何がデジタルリーダーを作るのか – 経営幹部の視点 レポート作成:Economist Intelligence Unit アジア太平洋地域 戦略とモバイルへの重点化 アジア太 平 洋 地 域 に はオーストラリアのような アジア太平洋地域の調査回答者はその他地域の 成熟国、新興大国である中国・インドから発展途上国 企業よりも「サイロ状態」ではないと回答した割合が まで、様々な経済発展段階の国が存在しています。 高かったものの、同地域の主要企業の状況はほぼ また、 これらの市場で活動する企業もFortune スポンサー 500 全体と変わりませんでした。同地域におけるデジタル 企業から急成長ベンチャー企業まで様々です。CSCが リーダー(すべての主要機能が完全にデジタル化され スポンサーとなってEconomist Intelligence Unit ている)の割合は8%であり、全体の回答者中の割合と がこのほど実施したデジタル・事業戦略調査では、 完全に一致していました。 オーストラリア、中国、インド、シンガポールの企業 とは いえ、同 地 域で デジタルリーダ ー が 生まれ から147名の回答者を得ており、事業成長のために は じ め て い る の は 事 実 で しょう 。G o o g l e の モ バ イル テクノロジ ー の 導 入 を 進 める同 地 域 の South East Asia & India地域担当Vice President & トレンドが明らかとなりました。 Managing DirectorのRajan Anandan氏によれば、 何がデジタルリーダーを作るのか – 経営幹部の視点 アジア太平洋地域 アジア太平洋地域の若い企業はレガシーシステムの その他地域、特に欧州地域の企業と比べてモバイル 制約がないこと、世界で最もデジタルやモバイルに テクノロジーの利用を拡大すると答えた割合が高く、 親しん だ 顧 客 に 対 応 する 必 要 が あることから、 例えばスマートフォンの利用を拡大するとした回答 い き なり歴 史 ある 企 業 に 伍 するような デ ジタル 者は欧州企業の56%に対してアジア太平洋地域では テクノロジーを導入しはじめていると指摘しています。 61%でした。中国やインドではすでにモバイルへの 事業目標にとって重要なIT 依 存 度 が か なり高 いことを考えれ ば、これ は 特 筆 全体ではIT戦略の推進者を「CEO」、 「CIO」 とする 回答がほぼ同数となっていましたが、アジア太平洋 地域のエグゼクティブでは「CIO」よりも「CEO」を 挙げる割合が高くなっていました(35 % 対4 0 %)。 また、I T が「事 業目標を達 成 するた め に不 可 欠 な パートナー」であると答えた割合は同地域の方が高く (32%対25%)、おそらくCEOが直接責任を負ってい る割合が多少高いことと関係しているものと思われ ます。しかしながらデジタルテクノロジーを戦略的 視点ではなく運営上の視点から捉えているという点 ではアジア太平洋地域のエグゼクティブと全体の エグゼクティブの間にほとんど差はなく、デジタル化 の主たる目標は「効率化」となっていました(アジア 太平洋地域で53%に対し全体が54%)。 また、デジタル化の度合いや情報共有の効果に ついても回答割合はほぼ同じでした。 モバイルへの投資を優先 アジア太平洋地域ではすべての回答者が現時点で ある程度スマートフォンとPCを使用しているとして おり、 この点でもその他地域と同じ結果となりました。 しかし興味深いことに、アジア太平洋地域の企業は すべき数字です。事実これらの国では、現時点ですで にモビリティとモバイルアプリケーションは生産性 強化と顧客インターフェース改善において中心的な 役割を担っています。 世 界 的 に 急 成 長 を 遂 げ て い る もう ひ と つ の テクノロジーであるクラウドコンピューティングに関 しては、 アジア太平洋地域の企業は特にプライベート クラウド、ハイブリッドクラウドへの移行において その他地域企業の後塵を拝しています(前者は北米 企業の73%に対して55%、後者は欧州企業の92%に 対して81%)。パブリッククラウドについては同地域 エグゼクティブの8 6 % が現在活用しているとして おり、半数以上が今後3年間での利用拡大を計画して いることから他地域よりもわずかにリードしています。 なお、興味深いことに、サイバーセキュリティ対策に ついてはアジア太平洋地域で現在活用中とした企業 はわずか35%、今後利用を開始するとした企業も22% と世界全体の41%よりもかなり少なくなっています。 今後必要となるITスキルとしてアジア太平洋地域 のエグゼクティブが選択した項目には、モバイルを 重視する同地域の傾向が反映されています。ビッグ デ ータの 有 効 活 用( 4 4 % )、モ バ イルワーク推 進 インテグレーション、デジタル化、共有 (数字は主要機能がある程度 / 完全に統合 / デジタル化されている、情報共有がある程度 / 非常に効果的に 行われていると答えた回答者の割合) グローバルインテグレーション アジア太平洋 その他地域 33 20 デジタル化 アジア太平洋 35 その他地域 35 情報共有 アジア太平洋 その他地域 小数点以下の四捨五入、「分からない」の回答除外により、 上記を合計しても100%になりません。 2 © The Economist Intelligence Unit Limited 2016 31 30 出典:Economist Intelligence Unit(2016年) 何がデジタルリーダーを作るのか – 経営幹部の視点 アジア太平洋地域 優先順位 今後ITに求められる機能 アジア 太平洋 (数字は回答の割合) その他地域 ビッグデータとアナリティクスの管理 モビリティ アプリケーションモダナイゼーション 新たなソフトウェア開発プラットフォームの活用 サイバーセキュリティ コラボレーション 新たなハードウェアプラットフォームの管理 ベンダー管理 IT業務とソフトウェア開発の統合 ベンダー管理 0 小数点以下の四捨五入、「分からない」の回答除外により、 上記を合計しても100%になりません。 ( 4 0 % )、アプリケ ー ション モ ダ ナイ ゼ ー ション (3 6 %)に関する能力が必要とされている一方で、 コラボレーションに関する能力が必要になると答えた のはわずか30%程度でした。 予算に制約でもIT能力に自信 全体の結果と同様、アジア太平洋地域のエグゼク ティブもITによる目的達成に向けた最大の障壁として 「予算の制約」 (40%)を挙げています。また人材不足 (28%)、既存のIT業務にリソースが取られていること (27%)も上位に挙がっています。ただし既存IT業務 に関する懸念はその他地域ほど強くないため、IT部門 内で優先項目が変動しても柔軟に対応できる傾向が あることが示唆されます。 予算に関する懸念については、他の地域の企業に 比べて今後3年間のIT投資額が「ほぼ変わらない」 と 予想しているエグゼクティブが多い(例えば北米の 23%に対して35%) ことからも裏付けられます。 とは いえ、アジア太平洋地域のエグゼクティブもその他 地域の企業と同様、今後数年間のITによる事業戦略 サポートについてはかなりの自信を持っています。 3 © The Economist Intelligence Unit Limited 2016 10 20 30 40 50 出典:Economist Intelligence Unit(2016年) 完全なデジタル化へ 1 47 名のアジア太平洋地域回答者のうち自社を デ ジタルリーダ ーと認 識してい た の は わ ず か 1 2 名ではありましたが、G o o g l e のA n a n d a n 氏は、 同地域の多くの新興・小規模企業はそもそもはじめ からデジタル企業だと指摘しています。 「彼らは実際 デ ス クトップ を 持って お ら ず、最 初 か ら 純 粋 に モバイル化されています。こうした企業の大部分は クラウドファーストの企業でもあります。」 デ ジ タ ル テ クノ ロ ジ ー の 効 率 性 、拡 張 性 、 モ ビ リ ティ に 支 えら れ た こ れ ら 企 業 は か な り フ ラ ット な 組 織 構 造 と コ ラ ボ レ ー シ ョ ン プ ラ ット フ ォ ー ム を 導 入 し て お り 、こ の 点 に つ い て は 本 調 査 の 回 答 企 業 よりも 優 れ て い る 可 能 性 が ありま す。A n a n d a n 氏 は 次 のように 述べています。 「事実、大きな意思決定であっても コラボレーションプラットフォームを活用すれば実に 迅速に行うことができます。Googleのような比較的 新しいテクノロジー企業が特別なのは、誰が誰に話し かけてもよいフラットな管理スタイルのなかに、 こうし What 何がデジタルリーダーを作るのか makes digital leaders: A full C-suite – 経営幹部の視点 perspective アジア太平洋地域 Asia-Pacific たテクノロジーの詰まったコラボレーションプラット 現在のようにモバイルテクノロジーや各種機能に フォー ムを 導 入しているからで す。ス ピ ード 感 が 注力するのみならずコラボレーションやグローバル 段違いですから。」 インテグレ ーションを 重 視 することでより大 きな “Anandan氏の言葉は、アジア太平洋地域の企業 が将来デジタルリーダーへと変容していくなかで、 アドバンテージを得ることができることを示唆して います。 本調査について 「何がデジタルリーダーを作るのか - 経営幹部の 視点」と題した本調査は、 「デジタルテクノロジーと 戦略的成功の関連性」、 「 現時点でのIT投資状況」、 「 企 業 による デ ジタ ル テクノロ ジ ー 推 進 計 画 の 状況」を考察するためにC S C がスポンサーとなり Economist Intelligence Unitが実施した調査で す。本レポートの内容は、様々な業種・地域の企業 レポートはこちらからご覧頂けます。 また、本レポート作成にあたって貴重なご意見を いただいたRajan Anandan氏(GoogleのSouth East Asia & India地域担当Vice President & Managing Directorの)に感謝申し上げます。 本レポートはScott Leffが執筆し、Josselyn Simpsonが編集しました。 のCIO、シニアエグゼクティブ514名から得られた 表紙:Shutterstock アンケート回答に基づ いています。本調査全体の 4 本レポートの正確性については万全を期しておりますが、本書に記載されている情報、見解、結論に依拠してなされた意思決定・行動などに ついてEconomist Intelligence Unit Ltd.および本レポートのスポンサーは一切責任を負いません。 © The Economist Intelligence Unit Limited 2016
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