2016年の株式市場の回顧と 2017年の展望

2017年1月4日
日興アセットマネジメント株式会社
2016年の株式市場の回顧と
2017年の展望
●2016年の世界の株式市場の振り返り
<2016年の世界株式の推移と主な出来事>
120
110
(2016年1月1日~2016年12月30日)
160
欧州中銀、資産買入れの期限 米国、1年ぶり
世界株式:MSCI ACワールド指数
の利上げを
延長と規模縮小を決定(12/8)
(米ドル・ベース、左軸)
2015年末=100として指数化
決定(12/14)
英国民投票の結果、
OPEC、減産で
150
EU離脱支持が
基本合意(9/28)
欧州中銀、包括的な追加
105.63
過半数に(6/24)
金融緩和を決定(3/10)
100
米GDP、2年ぶりの
高い伸び(10/28)
主要産油国による
一部産油国、 増産凍結協議、 中国の4-6月期
米大統領選挙
90
生産量凍結で 結論を持ち越し GDP、減速を
でトランプ氏の OPEC、減産
免れる(7/15)
基本合意(2/16)
勝利が確定
で最終合意
(4/17)
120.37
(11/9)
(11/30)
米原油先物、03年
80
以来の安値(2/11)
ご参考:円相場(対米ドル、右軸)
日銀、物価目標の達成
日銀、
70
時期を先送り(11/1)
マイナス金利
の導入を決定
安倍首相、
消費税率引き上げ
(1/29)
60
の先送りを正式 参院選で連立与党が
日銀、長短金利操作付き
大勝、大型経済対策
量的・質的金融緩和の
に表明(6/1)
などへの期待が高まる
導入を決定(9/21)
50
(7/10)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
140
(円)
130
120
円
安
116.81
110
100
円
高
90
12 (月)
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
以下では、MSCI ACワールド指数(米ドル・ベース)を中心として、世界の株式市場の1年を振り返ります。
 上半期
株価は、原油安や米・中の経済指標が予想を下回ったことなどを受け、2月前半まで下落基調となったもの、生産量の
凍結に向けた動きなどを背景に原油価格が持ち直したほか、米利上げ観測が後退したことなどから、春には年初の下
げを解消しました。その後、一進一退となったものの、6月下旬に英国の国民投票でEU(欧州連合)離脱が選択される
と、欧州経済の先行き懸念などから大きく下振れする場面もありました。ただし、市場の動揺はごく短期で収まりました。
 下半期
英国のEU離脱選択を受け、世界的に景気対策などへの期待が台頭したほか、米国の雇用が大きく伸びたことなどを
背景に、同国経済への楽観が拡がったことなどから、株価は夏場に上昇基調となりました。しかし、その後、米FRB(連
邦準備制度理事会)関係者から、利上げに積極的な発言と慎重な発言が繰り返されるようになったことなどから、高値
圏での揉み合いとなりました。さらに、10月から11月初めにかけては、米利上げ観測の強まりや、中国の輸出の落ち
込みに伴なう世界経済への不安の再燃、産油国の減産協議の難航に伴なう原油安、米大統領選挙を控えての不透
明感などを背景に、株価は軟調に推移しました。しかし、トランプ氏が米大統領選挙を制すると、同氏の掲げる財政拡
張策などへの期待が高まったほか、欧米で長期金利が上昇し、収益環境の改善期待から金融株が買われたことなど
もあり、株価は上昇傾向となりました。さらに、11月末にOPEC(石油輸出国機構)が減産で最終合意し、原油価格が
大きく上昇すると、株価も一段と上昇し、12月前半に年初来高値をつけました。
MSCI ACワールド指数(米ドル・ベース)の年間騰落率は+5.6%と、2年ぶりの上昇となりました。
(2010年:+10.4%→2011年:▲9.4%→2012年:+13.4%→2013年:+20.3%→2014年:+2.1%→2015年:▲4.3% )
MSCI ACワールド指数に関する著作権、知的財産権その他一切の権利は、MSCI Inc.に帰属します。
※上記グラフ、データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。
■ 当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料では
ありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のもので
あり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
■ 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。
したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、
投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
1/7
<地域・規模・スタイル別の2016年の騰落率>
0
3
6
9
小型株
12
(%)
9.8
バリュー株
9.5
新興国株式
8.6
大型株
5.7
世界株式
5.6
中型株
5.3
先進国株式
5.3
成長株
1.8
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
<セクター(世界産業分類基準の10セクター)別の2016年の騰落率>
-15
-10
-5
0
5
10
15
25
30
(%)
23.9
エネルギー
素材
21.2
10.8
情報技術
9.8
資本財・サービス
9.3
金融
5.6
ご参考:世界株式
2.6
公益事業
電気通信サービス
1.8
1.2
一般消費財・サービス
生活必需品
ヘルスケア
20
-0.5
-8.3
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
※ 世界株式:MSCI ACワールド指数、先進国株式:MSCIワールド指数、新興国株式:MSCIエマージング・マーケット指数、
その他の指数:MSCI ACワールド指数を構成するサブ指数(いずれも米ドル・ベース)
※ 各指数に関する著作権、知的財産権その他一切の権利は、MSCI Inc.に帰属します。
 規模・スタイル別では、米大統領選挙後の値動きが影響し、小型株、バリュー株が健闘、成長株は冴えませんでした。
 セクター別では、資源価格の回復を背景に、エネルギーや素材が大きく上昇した一方、業績が景気変動の影響を受
けにくいとされる、ヘルスケアや生活必需品は下落しました。
※上記グラフ、データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。
■ 当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料では
ありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のもので
あり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
■ 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。
したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、
投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
2/7
<世界の主要株価指数の2016年の騰落率>
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
50
60
44.9
アルゼンチン メルバル指数
38.9
ブラジル ボペスパ指数
19.8
タイ SET指数
インドネシア ジャカルタ 総合指数
15.3
ベトナム VN指数
14.8
英国 FTSE100指数
14.4
13.4
米国 ダウ工業株30種平均
ポーランド ワルシャワWIG指数
11.4
台湾 加権指数
11.0
トルコ イスタンブール100種
8.9
ご参考:新興国株式
8.6
7.5
米国 ナスダック総合指数
7.0
豪州 S&P/ASX200指数
ドイツ DAX指数
6.9
メキシコ ボルサ指数
6.2
ご参考:世界株式
5.6
ご参考:先進国株式
5.3
フランス CAC40指数
4.9
3.3
総合株価指数
インド SENSEX指数
1.9
ユーロ・ストックス指数
1.5
日経平均株価
0.4
香港 ハンセン指数
0.4
シンガポール ST指数
-0.1
南アフリカ FTSE/JSE アフリカ 全株指数
-0.1
-1.6
フィリピン 総合指数
-3.0
マレーシア FTSEブルサマレーシアKLCIインデックス
中国 上海総合指数
90
(%)
52.2
ロシア RTS指数(米ドル建)
ユーロ圏
80
76.2
エジプト EGX30指数
韓国
70
-12.3
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
※ 世界株式:MSCI ACワールド指数、先進国株式:MSCIワールド指数、新興国株式:MSCIエマージング・マーケット指数(いずれも
米ドル・ベース) なお、その他の指数は、ロシアRTS指数を除き、現地通貨ベース
※ グラフに掲載した各指数に関する著作権、知的財産権その他一切の権利は、当該指数の算出元または公表元に帰属します。
 エジプトでは、変動相場制移行に伴なう通貨切り下げとIMF(国際通貨基金)による支援の決定などが、ロシアやブ
ラジルでは原油価格の回復が、アルゼンチン*やブラジルでは政権交代などが、株価上昇につながった模様です。
 一方、トランプ氏が次期米大統領に決定して以降、米国の株式・通貨が上昇した一方で、投資資金の流出などが
懸念されたアジアや政治面が不安定な南アフリカで株価が下落しました。
※上記グラフ、データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。
*政権交代は2015年12月
■ 当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料では
ありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のもので
あり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
■ 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。
したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、
投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
3/7
<ご参考:世界の主要通貨の2016年の騰落率(対円)>
円高
-70
円安
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
ブラジル・レアル
30
(%)
18.4
15.1
ロシア・ルーブル
9.5
南アフリカ・ランド
3.0
2.8
0.3
コロンビア・ペソ
チリ・ペソ
カナダ・ドル
-0.1
-0.4
-1.0
-1.1
-1.3
-2.1
-2.5
-2.8
-3.7
-3.9
-3.9
-4.5
-4.6
-5.2
-5.2
-5.4
-5.9
-6.1
-6.7
-8.1
-8.8
-9.1
-9.5
インドネシア・ルピア
ノルウェー・クローネ
ペルー・ヌエボ・ソル
ニュージーランド・ドル
台湾ドル
タイ・バーツ
米ドル
香港ドル
ハンガリー・フォリント
ベトナム・ドン
オーストラリア・ドル
スイス・フラン
シンガポール・ドル
韓国ウォン
インド・ルピー
デンマーク・クローネ
ユーロ
ルーマニア・レイ
マレーシア・リンギ
フィリピン・ペソ
ポーランド・ズロチ
中国人民元
スウェーデン・クローナ
-18.6
-19.2
-19.5
-20.7
英ポンド
メキシコ・ペソ
トルコ・リラ
アルゼンチン・ペソ
エジプト・ポンド
20
-58.0
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
 景気の最悪期脱出の動きと資源価格の回復などを背景に、ブラジルやロシアの通貨が大きく上昇しました。
 エジプトでは、変動相場制への移行に伴ない、通貨が切り下げられました。また、アルゼンチンでは大幅な利下げ、
トルコでは政情不安、メキシコでは次期米政権との関係悪化懸念、そして、英国では国民投票でのEU離脱選択が
通貨下落の主な要因となりました。
※上記グラフ、データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。
■ 当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料では
ありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のもので
あり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
■ 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。
したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、
投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
4/7
●日興アセットマネジメントの2017年の見通し
 景気
• 米国、日本、ユーロ圏のいずれも、経済成長率が市場予想をやや上回るとみています。
• 米国のGDP成長率は、上半期が前期比年率+2.5%、下半期+2.2%、通年で+2.5%近くと、好況とま
では言えないものの、2016年通年の見通しである+1.6%を大きく上回る、堅調な伸びになると見込
んでいます。こうした成長加速を牽引するのは、個人消費や固定資産投資、政府支出、在庫積み増
しなどです。一方、純輸出は減少する可能性が高いとみています。
• 日本およびユーロ圏のGDP成長率については、いずれも、上半期・下半期とも前期比年率+1.9%、
通年で+1.8%と予想しています。これに対して、市場予想は通年で+1.4%程度にとどまっており、弊
社予想が現実となれば、相場はポジティブに反応することでしょう。また、企業業績見通しについても、
現在の市場予想から大きく上方修正されると見込まれます。なお、通貨安もこうした成長見通しに
とって重要な要素ですが、過去2年にわたって冴えなかった個人消費の回復こそが主な牽引役にな
るとみています。日本についてはさらに、2016年に導入された大規模な経済対策の効果も見込まれ
ます。
• 中国のGDP成長率は、通年で+6.8%と、市場予想の+6.5%を上回ると予想しています。中国でも、
個人消費が景気の牽引役とみられますが、財政政策も引き続き景気を支えると見込まれます。
 金融政策および為替
• 米国については、1-3月期から7-9月期までの各四半期に0.25ポイントの利上げを見込んでいます。
• 日本については、過度の円安の回避に向けて、現在、ゼロ%程度となっている長期金利の誘導目標
が4-6月期と10-12月期に0.2ポイントずつ引き上げられるほか、ETFの買い入れ額が4-6月期に縮小
されるとみています。現時点では、こうした予想は驚かれる可能性があるものの、弊社では、今春以
降、超金融緩和策が不要になると想定しており、金融政策の正常化に過ぎないと捉えています。
• ユーロ圏の場合、ECB(欧州中央銀行)が1-3月期の遅くに、資産買入れ対象債券の絞り込みなど、
量的金融緩和の間接的な縮小を示唆するとともに、買入れ対象となる債券の不足などから、量的金
融緩和の規模を7-9月期に縮小する可能性が高いことを認めるとみています。
• 円相場については、日銀が長期金利の誘導目標水準を引き上げるなど、金融緩和に積極的な「ハト
派」色をやや弱めると見込まれるものの、利上げ局面にある米国と比べ、日銀の政策は引き続き非
常に緩和的であることから、米ドル高・円安が続き、6月末に1米ドル=123円前後になるとみています。
 債券および株式
• 米国、日本、ユーロ圏での緩やかな物価上昇および景気拡大に加え、金融緩和策が僅かながら引
き締め方向に修正されると想定していることから、米国・日本・ユーロ圏の国債利回りの上昇が続くと
みている一方、世界経済の成長や先進国の株価の上昇は続くと予想しています。
• 米国では、減税が早期に実現し、企業収益見通しの上方修正につながるとみられます。トランプ氏
のその他の諸政策については、企業の投資マインドや消費者心理の改善につながっており、規制
緩和が実現したり、自社株買いの加速につながるようであれば、一層の好材料となります。米ドル高
が企業収益に逆風となるものの、新政権の政策を総合的に評価すると、2018年の企業収益を大きく
押し上げることになると考えられます。
• 日本については、家計・企業の景況感の改善、中国を牽引役とした世界経済の拡大に伴なう純輸出
の増加などにより、経済成長率が高まると考えられます。加えて、円安もあり、企業収益の拡大が想
定されるほか、バリュエーションが妥当な水準にとどまっていることから、株価上昇が見込まれます。
• ユーロ圏は、収益が底打ちした模様の銀行セクターや、世界経済の成長加速およびユーロ安から大
きな恩恵が期待される多国籍企業、国際商品市況の上昇が追い風となる鉱業セクターなどを中心に、
企業業績見通しが改善し、さらなる株価上昇につながると見込まれます。
 主なリスク要因
欧米でのテロの影響が長引く可能性は低いものの、地政学的リスクには今後も注意が必要です。ま
た、新興国については、巨額の米ドル建て債務を負っている企業の信用リスクに注意が必要です。
※上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。
■ 当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料では
ありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のもので
あり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
■ 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。
したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、
投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
5/7
●2017年の主な注目点
以下、弊社チーフ・ストラテジスト、神山直樹のコメントです。
2017年の投資における3大テーマは、
 米国リードでインフレ期待の回復が本格化
 債券から株式への緩やかな転換
 資源国、新興国への回復の拡がり
だと考えています。そして、「政策先行」がリスクだとみています。
 米国リードでインフレ期待の回復が本格化
米国のリーマン・ショックからの回復には、「デフレ懸念からの脱却」、つまり、インフレ期待の回復が不
可欠だとみています。同国では、2008~09年に失われた約870万人の雇用を2014年には回復し、
2015年後半には賃金上昇ペースが拡大、さらに、人民元ショックなどに見舞われながらも、同年12
月にリーマン・ショック後初の利上げが行なわれた頃までは、インフレ期待の回復が進みつつありまし
た。ところが、2016年に入ると、年初に原油価格が下落し、石油関連企業を中心とした信用懸念が台
頭したほか、産油国の投資マネーがリスク資産から引き揚げられるとの観測や欧州での銀行不安な
どもあり、インフレ期待の回復はあまり進展しませんでした。
しかし、2017年には、米国がリードする形で、デフレ懸念からの脱却が世界的に期待できそうです。
米国では、これまで積みあがってきた雇用や賃金の上昇が、貯蓄率の低下や消費の拡大にとどまら
ず、経営者による設備投資などの拡大にもつながるタイミングになると期待しています。これが回復の
「本格化」の意味です。言い換えると、消費者や経営者の信頼感の回復です。
こうした回復の本格化には、トランプ次期大統領の政策への期待も関わってきます。特に所得税減税
と法人税率の大幅引き下げは、議会の賛同を取り付けやすい模様です。また、インフラ投資について
は、効果はあっても先になるものの、政権のリーダーシップ発揮への期待が高まっています。財政政
策の拡大が消費マインドを支援することになれば、待ち望まれた「物価を押し上げるほどの消費の拡
大」が実現するかもしれません。そして、これが世界貿易を拡大するきっかけになると考えられます。
なお、メキシコや中国との貿易問題については、関税の大幅引き上げには至らないと想定しています。
インフレ期待が高まれば、企業は、在庫、雇用や残業、生産、設備投資などを増やすと期待されます。
結果として消費も拡大していくでしょう。2017年は、リーマン・ショックからの緩やかな回復が10年近く
を経て、大きく加速した年として、投資家の記憶に残ることになる可能性があります。
 債券から株式への緩やかな転換
米国での、2015年12月に続く、2016年12月の利上げは、インフレ期待が高まる中での金融政策正
常化の動きであり、同国が良い状態に向かうことを示唆していると考えられます。
また、投資のテーマとして、世界的な「金融政策から財政政策へのシフト」が予想されます。金融緩和
だけでなんとかインフレ期待を醸成しようとしてきましたが、なかなかうまくいかなかったので、米国の
みならず日本や欧州でも財政政策の拡大が期待されつつあります。こうした中、低金利の恩恵を受
けるセクターよりも、消費や投資の成長から恩恵を受けるセクターに注目が移ると見込まれます。
債券は、金利上昇に伴ない、価格に下押し圧力がかかりますが、利回りが高くなることでトータルリ
ターンの悪化は限定的とみています。ゆっくりと少しずつ金利が上昇することは、インフレ期待の正常
化の過程であって、「良い金利上昇」と捉えることができます。こうした中、金利の高い通貨の債券を
保有して、金利差で為替の変動をカバーするような債券投資のチャンスも増えるでしょう。また、他の
リスク資産を増やすことを考える機会でもあります。
株式は相対的に魅力を増すと言えそうです。金利水準が急には上がらない環境下、高配当株式の
魅力は続くものの、これからは利益成長期待が強まる業種や企業への関心が高まりそうです。インフ
レ期待が上昇すれば、企業の売上ひいては利益成長の期待も高まります。金利上昇が緩やかである
ほど、PER(株価収益率)などの株価バリュエーションも高止まりしやすくなるので、金融緩和にかなり
依存してきたこれまでの株式相場に比べ、より高いリターンを期待できそうです。
※上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。
■ 当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料では
ありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のもので
あり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
■ 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。
したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、
投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
6/7
金利上昇局面では、不動産やREITへの投資を避けたいと思う投資家が増えがちです。しかし、資金
調達コストの増加などが短期的に利益の押し下げ要因になるとしても、好景気を背景にいずれ「賃料
の引き上げ」が可能となることにも考えを巡らせる必要があります。不動産はこの意味で、株式と似て
金利上昇やインフレに強いはずです。中長期的な視点では良い買い場が来るかもしれません。
投資の観点から考えると、債券から株式への緩やかな転換が起こるとき、金利上昇が「緩やか」である
ことがとても大事になります。現在は急に高インフレに転じるような状況にはないので、金融政策が突
然、大幅に引き締められるような可能性は極めて低いと言えるでしょう。金利上昇の早さも幅も「穏や
か」と予想される限り、金融市場への投資によい機会となるでしょう。
 資源国、新興国への回復の拡がり
米国など先進国中心に消費が回復することは、世界の需要が回復するということであり、資源国や新
興国にとっても悪いはずがありません。中国やインドなど世界で生産を受け持つ新興国は、先進国向
けの受注が増えると期待されます。計画経済の中国は、リーマン・ショック後も生産財向けに大幅な投
資を継続した(逆に言えば消費を喚起できないままだった)ために過剰供給状態となってしまいました。
しかし、2016年から過剰供給の削減に取り組み、ある程度、調整が進んできたところです。そこに海
外からの需要拡大が加われば、調整スピードが上がり、経済が良い方向に変わる契機となる可能性
があります。
また、資源への需要も伸びるでしょう。需要が伸びれば石油価格等も安定し易くなります。資源価格
の上昇だけで資源国の経済成長が促されるような状況は考えにくいのですが、資源国の信用が強ま
れば、生産活動が活発になります。また、資源価格の低迷を受けて必要な調整を進めた国や地域に
ついては、その成果を手にするチャンスが来るとみられます。
米ドル高が新興国などの負債額の膨張につながったり、米国の金利上昇が新興国などからの投資
資金の引き揚げにつながるといった懸念は残っています。しかし、世界の需要回復は、新興国の経
済成長の加速や、企業の利益成長に伴なう負債返済能力の向上などにつながるため、信頼は維持
されることでしょう。個別に適切な判断が必要な局面ではありますが、新興国・資源国全体としては、
米ドル高や米国の金利上昇が中長期的に悪影響を及ぼすとは考えていません。市場参加者が米国
主導の経済成長に自信を持つにつれて、新興国への投資も回復するとみています。
 リスク
2017年のリスクを「政策先行」と呼んでおきます。経済や金融市場は、米国のトランプ次期大統領を
含む政府・政策担当者、さらに中央銀行がどのように政策を立案し、実行していくかにかかっていると
いうことです。そして、いまだ自律的な景気拡大は力が弱いだけに、減税などの政策が起爆剤となっ
て消費者の信頼感が回復し、消費に火をつけることができるか、あるいは、市場参加者は政策の効
果に自信を持てるか、といった点ももちろん重要となります。
リスクは、市場の期待にそぐわない政策が実行される可能性です。トランプ次期大統領が選挙期間
中に候補者として口にしていたにもかかわらず、中国やメキシコに高い関税をかけることを今の市場
は織り込んでいません。実現の可能性は低いとみられるものの、このような保護主義政策は米国の消
費を痛める恐れがあります。また、日欧の中央銀行が、市場の自信が回復していない局面で、量的
金融緩和の縮小や金利の引き上げに向かう場合、市場のボラティリティは上昇してしまいます。
地政学的には、専門家であるユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏の意見を参考にすると、米
国では、トランプ氏が展開してきた幅広い事業の運営と大統領の職務との利益相反問題がスキャン
ダル的に取り上げられ、新政権が指導力を発揮できない可能性や、ドイツやフランスなどの主要国の
選挙が思わしくない結果となり、それらの国々で政権の指導力が弱まる可能性などがあります。先進
国での政治的指導力の弱まりは、結果として政策先行で期待を盛り上げてきた金融市場の一時的な
凹みにつながるかもしれませんし、危機に対して脆弱にもなります。しかし、遅かれ早かれ起こると
思っていた、米国の雇用・賃金の回復が消費拡大につながり、世界景気の回復を促すというシナリオ、
つまり、リーマン・ショックからの回復という大きなトレンドが、2017年に明確になると考えています。
※上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。
■ 当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料では
ありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のもので
あり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
■ 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。
したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、
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