170 内橋

バレーボールのゲーム分析についての研究
~レセプションからの攻撃について~
内橋
昌哉
(競技スポーツ学科 コーチングコース)
指導教員 吉川 文人
キーワード:クイック,ダイレクト・デリバリー,インダイレクト・デリバリー
1.研究目的
本研究では,実際の試合映像からトスの種類
維持・向上を図るためには,レセプション技術
(特に A カット)の強化も必要である.
図(c),(d)では,ブロックシステムで分けた
を分け,スパイカーの決定力を上げるためにダ
イレクト・デリバリー,インダイレクト・デリ
ブロック種別毎のスパイク決定率を比較した
バリーのどちらが有効であるのかを調査する.
ものを示した.ブロックシステムで比較した場
また,クイック時にトスを上げる瞬間の相手の
合,スパイク決定率に大きな差は見られなかっ
ブロックシステムとその種類についても調査
することとした.
た.ブロック種別毎に分析すると.ダイレク
ト・デリバリーのトスが,バンチブロック,デ
2.研究方法
ディケートブロック共にリードブロックに対
本調査は,2015 年度関西学生バレーボール
して有効であった.インダイレクト・デリバリ
1 部秋季リーグ戦における天理大学の試合と
ーが,コミットブロック,デディケートブロッ
クどちらに対しても決定率が高かった.
その対戦相手同士の試合,計 12 試合を対象と
する.研究室で開発した索引付け・映像閲覧ツ
ールを用いて, 試合映像中のサーブ直前から
レセプション,トス,クイックといった一連の
流れを反復再生しながら,次の 5 つの項目すな
わち①トスの種類,②レセプション評価(A カ
ット,B カット),③相手のブロックシステム,
④ブロックの種類,⑤決定打について,データ
収集と集計を行った.それぞれの項目における
2 つのカテゴリ(結果参照)の集計結果に差が
あるか否か確認するため,対応のない t 検定を
(a)トスの種類別決定率
行った.
3.結果及び考察
(b)レセプションからスパイク本数
(c)バンチシステムでの決定率
全 12 試合についての種別トス総数は,ダイ
レクト・デリバリー151 本,インダイレクト・
(d)デディケートシステムでの決定率
図.レセプションからのクイック指標の結果
デリバリー191 本,計 342 本であった.図(a)
は,ダイレクト・デリバリー,インダイレクト・
4.まとめ
本研究では,レセプション,相手のブロック
デリバリーのトスによるスパイク決定率を示
したものである.本研究において分析対象とし
を考慮しつつクイック時のトス種別とスパイ
クの決定力との関係について調査を行った.調
た試合においては,トス種別間の決定率に有意
差は認められなかった. 図(b) では,レセプ
査結果から,スパイク決定力を向上させるため
ション種別毎に 1 試合当たりのクイック時の
トス平均使用本数をトス種別毎に示した.レセ
強化や相手ブロック種別を考慮した戦術や技
術面の強化を図る必要性が強調される.
プション時は,A カットの方が多くクイックに
使用されていることがわかった.近年の動向と
引用・参考文献
吉田ら(2008) バレーボールにおけるジャン
して,吉田ら(2008)はサーブ威力の増強を指摘
している.レセプションからのクイック精度の
プサーブの効果についての研究 法政大学体
育・スポーツ研究センター紀要第 26 巻 21-23
には,トスの技術だけでなく,レセプションの