No. 13 昭和50年 9 月 水 産 庁 北海道区水産研究所 北海道余市郡余市町 浜中町238 番地 電話( 01352) 3 -3141---3144 郵便番号】 046 いることを知られての御質問で あったが、残念ながら、そのこ とばについては、その時知らな かったので、お答えできなかっ た。 帰ってからいろいろ調べて見 て、 「ヤヤンコンブ」 とは、や はりアイヌ語で「役立たずコン ブ」という意味であることを知 った。 その後」日知の服部部長から、 北海道の海産動植物でアイヌ語 の名前のものを「北水研ニュー ス」誌上に紹介してほしいと御 依頼を受けたので、知っている 範囲内の 2. 3 について北海道 ※養殖ホタテガイの付着物除去(長万部町) の地名と関連づけて御紹介して みたい。 * 北海道の主な海産動植物 のアイヌ語名について * * * * まず、 「コンブ」。このことばが、アイヌ語の 「コ ンプ」から来ているこ.とを知っている人は、案外少な いのではないだろうか。 (もっとも、逆に、「昆布」と いう和語がアイヌ語に入ったのではないかという説も 森 宏太郎 あるが。) 農林省食品流通局審議官 (前北海道開発局次長) ところで、 「昆布」 の名がついた地名が北海道の海 岸地方の各地にある。 先ほど、北水研にでかけたとき、長谷川所長と雑談 を交しているうち、海藻の専門家であられる所長から、 「ヤヤンコンブ」 はアイヌ語だが、あなたは知って いるかとの御質問を受けた。小生がアイヌ語に凝って や「盛」は(湾)を意味するアイヌ語の「モイ」がな まったもので、このふたつの地名はいずれも(昆布湾) 北水研日誌 4頁 1頁‘ 人事移動 4 2 編集後記 4 北海道の主な海産動植物 昭和49年度に完了した主な研究の概要 ‘ (もり)」 (根室市の字名)などである。語尾の「森」 次 ◆ ◆ 目 のアイヌ語名について たとえば、 「昆布森」 (釧路村の字名)、 「昆布盛 ※ 北海道沿岸では昭和42-43年頃からホタテガイの養殖が盛んになリ、昭和49年には生産量は 2 万トンを越え、北海道におけ るホタテガイ水揚量の60%を占めるようになつています。生産量の増加にともない価額の上昇が思わしくない等の問題点が出 ています。また、天然物に比べると、いろいろな種類の付着物が多く、放置すると生長が著しく悪くなるので、これを除去す す必要があリます。 ふんべ)」 (「フンべ」 は(鯨)のこと)、 「沼前「 ということである。 のなまい)」 (「ナ・オマイ」すなわち、 (うにの 次に、海産動植物の名まえで、アイヌ語のものでは、 いるところの意)などがある。 サケ(鮭)、ラッコ(猟虎)、ホッキ(貝)などがあ また、小樽市の「高島」も「トツかj ・ショ」 (あ る。 ざらし岩)から来たという説があるが、これは多少こ 「サケ」は、アイヌ語「サク」 (夏)から来ており じつけの感じがする。 この魚の名はほんらい(夏の食べ物)ということなの 最後に北水研が所在している「余市」町の名の由来 である。 だが、これは「イ・オチ」から来たというのが定説で、 次に、 「ラッコ」の名がついた地名には、十勝の広 尾町の「楽古川」がある。この川に「ラッコ」が入つ 「イ」は(それ)という代名詞で、神聖なもの、すな て来たからであろう。 わち、 「魚」、 「鮭」、 「熊」、 「蛇」など、アイヌ 人が神の化神と見たものを指す。 「余市」の場合の「 また、 「ホッギ貝」は、 「北寄貝」などとあて字で 書かれているが、 本来は、アイヌ語「ポク」から来 イ」は(蛇)のことを指すといわれているが、 「余市 たことばである。 室蘭に「母恋(ぼこい)」というところがあるが、 川」が(蛇の多い川)というのはどうもうなずけない。 (「オチ」はたくさんいるという意味)むしろ、こ の場合の「イ」は「魚」あるいは「鮭」のことを指す この地名は「ポク・オ・イ」からきたといわれており、 「オ・イ」は(たくさんいるところ切意味)そこには と見た方が自然ではないかと思う。というのは、余市 「ほっき貝」が多く生棲していたからであろう。 には北水研の,すぐ前を流れている「ヌッチ」川がある がこの川の名は「ヌ‘オチ」 (獲物が沢山いる川) そのほか、アイヌ語の海産動植物の名で、北海道の ( 「ヌ」は(獲物)すなわち「魚」の意)から来ている 地名になっているものめ 2 ・ 3 を紹介しょう。 からである。 まず、かつては北海道の代表的な魚の「にしん」。・ 「にしん」はアイヌ語で「へロ寿」といい、積丹半島 の西側の泊村に「ヘロカルシ」というところがあるが、 、 これは「ヘロギ・カル・ウシ」 (にしんをいつもとる m “トlmIIH 器制器詐帽川H聞洞器詐{廿冊{器制器制器洞器制留制盟作 帽冊, ところの意味)がなまったものである。また、積丹半 昭和49 年度に完了し た主な研究の概要 島の東側の古平町にも、 「群来村」という所があるが、 この地名も、もとは「ヘロカルシ」といっていたとこ {盟洞開洞盟判器洞器制器阿器阿器洞器洞器洞器洞盟洞盟洞器阿盟’ ろで、にしんが沢中群来てきたところで、 「くき」の 音が「ヘロキ」に通ずるところから、このような名が 1 つけられたといわれている。 浅海域における増養殖漁場の開発に関する総合研 究ーサロマ湖・オホーツク海沿岸のホタテガイ漁 「ヘロカルシ」という地名は道内のほかの土地にも 場の開発に関する研究一(別枠45- ある。なお、 「積丹半島」はむかし、にしんが沢山来 たので夏に部落ができたところだったので「サク‘コ 49) 研究の目的】北海道沿岸海域の代表的な生産物であ るホタテガイを対象に、その資源の荒廃状態を増殖技 タン」 (夏の部落)という名がついたのであろう。 術の積極的な運用によって往時を上回る水準にまで回 さて、北海道の地名で、海の魚の名にゆかりがある 地名として、 「長万部」をあげることができる。 「お 復させることを目標にして、別枠研究の一環を形成す しゃまんべ」とは、アイヌ語の「オ・サマンぺ」から るにふさわしい北海道地域の課題として設定した。 来ているが、 「オ」 は 「川口」、 「サマンぺ」 は 「蝶」 研究のねらい】ホタテガィ養殖の進展に着目し、養 のことだから、この地名は、長万部川が(川ロに「蝶」 殖生産過程において年々拡大的に採苗されている種苗 をさらに増殖のための放流種苗として+分な形質を具 が集まっている川)だったからであろう。 なお、この「サマンぺ」とは、 (横たわるもの)の 備するまで効率よく育成する方法の開発と、この育成 意味から来ている。蝶は、横たわっている魚だからだ 種苗を放流して漁獲対象資源を地先漁場に効果的に培 ろう。 (長万部川の名の由来については、この川が( 養する方法の開発をねらいとした。 川ロで海に横になった形でついている川)だからとい 研究協力体制【北海道立網走、稚内、函館水試のホ タテガイ漁場に関する研究蓄積と水産庁東北区、東海 う他の説もあるが。) 区水研の増殖研究手法と水産庁漁船研究室の漁場工船 そのほか、海産動植物の名にちなむ地名としては、 「厚岸」 (「アッケシ・イ」一、すなわち、 (かきのい 技術を動員するように、当所の増殖部、海洋部を中心 るところの意)、 「江部乙」や「湧別」 ( ユべ’オ にこれら機関の機能を有機的に関連づけて研究組織を ツ」、すなわち蝶鮫のいるところの意)、 「奮部( 編成した。 2
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