景気循環研究所 鹿野達史の日本経済の視点 2016 年 12 月 20 日 企業の 企業の期待成長率が 期待成長率が再び上昇へ 上昇へ ~設備投資の 設備投資の回復が 回復が期待できる 期待できる状況 できる状況に 状況に~ 設備投資の対GD ●統計改定で 統計改定で、設備投資の 設備投資の13、 13、14年度 14年度の 年度の回復が 回復が確認される 確認される。 される。 アベノミクス始動後も、力強さを欠いた動きを続けているとみられてき P比はリーマン・ た設備投資だが、GDP統計の改定で、これまで含まれていなかった研究 ショック直前の水 開発費などが計上されることになり、新統計では、13、14 年度の回復が 準近くまで上昇。 確認されている。 実質設備投資の動きを、対GDP比でみると、旧統計では、13 年度以 15 年度以降は、一 降の上昇は緩やかで、11 年 1~3 月期のピークを上回ることができないか 進一退の中、小幅 たちだったが、新統計では、13、14 年度と大きく水準を切り上げ、リー ながら水準を下げ マン・ショック直前の水準近くまで戻している(図 1) 。 ている。 ●新統計でも 新統計でも、 でも、15年度以降 15年度以降は 年度以降は弱めの推移 めの推移に 推移に。期待成長率の 期待成長率の低下が 低下が背景。 背景。 ただ、新統計でみても、15 年度以降は、設備投資の対GDP比が一進 嶋中 雄二 景気循環研究所長 一退の中、小幅ながら水準を下げている(図 1)。こうした動きの背景とし て、企業収益の落ち込みが挙げられるが、中長期的な企業の期待成長率が 鹿野 達史 低迷していることも指摘されている。 景気循環研究所副所長 シニアエコノミスト 03-6627-5131 (%) shikano-tatsushi1@ sc.mufg.jp (%) 図 1.実質設備投資の 実質設備投資の対GDP比 GDP比の推移 15.0 16.0 2008SNAベース 新統計(左目盛) 15.5 14.5 宮嵜 浩 シニアエコノミスト 03-6627-5132 15.0 14.0 14.5 13.5 14.0 13.0 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6627-5133 1993SNAベース 旧統計(右目盛) fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 13.5 12.5 景気循環研究所 13.0 東京都千代田区大手町 1-9-2 12.0 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年、四半期) 大手町フィナンシャルシティ (資料)内閣府資料をもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 グランキューブ 1 2016 年 12 月 20 日 企業の「今後 3 年 期待成長率として、内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」の中 間」、 「今後 5 年間」 期成長率見通しが参照されることが多いが、 「今後 3 年間」、 「今後 5 年間」 の成長率見通しは の見通しが、ともに 14、15 年度調査(それぞれ 15 年 1 月、16 年 1 月調 ともに低下。 査)で低下している。過去、期待成長率は、設備投資の対GDP比に、先 行、または連動しており(図 2)、企業の成長期待の弱まりが、足元の設 備投資の弱めの動きにつながっている可能性がある。 成長率の下振れが ●期待成長率が 期待成長率が上昇し 上昇し、設備投資の 設備投資の回復が 回復が期待できる 期待できる状況 できる状況に 状況に。 企業の期待成長率については、人口減少に伴う国内市場の縮小への懸念 続き、企業の期待 が根強いこと、さらに政府の成長戦略の進捗の遅れなども、押し下げ要因 成長率が低下。 として挙げられているが、これまでの動きをみると、企業の期待を下回る 成長が続くと、期待成長率が低下していることが多い(図 3)。14 年度以 降は、消費税率引き上げや世界経済の減速の影響で個人消費や輸出が弱め の推移となったほか、公共投資の落ち込みも続き、成長率が下振れ、こう した中、期待成長率が低下している。 (%) (%) 図 2. 期待成長率と 期待成長率と設備投資の 設備投資の推移 24 4.0 22 3.5 3.0 期待成長率・「今後3年間」 の成長率見通し(左目盛) 20 2.5 18 2.0 1.5 16 1.0 14 実質設備投資/GDP (右目盛) 0.5 0.0 12 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16(年、四半期) (注)成長率見通しは毎年1月調査、設備投資/GDPは四半期。 (資料)内閣府資料をもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 図 3. 成長率の 成長率の上振れ・ 上振れ・下振 れ・下振れと 下振れと期待成長率 れと期待成長率の 期待成長率の変動 (%ポイント) (%ポイント) 6 実質成長率-期待成長率・ 今後3年間の見通し(左目盛) 1.0 4 期待成長率 上昇 成長率の 上振れ 0.5 2 ↑ ↑ 0 0.0 ↓ ↓ -2 成長率の 下振れ -0.5 期待成長率 低下 -4 -1.0 -6 -1.5 期待成長率(今後3年間) の前年差(右目盛) -8 -10 -2.0 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年、四半期) (注)期待成長率は毎年1月調査で、四半期ベースに線形補間、直近は16年1月調査から横ばいと想定。「実質成長率- 期待成長率」は、5四半期中央移動平均。 (資料)内閣府資料をもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご判 断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 12 月 20 日 16 年に入り、企業 ただ、足元は、15 年度補正予算の効果もあり、公共投資が増加に転じ の期待を上回る成 ていることに加え、世界経済の減速に歯止めがかかり、輸出に持ち直しの 長が続いている。 動きがみえている。また、雇用・所得環境の改善を受け、個人消費が底堅 く推移していることもある。16 年に入り、企業の期待を上回る成長が続 いており、期待成長率が持ち直していることが十分に考えられる(図 3) 。 期待成長率と連動 一方、設備投資の関連指標である「トービンのq」は、市場で評価され している「トービ た企業価値と企業の再取得額の比率(市場評価の企業価値/再取得額)と ンのq」も上昇、 定義されるが、企業価値は、将来にわたる企業の収益力ということができ、 期待成長率の上昇 市場の考える実物投資 1 単位あたりの期待収益率とも解釈される。過去を の可能性を示唆。 みると、期待成長率と連動し(図 4)、設備投資に先行して動いているケ ースも多い。足元で、トービンのqは上昇に転じ、期待成長率の持ち直し の可能性を示しており(同) 、17 年度にかけて、設備投資の回復が期待で きる状況あるといえよう。 図 4. 「トービンのq」 トービンのq」と q」と期待成長率の 期待成長率の推移 (ポイント) (%) 4.5 2.0 4.0 期待成長率・今後3年間の 見通し(左目盛) 3.5 1.8 1.6 3.0 トービンのq (右目盛) 2.5 1.4 2.0 1.2 1.5 1.0 1.0 0.5 0.8 0.0 -0.5 0.6 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年、四半期) (注)トービンのqは(株式時価総額+負債合計)/総資産、時価総額は東証一部(除く金融)、負債、総資産は資本金10億円以上の 金融・保険業を除く全産業、直近は当研究所推計値。四半期ベース。期待成長率は毎年1月調査。 (資料)日本証券取引所、内閣府、財務省資料などをもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 (16.12. 12.20 (以 上) 鹿野 達史) 達史) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご判 断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3 2016 年 12 月 20 日 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMUFG Securities EMEA plcが配布致します。また、米国においては、MUFG Securities Americas Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご判 断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 4
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