボルトやピンで結合し, 多数の三角形を形成する構造 軽く変形しにくいため, 様々な構造物(例えば橋など)で用いられる このトラス構造に働く⼒を考える 簡単のため,以下ではトラス構造の 三角形を1つだけ考えて, 各頂点にどのような⼒が 加わるか考える 25 K 1個の⼆等辺三角形 底角 各辺の直線材の重さは無視 加わる⼒ M M M M M M L 頂点 に荷重 が加わるとする 頂点 ,頂点 における垂直抗⼒を とする L ⼒のつり合い 点鉛直⽅向: 点鉛直⽅向: 点水平⽅向: 以上から D EFG H D IJG H D 26
© Copyright 2025 ExpyDoc